※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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第10章:虹龍洞編
天魔の紹介


「はぁ〜……ありがとうございました、これで午後も頑張れます!やはりエッチは程々が一番ですね♡」

 

「そう……なのかなぁ」

 

「そうですよ!……って、ああっ!こんな事をしてる場合じゃないんでしたっ!」

 

「こんな事ってオイオイ」

 

「天魔様からあなたへ言伝を預かっていたのです!なんでも『紹介したい者が居る』と!そこまで緊急ではないらしいですが……あわわわ、どうしましょう私でさえ中々見つけられなかったという事でひとつ口裏を合わせてくれません!?」

 

「俺は構わないけど文はそれでいいのかよ……」

 

 珍しく昼間に逢瀬を楽しんだ後、文は思い出したようにそんな事を言う。元はそれを伝える為に俺を探していたようだが、少しハグやキスをしただけでスイッチが入ってしまったとの事だった。

 こんな事だったら先に彼女の話を聞いてから事に及べば良かった。

 

「というワケで今回は私もあなたと一緒に天魔様の屋敷へ行きますので!」

 

「どういうわけだよっ!?……んーまぁいいや。距離短いけど散歩みたいなもんだな。よし、行くか」

 

「はいっ!そうと決まればすぐにでも!」

 

 俺が靴を履いたと見るや否や、バタンと扉を開け大空に飛び出した。文の速度では加速し切らずとも天魔の屋敷までひとっ飛びだ。散歩や遊覧飛行など考えている暇も無かった。

 門兵などもスルーしてくれる。山の英雄だなんて呼ばれるようになってからは顔パスも同然なので、便利にはなったと思う。

 俺は英雄とか呼ばれたいのではなく、可愛い子にチヤホヤされたいだけなのだが。

 やがて天魔の部屋へ早歩きで行き、入室するなり文は土下座した。天魔の隣には側近と思われる青を基調とした天狗装束の少女が居る。

 かなり美形だ。髪は少し長めで、肩より下まで伸びている。彼女が傍らに置いているのは、三脚か何かのようだ。天体を観測するような類ではない。歴史の資料で見た事があるような気がする。測量をするようなタイプの三脚に近いように見える。形で判断するなら、だが……。

 

「しっ、失礼致します!お待たせしてしまい申し訳ありませんでした!」

 

「よいよい。エスカルゴの行動範囲の広さは儂とて知っているつもりだ。よく連れてきてくれたぞ」

 

「ははーっ!」

 

「道中、儂の言伝は伝えてくれたな?」

 

「はいッ、勿論でございます、天魔様御自ら私めに指令を下さったのですから伝令役すら十全に役目を果たせなければ私としても不名誉の極みであり……」

 

「エスカルゴ。急に時間を作ってもらってすまん。故に手短でいいから紹介させてくれ。儂の隣に居る此奴は最近儂が重用している大天狗でな。主に山の近代化や経済の発展について任せておる。鴉天狗の大将、飯綱丸龍だ」

 

 濃い青……冠位十二階で言うなら上から3番目か。とするとはたてはトップなのだが、果たして天狗の頭の上にあるアレの色と冠位十二階は関係があるのだろうか。

 モチーフにした……とかなら、あながち無くもないかもしれないが。

 

「……ご紹介に預かりました、飯綱丸(いいづなまる)龍(めぐむ)と申します。山の近代化、経済の発展へ向けて尽力させて頂いております」

 

(……何でこの人!?何でこの人を『紹介したい』んですか天魔様!?何故私の上司をッ!?)

