「ウドンゲ、てゐ。永遠亭の全員を動員して今すぐエスカルゴを探しなさい」
「「へっ!?」」
鈴仙とてゐは同時にそんな声を漏らした。予想もしなかった指示、しかもその内容が「彼を探せ」。てゐとてそんな声が漏れてしまうのは仕方のない事だった。
「時間が無い。経緯を簡潔に話すわ。さっき咲夜が来たのは分かるわね?」
「え、ええ、不安になったから検査を受けたいと、そんな感じの事を言ってましたが……」
「それは嘘。本当は私に緊急事態を伝えに来たの」
「ええっ!?」
「見て。これはさっきの咲夜の発言よ」
「……ひぇっ。小さな息遣いまでメモってるウサ……怖い怖い……」
「これを見て何か感じない?」
「うーん……妙に横文字ばかり……。不自然な発言が多いですね?ネセサリーインフォメーションなんてわざわざ横文字にする必要が無いですよ」
「鈴仙のスペルみたいに無理矢理なルビ振ってそう読んでそう」
「てゐ〜ッ!?」
「し、知らないウサ〜、何も言ってないウサ〜」
「そう。発言の中で
「えぇと……ナウ、エスカルゴ、イズ、クローン……えッ!?」
「文章になっちゃうウサ?……これマジなの……?」
「クローンっていうのは、本当にクローンなのか、限りなく本物に近い偽物って意味なのか……。そこは分からない。ここでは本当にクローンと仮定して、話を進めるわ。すると、これだけは言えるわ。今の
『エスカルゴ・スカーレット』と呼べる存在は本物じゃない!!」
「そんな!本物のエスカルゴは……」
「咲夜が……いいえ、こんな暗号を彼女が考えられるなんて思えないから……きっと、紅魔館全体が、彼が偽物であるという事実を掴んでるわ。でも直接口や文字では伝えられない状況だ、というのは確かね」
「……なーるほど。つまり本物のエスカルゴは、今はどこかに身を隠して私達に解決を任せてる……。ってカンジなのかな?ね、お師匠様?」
「てゐの推理も悪くはない。けど違うでしょうね。エスカルゴなら自分の偽物は自分で殺してやろうと奮起するはずよ」
「あーそういえばそういう奴だわ〜。嫁とか彼女が襲われたら大変だもんね」
「けれど、今は自分では動けない。それは何故か?今自分が動くと、ソックリさんと本物が同時に現れ私達に混乱を与えるから」
「……もし、鉢合わせでもしたら……自分こそが本物という証明ができないから…………。という意味も、あるんですかね……」
「それもあると思うわ」
「あー、あの時の二の舞みたいになりたくないって事かぁ……。確かに……あの時のエスカルゴ、すごく苦しんでたし……嫁達を危険な目に遭わせる可能性があるとしても慎重になるのは……仕方ないウサ……」
「きっと彼は、簡単な見分け方を考案中なのよね。さとり妖怪を連れ回せばいいだけだと思うけれど、心を読まれるのを嫌う奴もいる。それにさとりにも負担になってしまうかもしれない。だから、そんな手段には出られない。そう考えてるんでしょうね」
「ところで、どうして『ワクワク』がeなんですか?この『ワクテカ』がwなら、これもwかと」
「そうね。でも文章にするのならこれが一番自然。それに、『ワクテカ』はまずローマ字に直すけれど
『ワクワク』はまず最初にエキサイティングという英単語に直すべきよ」
「あ、そっか。『ワクテカ』って意味不明な言語は英単語としては存在しない。だから、ストレートにローマ字表記にしたって事ウサ?」
「そうよ。その点、『ワクワク』なら、ローマ字の前にまず英単語に直せなくもないからね」
「な〜るほど〜。鈴仙もこれくらいの事にはすぐに気付けなきゃダメウサよ?」
「それはあんたもでしょっ!……っと、そんな事よりお師匠様、これからどうすれば……?」
