「ふわぁ〜ぁ……何なんだろうなぁこの雲…」
紅魔館の屋根の上に横たわりながら呟く。
ここ数日、幻想郷がおかしい。
緋色の雲が観測されるようになった。
なんとも気持ち悪い。
パチュリーと色々調べたりしているのだが、何も得られずじまい。納得がいかない。
ゴロゴロ…
「今度は雷か、忙しいこった…」
さらに、天気もおかしい。
雨が降ったり晴れたり、雪が降ったり。
本当の本当に気持ちが悪い。
安定しない天気はこうも人を不安にさせるんだな。
ゴゴゴゴゴ…
「ん?またか」
揺れはしないのだが、地響きも聞こえてくる。
最近本当に多い。“異変”かなぁ…?
…明日霊夢のとこ行くか。
次の日
「んじゃ行ってくるわ」
「うん、気を付けてね」
「おうよ」
前日の夜に出かける旨は伝えてある。
フランもレミリアも笑顔で見送ってくれた。
「よう霊夢」
玄関からではなく、みんなに習って普通に入る。
「あ、エスカルゴ。どうしたの?」
霊夢はいつも通りコタツに入っている。
「どうしたもこうしたも…。最近幻想郷がおかしいからな、色々調べてたんだが何も得られずじまいでな。何か掴んでたりするか?」
「そう、それよ!」
ビシッと指をさす霊夢。
「指さすな」
「犯人、なんとかしてとっちめたいのよねー」
モゾモゾと起き上がり、立ち上がる。
「そうだなー…って、犯人?やっぱ異変なのか」
「そう捉えるべきでしょうね」
「はーん…やっぱそーか…」
「最近地震も多いからね…」
「え?地震?地響きじゃなくてか?」
「ええ。あんたらは何ともないでしょうけど、最近、この博麗神社にだけ地震が起こるのよね〜…」
「は?おかしいだろそんなの」
全く以て意味不明だ。
地震は地盤やらプレートやらが動くんだろ?
ここだけ集中って…これもうわかんねぇな。
流石幻想郷だな、うんうん。
「ええ。だから、異常気象も地震も、犯人は同一人物だと思ってるわ。どちらも天災だしね」
「なるほど」
ゴゴゴゴゴ…
「あ、地響き」
「!来るわ!」
「地震か」
俺も霊夢も身構える。
ガタガタガタガタッ
「くっ…今まで以上におっきいわね…!」
「へー…久しぶりだなぁ」
ここまでのは東日本大震災以来か。
体感震度…6強〜7と言ったところか。
「あんた…慣れてるの?」
「ん?まぁな。外の世界は地震が多いし」
地震大国日本、舐めたらアカンで。
「へぇ…」
こうして話してるが、互いに声は震えている。
恐怖からではない。足元が激しく揺れているからだ。俺も霊夢も足腰はしっかりしてるので、なんとか立てている。こんな中立ってるなんて、常人ならまず無理だろう。
ピシッ…
「“ピシ”?」
「何かしら…」
「つーか、長ぇ地震だなぁ」
30秒は続いてる。
「そうね…そろそろ崩れないか心配だわ」
「はは…洒落にならね────」
霊夢の頭上の天井に大きなヒビが見える。
そしてそれがどんどん広がっていく。
俺は脳をフル回転させる。
あれ何?普通にヒビだよな。てことは…?
あれ?これってガチで神社崩れるんじゃ──。
ガラララッ
屋根が落ちてきた。
やっぱり!