 

「めぐむ?……かぁいい名前」

 

「ありがとうございます。難しい方の『龍』と書き

『めぐむ』と読ませるんですよ、少し変わっているでしょう?能力は《星空を操る程度の能力》です」

 

「偶然かは知らないけど名前まで近代的じゃんね。能力、スゴいロマンチック……」

 

「ふふ、そうかもですね。もしかしたら、私が山の近代化の為に動く事になったのは、持って生まれた運命なのかもしれません。……それにしても……」

 

「?」

 

「噂通り、気さくな方なんですね」

 

「あッ……えと、失礼……しました?」

 

「いえいえ、咎めている訳じゃないんですよ?皮肉でもないです。ただ、私、これまでは大天狗の末席という微妙な立ち位置で、仕事に追われていて中々あなたにお会いする機会が無かったものでして……。話で聞いたり、新聞で見た事しか無かったんです。あなたの存在も、活躍も」

 

「はぁ……。何度も山に攻めているし、天狗の里にも行きましたけど……」

 

「いずれも、タイミングが悪かったのでしょうね。何しろ山はとてつもなく広大ですから」

 

「……まぁそりゃそうか」

 

 当たり前だ。妖怪の山は古代の八ヶ岳なんだし、現在の富士よりも高く、そして広いのだから。

 俺は一度、一日掛けずにそんな山を登った記憶があるのだが気の所為だろうか。いやそう思いたい。もし俺にそんな体力があったら…………。

 

「気になったのだが、何故最初からタメ口なのだ?もしかしてお前達、既に知り合いだったか?」

 

「いえ」

 

「そんな事はないですけど。……なんつーんだろな、これまでの経験上、大天狗ってカテゴリーの奴にゃ舐められたくないんですよ。それによって、まぁた誰かが酷い目に遭ったらと思うと……怒り通り越して呆れの感情が湧いてきますけど」

 

「アッハッハッハッ、確かにそうだったな、お前はこれまで何度も大天狗に迷惑を掛けられてきたな。そうか、大天狗と聞いて警戒させてしまったのか。配慮に欠けていたよ、すまないな」

 

「天魔様が謝る事では……。俺の方こそ、すみませんでした。……龍さんも、すみません」

 

「いえいえ、私は大丈夫ですよ。確かにこれまでの出来事を鑑みれば、あなたが警戒するのも仕方ないというもの。射命丸文の拉致監禁、天魔様への叛逆行為、河城にとりへの性的暴行未遂に加え、河童と山童への強制参戦命令……。羅列すれば如何に腐った連中だったのかが分かるというものです。いち同僚として謝罪させて頂きます。その節は本当に申し訳ございませんでした」

 

「いえいえ、済んだことですから。というか、同僚だからって龍さんが謝る事ないですよ。全部妨害に成功したし、いいって事です」

 

「そうだな。いずれもお前によって妨害され今日(こんにち)の平和に至るわけだが……腐った連中を排除したお陰で彼女を表立って活躍させる事ができるようになった事には本当に感謝しているぞ」

 

「はっ。ありがとうございます」

 

 別に、山の平和なんてものは割とどうでもいい。ただ守矢神社周辺と文の仕事場の周辺さえ平和なら他はどれだけスラム街のような様相を呈していても俺はあまり気にしない。

 今でさえカジノや風俗のような施設があるのだ、この「平和」だって結局砂上の楼閣だ。いつどこでどんなトラブルが起きたって不思議ではない。

 

「ところで龍さん、つかぬ事をお伺いしますが」

 

「はい」

 

「お付き合いされてる方って居たりします?好きな人とかは?」

 

「居ませんね」

 

「結婚なんかも?」

 

「当然していません」

 

「成程。もし良ければ今夜食事にででででっ!?」

 

「!?」

 

「なんで抓(つね)るんだよ文ぁ……」

 

「天魔様の前で何言ってるんですか、もうっ!せめて解散してからにしてください!そりゃさっきはエッチもあまりシませんでしたからね?あなたが盛るのも分かりますがねっ!?ですがね、もう少し時と場合をですねぇ……!」

 

「聞こえているぞ射命丸。『さっき』とは一体?」

 

「はうっ!?」

 

「よもや、儂からの仕事を放り出して夫婦の営みをしていたのではあるまいな?」

 

「あややややややや…………」

 

「すみません天魔様、俺が何か話そうとしてた文を襲ったんです。改めて見ると嫁が可愛いもんでね、つい抱き締めたくなったっていうか。あとは流れでそうなっちゃいましてね。いや、庇ってるだとか、そんな事はしないですよ?でも、ほら、あややってこんな可愛いじゃあないですか?」

 

