「ほぉ〜ん、起きたら湖底にカードが落ちてたと。妙な事もあったもんだねぇ」
「本当にねぇ。まさか異変かしら?」
「そうなのかねー。なら、そろそろ霊夢とか動く頃だろうけどな。まさか気付いてないとか……?」
「そうかもね。合流してみたら?……あ、メイドだ」
「ん……お、咲夜さんじゃあないですか」
「あら旦那様、
「こんな所って何よー」
「
「しかもそのカードね、触るとピリピリするのよ。まるで感電してるみたいよ?」
「へー、そうなんだ?俺にはわかんねーけどな……」
「────ッ!」
ポケットからカードを取り出して見せると、目の色を変えてそれを見つめる咲夜さん。ナイフを沢山装備してそうな気配だし、大方、解決に向かおうとしているところなのだろう。
なら、このカードの正体も掴めるかもしれない。俺も解決に動きたいところだが……。
「異変、ですかね?」
「そうだと思います。今からその調査に行く所なのですが、旦那様もどうですか?」
「良いですね。俺も行きます」
「では、すぐにでも」
「うっす」
「頑張ってね!」
「おーよ。サンキューな、姫」
にこやかに手を振り咲夜さんと並んで飛び立つ。
何でもこのカードはアビリティカードと呼ばれるカードで、誰かしらの魔力が込められているとか。それを使えば、擬似的にその者の能力を使える、と咲夜さんは言う。
これは恐ろしい事だ。誰かの凶悪な能力を、頭の回る誰かが使えば、とんでもない事態に陥る。でも現状はそうでもないらしいので、とりあえずは安心だろう。
そしてどこを調査して行くかだが、これは、案外すぐに決まった。何かを製造・流通させると言えば人里か、そこだけで一つの社会が成り立っていると言える妖怪の山。とりあえず、この二箇所が候補に上がった。なので、妖怪の山を麓の方から重点的に調べる事にした。
「あれ?そういや、こんな感じのカードならこの前永遠亭でも見たなぁ……」
「えっ?」
「巫月と緋月が、カードゲームみたいにして遊んでましたよ。絵から属性とか連想して、適当にルールでも決めたんじゃあないですか?手描きっぽい絵で如何にも手作りっぽい感じだったんで、『おぉー、自分達で遊びを開発してやがる……』って、ほのぼのしてたんですけどねぇ。まさか異変だったとは……」
「因みに、そのカードには何の絵が?」
「んー、俺が見たやつだと確か……チルノのカード、ハートマークのカード……あと陰陽玉だったかなぁ。赤い月みたいなカードもありましたよ。あと、丸底フラスコ、兎の足のキーホルダーだったかな?」
兎の足のキーホルダー。あの絵を見た瞬間、酷くノスタルジックな気持ちになった。兎の足、幸運のお守り。人間だった頃に流行っていた不良漫画で、たまに見掛ける事があった。
単車のキーには兎の足のキーホルダーを付けて、事故避けのまじないだとか、そんな表現をしていたことを覚えている。
「……行きましょう、永遠亭」
「えっ?」
「これは間違いなく異変です。もしそれらのカードから魔力を感じられたなら、異変の産物という事で押収します。子供達がただの紙で作ったのであれば問題はありません。ただ私は以前、赤い月のようなカードを見た事があります。その時は確かチルノが使っていました。ですので少なくともそれは異変の産物です」
「…………ふむ。異変の産物を子供ん所に置いておくワケにもいかないし……仕方ないですね。そんじゃ、スキマで行っちまいますか」
「あ。その手がありましたね。でしたら後で山までスキマを繋げてくださいません?」
「良いですよ。無駄は省いた方がいい」
「フフ、そうですね。ところで、それぞれのカードには幾つかの系統があるのはご存知ですか?」
「系統?……いいや、知らないですね。カード自体、これが初見なんで」
「でしたら移動がてら説明させて頂きます」
一先ずスキマを閉じて、説明を受ける事にした。俺はこのカードについて、何も知らなさすぎる。
咲夜さんが言うには、カードの系統は凡そ4種類存在するらしい。
まず「使用タイプ」。使うと相手を攻撃したり、弾幕を消してくれるらしい。チルノが使ったという赤い月のカードは、大きな月を出して、咲夜さんの弾幕を掻き消しつつ攻撃もしてきたという。そして咲夜さんは、打ち出の小槌のカードを持っている。見せてもらったが、針妙丸の魔力が込められているように感じる。因みにこれは弾幕をお金に変換する効果があるようだ。……何故?
