※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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破壊に次ぐ破壊

「お父さん……お母さぁん…………なんで……どうして、一緒に死んじゃうのよ……っ」

 

 両親の葬儀を終えた小鈴は、自宅に引き籠ってはひたすら悲しみに暮れていた。

 彼女は知らない。まさか愛する両親が、一時期は人里を騒がせた死神、夢摘霊黄泉の道連れとして、彼女と同時に死んだ事を。そしてその死には自分の知り合いが……八雲紫が深く関わっている事も。

 死因はただの心臓麻痺だ。妖怪の手に掛かれば、普通ならばどう足掻いても外傷が残る。それが無いだけに、小鈴には恨むべき相手すらも存在せずに、やりどころの無い悲しみのみ抱え、大好きなはずの本にすら触れない日々が続いた。

 そんなある日の事だ。

 休業中の札を下げている鈴奈庵の入口が、今にも壊れんばかりに乱暴に叩かれている。小鈴は、恐る恐る居住エリアから出て、店舗の方へ向かう。

 そして、初めて戸を叩く何者かが声を出している事に気が付いた。

 

「小鈴っ!小鈴!!早く出て来い、逃げるぞっ!!いつまでも此処に居ては死んでしまうぞ!!」

 

「……今、開けます……」

 

 声の主に覚えがあった小鈴は、そう告げて気怠げながらも戸を開けた。久しぶりに見た里の風景は、何だかやけに赤くて、そして、今は春なのにやけに暑かった。

 

「やっぱりか!まだ家に居たんじゃなお前さんは!ほれ、早く逃げるぞい、儂がお前さんを守る!!」

 

「待ってください、逃げるって何から……わっ!」

 

 マミゾウはその太い尻尾で小鈴を足払いすると、素早くその尻尾で受け止め、人里の中を妖怪の姿で走り出した。しかし周辺の人間達はマミゾウの姿を見ても、彼女らに構うこと無くひたすら東へ東へと逃げていく。

 

「逃げながら話すぞ、よく聞け。鬼が攻めてきた。以上だじゃ」

 

「えっ?お、鬼が……攻めてきたですって?そんな、なんで……霊夢さん……魔理沙さんは……?エスカルゴさんは……?」

 

「……まだ頭が寝惚けておるのか?周りを見てみい。間に合っておらんよ、その3人の誰もな」

 

「…………!!」

 

 周囲の光景を見た小鈴は、両親を同時に喪った時以上の絶望感に襲われて、意識が一気に覚醒した。周囲の建物という建物は燃え、または崩れ、もはや原型を残している建物はパッと見ではたった一戸も見つからなかった。

 外の世界の者がこれを見れば、空襲やそれに近い戦争の被害を想起する事だろう。

 

「ど……どうして…………なんでこんな……」

 

「さあ、儂には分からん。だがこれだけは言える。奴はルールを知らない」

 

「ルール……?」

 

「弾幕ごっこのルールじゃ。奴はな、そのルールを知っている素振りを見せなかった。一応は儂も応対したが、これは無理だ、死ぬと判断した。だから、逃げる方にシフトしたんじゃ。情けないがのぅ」

 

「そんな……マミゾウさんでも……」

 

「……小鈴。今だから言うが、儂なんぞ、大妖怪には遠く及ばんよ。如何に頭領だのと持ち上げられても所詮は化け狸。弾幕ごっこではなく、ガチの戦闘になってしまえば……種族の差は、どうしても埋まらぬものなのじゃよ。ただの人間が妖怪に勝てないのと同じ事じゃ」

 

「そん、な…………」

 

「じゃが安心せい。小鈴の事だけは死んでも守ってやる。その為に逃げておるのだからな!」

 

「そう言えば私達は……いえ、里の皆さんは、どこに向かっているんですか……?」

 

「決まってるじゃないか。妖怪退治は巫女の仕事。霊夢の所じゃよ」

 

「霊夢さん……」

 

