※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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そしてクローンは

 守矢神社でクローンが死んだ頃、白玉楼では魂魄妖夢、妖忌、妖舞の3人が庭先で修行をしていた。

 諏訪子を通して永琳の作戦を聞かされた後、その作戦通りに変身した上で白玉楼へスキマを繋いだ。すると目の前には剣士3人、そして永琳が居た。

 

「っ……え……永琳!?……先生、なんで、こんな早く来てんすか……!?瞬間移動の使い手でしたっけ?」

 

「建御雷に言ってスキマを開いてもらっただけよ。その方が効率的だもの」

 

「それにしたって何で目の前に……」

 

「あなたが移動してくるであろう位置を特定した。それだけよ。あぁ、幽々子さん含め、全員に説明は済んでるから安心して」

 

「サラッと言ってるけどめっちゃ怖いッスよそれ。場所の特定って……。いやでもまぁ……いっか別に。それより、説明ありがとうございます。説明義務は俺にありそうなもんなのに」

 

「ありそうっていうか、あるわよ。……ところでその頭上の輪っかは……」

 

「ああ、これ、擬似神化形態の特徴なんですよね。この変身ができるのは、5柱くらいの神様から力を受けている時だけ。つまり本物だけって事です」

 

「成程。……いや待って、そんな変身があるなら自己証明なんて簡単じゃないのよ。見た瞬間すぐ本物かどうかわかるじゃない」

 

「毎回、5柱程度の神様から力を借りるんですか?戦闘でもないのに?……そう思うと、どうしても力を借りるのを頼みにくいというか……」

 

「別に良いでしょう。強欲な悪魔に力を貸す神様達だもの、それくらいの事なら織り込み済みじゃないかしらね?あなた、変に遠慮し過ぎなのよ」

 

「えぇー……」

 

《そーそー!言ってくれればいつでも貸すし!》

 

《というより、我らで勝手に力を流して、強制的に変身させれば良かったのではないか?》

 

《それは無理だ建御雷。この『変身』はあくまでも流された力を解放(・・)した姿。『変身』のトリガーは、あくまでエスカルゴ本人にある。故に偽物が神社に来たときは試しにエスカルゴに力を流しても普通の姿のままだったんだろう》

 

《というより、変身すれば自己証明可能だなんて、私も思い付きませんでしたっ!》

 

《それね》

 

全(・)く(・)だ(・)

 

 因みに今回は諏訪子、神奈子様、建御雷、早苗の4柱からの力で変身している。配分的には建御雷の力の割合が大きいので、擬似神化雷神形態だ。

 

「エスカルゴ。八意殿から話は聞いた。くろ〜ん?だか何だか知らんが、貴様の分身なのだから貴様でカタをつけんかい。儂に頼るな。その為の技術なら先日教えたじゃろ。何の為に貴様に稽古をつけた?大切な者を守る為じゃろ」

 

「そうは言ってもよ……取り逃したらまた次の被害者が出るかもしんねーし……。もしヤケクソになったらその辺の妖怪の娘(こ)すら襲うぞアイツ……俺のクローンだしさ……」

 

「会得したか否かッ!?」

 

「……しました」

 

「ならば良し!貴様が戦え!!」

 

「……はい……」

 

「言い訳も口答えも許さん!己が恨みを持つ者なら己で始末をつけるのが道理というものッ!貴様とて理性ある妖怪だ、誰かに恨みを持つなとは言わぬ。だが他力本願は許さんッ!」

 

「わ、分かったよ……俺が殺るよ……」

 

「当然ッ!決して逃がさぬようにな!!」

 

「でも妖夢と幽々子さんと妖舞は避難しててほしいかもしれない……万が一にも……」

 

「たわけ!保険をかけるなッ!!己を追い込め!!そうしてこそ、真に貴様の実力が発揮されるというものじゃろうが!!」

 

「はひぃっ!?なんか今日めっちゃキレてない……?他力本願がダメだからか……」

 

「それだけあなたに期待してるって事よ♪」

 

「幽々子さん……」

 