「咲夜は帰り際に言ったわ。『皆にもよろしく』。つまり彼の家族に伝えてくれって事なのよ。そしてわざわざ永遠亭に来たのは、私が居るからってのもあると思うけれど、妊娠の検診に偽装できるから。つまり咲夜は……いや紅魔館のメンバーは、犯人から監視されている可能性がある」
「!!」
「ウドンゲ、てゐ。あなた達はこれから、輝夜以外全員に、エスカルゴを探すように言ってきなさい。そしてあなた達も探して見つけ次第すぐに殺して。緋月ちゃんだけは私と行動させます」
「そんな!巫月が偽物とはいえエスカルゴを殺せるなんて…………それに、もしも敵の手に落ちたら!」
「殺せると思うわ。あの子、エスカルゴラブだし」
「だから殺せるはずがないと────」
「分からない?エスカルゴラブだからこそ、偽物の存在を許せないのよ。まして大好きな人にソックリだなんて……巫月ちゃん、きっとブチギレるわよ?」
「……!」
「てゐ、あなたにも殺しの技術くらいあるわね?」
「……そりゃ、あるけどさ。それが無きゃ、いっくら私が健康だろうと、神代から現在までの永〜い時を生きてらんないっつーのよね」
「それでいいわ。じゃあ、私は早速……まずは、彼の信奉者の多い妖怪の山……守矢神社から向かうわね。そして文の仕事場だったかしら?そこは分からないから、守矢神社の誰かに行ってもらう事にするわ。その後は危険度の高そうな家庭から順に、ね。博麗神社なんかは一番安全だと思うわ」
「あ!そういえば巫月は魅玖ちゃん……衣玖さんの家分かります!」
「……そう。なら、守矢神社より先に、そちらに行く事にしましょう。巫月ちゃんに案内してもらって、その後、巫月ちゃんにもクローン殺しに行かせる。私と緋月ちゃんは各家庭巡り。それでいいわね?」
「「はいっ!!」」
◆
その頃、オリジナルの襲来を恐れていたクローンエスカルゴは────。
日傘を差して呑気に遊覧飛行をしていた。しかしただ飛んでいるのではなくて、獲物を物色しているのである。食べる獲物ではない。犯す獲物だ。
「さぁ〜〜て、そろそろどっか行こうかな〜っと。紅魔館はもう無理だよなぁ……オリジナルが紅魔館のメンバーにアレコレ言ってそ〜だし……はぁ、ダル。レミリアとパコりて〜のによォ〜……邪魔しやがってクソがァ……マ〜ジでダルいわー……あー、今すぐにパコパコしてぇ〜…………天魔、襲っちまうかァ?」
山を見据えて舌舐めずりするクローン。しかし、天魔の屋敷周辺は重警備で、突破するのは面倒臭いなどと勘繰った故に、天魔を標的から外した。
次に標的にしたのは、奇しくもつい先日、本物と交わったあの神、更に盟友。鍵山雛、河城にとりの2人である。
「雛ちゃんはなぁ〜……まぁじで可愛いよなぁーっ♡いつかヤリてーんだよな、あのクソ厄介な能力さえ無ければよぉ……。にとりもイイよなぁ、ああ見えて胸もそこそこあるっぽいし……ズッてもらうのもアリかもな、くひひっ……♡」
しかし雛の能力の面倒臭さ、河童特有の集団行動という、標的を探すといった手間を考慮した結果、その2人も候補から外した。
秋姉妹──特に静葉を探そうかと思ったようだが今は春である。きっと誰も知らないところに居るに違いない……と、こちらもまた諦めた。
「ならやっぱ、ガキ産ませてる女の方がヤリやすいかもなァ。フラン犯せたのもオリジナルととっくにそういう関係に至ってたからだろうし。けど、俺が青娥のヤローに生み出されて何年経ってんだよ……。オリジナルは誰に手ェ出したんだよ、クソッタレ!オリジナルのせいで俺がフラン以外犯せねーとか、ふざけんじゃねーぞ!?また霊夢を孕ませようか……