「よく分からんがお前が言うならそうなんだろう。だがまぁ緊急の場合もある。これからはできるだけ気を付けてくれると助かる」

 

「はいッス、これからは気を付けますね」

 

「あと、なんだ……せめて儂の前で軟派な男を演じるのはやめてくれると助かるんだが」

 

「まぁ素なんですけど」

 

「やめろ、聞きたくないぞ」

 

「……これでおあいこですからね」

 

「わぁってんよ」

 

 こうして天魔の前で耳打ちなんてするのだから、きっと天魔も俺が文を庇っている事なんてとっくに察しているだろう。

 そこら辺の空気が読めている辺り、流石天魔だ。古きを撤廃し山に新しいものを取り入れようとする姿勢を何となく感じられて、非常に好感が持てる。

 それから4人で軽く雑談を楽しみ、龍、俺、文は天魔の屋敷を後にする。文は、これから予定があるらしく、一時的に龍と2人になってしまった。

 

「エスカルゴさん。今少しお時間宜しいですか?」

 

「……?ええ、まぁ……。何か話があるとかです?」

 

「そうです」

 

「場所変えますか?」

 

「このままで。後ろめたい話でもないですから」

 

 そう言って龍は「単刀直入に言うと」と前置きし一呼吸置く。そこまで意を決して言うような事なら場所を変えた方が良いような気がするが……。

 しかしまぁ彼女がここでいいと言うのなら、俺はそれに従うだけだ。

 

「私の近代化計画に、あなたのその知名度やお力をお貸し頂きたいのです。あなたのお力添えがあれば私の計画はより強固で現実的なものとなります」

 

「ふむ……?なんで俺なんです?」

 

「数多の神に愛されるあなただからこそなのです。とはいえ、即決でなくとも構いません。あなたにも都合というものがあるでしょう。ですからどうか、前向きにご検討願えませんか?」

 

「ええ、まあ……龍さんがマトモな大天狗ってんなら力を貸すのも吝かではないですが……」

 

「私がマトモかどうかはあなたが判断して下さい。自分で言う事ではないでしょうし、そもそも個人によってその辺の物差しは変わってきますしね」

 

「ええ、勿論そうさせて頂きますよ」

 

「あなたが計画に力を貸して下さるのならば、私にできる事があれば何でも致します。遠慮無く申して下さいね」

 

「何でも……」

 

「ええ、何でもです。……うふふっ、あなたが今何を考えているのか、容易に想像がつきますよ?」

 

「っ……!」

 

「とはいえ、安くはないですよ?ほぼ確実に私への助力を決定してくれたなら……構いませんが?」

 

 顔を寄せてきたかと思うとコソッと耳元でそんなセリフを吐く。これには流石の俺も驚いてしまう。初対面であるにも関わらずそんな事をするなんて、普通なら考えられない。俺なら考えられる事だが、この天狗少女がそんな事をするタイプとは思えないからだ。

 

「勘違いしないでくださいね。こんな事、誰にでも許す訳じゃないですよ?名声あるあなただからこそ身も心も許せるというものです」

 

 俺……英雄やってて本当に良かったかもしれない。あの時、天魔の進言を意地になって突っぱねていたなら今こうして大天狗(美少女)とこういう(ヤレそうな)関係になれなかったかもしれない。

 天魔と刃を交えて以降、既に山には自由に出入り可能ではあったが、権力者との繋がりはそれなりに持っておくに越したことはない。

 とはいえ、ここは天魔の屋敷前。あんまりエロい話をしていい場所ではない気がする。いつヤるか、何処でヤるかなどはまだ話すべきではないだろう。

 

「どうしてそこまでするんです?初対面でしょう」

 

「私の主観で言わせて頂くと、あなたにはそこまで(・・・・)身体を張る価値があるからです。それにあなたは、多くの神に愛され、多くの家族を持っている。私の計画にそんなあなたのお時間を使って頂けるなら、それ相応の対価をお支払いする、という事ですよ。お金より、身体の方がお好みなのでしょう?♡」

 

「ま……まぁ……否定はしませんね……」

 