「おっと、間違っても霊夢を責めるなよ?いつもは事前に噂や依頼があって霊夢が動くからこそ被害を防ぐ事が出来ている。なのに今回は、予兆も何にも無かったからのう」

 

「いえ……責めたりはしません。でも……里をこんな滅茶苦茶にする奴に……霊夢さんが…………勝てるかと思ってしまって……」

 

「問題ない。霊夢なら勝てるじゃろ」

 

「……」

 

 尻尾に揺られながら振り返ると、遠くの方で額に角を生やした小柄な女が斧のような武器を振り回し火炎を撒き散らし、そして雷をも降らせているのが小鈴の目に入った。

 破壊され、崩壊していく里を横目に彼女の意識はブラックアウトした。

 

 

 ◆

 

 

「うわわっ、ヤベェ事になってるぜ……!?こりゃあヤバい、大惨事としか言いようがない……。クソッ、あの一撃で殺しておけば!」

 

「血の匂いは……かなりするな。ただ人の気配がほぼしないから……大半はどうにか逃げ仰せたらしい」

 

 巨人騒動以降、人間達の避難行動が早くなった。外の世界で言うハザードマップ的な物を作成して、里中に配ったりもしているのだろうか。

 そうでもなければ……または紫さんなどの能力者を抜きにしたら、この避難速度は有り得ない。

 

「そうか、それは良かったっ……!いや良くないな。私がこっちに奴を飛ばしたせいで、こんな事に……!この事態は私が招いたようなものだな……、もう里の皆に合わせる顔が無い……」

 

「悔やんでも仕方ねェ。さぁ魔理沙、奴を殺すぞ」

 

「ああ……そうだな!今できる事をしなくちゃ!」

 

 幸い、奴はド派手に火炎を振り撒いたり、雷をも降らしまくっているので位置の特定は簡単だった。魔理沙が「手を翳して」と言っていたように、奴が神通力を使う為にその動きがトリガーとなっているらしい。例えるなら、ハガレンの主人公のエドが、錬成する為に両手を合わせているようなものだ。

 

「見付けたぞ!大嶽丸の娘!」

 

「ヒュ〜、やる事が派手だねェ。局所的には俺より破壊してんじゃないのコレ」

 

「あれェ?なんか男増えてんじゃん。まーいーや、今度こそ殺してやるよっ、白黒!」

 

「こっちのセリフだ、馬鹿野郎っ!人里をこんなに滅茶苦茶にしやがって!!生きて償わせるなんて、甘っちょろい事は言わん!惨たらしく死ねッ!!」

 

「──そーゆーコト。お前さんには死んでもらう。ただまぁ、死ぬ前に、少しだけ楽しませてやるよ。最期の戦闘、よーく味わいなッ!!」

 

 ただ殺すなら破壊すればいい。だがそれだと全く華が無い。どうせ人々が避難しているのなら、燃え盛る里を舞台にしてバトルを繰り広げたって、別に構わないだろう。

 里の再建なんかは最近覚えた錬金魔法でどうにか片付けられるだろうし、里の復興には俺も手を貸す事にしよう。

 

「出し惜しみ無しの……変ッ!身ッ!!」

 

「はァ!?何それズル〜!!」

 

 太陽と月の模様がある悪魔に近い羽根を生やした魔理沙。こちらの羽根魔理沙は本気も本気、溜めた魔力を最大限に放出するといった、彼女の中の究極奥義を使う為とも言える形態だ。

 

「トドメだ!跡形もなく吹き飛べえええええっ!!魔心『ダブルファイナルマスタースパーク』!!」

 

「『真・雷霤撃波』ッッ!!」

 

「フン、そんな攻撃、私の神通力でどうとでもな……な、あ、れ?」

 

 バリアでも展開しようとしたのか、手を翳すも、何も起きない。バリアを展開しようと思ったその時には、魔理沙や俺の極太レーザーが、彼女を貫いてしまっていたからである。

 

「……殺ったか!?」

 

「あーあ失敗フラグ……。魔理沙よぉ、そのセリフは言っちゃダメだぜ」

 

