「行くぞエスカルゴ、俺の弾幕で苦しむがいい!」
「ッ……!」
蜈蚣のような色合いをした弾幕が幾つか連なり、まるで蜈蚣の毒牙を彷彿とさせる動きで、こちらを挟むように弾幕を飛ばす。
毒牙を切れば毒液が出るが、果たして、百々世の牙をどうにかしたらどんな毒液が出るだろう。俺の大好物な液体でも出てくるだろうか。
「蠱毒『カニバリスティックインセクト』!!」
「!……カーブに…………もっかいカーブ……か。ふん、これくらいならまだまだ────ぐぁッ!?」
背中に被弾。どうやら俺を通り過ぎたと思ったら背後でまたカーブを描き、また返ってくるようだ。しかもその直後の高速直線弾。カーブに目が慣れた後での直線は、普段の直線の弾幕の倍以上の効果を得られる。幸い、こちらは初見でも避けられたが、度重なるカーブ……しかも、背後でのカーブは流石に計算外だった。
「こりゃあ、面白くなりそうだな……っ」
「フン、面白がっていられるのも今のうちだぞッ!蠱毒『ケイブスウォーマー』!!」
「……発射時にのみ狙うタイプか」
真ん中に黄色、左右に緑色の弾幕をジワジワ生成しながらこちらに伸びてくる。第一波が終わると、それらの弾幕は消えていく。一回一回消えるのは、中々に面白いシステムだ。
しかしながら、こういった「発射時にのみ狙う」というタイプには大きすぎる欠点がある。特にこの坑道のように狭い場所なら特に────。
「見破ったぜそのスペル!これでどうだ!」
「ッ!?消えた……!だが、俺の弾幕は自動でお前を追う!どこに行こうと無駄だ…………なっ!?」
俺は百々世の真横にスキマで移動。しかも坑道の壁にもたれ掛かっている。当然だが弾幕はこちらに伸びてくる。しかし場所が狭くすぐに弾幕の生成の限界を迎え、第三波は一瞬で、且つ僅かな弾幕しか生み出せずに終わった。その密度は雑魚妖精の如く薄いものだった。
後は別にスキマを使わずとも吸血鬼の高速移動で反対側へ行き、次の発射の時間まで、のんびりするだけだ。
「ヘイヘイヘーイ、こっちだよー」
「くそッ、舐めやがって!」
「そういう弾幕は見慣れてる。ホーミングよりは、楽な方なもんでね」
「チィッ……!ならこれはどうだッ!?蠱毒『スカイペンドラ』!!」
「っ……ぎゃあああっ!?へにょりの極みッッ!!」
これは酷い。酷すぎる。へにょりを苦手とする俺みたいな奴ならすぐに被弾するだろう。
水色の大量のへにょりが、読みにくい軌道を描き沢山飛んでくる。やはりその動きは読めない。腕、頭、足元……もう既に沢山掠りまくっている。そして三つセットとなった黄色の弾幕まで飛んでくる始末である。
「『へにょり』言うな!ダサい!」
「こうなりゃあボム連打しかねぇなぁ!?虹龍洞をぶっ壊す勢いで……雷武器『雷砲』ッ!!」
「ッ!?大砲だと!?」
「いっくぜー!ぶっぱなす!!サンダーッ!!」
「ま、眩しいっ…………」
放つ度にドオンドオンと爆音を響かせながら眩いばかりの光を放つ。爆風で弾幕を掻き消しながら、百々世にも少しずつではあるがダメージを与える。しかし流石に目への刺激が強すぎたか、回避できず連続して被弾するようになってきた。
蜈蚣は目が悪いとは聞き及んでいたが、もしや、光による目への刺激に弱いのではなかろうか。
「クッソー、もっと距離を……!採掘『積もり続けるマインダイブ』!!」
「!!」
鉱石の破片のような、赤い弾幕がパラパラ降ってくる。やがてそれらは速度を落としたかと思えば、なんと三分割して再び降ってくるではないか。
単純に密度が三倍になるのだ。しかもその背後に更に分割前の弾幕が控えているのが地獄に思える。分割前の弾幕さえも徐々に密度を増やしてくる……。これを弾幕地獄と言わずして何と表現したものか。
「地獄には地獄を────『
今回はお空のカードのようなバージョンにした。圧倒的火力で弾幕を消していき、中途半端に距離をとった百々世にもダメージを与える。
