※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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フランドールvs時間操作組

「ルールを決めましょ?弾幕格闘でいいよね?」

 

「ええ、そうしましょう。そうでもないと妹様には手も足も出なさそうです。しかし、私への手加減は無用ですので」

 

「分かってる。スペルカードは5枚、3回の被弾で負け。勿論、拳もアリだよ?これでどう?」

 

「5枚、3回…………分かりました。それでは……」

 

「始めッ!!」

 

「!!」

 

 門の前で美鈴が見守る中、フランと弦月姫は弾幕格闘で戦い始める。

 しかし「格闘」なので、フランはその身体能力を活かす為、地面を思い切り蹴って弦月姫に迫った。慌てず騒がず、弦月姫は一瞬だけ時を止め最小限の動きで横に回避。

 フランは時間停止される事など分かっていたのでまるで時間停止が効いてないかのような、凄まじい反応速度を発揮して、横に回避したはずの弦月姫の左腕を鋭く伸ばした爪で切り付ける。

 

「あぐっ……!」

 

「もう一撃目が入った。ねぇどう?お父様と仲良く(・・・)したいなら、今ここで私に勝たないとね?」

 

「勿論、です……っ!!」

 

 弦月姫は大量のナイフを取り出し、遂にスペルの宣言をし、発動させる。フランは思わず口元を歪め彼女の弾幕の到来を今か今かと待ち受けていた。

 

「メイド秘技『お仕事は効率的に』!!」

 

 瞬間、弦月姫の輪郭がブレた。すると、フランの目の前にナイフが現れ……膝の周辺にも数本、左右の脇腹の周辺にまで何本も設置されていた。密度こそ薄いし、普通にこんな技を使えば周囲からは不可能弾幕だと批判を浴びそうなものだが……。

 前後左右を、高低差を埋めるようにナイフが配置されていて、こんな弾幕だとしても彼女達吸血鬼にとっては不可能弾幕ではない。回避できるからだ(・・・・・・・・)。

 

「ふーん、思ったより鬼畜だねぇ……本気なんだね。秘弾『そして誰もいなくなるか?』!!」

 

「あっ!!」

 

 紅い霧と化したフランは、弦月姫の不可能弾幕に近い弾幕を難なく回避してしまった。あと数秒分、弾が速ければ被弾させられていただろう。

 弦月姫はそれに気付き、心の中で後悔していた。そうすれば一矢報いることができたのに、と。

 

(私は既に一度被弾している……。あと2回で、私は負けてしまう……どうにかしなければ…………)

 

 弦月姫はマルチタスクが少々苦手だ。今回は少々考えすぎて、周囲がよく見えていなかった。

 前後左右から大量の弾幕が迫ってくるが弦月姫はそれへの反応が遅れてしまい、更には時間停止すら間に合わず、傷付いた左腕に被弾してしまった。

 

「ひぐぅっ……!普段より、濃い……っ」

 

「当然でしょ?彼を独占したいんだから、いつものお遊びじゃ済ませないよ」

 

 どこからともなく彼女の声が響いてくる。空から地から、まるで声に包まれているような妙な感覚に襲われ、弦月姫は無意識に頭を抱えてしまう。

 前後左右上下も構わず声が響いてくるなど、どう考えても気味が悪いの一言しかない。《植物を操る程度の能力》が覚醒しかけた当時のように、彼女はまた「声」によって追い詰められてしまった。

 更に、外界を遮断した事により感覚が鋭くなったなんて事は起こらずに、フランの全方位から攻め、囲うこの弾幕により、弦月姫は呆気なくダウンしてしまった。

 

 

 ◆

 

 

「はい、私の勝ち〜。てなワケで、咲夜の日は私がエスカルゴと寝るね?」

 

「っ……はい……」

 

 次に、フランはモルモーの居る、地下牢の最奥へ足を運んだ。そこでは、地下牢とは思えない生活感溢れる妙な個室を形成したモルモーが、のんびりと葡萄を食べてゴロゴロ過ごしていた。

 

「随分と呑気に過ごしてるね?奴隷さん?」

 

「お陰様でね〜。で、フランちゃん、だっけ?このモルモーちゃんに何の用?」

 

「あなたとエスカルゴはいつ一緒に過ごしてるの?規則性は無いように見えるけど」

 

「無いわ。完全にエスカルゴくんの気まぐれだし」

 