そうと決めたクローンは、翼を翻して博麗神社に超高速で向かった。
クローンは数年前、青娥に生み出された。彼女、嫁という関係になっている人物もその時に青娥から聞いただけ。
どういう訳か面倒な性格に成長したクローンは、自分で調べる事もせず、ただ数年前の情報に頼って行動している。青娥が、仙術にて彼をスクスク成長させた事も一因となっているというのは青娥のみぞ知るところである。
「はい到着っと。はぁ、日傘持つのダッル……俺にもペンダントくれよォ炎火くぅん……はぁ……」
「……あ」
「あァ?妖怪の参拝客か?地味に俺に顔似てんなぁオメー。隠し子だったりすんの?……って、そりゃあねぇか、霊夢も許しちゃくんねーだろーし」
博麗神社に到着したクローンは、縁側でコツコツ音を立ててけん玉で遊ぶ少年を見て、首を傾げる。しかしその言葉はその少年──霊魔に衝撃を与え、同時に覚醒させてしまう言葉だった。
「────誰だ」
「あ?お前、俺ん事知らねぇ?なんか凄いビビるわそういうの。俺ァエスカルゴ・スカーレット、この幻想郷の頂点……正確には、ハーレムの頂点に立つ、最強の男────」
「嘘だッッ!!!」
「うぉッ!?ビビるわー、急に大声出すなよ。てか参拝が終わったら帰れよな、これから愛する霊夢と夜まで子作りエッチするんだからよー♡」
「……お父さんじゃない!お前、お父さんじゃない!お母さんには指一本触れさせない!!それ以上前に進むなら僕がお前を倒すっ!」
「……あんだと?ガキ…………『お母さん』だと?今、
『お父さん』っつったか?…………ははーん、成程。3番目のガキはもう作ってたのか。ならいっかぁ、霊夢に4番目のガキを仕込むだけだぜ」
「────誰に何を仕込む、ですって?」
「「!」」
神社の中から出てきたのは、他でもない博麗霊夢本人。霊魔の怒鳴り声を聞き襖を挟んだ彼の後ろで密かに待機していたのである。
当然、霊夢の傍には霊愛、霊麗も控えている。
「おー霊夢、パコパコしよーぜっ♡」
「死ね」
「……うそん……エスカルゴハートブレイク……」
「その言葉だけは本人に近いわね。でもあんたさ……どう考えても偽物よね。霊魔の存在を知らないって何なの?部分的に記憶喪失にでもなった?」
「あ、あー、そうなんだ、それでこの前はフランを泣かせちまってさー……2人の思い出が消えたから、本気で泣かれてさ、困ったもんだよ、あはは……」
「やっぱ死ねば?あんた」
「し……辛辣だぜ……霊夢…………」
「もし。もし、よ。万が一、億が一にも、あんたが本物だったら…………離婚するわよ。今、ここでね」
「なっ!?俺は記憶喪失──」
「当然よね?自分の子を本気トーンで『ガキ』とか呼ぶ奴となんて、生活してらんないわ」
「や、やだなー霊夢、そんなのジョークじゃ……」
「本人が傷付いたのなら冗談だのジョークだのじゃ済まされないのよ!!そんなのエイプリルフールにフラン達から別れを切り出されたあんたなら分かるはずでしょッ!?」
「────ッ!?……あ、あー……そう、だよな……。ごめん、それは……まさか、俺がそれをするなんて、思わなかったよ…………あはは……許してくれよ……」
「死ね」
「だ……だからよ……辛辣すぎだっつーの……」
「私の旦那はこういう場面で笑わないのよ。死ね。あんたは偽物で確定よ。大方、クローンとかいう、細胞を元にした偽物なんでしょ。事実、あんたから神の気配を感じない」
「はっ……?俺は妖怪だぞ……神の気配なんて、するはずがないだろ……?神の血が流れてる訳じゃない、純血妖怪なのに……」
「だから偽物だっつってんのよ。大体────」
