「はい到着ゥ」
到着した世界は、とてつもなく真っ白で、冷たい風が吹いている場所だった。死ぬ程では無いが酷く冷たい。これは、真冬のシベリアよりも寒そうだ。
「さっっっむッ!!何よこの寒さはぁ……っ……あ、涙が凍っ…………」
「モルモー!?」
「ご主じ……さ…………」
「モルモー!!」
「なっ!?お前らどうやっ────」
到着直後、モルモーは足元からビキビキと凍ってしまう。しかし顔まで覆われかけた所でモルモーは時間を止め、氷の進行をどうにか食い止めた。
「何よこの寒さ……エゲツないわ……!本当に何よ、この世界は!?」
「ここ、多分だけど八寒地獄の最下層から二番目……
『
「はぁ!?地獄ですって!?」
「凍魔はどれかの地獄に封印されていた。だから、地獄の出入口は分かるんだろう。……そうか、俺にはへカーティアの……地獄そのものからのご加護があるみたいなモンだから凍らないんだな……」
「う〜……ズルい……」
「でもありがとうな。時間停止が出来れば、あとはどうにでもなる!」
「早く熱々のお風呂に入りたいから……早くアイツを倒して、私を紅魔館まで連れてって……」
「……分かった。解除すんなよ、モルモー?」
「分かってるわ、安心して」
「あと10秒……、寒さに耐えてくれ。10秒で帰るぞ。咲夜さんにもモルモーにも熱湯ブッ掛けてやるよ」
「オッケーご主人様、モルモーちゃん耐える!」
凍魔はこちらを見て驚いていたらしく、その顔で固まっていた。そりゃ驚くというものだが、やはりそのままの顔で固まるというのはどうも面白い。
「チルノの気配、前回よりも少し強くなってるな?よく分からんがこりゃ有難いや。さっさと出てこいチルノ……!イクぜ…………『死者葬送』ッ!!」
呼吸を整え、フッと短く息を吐くのと同時に剣を振り下ろし凍魔を唐竹割りにしてやる。すると時が止まった中でも彼女の……チルノの魂のような何かが凍魔の肉体から飛び出し、青白い光として、地面にゆっくり着陸する。
すると眩い光を放ちながら少女の形を取ったかと思うとチルノになり、そして彼女は地面に横たわり眠っていた。凍魔は変わらず仰天した表情のままで硬直している。
「ご主人様〜、あと5秒よー」
「フン、ヨユーそうじゃあねぇか。ま、いいけど」
凍魔の首を刎ね、ゴトンと落ちた彼女の髪を掴み敵の大将を仕留めたと喜ぶ武士のように掲げる。
すると俺が持った凍魔の首、胴体はダイヤモンドダストのようにキラキラと輝く氷晶となって、天に舞っていった。
首から滴る血を飲みたかったのだが、消えたなら仕方ない。コイツの血を飲むのは諦めよう。
「……ん?咲夜さんが居ねェ!?」
「そういえば、凍魔とやらしか居なかったわね」
凍魔を殺した後で異変に気付いた。コレクションならば咲夜さんを手元に置いておくはずだと、俺はそう思っていた。しかし現実はどうだ。凍魔の傍に咲夜さんを置いていない。
つまり咲夜さんは別のどこかに居るという事だ。途端に冷や汗がブワッと溢れた。どうして、凍魔の傍に咲夜さんも居ると思い込んでいたのだろうか。そんなの先入観に過ぎないのに。
「どーすんのよ?10秒過ぎてるわよ」
「ッ……んな事言ってる場合じゃ……。モルモーだけ先に帰らせるよ、時止め解除して」
「んー」
「モルモー?」
「ていうかぁ……こんな氷すぐ砕けるんだけどね☆」
「え」
「ほいっと」
グッと拳を握ると、手元の氷がバキンと砕けて、素肌が露出した。手が砕けたのではなく手の表面の氷だけが砕けたのだ。
それに驚いていると、チラッと可愛い舌を覗かせウインクしたモルモー。可愛すぎてムカついた。