チリチリと焼かれて、さぞ熱くて暑い事だろう。
「もっと……!」
「?」
「もっと弾幕を撃たせろおおおおおおっ!!喰らえエスカルゴ、採掘『マインブラスト』ッッ!!!」
「マイクラならぬマイブラ!?……ん…………薄い?……いや違うッ!!」
パッパッパッ、とほんの僅かな数の弾幕を放った百々世。雑魚妖精以下の密度だ。しかしそれに少し違和感を覚えた俺はそれらを警戒する。
すると、地面や壁に設置されたその黄色の弾幕は光を纏い、そして爆弾のように弾けた。その後は、中小様々なサイズに細かく分割して全方位に散る。
危なかった。あとほんの少しでも回避が遅れれば爆発そのものに巻き込まれていた。
「ちっ、勘の良い奴め」
「伊達に修羅場を潜ってないさ」
霊夢なら一瞬でも「密度薄い?」などと思わずに回避するだろうから、俺なんてまだまだだ。ほんの一瞬だろうと油断してはいけない。それが、霊夢に少しでも近付き、幻想郷にて俺が二番目になる為の絶対遵守事項だ。
「
「くくくっ、また被弾したぞ?どっちが先にダウンするかな!?」
「そりゃどう考えても百々世だろーよ。絶技『天翔雷霆零槍』ッ!!」
「ッ!投げ槍か!」
「当たらずに居られるかァ!?オラァッ!!」
「はぁ!?」
投げる瞬間に坑道ギリギリのサイズにまで太く、大きくさせる。だが坑道に当たるまでにはしない。そこまでするとただの不可能弾幕だ。
一方の百々世は、槍が通り過ぎる瞬間に坑道の壁スレスレにまで身を寄せて、槍をどうにか回避したようだ。流石は蜈蚣だ、狭い場所での回避もかなり上手いらしい。
「あ……っぶねぇ!殺す気かー!」
「殺さないさ、お前を食ってやるまではよォ!」
「あんだとッ!?俺を!?食うだって!?くくっ、いいぞ!ならば俺が勝ったら、エスカルゴ!お前を食ってやる!!英雄とやらの肉を食ってみたい!」
「物理的にか!まぁいいぜ、食えるもんなら食ってみやがれ!ほぉら、もう一丁ッ!!」
「うわわっ!……しかしもう遅い!これで仕留める!採掘『妖怪達のシールドメソッド』ッ!!」
「ッ!?」
百々世を中心に、五本のレーザーが伸びてくる。その先端には、巨大な光球が付いていて、定期的に爆発しては繰り返し細かい弾幕を送ってくる。
しかもその爆発のスパンは、少しずつ、けれども確かに少しずつ短くなってきている。最終的には、こちらに休む暇も与えぬ程の密度になりそうだ。
繰り返し爆発なんて、コマンドブロックでTNTを出し続けるように設定したかのようだ。
「これ以上はダメだって俺の勘が言ってやがる……。最近アテになるし、今回もアテにしてみっか!」
「ッ!?」
「虹龍洞もってくれよ!!弾幕密度三倍だァッ!!爆撃『失われた
「こ、これは……ヤバいんじゃ────ッ!?うっ、うわあああああああああああぁぁぁっ…………」
◆
「ったく……好き勝手暴れやがって、崩落寸前だよ。まさか俺が気絶するなんて……お前とは能力の相性が悪いんだろうなぁ。身体中が痛くて適わん」
「気絶から目覚めてすぐに採掘し始めて、身体中が痛いとか言ったって……説得力の欠片もねェわ」
「いいからさっさと帰れよ盗掘者、こっちは仕事で忙しいんだ」
「だァから、俺は盗掘者じゃあねぇっつーのよォ。俺が盗掘者の調査に来てんだからよ。メグちゃんに聞いてみろよ、知り合いなんだろ?」
「メグちゃん?……龍か、アイツとは親友、かな?」
「ケッ」
勝負としては一応俺の勝ち。百々世は俺の弾幕や崩れ落ちてきた天井の破片に埋もれて、僅かな時間だが気絶してしまった。
慌てて彼女を掘り起こすと、彼女は自分の負けを認め、しかし弾幕を撃ち足りないとブツブツ不満を漏らしながら、採掘を再開した。
「それにしても…………ふーん、ピッケルとシャベルなんて使ってるんだなぁ。しかも金の……。耐久値、32くらいしか無さそう」
「何の話だ?……まぁでも、これちょっと古くなってきてるんだよなー。耐久性は……そこそこかもな」