 妖忌は否定しない。妖夢は少し羨ましそうな目をしている。一方で、長男の妖舞は幽々子さんと俺を交互に見て……そして俺と目が合うなりプイッと目を逸らした。あからさま過ぎる。

 

「……じゃあ、クソクローンが来るまで隠れてます。アイツの狙いは妖夢や……幽々子さんだと思うので。囮にするみたいで何か気が進まないんですけど……」

 

「2人は俺が守るからいいよ。父上は敵を殺す事に集中してて大丈夫」

 

「妖舞……お前は『守られる側』だろ」

 

「大丈夫。敵が来たら父上だと思って斬るから」

 

「おう、そうしろ。……うん?」

 

 難聴か幻聴だろうか。俺だと思って斬る……まぁ、やる気を持ってくれるのなら何よりだ。幽々子さん絡みなのだろうが、今はそんな事はどうでもいい。

 そしてスキマ空間に永琳と共に身を隠し、3人は元通り修行に戻り、幽々子さんはそれを見守る為に縁側に腰を下ろしている。

 すると案外、すぐにクローンが現れた。俺はすぐ飛び出して殺そうとスキマを広げかけるが、永琳が俺の襟首を掴んだ為に、我慢せざるを得ない。今は

「待て」の段階らしい。

 

「……来たぜ妖夢っ♪」

 

「エスカルゴ……!今日は……早いんだねっ……!」

 

「!?……ま、まぁなっ!早く妖夢に会いたくて……あー勿論、我が息子にも会いたくてなっ!」

 

「あら、いらっしゃいエスカルゴくん。早く来たのだから久しぶりにお茶の相手してくれないかしら?妖夢達はまだ修行中だから♪」

 

「は、はいっ!喜んで!」

 

 まずい。演技だと分かっていても嫉妬しそうだ。演技なのに。演技なのに…………アイツが羨ましい。今すぐにアイツの《目》を握り潰して殺したいが、それだと魂を逃がすのでダメだろう。もどかしい。

 

「────後は任せるわよ」

 

「え」

 

 そう呟くと、永琳は監視用の小さなスキマから、紙のような物を結び付けている1本の矢を放った。カツンと砂利に刺さるとそこを起点に水色で球体の結界が広がる。広くも狭くもないだろうか。凡そ、半径5m程度だ。

 

「物理的に触れられない結界よ。……魂を閉じ込めてしまうの。魂を囲むから完全には抜け出せないわ」

 

「そりゃあいいっすね。ならアイツを嬲ってやる!苦しめてやらァ!!」

 

「彼女やお嫁、息子の前でそんな事ができるなら、そうすればいいわ」

 

「……止めるつもりですか」

 

「そりゃあねぇ。子供の教育に悪いからね」

 

「だッ……だってアイツ、フランを……ッ!!タダで死なせてたまるか!オラッ、死ねクソ野郎っ!」

 

「なッ!?なんでオメーがここにッ……」

 

 永琳の制止の言葉も大して聞かず、スキマを広げ白玉楼の庭先に躍り出る。そして永琳の結界の中に入り、一つの剣技を披露する。

 

「霊魔『斬・逆五芒星斬(デビルスタースラッシュ)』ッ!!」

 

 妖魔雷霊剣を取り出して、逆五芒星を描くように斬撃を放つ。四肢は切断、はらわたも肉の隙間からボロリと零れ落ちてきている。

 

「ぐぎゃあぁあぁぁああっ!?いぎっ……ぎぃっ……ぐおおあああぁあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っっ!!ぐ、ぞぉ、がっ……があ゙あ゙あ゙ぁぁあああっっっ!!」

 

「おっとォ、ちゃあんと翼も斬んぞゴラァ!!逃げるんじゃあないぞ!『どこへ行かれるのですか(ドミネ・クオ・ヴァディス)?』お前は『磔刑(たっけい)』だーーーッ!!」

 

 右肩に妖魔雷霊剣、左肩に暗黒斬月剣、首元にはあの折り畳みナイフを刺し、地面に磔にしてやる。血を吐き涙を流し、嘔吐物と共に苦悶の声を漏らす自分の顔を見るのは、どうにも複雑な気分だ。

 