「だ……大丈夫、だったのか……」
「そっ☆……いやまぁ、滅茶苦茶寒いのは変わりないけどね……へくちっ!」
「……」
「心配してくれてありがとっ!割と本気で心配してくれたのかな?」
「っせーな……」
「でもホントにありがと。……嬉しかった……よ?」
「……可愛いんだよチクショウ……」
「そりゃもう、モルモーちゃんは
「ふー……心配した俺がバカだったようだ」
「ふふん、ヘカテー様の加護?とやらがないと無事じゃないご主人様とは格が違うのよん♪……つまり、私はあなたより上ってワケ♡」
「神代の吸血鬼の強さは折り紙付きさ、それくらい知ってる。でも俺とモルモーなら……な?相性がもう最高だよね、ある意味。つーワケで、俺とお前なら俺が上だ。OK?」
「……」
「Do you understand?」
「ギリシャ語しか分かりませーーーん!!!!」
「なら日本語で言うんじゃあねぇ!!」
「何だっていいわよ、もー!いつか私の方が上って思い知らせてやるんだからぁ!」
「流石だぞっ!!負けフラグの立て方を、バッチリわかっているんだな!」
「ウッザ!?ご主人様として有り得ない発言よ!!てか、解釈違い!」
「解釈違いは受け付けませーん、俺こそがオンリーワン、俺こそが原典なので第三者による解釈違いもクソもありませーん!」
「ムッカ〜ッ!モルモーちゃんに着火したわね!?こうなったらもう協力してやーんない!ふーんだ!時間停止も解除するもーん!」
「なっ!?
「ラブラブエッチしてあげよーと思ったけど、もうそれもヤッてあげませーんっ!べーっ!」
「!?」
あっかんべー、と子供のように喚くモルモーは、どこか幼く、そして少し可愛らしく見えてしまう。いや、少しどころかかなり可愛い。
こんな寒い場所でなければ、それから、こんな状況じゃないなら襲っていたかもしれない。
「つーか、咲夜さんの救出!!こんな言い争ってる場合じゃあねぇだろ!!」
「あ」
「どうせ、居場所の特定はすぐ出来るがな。凍魔を発見したやり方で咲夜さんの近くに移動すりゃあ……ほらモルモー、行くぞ!」
「はいはい!」
凍魔を殺した事により能力が解除してくれれば、それで良かった。しかしながら現実は常に非情だ。そんなに甘くはなかったようだ。
俺はモルモーの手を取り、更にチルノをおぶりすぐに「咲夜さんの近く」という位置に瞬間移動。景色は変わらない。しかし、瞬間的に強烈な暴風が真横を通り抜けただけで、特に、咲夜さんや何かが見付かる気配は無かった。
「おかしいな……母さんからの能力だから、不具合を起こすはずが無いんだが……。ちゃんと定義できてたはずだよな?何で何も無い?……」
「ご主人様、後ろ!!」
「あん?」
白銀の世界の中、徐々に小さくなっていく誰かの背中が見えた。小脇に人間大の半透明の何かを抱え全力疾走しているようだ。
その走っている人物は、金髪のツインテールだ。まさか────。
「何だありゃ!?」
「アイツが持ってんのが、凍った咲夜じゃないっ?だから能力はちゃんと発動しているのよ、アイツが速すぎて瞬時に置いていかれただけで!」
「……!そうか、移動した瞬間のあのエグい風……!アレはアイツが通り過ぎた後の風だったのか!」
畜生界と地獄の間だとか、畜生界のある場所には暴風区域があるので、紅蓮地獄だろうとそんなモンなんだろうと思っていた。
けれども、そんな事はなかったらしい。その風がアイツ……賽鬼愉于奈の移動に伴う風だったようだ。
「モルモー!」
「分かってる!」