「危ねぇ!!」
「えっ!?」
ドサッ
“雷速の吸血鬼”の名に恥じぬスピードで霊夢を押し倒して覆い被さり…。
その直後、轟音を立てて神社は崩れ、俺ら2人は瓦礫の下敷きになってしまった。
「ぐっ…!」
痛てぇ…。背中に色々喰らったが、そこは吸血鬼の身体なので何とかなった。
ほんと便利だぜ、吸血鬼ってのは。
「霊夢…無事か?」
瓦礫の下敷きになりながらも話しかける。
「エスカルゴ、あんた…」
「大丈夫そうだな。良かった…」
「あ、あんたこそ大丈夫なの?」
「ああ。待ってろ、今出してやるから」
「うん…」
ドガァッ
霊夢に覆い被さったまま後ろ蹴りで瓦礫を飛ばす。
「ちと重いな……セイッ!」
自身に乗った柱などの瓦礫を全て右手だけで退かしていく。
「ふぅ…」
やっと出れたぜ。
「ありがとう」
「イイってことよ。危なかったな」
「ええ…」
「どーすんだよ?神社崩れたぞ」
「…本当に、犯人をどうにかしなきゃね」
そう言った顔は、怒気に溢れている。
おぉう、怖い怖い。
「そもそも、これからどうするんだ?住む所が…無くなったし…」
「そこは河童にお願いするわ」
「ああ、なるほど」
「エスカルゴ…頼める?」
「ん?ああ、にとり呼んでくるのな、任せろ」
「そうじゃなくて!」
「え?違うの?」
「お・か・ね!…頼める?」
「……は?」
ナニイッテンノ?
「私お金無いし…かといって自分で再建なんて出来る訳ないし…」
「おっ、そうだな」
「だからお願いっ!」
手を合わせてお願いしてくる。
「えー…ゼッテェ高ぇだろ…」
「お願いだってば!何でもするから!」
「ん?今何でもするって…」
「ええ、何でもするから!」
「ほぅ…霊夢がねぇ。…嘘じゃないだろうな」
「嘘なんてつかないわよっ!」
ちょっと怒ったか。
「…わかったよ、しゃーねーな」
「ありがとっ!」
と思ったらこの笑顔だ。喜怒哀楽激しいねぇ…。
「じゃ、この異変解決したらしばらくは俺の好きにさせてもらうぜ、いいな?」
「うう…」
「霊夢に拒否権は無い。俺に従え」
強めに言って釘を刺す。
「わ、わかったわ。あと、河童への依頼もお願い出来る?」
「結局させるんかい」
「好きにしていいから…ねっ?」
上目遣いやめて下さい襲いますよ?
「わかった。…解決、頑張れよ」
「え?あなたも行くのよ?」
??????
「…ん?今なんと?」
「あなたも行くのよ」
「はぁ!?なんで俺が!?異変解決は巫女の仕事だろう!?」
「人手が多い方が楽だからね」
「ちっ…」
あれ?それ、炎火のとこの霊夢も言ってたよな。
うーわ、場所が違えど霊夢は霊夢なんだな。
「犯人がわかったら迎えに行くから」
「オッケ、分かった」
変わらず俺も調べていくか。
「じゃ、にとりのとこ行って帰るぜ」
「ええ。気を付けてね」
「おう」
その夜
「お願いしますっ!!半年お小遣いストップしていいので、半年分のお小遣いを下さい!今すぐに必要なんです!」
「あのっ…顔を上げてくださいな…」
「許可していただけるなら…!」
俺はその夜、フランとレミリアを寝かせた後、咲夜さんを呼び出し土下座していた。
「しかし…半年分ともなりますと…」
紅魔館の主はレミリア。
けどその本人は遊び呆けている。
じゃあ誰が紅魔館の財政を…?
そう、咲夜さんなのだ。
毎月お小遣いをくれるのも咲夜さんである。
「博麗神社再建のためなんです…!」
「そうは言われても…」
「お願いします…霊夢の為にどうか…どうかお慈悲を…!」
「……はぁ、わかりました」
「…!では…」
「エスカルゴさんの事ですし、嘘とは思いませんが…本当に再建のためなんですよね?」
「はい、そうです!」
「わかりました」
言うなり消える咲夜さん。
「こちらです」
普段の6倍…すなわち半年分を持ってきた。
「ありがとうございます…!」
「では、もうお休み下さい」
「はい…。このお金は明日すぐにでも…」
「そうですか、お気をつけて」
「はい」
にとりに提示された金額…それは、俺のお小遣いの実に6倍だったのだ。やはり神社ほどの建造物ともなると…かなりかかるらしい。
紅魔館の方が遥かに大きいのだが、値段は安い。
つまり、大きさではなく構造なのだ。
「はあ…」
ため息混じりに2人の間に潜り込み、その日は眠りについた。
調べると、“各人の周囲だけ特定の天候になるという謎の異常気象”…とあるけど、単なる異常気象でいいよね。だって二次創作だもの。
逆に言うと、調べた上で敢えてこうしてるって事だからね。