「え?」

 

「ほれ見ろ、アイツ、生きてるじゃあないか」

 

「!」

 

 3本のレーザーは確かに奴を貫いていた。しかしその全てを以てしても奴の全身を削るには至らず、結果としては奴の左腕を欠損させ、戦斧を破壊したのみだった。

 

「はぁっ、はぁっ……やってくれたわねえええッ!?小癪な虫ケラ共がっ……この私に楯突くなんてッ!!死んでも後悔してもらうわよォ!!」

 

「……嘘だろ、今のが私史上で最強の攻撃だぞ……」

 

「あー、俺もだよ。俺史上最強の貫通力のある技で攻撃したんだがな。流石は鬼神、腐っても鯛……か」

 

「許さないよアンタら……!この、ゴミ野郎共ッ!!死ねッ!死んでしまえええええっっ!!」

 

「「ッ……!!」」

 

 奴は残った右腕を使って神通力を再び行使する。火炎の密度や数や大きさは増し、こちらが火を回避する毎に、里がドンドン焼け落ちていく。最悪だ。

 奴の狙いは俺達であり里そのもの。こうなれば、バリアでも張って防御するしかないが、それで奴を殺せはしないだろう。ここは、不老不死で捨て身の攻撃も可能な俺が動くしかないだろう。

 

「魔理沙は降ってくる雷だの炎だのを消してくれ。俺がアイツを殺す」

 

「待て、アイツの近くはもっと激しく荒れ狂ってるのにそんな事をしたら……!」

 

「俺は不老不死(死なない)。問題は無い」

 

「────ッ……それでも少しくらいは自分を大切にしたって良いじゃないか……彼女として、さ?心配もするん…………って、最後まで聞けええええっ!!」

 

 魔理沙の言葉は最後まで聞かせてもらった。俺は地獄耳なので、雑音が酷くなければ離れた音声でも聞こえるので、問題は無い。

 魔理沙は俺を心配してくれているらしいが、全くどうかしている。俺を心配する子などほぼ居ない。魔理沙は、本当に優しい子だ。

 

「さぁ、地獄に落ちる準備はいいか?神に祈る暇も与えないぜ。大悪党は大悪党らしく空に汚ェ花火を咲かせて死ね!」

 

「お前なんぞに殺される私じゃない!死ぬのはァ……お前だああぁああぁぁぁっ!!!」

 

「!!」

 

 更に落雷を増やす。この密度は俺の「雷神『荒れ狂う霹靂神』」をも超えて「雷神『万雷繚乱(ママラガン)』」の域に達しているかもしれない。

 

「あー、これは……。魔理沙、バリア増やして!」

 

「掻き消すので精一杯だっ!」

 

「だよなぁ、魔理沙は火力メインだもんな……防御はお門違いか……っ、くそー、どうするか……」

 

 ドゴォ、バキャアッと次々に壊されていく家屋。戦斧や片腕を無くしても尚、これ程の力を使うとは恐ろしい奴。しかし幸運だったのは、勇儀のような肉弾戦を仕掛けてこない事か。

 物理的な破壊が好き────弾幕を使ってだが、肉弾戦が好きだとかそれに特化しているという事が無さそうなのは本当に不幸中の幸いだ。

 神通力が何だと言うのか。鍛え上げた俺の能力に比べれば、正直、カスみたいなものだ。きっと俺の方が強い。自惚れかもしれない。だが間違いない。長年封印されていた妖怪と、日々戦闘を重ねた俺。比ぶべくもない。

 

「これ以上長引いたら里の復興も面倒な事になるんだろうな。……だから、これで殺してやるよっ!魔砲

『魔光線百門砲(ハンドレッドキャノン)』っっ!!」

 

「小癪なぁぁああぁぁっっ……うおおあぁぁああああ!!!」

 

「!」

 