名を呼ぶだけで察したか、モルモーは時間を停止させる。あとは白い煙を上げて走っていた愉于奈を追って、凍った咲夜さんを取り戻した。
その間、おぶっていたチルノは俺の背中に乗せるような感じでゆさゆさ揺さぶられていた。手は2本しかないので仕方ない。
「目、瞑ってるな。生きてる……よな?まさかな?」
「解除する?」
「しねェ。あの鬼も殺さなきゃいけないみたいだし時間停止させてる間に殺すよ」
「……大丈夫?一応、コイツも鬼なんでしょ?剣とか使ったら折れたりしない?鬼はとにかく頑丈らしいですよって、シャロンちゃんから聞いたけど?」
「……うん……もしかしたら折れるかもしれないな。でも魂を斬ろうとしても集中力なんてとっくの昔に雲散霧消してるしなぁ……。モルモーとの掛け合いのせいで」
「私のせいっ!?」
「あー、どうしよ、どうやって殺そうか。一応でも鬼なら腹パンじゃあ殺せねーよな。うーん……」
「モルモーちゃんの出番ね!」
「あん?どーするんだ?」
「鬼とはいえ、血は流れてるわ!なら酸素欠乏症にさせて窒息死させればいいのよ!その後、コイツの死体は火山にでも放り込めばいいじゃん?……ほら、私達が幻想郷に侵入した時にさ、噴煙を見たのよ。あの山、活火山なんでしょ?」
「……成程。天才モルモーちゃんここにあり、だな。じゃあ俺は足止めに徹するよ。モルモーは時間停止解除させて、磁力操作の魔法に徹してくれ。……あ、でも妖怪だし酸欠にならない可能性も……」
「コイツ、相当素早いみたいよ?大丈夫?」
「さっきは不意討ちみたいなもんだったから、横を通られたのに気付かなかっただけだよ。咲夜さんももう取り戻したし、焦る要素はねェ。……あーでも咲夜さんの事もさっさと復活させたいんだよな……。意識失ってるのか知らないけど動かねーし……」
「じゃ、一瞬だけコイツを足止めしたら────」
「咲夜さんを連れて紅魔館へ戻り、シャロンに預け解凍を任せて、チルノを寝かせて、また
「ちょっとぉ、それ私のセリフ〜!」
「はははっ!この俺を上回るなんて10年は早いぜ。あ、それと、モルモーは飛んでてくれ。地に足を付けてると、アイツと一緒に『足止め』されるぜ」
「?よく分からないけど……まぁ、分かったわよっ。それじゃ、解除するまで3、2……」
カウントが0に達するのと同時に時間停止は解除される。再び冷たい煙、氷の欠片などを飛ばして、愉于奈は走り出す。
「っ!?あ、あれっ!?あの女、落とした!?って誰だお前っ!?」
「はじめまして、賽の河原の鬼のお嬢さん。そしてさよーならッ!!催眠『惑星麻酔』!!」
「ぎゃあああぁぁあぁああっっ…………!?あ、足がいぎゃああぁぁああっ!!こここ焦げたァァ!!」
「後は任せたぜ、モルモー!」
「地に足を付けてると────って、そういう意味だったのね……。早く戻ってきてよね!」
「あいあい!死ぬんじゃあねぇぞ!」
「誰に言ってんのよ!バーカ!」
俺が戻るまで時を止めるな、という意味もあるが果たして伝わったのかどうか。こんな極寒の地で、俺と同じ吸血鬼であるモルモーが耐えられる時間は本当は少ないはずだ。
例えば、飛べば空気に触れる表面積が増えやすくなるので凍りやすくなる。つまりは、俺はさっさとあそこに戻らなくてはいけないのである。
「あ、ご主人様────メイド長ッ!!あと……」
「見ての通りカチコチだ、熱湯は準備したな!?」
「はい、浴場に沢山準備しておきました!それからシャワーの温度も念の為に熱湯と言える温度に!」
「よし、じゃあ浴室に運んでおくからその後の事は頼めるな!?」
「勿論です!!」
