※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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陰陽玉の継承者

 エスカルゴと咲夜がキャンプを始めた頃、博麗の巫女こと霊夢は、霊愛の目的でもある山如を倒し、彼女が入口を守っていた妖怪の山にある巨大坑道、虹龍洞の中に侵入していた。

 青と白、赤と白、緑と白などの陰陽玉に襲われ、人魂のような幽霊のような浮遊体に襲われ、やがて視界が赤くなってきた頃……「それ」は現れた。

 

「一体、何処まで続いてるの?この洞窟……。まさかこんなにも深いだなんて、あんな小さい入口からは想像も付かなかったわ」

 

「そこの人間!止まりなさーいっ!これ以上潜ると酸欠で死ぬ……あら、人間じゃなかったのね。人間に翼なんて無いものね」

 

「誰ッ!?」

 

 すると霊夢の前に、頭の上に球体を乗せ、七色の勾玉で自身を装飾し尽くした、派手な服装の少女が現れた。見るからに人間ではなさそうだ、と霊夢は即時判断した。

 

「私は玉造(たまつくり)魅須丸(みすまる)、あなたの陰陽玉の製作者です」

 

「あ、そうなんだ、そりゃどうも。いっつも世話になってるわ」

 

「こちらこそありがとう。でもそれも今日で終わりだから悲しいですね」

 

「何が?」

 

「あなたがあなたでなくなってしまったから」

 

「?」

 

「一目あなたを見てビックリしたわ。それはもう、目玉が飛び出してしまいそうな程よ」

 

「何言ってんの?」

 

「そう……噂は本当だったのね。博麗の巫女は、既に人間ではなくなっていた……。なまじこんな所で活動しているからと己の目で確かめるのを怠っていた。これは私の落ち度ね」

 

「!?……何の話よ!?」

 

「君はもう、その陰陽玉の継承者ではないという話ですよ。博麗霊夢くん」

 

「は……はぁっ!?なんでよ、どうして!?」

 

 継承者ではない。つまりは、陰陽玉の真価を発揮できなくなってしまうという意味である。霊夢は、その戦力を一部、こんなにも唐突に失ったのだ。

 

「『この陰陽玉の継承者は博麗の血筋の者、ただし人間に限る』……当然ですね、その御神体のご利益は妖怪退治なのですから。妖怪退治の道具をどうして妖怪が使いこなせるというのでしょう?そんな訳はありませんね」

 

「ご利益が妖怪退治って……やっぱり、そうなのっ?本気、なの?」

 

「ふふっ……本気も何も、製作者(わたし)が言う事に間違いはありません。全て事実です。継承者本人が、それを知らなかったというのにも軽く驚きましたが……」

 

「ッ……」

 

「しかし博麗の巫女が人間でなくなったという噂が本当なのであれば、他の噂も真実かもしれない……。これは由々しき事態ですね」

 

「ッ!?」

 

「いや、念の為に本人に確認しておきましょう……。ところで博麗霊夢くん、君の血筋は途絶えたという噂がありますが、それは本当ですか?」

 

「何ですって?…………こちとら、既に3人の子供をこさえてるわよ。身近な家庭では一番賑やかな家庭ですけど、何か?途絶えるどころか、繁栄しまくりだけど?」

 

「しかし人間ではないのでしょう?それなら血筋は途絶えたも同然。その陰陽玉の継承者は、未来永劫出現しなくなった。……寂しいものですねぇ、自分の道具が誰にも使われなくなるというのは……」

 

「勝手に私を継承者から外しておいて、勝手に落胆してるんじゃないわよ!それに────」

 

「いえいえ、意図して外したわけじゃないのです。私はこれまで、博麗の巫女が人間ではなくなった、という事実を知らずに居ました。ただの噂として、そう、話半分として認識していたからです。しかしこうしてあなたは私の目の前に現れた。博麗の巫女として。陰陽玉の継承者として。しかしそのせいで私は認識してしまったのです。陰陽玉の現継承者は人間ではなくなったのだ、と」