 これぞまさに鼬の最後っ屁か。神通力を発動させ百門ものレーザーを、強烈な目力で食い止めているらしい。

 この技は、俺の魔法の中でもリスクが高い。何が一番ヤバいのか?言わずと知れた消費魔力である。百個もの魔法陣を開いているのもそうだしこうして耐えられていると無駄にレーザーを放つ事になる。最後はやはり暴力……暴力は全てを解決するのか。

 

「……どうしてこう、俺が『これでキメる』的な事を言うと、その技でキメられないのかねぇ……。俺も、まだまだだね。……これも毎回言ってる気がするな」

 

 魔法陣を閉じて、翼に力を込め全力で飛翔。俺のレーザーを止めた透明なバリアのようなものを突破すると奴はもう目の前だ。

 

「お前なんぞに殺される私ではァァァァ!!!」

 

「過去の自分とお前を重ねてるよ、俺。だから死ねお前。過去の自分と一緒に粛清してやる」

 

「ガッ……あ゙っ、がうっ……は、離せ、このッ!」

 

 頭を掴んでやると、流石に命の危険を感じたのかジタバタと暴れ始めた。鬼神とやらの種族の事は、俺もよく分からないが……勇儀達よりも頑丈なのかと問われると少し首を傾げたくなる。予想だがコイツよりは勇儀の方が堅いだろう。

 

「────紅眼『吸血鬼の本質』」

 

「ッ!?ち、力が増し……ガアアアアッ!?ぎぎっ、ぎがぁぁううぅぁああああ!!あ、あた、あたっ、頭がああああっっ────」

 

 次の瞬間、頭がパァンッと弾け飛んだ。水風船を握り潰したようなあの感覚に近い。頭とはこんなに水っぽいものだっただろうか。

 とりあえず、コイツは不死身ではないらしいので安心だ。因みに、破壊の能力を使わなかったのは、アレを使うと対象が爆散するので、死体の後始末が面倒になってしまうからである。

 頭を握り潰せば肉体と血溜まりの始末だけに集中することができる。面倒を減らせる。

 

「ふぅ〜っ……あんにゃろめ、めっちゃくちゃに濃い弾幕ばっか使いやがって……。相殺がこんなに疲れるなんて、思いもよらなかったよ」

 

「お疲れ魔理沙。にしてもマスパの貫通力は凄いね相変わらず。さっきアイツの腕を吹っ飛ばしたの、魔理沙のマスパだよね」

 

「そうか?お前の方だと思ったが」

 

「……アイツ、神通力で雷も使えるからなのか、俺の攻撃が少し緩和されてた気がするんだよな。まっ、殺したからいいけどさ」

 

「終わった……のか?」

 

「終わった。だから後は人間達を呼び戻して、復興活動……かな。いや先に直すか」

 

「うぅ……私がアイツをこっち方面に飛ばさなきゃ、こんな事には……」

 

「済んだ事は仕方ないさ。てか、建物くらい魔法でどうにかなんだろ?ちゃっちゃと直してこうぜ」

 

「そうだな。……はぁ、やらかしたな……創造魔法はそこまで得意じゃないんだけどな」

 

 

 ◆

 

 

 大嶽丸の娘とエスカルゴ&魔理沙が交戦中、当の博麗神社では、博麗母娘がいつも通り境内の掃除をしていた。そこに霊麗の姿は無い。なんでも、妙な胸騒ぎがするからと、どこかへ飛んで行ったのだ。

 掃除をサボるような娘ではないのは霊夢とてよく分かっているので、黙って娘を行かせたのだが……。そんな中で仕事をしていると、ザワザワと人混みの中のような喧騒が近付いてきた。

 それにいち早く気付いた霊愛は階段を下りていき仰天した。数え切れない程の人間が、博麗神社へと押し寄せてきているからだ。

 

「お母さんッ!なんかヤバいよ、人間がゾロゾロと博麗神社に向かって歩いてきてる!!」

 

「はぁ!?なんで!?」

 

 するとそこに、どこかへと向かった霊麗が、翼をはためかせながら境内に着地した。

 