「くれぐれも割るんじゃあねぇぞ!チルノ寝かせて敵殺して、そんで戻ってくる!」
「お任せ下さいッ!行ってらっしゃいませ!」
スキマを開くなり咲夜さんを風呂場に寝かせて、シャロンに処置を任せ、自室にチルノを寝かせて、すぐさま紅蓮地獄へと戻った。モルモーに愉于奈の処理を任せたが果たして……。
◆
「キャハハハハハッ!足がボロ炭になってるぅ〜!だっさァ♡ これが封印された古の妖怪?ザッコ〜♡ざーこざーこ♡ 無駄に長生きしてるクセに、若者にボロボロにされて悔しくないの?♡」
「ぐぎぎっ……何だ、お前ええええっ!!」
「!」
「んぬおおおおおおおっ!!」
「あっぶな〜!モルモーちゃんじゃなきゃ死んでたかもね!」
拳に渾身の力を込めた愉于奈は這いつくばりつつそれをモルモーに向けて振り抜く。
すると、ゴオッと空気の塊がモルモーへ向かう。モルモーは慌てて回避し、魔法を使い地面から氷の鎖を生やし愉于奈の四肢を拘束する。
馬鹿げた力で空気の塊をも放つ手は、特に厳重に拘束を施すあたり、流石はモルモーである。
「んぎぎぎぎっ……く、くそぉっ……こっ、この私が壊せない鎖なんてえええええええ!!くぅぅおおおおおおおあああああああっっっ!!!」
「チョロいなぁ。昔の巫女と妖怪の賢者?ってのはこんな奴にも勝てなかったの?私の錬金魔法で一発拘束だわ♡」
「れん、きん……?」
「魔力だけでモノを創っちゃうのが創造魔法でぇ、魔力を介してモノを再構成するのが錬金魔法!その主成分は……この場合は氷の地面なワケだから、実は創造魔法より魔力の消費を抑えられるのよね〜♡」
「……!?」
「わかるぅ?本気なんて出さなくても、この通り!あなたを拘束できちゃいまーす!」
「こッ、このぉぉっ……!!」
「あなたさぁ、地獄に封印されてた妖怪だか何だか知らないけど…………正直、ガッカリしかないわね。モルモーちゃんからすれば、雑魚同然よん♡」
「っっ…………この私が……こんなガキにィ…………!」
「……ガキ?それあんたじゃん」
「!?」
「ま、モルモーちゃん何なら数万年も生きちゃってますけどぉ?最強最カワ吸血鬼ですしぃ?子供って勘違いされちゃうのも仕方ないな〜♡……とは思ったけどさ………………雑魚にそう言われんのがシンプルに腹立つのよ。あんた、ご主人様が戻る前に殺すわ」
「なっ!?お、お願いです、命だけは!後生です!あの女を連れて行こうとしたのは、凍魔みたいに、
「興味な〜い。私、咲夜に対しては特に思い入れも無いから。そんな言い訳するなら、モルモーちゃんじゃなくてご主人様に言わないと♡」
「わかっ……わかった!だったら、ご主人様とやらと話をさせてくださいっ!お願いします!!」
「ギリシャ語の命乞いしか受け入れませぇ〜〜ん♡雑魚は雑魚らしく、一瞬で死んじゃえっ♡」
「ひっ…………な、なに、その、氷塊はぁ……ああっ、ドンドン大きく…………ま、まさかそれをっ……私の、身体にいいいいやああああああああっっ────」
上空から愉于奈を見下ろすモルモー。魔力だけを地面に流し込み、創造ならぬ錬金をする。そして、愉于奈の目の前で氷塊をジワジワ大きくさせていき遂には、それを軽く蹴飛ばす。靴でコツンと軽く、しかし真っ直ぐ転がるように、と角度も強さも調節された完璧な蹴りは、巨大な氷塊を前へ進ませた。
そして愉于奈の命乞いも、涙も、幼く見える身体なんかも全て、氷の大地に広がる一つの大きな赤いシミにしてしまったのであった。
◆
「モルモー、酸欠状態はどう────えっ」
「んふっ♡……ご主人様、おっそぉい♡」