 

「でもあんたが外した事に変わりないでしょ!」

 

「変わりありますよ。人間と私が認識するか否かで継承者か非継承者かを識別するのは、その陰陽玉に施した、言わばシステムです。完成している以上は私にも手が付けられない。私に認識された時点で、あなたはもう、博麗の巫女であっても私の陰陽玉の継承者ではなくなったのです。これは私が外したのではなく、陰陽玉があなたを外したのです(・・・・・・・・・・・・・・)」

 

「じゃあもう、陰陽玉についてはそれでいい!でも私はあんたを倒す!!」

 

「いいでしょう!最後の継承者は華々しく美しく……やはり私が殺してあげましょう!」

 

「あんたは私を怒らせた!博麗の血筋は途絶えたも同然?勝手な事を言うな!私達の子を……あの子達の存在を、無かった事にするなっっ!!」

 

「やれやれ……。男に誑かされ、安易に人間をやめたという堕ちた巫女の考えは、理解できかねますね。ですが────」

 

 カラフルで高密度な陰陽玉の弾幕を展開し始める魅須丸。霊夢もそれに対応して弾幕を展開するも、明らかに普段より、さっき戦った時よりも、密度は薄くなっていた。陰陽玉という戦力を奪われた事が早速効いてきているのだ。

 霊夢の頬に冷や汗が伝う。今回ばかりは相当苦戦するに違いない。帰ったら修行し直しだろう……そう考えていると────。

 

「お母さーーーんっっ!!」

 

「……今、子供の声が聞こえたような?」

 

「まさかッ……なんで?」

 

 後方から幼い声が反響して聞こえてきた。それを聞くなり、魅須丸も霊夢も弾幕を消して、声の主を待ち受ける。

 やって来たのは霊夢の娘、博麗霊愛。人間霊夢とエスカルゴの間に生まれた、人間の血が極めて強い半妖の娘である。

 

「やっと、見付けた……お母さん……!」

 

「あんた、何でこんな所に……?確か、ここの入口は駒草山如ってヤツが守ってたはず。危険なんだからあんたは帰りなさい!」

 

「守ってたけど倒してきたよ。あと、霊魔がカードこっそり集めてたみたいで仕方なく没収してきたんだけど……」

 

「何ですって、人見知りの霊魔がカードを?そう……少しは成長したのね……じゃなくて!知らなかった、そんなの……一体どこに隠していたのよ……」

 

「枕の下。あんなとこ誰も見ないからね、隠すなら結構イイ場所だよね。しかも霊魔はほぼ常に布団に居るし、本人との距離が近いせいでカードの気配が霊魔の気配に隠れてたの」

 

「そういう事か……」

 

「因みに4枚だよ」

 

「4枚ッ!?あの子、どれだけカードを……」

 

「……おおっ……!」

 

「「!?」」

 

 霊愛を目に留めた魅須丸は、喜色を露わにして、口元に手を当てている。その様子がどこか不気味で霊夢も霊愛も警戒を強めたが……。

 

「居るじゃありませんか!人間の子!!やはり噂はアテにならないようね!」

 

「あー?お母さん、こいつ何言ってんの?」

 

「ええそうよ魅須丸。この子は人間の血を引いてる子。人間の私と吸血鬼の男の間に生まれたハーフ。ま、ハーフだから陰陽玉判定では論外なんでしょうけど────」

 

「合格ッ!!『人間』ですッ!!」

 

「あら。よかったわね霊愛、今は人間だから陰陽玉使えるみたいよ」

 

「何の話してんの?」

 

「私の陰陽玉を、今ここであんたが受け継ぐの」

 

「え……?」

 

「ッッ……早く受け取っ……受け取り、なさい……!」

 

「お母さん!?」

 

 袖から陰陽玉を取り出す霊夢。しかしその手は、陰陽玉に弾かれている為にボロボロになっていく。霊愛はビビりながらもそれに手を伸ばすが、彼女が陰陽玉に触れても何も起こらなかった。

 