「戻ったよ〜。人里に偵察に行ってきた。なんか、お父さんと魔理沙が鬼みたいな奴と戦ってた。里が滅茶苦茶になってるのはきっと、その鬼のせいだと思うよ。里の人達は、命蓮寺、神霊廟、守矢神社、永遠亭、博麗神社の5つに避難してるみたいだね。人が到達してるのは命蓮寺と神霊廟方面に向かった2つの団体だけ。……ここにも、もうすぐ来るね」

 

「どーすんのよそんなの……!異変って規模じゃないみたいだけど……里が攻められた?何の前触れも無く攻められた?そんなの初めてじゃないかしら……?」

 

「お母さんが矢面に立ってどうにかするしか方法は無いんじゃない?」

 

「とりあえず私と霊麗で里に行ってみるよ。後は、お母さんに任せちゃお」

 

「やめとこ、お姉ちゃん。アレは……私達が行けば、足でまといになるだけだよ。遠目から見るだけでも十分。あの敵、弾幕ごっこのルールなんて全く適用させてないように見えたからね」

 

「え……じゃあどうしよう……この人達に説明するの大変そう……いや大変って次元じゃないよ」

 

「こんな時はお父さんが遺した道具の出番だね」

 

「遺したって……お父さんまだ死んでないんだけど?全くもう……」

 

「ジャーン、拡声器。はいお母さん、これ使って。もう来るから!」

 

「ええええ……あんた達も何か仕事してよ……」

 

 お祓い棒にてスキマを作った霊麗は、父が残した拡声器を取り出すなり霊夢に手渡す。これで里人に説明をしろと、暗に促しているのである。

 と、丁度その時、遂に里人達がドォッと敷地内になだれ込んできた。霊愛と霊麗が、どうにか先頭の人達にストップを掛けているので、入ってきたのはそこそこの人数で済んだが、階段ではちょっとした騒ぎが起き始めていた。

 因みに、霊魔は人見知りなので引き篭っている。霊夢も姉達も、無理はさせまいとしているのだが、果たしてそれが霊魔の為になるのかどうか。きっと彼の父が見たら苦笑いしそうである。

 

「霊夢殿ォォ!!」

 

「巫女様、助けてええっ!」

 

「あー、あー。えっと…………里での妖怪の襲撃は、現在、普通の魔法使いと私の旦那が対応中ですのでもうじき鎮圧できるかと思います。その後は、里の復興活動になると思いますので我々も向かいます。彼らの帰還まで、どうかもう暫くお待ち下さい」

 

「おお……あの方達が……それなら安心ですわい……」

 

「確か『普通の魔法使い』ってかなり強いんだろ?エスカルゴ・スカーレットをも何度も倒した、とか風の噂で聞いたぜ」

 

「けどよ、その後エスカルゴは修行して魔法使いを倒したとかいう話も聞いたぞ」

 

「オォン!?魔法使いちゃんの方が強いが!?」

 

「ガキ共からの人気も強さもあるエスカルゴの方が強いに決まってんだろう?」

 

「やんのかテメェ!推しをバカにすんな!?」

 

「うっせぇ推しなら俺も魔法使い推しだよ!うちの倅がエスカルゴ兄ちゃんみたいになりてぇ、だとかアホみたいな事を抜かし始めたからな!けど強さで言うならアイツだろォン!?」

 

「可愛さも強さもある魔法使いちゃんの方が上だ!以上ッ!!」

 

「「どーでもいーわそんなのッ!!」」

 

「「────ッ!!」」

 

 霊夢と霊愛の叫びで、里人達の間に巻き起こった小さな騒動はこれにて幕を下ろす。霊夢は、叫んだ直後にハッとしたが、霊愛はフンスッと鼻を鳴らす始末である。

 すると遠くから大きめの気配が2つ、博麗神社の方角へ飛んできた。霊夢が空を見上げるとそこには白黒魔法使いの魔理沙と、旦那が居た。

 