俺が紅蓮地獄に戻ると、そこには巨大な真っ赤な水溜まりがあり、その淵にモルモーはしゃがんで、ペロペロと指に血をつけては何度も舐めていた。
どうやらあれを見るに賽鬼愉于奈は死んだらしくモルモーは退屈を凌いでいる最中……だったらしい。相手は「封印」という手段に巫女達が追い込まれた古の妖怪だというのに……モルモーの強さはやはり、底が見えない。
「……1分も場を離れてなかったと思うけど……」
「そーお?3分くらい紅魔館に行ってたんじゃないかな?……咲夜、どーだったの?」
「シャロンに任せるっつったろ?俺はすぐに戻ってきたんだから。……それで愉于奈は…………死んだか」
「ええ、今さっきね。最期まで哀れな雑魚だった。私をガキと罵った上、あなたに────ご主人様に命乞いさせてくれって、懇願してきたわ。ま、すぐ氷塊でぶっ潰してやったわよ」
「あー、あの一部が赤くなってる雪玉か?あれ氷塊だったのな。デッカ……」
「そうよ。私の錬金魔法でこの地面から創ったの。因みに拘束する時には氷の鎖を創ってやったわ」
「錬金……魔法?へぇ、錬金術ではない……のか?」
「創造魔法の亜種。後で教えてあげるわね」
「お。……ありがとう……」
「ご褒美はご主人様とのラブラブエッチでヨロ〜♡私の
股間に手を持っていくと、くぱっ♡と膣口を開く真似をするモルモー。こんな寒い所で、モルモーは何を言っているのだか。
しかし、そんな彼女を見て興奮してしまっている自分が居る。節操の無いクズ男め、と自分で思う。
「あーん、コイツの血も凍っちゃったぁ」
「……分かった。咲夜さんの復活を見届けてからその錬金魔法を教えてもらいたい。ヤる場所は……地下牢でもいいか。あとこれを機にモルモーに部屋を与えられるかレミリアに聞いてみる。今まで悪かった。あ、教えてもらう時も地下牢でな」
「うん、分かったわ。だけど、私の部屋は地下牢で良いわよ」
「え」
「だって部屋を持たされたら、ご飯は皆で一緒に、とか言われそうだし。世代も時代も何もかも隔てた子孫とご飯だなんて気まずいわよ。あと仕事とかもやらされそうだもの。居候みたいなモノでしょう、私は。それなら、性奴隷扱いで地下牢暮らしを満喫してた方がずっと楽だわ」
「ヒキニートかよ。てかトイレとか不便じゃん」
「別に?散歩みたいなモンでしょ」
「……。因みに、俺とのエッチは気まずくないのか?一応俺もモルモーのDNAを継いでるらしいけど」
「ご主人様は元人間、しかもレミリア経由でしょ?それなら別にイイかなーって思うわ。気分的にも、子孫とエッチしてる感じはしないしぃ?」
「ふむ……ならこれまで通りでいこう」
確かに、レミリア経由なので直径の子孫ではないというのは明白だし、気分的にもそうなりやすい。俺もそうだ。モルモーを先祖になんて見れない。
「あーでも、ベッドは欲しいわね。布団は嫌だわ、低くて寝心地悪いし」
「それくらいならどうにかするよ」
「それと手足の枷、手錠の類は要らないわ。手足が動かしにくくて気持ち悪いし。逃げるつもりなんて無いわ、だって私、ご主人様のモノだもん」
「まっ、時間停止なんてしたら咲夜さんに弦月姫、俺にまで感知されるからな。それに加えて、もしも逃げようものなら美鈴のみならず的確に弱点を突く技術のある天子も追うだろうし……うん、分かった。枷類も無くそう」
「ありがとっ!愛してるわご主人様〜♡」
「うぇっ、肌冷たッ!あーもー、くっつくな!今は抱きつくな!俺まで凍るだろーが!」
「凍らないクセに〜♡」
「だーーっ!もぉーーっ!!」