「半妖とは言っても常に妖怪要素がある訳ではない様子!ズバリ人間です!」

 

「……確かに、普段は特別強い再生力も無いし、目も耳も普通の人間よりかは良いってだけだけど…………直球で言われるとなんかムカつく……」

 

「さぁ!後は試験です!陰陽玉の継承者に相応しい器かどうか、弾幕を通して見定めてあげましょう!玉符『陰陽神玉』!!」

 

 魅須丸が早速スペルカードを宣言、発動。様々なカラーバリエーションの陰陽玉が彼女の周囲をクルクル回り、一気に解き放つ。

 ここは狭い坑道だ。陰陽玉は、壁や天井、地面に当たるとバウンドし方向を変えて動きが止まるまでひたすら動き続ける。

 

「うわ、陰陽玉パラダイスじゃん!」

 

「〜〜〜〜〜ッ…………霊愛……あんたが戦うのよ……。私はまだ戦えない……」

 

「はァ!?……ッ、仕方ないなぁ、もうっ!」

 

 陰陽玉のご利益は「妖怪退治」だ。霊愛に渡す為とは言え、玉に触れた霊夢もそれにやられてしまい一時的に行動不能になっている。鬼と違い、悪魔はその影響をモロに受けてしまうので、普段より強い効果を発揮しているのだ。

 ただ霊夢は、娘の足を引っ張る事の無いようにと結界は自分で展開して、回復するまで身を守るのに徹するようだ。

 

「なんかいつもより力が出る……気がするけど……!なんかこっちの攻撃、大して効いてなくなァい!?相殺がロクにできない……!」

 

「……相手は神。霊力による攻撃が効きにくいのは、仕方ないわ。でもまぁ……陰陽玉の試運転の相手には丁度いい相手なんじゃない?どうせ魅須丸も本気は出さないだろうし」

 

「フザケ…………はぁ、なんで私ってばこんなすぐにアツくなるんだろ……」

 

「フッ……そりゃアイツの遺伝子ね」

 

「ンな悪いとこまで父娘(おやこ)で似なくていーのっ!霊符

『夢想封印』!」

 

 するとどうだろう、陰陽玉の効果なのか、彼女の夢想封印は普段の倍以上の威力で放たれ、魅須丸の弾幕を一方的に掻き消し、坑道も体力もゴリゴリと削っていった。

 

「ウソ……凄い威力……」

 

「……私の夢想封印に、少しは近くなったわね。まぁ陰陽玉の効果なんでしょうけど。あと制御が下手。なんで壁に当ててんのよホーミング弾でしょうが。逆にどうやったら壁に当てられるのか知りたいわ」

 

「ッ……あーもー……!」

 

「成程、この私を相手に力押しができるほど、力はかなりのものと見えますね!ならば…………!女王珠

『虹の扉の向こうに』!!」

 

 巨大な赤い陰陽玉が全方位に放たれる。それは、その軌跡に紫、青、黄、赤、紫、青、黄……と、規則正しく陰陽玉を配置していく。巨大陰陽玉が過ぎ、それらの小型の陰陽玉は、隣のモノと交差しながらゆっくり動き出した。

 しかし霊愛はその軌道をろくに読めず、何度かは被弾し、服も汚れ少し破け掛けてきている。

 

「鬱陶しいなぁ……ッ!!もういいよ、力押しだけでぶっ倒してやるッ!!」

 

「それで私を倒せると思ったら大間違いですよ!」

 

「うるさいうるさいっ!!私が間違えるもんか!!力押しであんたを倒して、あんたより私が正しいと証明してやる!!」

 

「やめなさい霊愛!そいつは、あんたの霊力を枯渇させるつもりよ!」

 

「だとしても!力で倒さなきゃ、あいつに勝っても負けたようなものだよ!」

 

「全く、この脳筋さは本当にアイツ似ね……」

 

 そう呟きながら、霊夢は手をグッ、パッと動かし手の回復が済んだ事を確認する。再生力は高い種族だが、それでも再生慣れしていない霊夢だからこそ少し時間が掛かってしまった。