「あははっ、やっぱりそうなんですね!それじゃ、エスカルゴさん。いつにしますか?」

 

「へ?」

 

「逢瀬です。その後にあなたから了承を得られたら計画の全容を話そうと思っているので、できるだけ早い方がいいかなと思っていまして。私があなたの都合に合わせますので、ご希望があれば、何なりと申して下さいな♪」

 

「あっ、あー……んー、今の所は特に予定無いんで、いつでも構わないですよ。でも急に予定が入る事も割とあるんで……今日早速、というのはどうです?」

 

「分かりました。でしたら一刻後にまたここで集合という事で宜しいですか?私としても……心の準備、とかもありますので……///」

 

「今日の今日でいいんですか?」

 

「私は大丈夫ですよ?」

 

「あ……じゃあ今日で……?」

 

「分かりました。一刻後、またお会いしましょう。失礼しますね♪」

 

 バシュンッと豪風と共に去って行った。鴉天狗の大将などと呼ばれるだけあって、かなりの速度だ。ただ、能力的な関係からか、文よりは遅く見える。

 遠目に彼女の白のパンツが見えたので、股間を膨らませつつ待ち合わせの時間まで、ここで天子と通話でもして暇潰ししよう。

 

 

 ◆

 

 

「戻ったわ」

 

「お帰りなさいませ飯綱丸様。顔合わせしてみて、どうでした?」

 

 龍が一時的に帰宅すると、家に戻っていたらしいペットの管狐、菅牧(くだまき)典(つかさ)が彼女を出迎える。普段ならこんな事しないので、きっと典も先程帰ってきたんだろう、と龍は思った。

 

「そうね、ある程度は思い通りになってくれそう。ある程度は、ね」

 

「強さの方は如何程と見ますか?」

 

「強さだけで言えば、確かに相当なものと見たわ。きっと、そこらの神では歯が立たないくらいにね。天魔様が負けるのも頷ける。けど、致命的なまでに頭が足りていない。理よりも快楽を優先するタイプらしいわね。これも、噂通りね」

 

「飯綱丸様の言う『噂』、出処は私の集めたデータなんですから、あんまり噂扱いすると怒りますよ」

 

「あっはっは、ごめんごめん。それで、また新しいデータ、仕入れてきてくれたんでしょうね?」

 

「勿論です。これまでに集めた情報と総合すると、精神的破壊力A、テクB、早漏度(スピード)B、射程距離C、持続力A、精密動作性B、成長性A……という結果になりました」

 

「幾つか訊ねたい事があるわ。精神的破壊力って?」

 

「行為によって彼に堕ちる確率です」

 

「あー……スピードは?」

 

「早漏の度合いです」

 

「彼、早漏なんだ……なんか意外だわ」

 

「精密動作性はピストンの安定性、成長性は勃起率です。これらはあの方(・・・)からの情報です」

 

「……あの方(・・・)?彼、嫁も彼女も居るのに、あの方とも逢瀬を繰り返しているの?乱れてるわねぇ……」

 

「彼ほど妖怪の山に入り浸っているフリーの妖怪は居ません。ですので、彼の情報を集めるのであればそういう所から集めるのが得策だと判断しました」

 

「うん、それについては私もそう思うわ。……さて、シャワー浴びて身体綺麗にしてきましょうかね」

 

「彼と交わるのであれば、くれぐれも自身の理性を手放さぬようお気を付けて。大丈夫と思っていても堕とされるようです。……尤も、元から堕ちているのならばそれ以上は堕ちないでしょうがね?」

 

「何よ?この私が、彼が気になってるとでも?私が堕ちるはずないでしょう?」

 

「ふふ……そういうのをフラグ発言と言うんですよ。因みにお時間は?」

 

「一刻後に集合。逢瀬の場所は彼に任せるわ」

 

「一刻後……ですか。成程。……では、ごゆるりと」

 

 浴室へ向かう主人・龍の背中を見送りつつ、典はひそかにほくそ笑んでいた。




これまでとはちょっと違う感じで虹龍洞編に突入。
どうしてか?場所が場所だけに、寧ろこっちの方が自然だからです。
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