ヒンヤリ冷たいモルモーに抱きつかれて、冷たい肌で腕にスリスリと頬擦りされ、血の匂いと彼女の良い匂いを感じつつ、冷たい肌のせいで軽く鳥肌が立ちまくってしまった俺であった。
◆
「っ……あ、れ……ここは…………」
「あ。おはようございます、咲夜さん。調子はどうですか?」
「どう、とは?あら、身体の節々が痛いわ……」
「無理しないでください。咲夜さんついさっきまで凍ってたんですから」
「凍って……えっ?…………ああ……そうでしたね。夢を見ているような気分でしたが……あの、チルノに似た妖怪が私を…………?」
チルノに似ていた理由、そしてそいつらの最期を掻い摘んで話した。モルモーも咲夜さんを助ける為戦ったという事を伝えると、酷く驚いていた。
「凍っている間、意識はほぼ無かったんですか?」
「ええ。寒すぎるあまりつい眠ってしまったという感覚に近かったです。けれど外の音はぼんやりとは聞こえていたので、まさに『夢を見ていた』という感じでした。冬の山でそれをやると、きっと死んでしまうでしょうね……気を付けなければ」
「ですね。……レミリアにも咲夜さんの無事は伝えてあります。もうすぐ来ると思うので俺はこれで失礼しますね。お大事にして下さい。……本当に」
「ええ。……ありがとうございます、旦那様」
「いえ、俺なんて……」
部屋を出ると目の前にレミリアが居た。そして、彼女に何か言おうかと思い、一先ず声を掛けようとすると、俺の言葉に重ねるように彼女も口を開く。
「レミ────」
「毎回こんな風に上手くいくと思ったら大間違い。くれぐれも気を付けなさいよね」
「っ……」
「分かったの?」
「ご忠告、改めてどうも。漸く分かったよ」
「そ。ならいいのだけど。あとモルモーがあなたを呼んでたわよ」
「何でわかるんだ?」
「そりゃ、あなた……事の顛末をモルモーにも聞きに行ったからに決まってるでしょ?さっきから彼女の気配が無くなってたから、あなたが連れて行ってたなんてのはお見通しだったしね」
「そりゃそーか。……俺に時間停止が出来ればな……まぁ、それはいいや。これからも誰かに頼りながら楽しく生きていくことにするさ」
「嫌われない程度に頼りなさいね。……私にだって、頼っていいんだから。たまには頼りなさいよ。私、お姉ちゃんなのよ?」
「……そうだね、
そこでレミリアとの会話を終えた俺はモルモーの待つ地下牢へ向かい、ベッド等の願いを軽く叶えて彼女を笑顔にさせてから、錬金魔法について、軽く教えてもらった。
しかし原理や内容としては俺の「再構築魔法」と大差無かった為、とりあえず俺も彼女に合わせて、これからは、再構築魔法を錬金魔法と呼称する事に決めた。
そのまま行為に移ろうとしたが、シャロンから、チルノが起きたと告げられ一旦そちらに向かう事にした。部屋に着くと、チルノはベッドから上体のみ起こし窓から湖面が溶けつつある湖を眺めていた。
「ようチルノ」
「……エスカルゴ……」
「お目覚めかい」
「また、助けられちゃったね……。あたいじゃ、誰も助けられないのに……凄いよ……」
「……」
「大ちゃんがね……もう1人のあたい?ってヤツに、殺されちゃったの…………それで、消えて…………」
「……」
「早く……『一回休み』から復活しないかな……早く謝りたいよ……大ちゃぁん…………う、ううっ……」
「泣くな。大ちゃんだってチルノが泣くのは望んでねーだろ。……仕方ねぇよ。今のチルノが負けるならアイツの不意討ちだったんじゃあねーの?」