 

「『陰陽サフォケイション』!!」

 

 カラフルな陰陽玉が真っ直ぐに降ってくる。だがこれだけではなく、小さめの陰陽玉がまた全方位に放たれ、厄介な動きをする。

 動きもバラバラで、角度もアトランダム。苦戦を強いられるのは言うまでもなかった。しかし霊愛は悪い方向にばかり考えるのではなく、速度までもがバラバラ過ぎなくて良かった、と前向きに考えて、彼女のスペルに臨んでいた。

 

「お父さんも好きな『目には目を』戦法だよッ!!宝具『陰陽鬼神玉』!!」

 

 魅須丸のそれよりも巨大な陰陽玉を放ち、弾幕を次々に消していく。しかし真っ直ぐにしか進まない事で軌道が魅須丸に読まれてしまい、難なく回避。

 霊愛は続けて攻撃を仕掛ける事にした。彼女は、頭の中で「攻撃は最大の防御」の言葉を、ひたすら唱えていた。

 

「霊符『夢想封印 夢幻』!!」

 

「……ッ!成程、これは……これ程とは……。力押しをただひたすら実行しようとするあの発言、虚勢ではなさそうですね、素晴らしい。ですが惜しいです、まだまだ私を倒すには至らないようですね!良くて相殺、そして相討ち程度でしょうか」

 

「……あ〜あ。このカード使い所が分かんないな……折角だし使ってみたいんだけど。そうすれば、一応決め手になるだろーし……強化にも使えるのかな」

 

「金銭的なやり取りをしないと使えませんよ」

 

「……使えなくていいや。お父さんからのお小遣い、使い所は見極めないと」

 

「ちょっと霊愛ぁ?まるで、私からのお小遣いならテキトーに使っていいみたいな言い方ね」

 

「そもそもお母さんからお小遣いもらった事ないんですけど」

 

「…………」

 

「……ぷふッ。今代の博麗の巫女は、娘にお小遣いを与えないと。成程、成程」

 

「笑ってんじゃないわよ!霊符『夢想封印』!!」

 

「あー!お母さん、良いとこ取りしないでよッ!!もっとぶっぱなしてやる!はあああぁぁ〜〜ッ!」

 

「え、ちょっと、それはオーバーキルなのでは……」

 

 意図してか否か、2人の合わせ技により魅須丸は後方に吹き飛ばされ……呆気なく2人に白旗を上げたのだった。

 そして陰陽玉の仕組みやら、継承者として恥じぬ知識なども製作者自ら授け、しかしまだまだ未熟な霊愛の為にと、これからは魅須丸が霊愛を「加護」する事になった。

 霊愛は渋ったが、霊夢があまりにも真剣な様子で勧めてくるので、仕方なく受け入れたのである。

 

「それにしても、力量は素晴らしいものがあるッ!きっとあなたは博麗霊夢くんをも超える巫女となるでしょう!博麗霊愛くん!」

 

「「それは無い」」

 

 奇遇にも母娘で声もタイミングも揃ってしまい、ついつい顔を見合わせて笑ってしまったそっくりな母娘なのであった。




という訳で、魅須丸による霊愛強化イベでした。
まさか、虹龍洞で陰陽玉の製作者が登場するなんて思いませんでしたよ。しかも発言は魅魔様の発言と大体一致している。旧作の頃からずっと陰陽玉等の設定の根幹は変わっていなかったと見えますね。
流石は神主です。

総合的な強さは
強化前霊愛<強化後霊愛=普段霊夢<強気霊夢
ですね。
なお、強気霊夢は異変解決時の霊夢です。なので、霊愛はまだまだ今の霊夢に追い付いてませんね。
ようやく「霊愛の夢想封印が霊夢の夢想封印に近くなった」レベルです。
母は強し。

鬱陶しくなると力押しに転向する霊愛……夢幻姉妹の発狂と似た匂いがする。気が合わないようで意外と気が合いそうですね。
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