更にこの「使用タイプ」には所謂クールタイムが存在するとのこと。一度使ったら、一定時間は間を設けないと再び使用できないそうだ。
次に「装備タイプ」。この系統のカードはこれを使うと決めておけば装備した事になって、何らかの効果を発揮してくれるそうだ。しかし、咲夜さんもこのタイプは噂でしか知らない為、事実は見てから判断した方が良さそうだ。
そして「能力タイプ」。これは、割とそのままの意味らしい。装備タイプと違い、持っているだけで効果を発揮してくれるそうだ。つまり多ければ多いほど多くの効果を得られる。上限は不明。
最後に「即効タイプ」。そこら辺の向日葵妖精が持っている事が多く、倒すとドロップするらしい。まるでゲームだ。
主に落とすのは、大きく緑色の星が描かれている
「スペルのカード」。これは次にまた同じスペルが使えるようになるまでのクールタイムを、なんと、ゼロにできるらしい。これをゲットできれば、その枚数分だけ強力なスペルをガンガン使えるのだ。
次に落とすのがハートマークの「命のカード」。怪我がすぐ治るとか。やる気も上がると咲夜さんは言うが、それだけを聞くと違法薬物のような何かに聞こえてしまうから不思議なものだ。
また、それぞれには下位互換的なカードも一種類ずつ「欠片」として存在している。
尚、このカードは割と流通しているものらしく、系統の呼び方なんかは共通しているようだ。そしてその呼び方の出処、カードの出処、製造方法なども全く以て不明。カードを持っている者すらそれらは知らず、ルールもただの噂として知っているそう。噂と言っておけばいいだろ感が否めない。
「その中で言ったら、姫からもらったこのカード……俺のカードは使用タイプ……なんですかね?」
「そうでしょうね。一度、使ってみては?」
「ですね。念じれば使えるのかな────」
その瞬間、全方位に爆発的な稲妻が迸った。
咲夜さんは光が溢れた瞬間に時間を止めたようで何とか回避したが、全ては避けきれなかったらしく身体の一部が感電し、痺れてしまったようだ。
「うわっ、だ、大丈夫ですかっ?」
「ええ、大丈夫です。中々のパワーでした。ただ、喰らった感じだと攻撃力というより貫通力に優れている、という印象ですかね。普段よりはダメージも控えめですし」
「味方にも効果アリとかちょっとこれ危険ですね。使わんとこ。……咲夜さん、俺のカード使います?」
「え……良いんですか?ですがそれじゃあ、あなたのカードが0枚に……」
「娘達から貰えるんなら、それを使いますよ」
「ああ……それもそうですね。分かりました、有難く使わせて頂きます」
咲夜さんにカードを渡し再び永遠亭へのスキマを開く。
そこで娘達と一時的に合流、簡単にワケを話して複数枚のカードの入手に成功した。
入手した方法については、寺子屋帰りに三毛猫の擬人化のような謎妖怪に、安値で売り付けられたと話していた。見るからに雌らしい。もし雄だったらレア過ぎて大騒ぎしていたところだし、そんな奴が愛娘に近寄ってきたならキレていたと思うが……。
「おねーちゃん、兎のカードは?」
「あっ、そーだったね。なんかレアっぽいカードもあるよ、輪郭がボヤけた吸血鬼兎のカード!薄紫の髪色だし、これ完全に私だよね、エスカルゴ!」
「何だ、こりゃ?……巫月っぽい絵だし、巫月っぽい力を感じるが……」
「だよね?だから即決で買ったよ!」
「……今後はもう買うなよ?一応念の為、永琳先生や鈴仙達にも言っといてくれ」
「「はーいっ!」」
そして、永遠亭を出るなり妖怪の山へとスキマを繋げる。今回は麓から順に、目を凝らして気配にも気を配りながら捜索する事にしよう。
「ところで咲夜さんは何のカードを?」
「私は、『鬼傑組長の脅嚇』と『弱肉強食の理』をチルノから入手しました。どうやら、吉弔八千慧と驪駒早鬼の能力らしいですね。妖精などから奪えるお金が増え、また、私の攻撃力が底上げされているように感じます」
「ほへぇ……」
「そこに旦那様のカードを入手ですから、もう私、無敵ですね♪」
「だと良いんですけど……」
「ふふっ……」
するとそこに、三毛猫の擬人化っぽい妖怪少女がフワフワと飛びながら俺達の方へやってきた。早速カードの売人のお出ましらしい。
咲夜
初期装備:弱肉強食の理、鬼傑組長の脅嚇、落雷のカード(これだけ装備できてない)
エスカルゴ
初期装備(装備できてない):アイスフェアリー、命のカード、陰陽玉、狂気の月、死穢回避の薬、幸運うさぎの足、幻のカード
ゲーム上の残機をここで「やる気」と表現したのは妖精大戦争から来てます。
「命のカード」なので、怪我も治るとしました。
ゲームだから残機って表現できるけど本作だと残機なんて無いみたいなもんですし。
スペルのカードってヤツはちょっと悩みました。
エスカルゴの「落雷のカード」の火力は早苗のボム程度の火力です。高めですね。でもクールタイムが結構長いのが欠点です。クラウンピースの「狂気の月」くらい長いくらいのイメージです。
巫月の「幻のカード」は、ゲットしたら被弾を一度無かった事にする(幻覚だった事にしてくれる)、
「即効タイプ」ですね。ゲームなら、実質残機+1みたいなものですけど。
巫月が本来の用途で使おうとしていなかったので、カードを手にしても消えませんでした。
香霖堂9話によると、カードの話は「一部の妖怪の間で噂になっているみたい」との事でした。なのでわかさぎ姫がカードを拾ったという導入です。
しかし、「拾った」「話し合いで譲ってもらった」だとある不都合が発生しますね。