「……違う!違うのっ!アイツ、大ちゃんに酷い事を言ったからムカついて、真っ向から戦って、それで爪で貫かれて……大ちゃん諸共あたいもお腹を……。それで負けたの、あたいは……」
「……まぁ……さ…………アイツは昔、巫女と紫さんとが手を組んでも封印で手一杯だったらしいからよ……。だから、仕方ねーよ。今は生命力の溢れる春だし、大ちゃんもすぐに復活するよ。明日にでもね」
「でもでも、あたいが戦った時のアイツは、完全体じゃなかった!昔の状態より、ずっとずっと、弱い状態だったの!なのに勝てなかった……!!」
「……。でも、俺がアイツを倒せたのは……チルノ、お前がアイツの中で融合されまいと足掻いてたからなんだぜ?」
「そうだよ、あたい、ずっと我慢してた!頭の中も何もかもが、ドロドロに溶かされそうだったけど、それをずっと我慢してた!でもそんな我慢したって大ちゃんを守れなかったのは変わんないじゃん!!倒したって大ちゃん守れてなきゃ意味ないじゃん!エスカルゴも分かってるでしょっ!?」
「……言いたい事は分かるよ。守れなきゃ意味無い。俺もそう思うよ。だったらどうすればいい?ずっとそうやって泣き喚いているのか?」
「ッ────」
「俺はそうは思わねーかな。確かに、守りたい奴を守れなかったのは自分の力不足のせいなんだろう。でも、もしも次にこういう事があったらどうする?また弱いせいで負けたくはないだろ?それならまた鍛えるんだ。鍛えて鍛えて、ひたすら強くなるしか守りたい奴を守れる自分にはなれねーよ」
「……」
「大ちゃんが殺されたのは……俺にとってもショックだったよ。俺もあの子が大好きだし、大事だから。だからすぐにあの野郎を殺したかった。とはいえ、俺がそうしなかった理由は……分かるだろ?」
「……あたいがアイツの中に居たから……」
「そう。だから、一旦逃げるしかなかったんだよ、俺もな。そうする前にアイツが逃げたから、俺は、チルノを取り戻す為の特訓をして……今に至るんだ。分かるか、チルノ?俺もアイツに負けてるんだよ。守りたい奴らを守れなくてな。だから、次こそ守る為に強くなって戻ってきた。それがこの結果さ」
「……」
「特訓だよ、チルノ。強くなるしかないんだ」
「……うん。大ちゃんは……すぐ復活、するよね?」
「ああ。妖精は生命力の具現化だから……母さんでも復活はさせられないみたいなんだ。でも、それでももうすぐ復活はしてくれるよ。だから、安心しな。
……なっ?」
「分かった。あたい、もっと強くなるよ。アイツの中に居た時、アイツのお陰で能力の新しい使い方も思い付いたし……それの練習とかする!」
「ははっ、こりゃ皮肉だな。取り込んだ奴に能力の使い方を盗まれてら。……ま、頑張れよな。相手ならするからさ」
「今日は……いい。色々、考え事がしたいから……」
「……そうか。なら、また今度な。いつでもいいぜ、待ってるからな」
「うん。……大ちゃんの仇討ち、ありがとね」
「おう」
またなと手を振り、俺は部屋を後にする。少しは元気を取り戻してくれればいいのだが……。チルノは良い子だ、いつも明るく、元気で居て欲しい。
バトルにおいて俺が嫌いなものが2つある。
過度な戦闘力のインフレと、前章ボスが新章ボスの噛ませになる事だ。(ドラゴンボール、刃牙とかでよくあるやつ。それはそれとしてドラゴンボールも刃牙も好きだけど、過度なインフレと噛ませは割と嫌いだったりする。オリバやジャックの噛ませ具合酷くて萎えるし、悲しくて泣ける)
錬金っていう言い方にすると西洋感ありますよね。
余談ですが、ハガレンこと鋼の錬金術師の原作漫画ついこの前コンプリートしました。グリードすこ。