「新しいピッケル、作ったげよーか?」
「っ!……いいのか?」
「おう。悪用はすんなよな?」
「悪用なんてしないさ、採掘の為の道具なんだし。攻撃にもたまに使うかもだがな」
「オッケー、そういう事なら。……えーと……創造の亜種、再構築魔法で……」
俺もアダマスの創造ができるようになったので、ゼウスから得たアダマスの鎌を、ピッケルに再構築してやった。
魔法金属によるピッケルだなんて、マイクラならチート系MOD*1でしか出て来なさそうなモノだ。しかし創造魔法を覚えればMODレベルの
「ほら、これでどーよ。シャベルも創る?」
「いいのかっ?」
「欲しいならあげるよ、別に減るもんじゃ……いや、減るけど大して減らねーし」
「じゃあ欲しい!創ってくれ!」
「はいはい…………アダマスのスコップの完成っと。うーむ、もはや最強武器なのでは?ダイヤ剣よりも攻撃力が高そうなスコップだな……。何かMODでも導入したのかな?」
「ブツブツ何言ってんだ?」
「あ、いや、こっちの話だよ。んで、どーよ、使い心地は?感想聞かせてよ」
「んー、なんか凄く硬いし……鋭く掘れるぞ!これは有難いよ、ありがとな!お前、良い奴だな!」
「そ、そぉか?……へへっ、ストレートに言われっとやっぱ照れんね……へへ……」
「礼代わりに良い事を教えてやるよ。盗掘者の調査するんなら、俺の部下に当たりな。俺が監督だからここで作業してるヤツら全員俺の部下だ。だから、百々世の知り合いって言えば、お前の言う事もすぐ聞いてくれるさ」
「いや、だから、盗掘者はお前らなんだってばさ。話聞いてた?聞いてなかったな?」
「はー?魅須丸が勝手に所有者だの何だの言ってるだけだろ?」
「うーん、まぁいいや。盗掘者の特定はできたし、俺の仕事は終わりだ。後は魅須丸とメグちゃんや、百々世で話し合ってくれよな。面倒事とかは、俺の仕事じゃあないんでね。……とりあえず帰るよ」
「おう、またなー!」
「……」
まさか、彼女から「またな」の言葉が出るとは。先の弾幕ごっこにおいては不満こそ与えてしまったものの、そこまでガッツリ悪印象だったのではないらしい。それなら良かった。俺も安心できる。
そしてスキマを開き虹龍洞から直接外に出ようと思った直後、トランシーバーが何者からかの連絡を受信する。
『エスカルゴ、今すぐ応答せよ。繰り返す、今すぐ応答せよ』
「はいはいもしもし、どったのレミリア?」
『来たわよ。奴が』
「……マジ?早鬼目当て?いや、俺か?」
『当たり。早く撃退して頂戴。敵は奴一人だけど、こういう時の対応マニュアルは美鈴を下げあなたに対応してもらうように決めたでしょ』
「うぃっす。1分以内にそっち行く」
『了解。美鈴もそろそろ下げるわよ』
「ラジャー」
トランシーバーを仕舞い、紅魔館へと向かおうとするものの、ふとある事を思い付く。そして新たな得物でひたすらに虹龍洞でブランチマイニングする百々世に声を掛けてみる事にした。
「あー……採掘再開したとこ悪いんだけど、百々世、ちょっといいか?」
「んー?何だ?」
「近くに、クソヤロウが現れたって連絡が入った。そいつの撃退、手伝ってくれない?」
「めんどくさっ!何で俺に言うんだよ?」
「きっと楽しいぜ?なんたって、百々世の大好物のアイツの子供だからな」
「ッ!?」
「俺と来いよ。採掘よりも、弾幕ごっこよりも……。百々世を楽しませてやるよ」
「…………ノッた!案内しろエスカルゴ!」
「ヘッ、そう来なくっちゃあな」
「うわっ!?山の中なのに目の前に湖が…………何だこれっ!?」
「スキマ……と俺は呼んでる。さ、これを通るんだ。くれぐれも円の淵に触れるなよ?感電するぜ」
「う……わ、分かったよ……」
こうして俺は、百々世を連れて紅魔館に向かったのであった。そして紅魔館の門前では、俺の嫌いな
「奴」が仁王立ちで俺を待ち構えていたのである。