「よォ霊夢。霊麗が来たからまさかとは思ったが、人間達ゃこっちに避難してたんだな。それにしちゃ人数少ないと思うが、残りはどこ行ったんだ?」

 

「命蓮寺、神霊廟、守矢神社、永遠亭らしいわよ」

 

「そか。えーっと、人間の皆さん、敵は殺したんで安心して下さい。あと壊れた建物も直しといたんでもう普段通りの生活には戻れます。駆け付けるのが遅くなって申し訳ない」

 

「……色々、謝って済む問題じゃないのは分かるが、本当に────ぐぇっ!?」

 

 自分が敵を殺しきれなかったせいで死人が出た。人里が崩壊しかけた。魔法での再建中にも、何度も泣きそうになっていた魔理沙だったが……いざ人間を前にしたら耐えられなくなったらしい。

 かつては俺もこんな感じだったような気がする。だがここで魔理沙が謝るのは違う気がする。どうせアイツは里を壊すつもりだっただろうし、なんなら魔理沙が相殺を手伝ってくれたおかげで復興が楽になったまである。

 感謝されるべきであり、魔理沙が謝るのは違う。俺はそう思っているので、地に手をついて土下座をしようとする魔理沙の襟首を掴み、それを無理矢理食い止めた。

 

「けほっ、何すんだよっ……」

 

「謝るのは違うぜ。確かに何人かは死なせちまったけど、それでも人間達(みんな)も分かってるはずだ。俺達が居なきゃ里が完全に滅んでるって事くらいは」

 

「っ……でも……」

 

 俺のその言葉を聞いて俺を睨む奴らは、きっと、親族や友人を亡くしてしまったのだろう。それなら申し訳ないとは思うが人間とはやはり愚かなもの。周囲が俺達に感謝しているのなら自分も流れに乗るしかない。同調圧力のようなもの。多数派に流され自分の意見は言わない。いや、言えないのだろう。悪く言えば、日本人気質と言えるかもしれない。

 

「来たばっかりで里に帰るのは大変だと思うから、今回は瞬間移動で里の入口に送る。範囲は────設定すんのめんどいから、対象を設定して……っと。

『近くの純人間を里の入口に』────」

 

 魔力回復薬を飲み、瞬間移動魔法を使う。これで周囲の純人間は里に行った。永遠亭や守矢神社等に向かった人間の事は現場判断に任せよう。そこまで俺が動く義理はない。

 巫月や緋月、樹理愛に人間共が近付くというのは少し不安ではあるが、まぁ、流石に大丈夫だろう。

 

「えーっと……魔理沙、エスカルゴ?今どうなのよ、里は……本当に大丈夫なんでしょうね?」

 

「ああ。にしてもあんな疲れる戦闘は久しぶりだ。終始圧倒してたはずなんだが、疲れたよ」

 

「何があったの?」

 

「……大嶽丸とかいう妖怪、知ってるか?」

 

「知ってるも何も日本の三大妖怪でしょ。……えっ?まさか……」

 

「いや、本人じゃあないぞ。そいつの娘がな……実は妖怪の山の近くに封印されてたみたいで。復活して暴れたんだよ。雷は降らすわ、炎は撒き散らすわ、斧は好き勝手に振り回すわで大変だし目力か何かで攻撃を止めるし、クソみてぇな奴だったよ。まあ、頭をこう……グシャッとスプラッシュしてやったよ」

 

「えぇ……」

 

 一先ず、大嶽丸の娘が片付いたなら、残りの封印されていた妖怪も2人やそこらだけ。もう少しだ。もう少しで、完全な平和な世が訪れる────。




マミゾウは妖怪ですがマミゾウが小鈴を掴んでいたお陰で一緒に里に戻ってます。小鈴を連れ出す為に避難が遅れ、列の最後尾の方に居たので、何で急に里に戻ってきたのかと、少し混乱したようです。
阿求も喪い、黄泉のせいで両親も喪った小鈴……もうマミゾウくらいしか拠り所になれそうな奴が……。
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