「無様だなぁ、オイ!?俺の女に手ェ出しといて、戦闘の実力はその程度かこのクソ雑魚野郎ッ!!」

 

 こんな雑魚にフランを犯されたのか。そう思うと無性に腹が立ってきてしまう。クローンに……そして何より自分に。情けなくて仕方ない。

 

「はぁ……マジムカつくんだよなぁ」

 

「……!ッ……」

 

「なぁオイクソ野郎、喋りたくても喋れねぇだろ?喉を潰されてるもんなぁ?」

 

 やはり、嬲る時は四肢切断するに限る。それよりコイツ、俺を名乗るクセに、再生が遅いのが何とも面白い。これくらいの基本的な情報も知らないで、俺を名乗っていたのかと思うと笑えてしまう。

 

「────ん?あれ?そういえば永琳先生、これ、魂を閉じ込める結界……なんですよね?」

 

「そうよ」

 

「えっ、でも、魂を閉じ込めるとか『そういう術は私も知らない』……って諏訪子に言ったんじゃ……?諏訪子から聞きましたよ?」

 

「ああ、あれ?嘘よ」

 

 あっけらかんと言ってのける永琳。彼女が一体、何を考えてそんな事を言ったのか……なんというか、少し察せるようになった気がしないでもない。

 

「私のスペルカードを見た事があるなら、何となく分かると思うけれど……私、『囲む』の得意なのよ。それに加えて相手も同じ『不老不死』なら────相性は抜群ってワケなの。私もそう(・・)だから」

 

「なら何で嘘なんて……」

 

「あの場所に魂状態のクローンが居たから。何か、そういう気配を感じたからね」

 

「やっぱり居たんすかッ!?じゃあ、どーして皆で待ち構えてる白玉楼に来たんだよコイツ…………」

 

「私達の会話を、挑発だと受け取ったんでしょう。ま、私は挑発のつもりで言ったんだけど」

 

「ひえっ」

 

「で、挑発にノッたクローンは見事このザマ、と。ふふ、愚か者もここまでくるとただの道化ね」

 

 モガモガと磔から逃げようとするクローン。腕や足は少しずつ再生している。四肢&両翼欠損など、俺なら数秒で完全に再生できる。やはり下位互換、封印されていたとはいえ、やはりゴミクズだ。

 

「俺のツラしといてこんな醜態晒すんじゃあねぇ。情けなくなっちまうだろーがよ。ええ?……へへッ、まだ腕の1本も完全に治んねぇのかよ?」

 

「んんっ!んぐぐぅぅあああううがぁぁああ!!」

 

「……あーそうか。お前が一番苦しむ方法が分かった気がするよ。再生阻害の魔法でも掛けて────」

 

「────ッッ……!?」

 

「永琳先生。……すみません、解除してOKです」

 

「ええ?………………分かったわ」

 

 剣やナイフを抜いてやり、喉に穴が空いたままのクローンの首元を掴んでやり、つい先日も来た暗く寂しい、広い世界へと瞬間移動した。

 

「気付いたんだよ。今のお前にとっちゃ、死こそが救済だってな。だけど、それじゃあダメだ。だからお前は死ぬな。でも死ね」

 

「はぐぅぁあっ!?んぐぁぁああ……ッ」

 

「へへっ、宇宙空間でもないと全力では地獄の力を使えなくてなぁ!『紅蓮地獄(ハドマ)』!!」

 

 使える限り全力で紅蓮地獄の力を引き出し、憎きクローンを凍らせてやる。四肢両翼欠損状態で顔も何もかも氷に覆われていく。しかしコイツも妖怪、窒息死はしないのだろう。

 俺は氷の塊となったそいつを、サッカーボールを蹴るようにガツンと力強く蹴飛ばしてやり、宇宙の塵とした。

 クローンは地球へは戻れなかった。氷塊と生物の中間の生命体となり宇宙空間を彷徨うのだ。そして死にたいと思っても死ねないので────そのうちクローンは、考えるのをやめた。




「くろ〜ん」って書くと急に可愛くなるのウケる。厳格な妖忌がこう言ってるのかと思うと、書いてて思わず笑ってしまった。
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