「もういいよ、お母さん。あいつは敵。お父さんの姿をした害虫。喋る体力も時間も労力も勿体無い。さっさと殺そうよ、塵一つ残さずにね」
霊愛は霊夢の言葉を遮り、ミシミシとお祓い棒を潰す勢いで握り締めている。霊麗は無言だが、その溢れるような殺意は本物だ。霊魔は、初めて見せるその怒りに身を任せ、霊愛の言葉が終わった直後、誰よりも早く飛び出していた。
「────ガアァッ!!」
「おうおう、元気だねェ。まぁいいか、どうせ俺もオリジナルと変わんねーしよォ、いざガキ作りゃ、オリジナルか俺の子か分かんねーぞ?なぁ霊夢ぅ、これが終わったら孕ませてやっかん、なっ♡」
「くあっ……!くっ、僕を投げるなんて……やっぱりお父さんじゃ考えらんないな……」
霊魔の拳を掴むと、柔道のような要領でポイッと軽く投げた。頭から落ちそうになるがそこはやはりエスカルゴの子。父の動きを見ていた霊魔は、地に手を置いて流れに身を任せるとバク宙の要領で身を起こし、体勢を整える。
「私の旦那の顔で……もう喋るな…………!!」
「お父さんはそんな事言わない!キモイから死ね!殺るよ霊麗!」
「うん!」
「「姉妹符『緋想封印』!!」」
「霊符『夢想封印』!!」
「権化『けん玉の化身』」
「うっ、うおおっ……何だこりゃあっ、あううあぁ、あぐあぁぁあっ!!」
姉妹は紅白の弾幕、霊夢は高密度な虹色の弾幕、霊魔は巨大なけん玉型の弾幕を創り、手元で父親が創造したけん玉を操作する事で巨大なけん玉を操作して見せた。
しかも今回の霊魔は、巨大けん玉のけん先を剣のように尖らせているので、もしも当たればタダでは済まない。
時たま姉や母の弾幕とぶつかり相殺はしてしまうものの、4人は構わずクローンに攻撃を仕掛ける。
「なんで、だよっ……!偽モンだろーと……旦那の、父親のクローンだぞ、俺ぁっ……!それをどーして、こんな、ボロクソにできるってんだよ……!?くそ、なんで……!一閃────」
「あんた、ホンットにバカなのね。救いようのないドクズみたい。アイツの細胞から生まれたなんて、到底思えないくらいのドクズだわ」
「そんなのあんたが偽物だからでしょ?お母さんも私も霊麗も、霊魔でさえも容赦しないよ。それに、あんたみたいなゴミを放置してたら、幻想郷がいつ腐るか分からないしね」
「私の大好きで大嫌いなお父さんとは全然違うね。やっぱりパチモンはパチモンでしかないね〜」
「僕らのお父さんは……クズな発言はしても、本気で家族を怒らせる事は言わないよ。だから……偽物は、バイバイ」
「な、なんだ……ち、からが……抜け……なんで…………や、ややっ、やめ────」
霊夢の攻撃特化の夢想封印でボロボロにされて、姉妹の封印効果に特化した緋想封印にて力を封印。抵抗を封じられたクローンは、霊魔のけん玉の剣で首を一刀両断され……霊魔は、ここに、初めて「妖怪退治」を果たしたのであった。
クローンの肉体は日光に照らされて消えていき、やがて博麗神社には元の平和が訪れた。
モルモーが考案した暗号は以下の通りです。
necessary information→N
Oh my god→o
wktk→wakuteka→w
exciting→E
soon→s
coming soon→c
air→a
ruby→r
god→g
OK→o
Thank you→t
ice→i
sniper→s
clone→c
loli loli paradise→l
Oh my god→o
Never give up→n
energy→e
Now Escargot is clone→今のエスカルゴはクローン
え?escargotはフランス語?……君のような勘のいい読者は嫌いだよ。(ウソです)