「……フーン。ならいいや」

 

「ちょっとちょっと。そっちだけ一方的に話して、勝手にどっか行かないでよ。モルモーちゃんにも、詳細くらい教えてよね〜」

 

 ここで無視しても、脱獄されたり、またしつこくダル絡みされるのが何となく分かった故、フランは小さく溜め息をつき、単純な言葉で返す。

 冷たい目で、ぶっきらぼうな声で……。

 

「エスカルゴ、独占する。邪魔者、倒す。それだけだけど?」

 

「ふーん?独占、ねぇ。それ、彼のハーレムを壊すつもり……ってコトよね?」

 

「壊さないよ。たった1日だけ、を何回か繰り返すつもり。でもその望みすら邪魔されるかもしれないから……全家庭に話を通して、エスカルゴを独占する権利を手に入れるの。でも、多分そうすると思う」

 

「えー……何日も独占される可能性があるの?それは嫌だわ、モルモーちゃん寂しくなっちゃう」

 

「……私の邪魔、するつもり?」

 

「するつもりィ〜♡」

 

「じゃあいいよ叩き潰してあげる。時計台の所でもいい?」

 

「オッケーオッケー。モルモーちゃん、こう見えてデイウォーカーだしぃ……お日様の力だって、完全に無効化できちゃうもーん♡」

 

「その喋り方ウザイよ。可愛いと思ってやってる?それなら引くけど」

 

「……なぁにぃ?ヤケに言うわね、モルモーちゃんの子孫のクセに」

 

「モルモーちゃんの子孫……だからじゃないの?」

 

「フンッ……可愛気の無いヤツね。エスカルゴくんもどうしてこんなガキに惚れたんだか」

 

「殺すよ?」

 

「……」

 

 メキメキと格子を折ると、モルモーは地下牢から脱出。フランと並んで館の中を歩き、時たま戦闘の場として使われる時計台の前へやってきた。

 

「言っとくけどぉ、モルモーちゃんって時間魔法をトコトン究めてるんでぇ?そう簡単には勝てないと思った方が良いと思うよ〜」

 

「紅魔館には、時間停止ができる人が2人も居る。もう慣れっこだよ」

 

「ンフッ……本当にそうかなぁ?私、咲夜の上位互換だからもうちょっと凄いコトできるよ?」

 

「知らないよそんなの。ルールは、スペカ3枚に、被弾1回で負け。じゃ……始めッ!」

 

「あははっ!そんなに焦っちゃって、カワイー♡」

 

「焦ってないッ!禁忌『レーヴァテイン』!!」

 

 真っ赤に燃え盛る炎の剣、レーヴァテインを出しモルモーに襲い掛かるフラン。滅茶苦茶に剣を振り紅い弾幕を生成するも、モルモーは軽く回避する。さながら時を止められているかのような正確無比な回避だが、時間停止回避特有の術者のブレが無い。つまり自力で全て回避している。

 フランのこのスペルには、規則性がある。しかしモルモーはそれを知ってか知らずか気合い避けしかしていない。

 彼女がバカではないのは、フランも知っている。故に、この規則性を見抜けないはずないと気付き、モルモーに舐められている……と感じてしまった。

 

「ねぇねぇ、あなたは知ってる?エスカルゴくん、時間に関する能力が手に入るとしたらどんな能力を欲しがってると思う?」

 

「ッ!?知ら、ないっ……!はあぁぁあああっ!!」

 

「ふふっ、そんなに無闇に振っても当たんないよ?モルモーちゃん、最強最カワですしぃ♡」

 

「最強はエスカルゴっ、最カワは、私ッ!あんたの出る幕は無いっ!やあああぁぁっ!!」

 

「んもー、当たんないってのにぃ。……まぁだスペルカード作ってないんだよねー、どーしよ。ま、別に適当に魔法使えばいっかぁ」

 

「!!」

 

「あ、さっきの答えね。エスカルゴくんは、時間に関する能力………………ぜ〜んぶ欲しいんだってさ〜♡欲張りすぎてヤッバイよね♡ 惚れ惚れするぅっ♪」

 

「っ……。イイじゃん、エスカルゴはそういうとこも良い所って言えるもん。流石に、全部は欲張りだと思うけど、ねッ!!」

 

「ぴゃっ!?」

 

 剣を振り、更に剣を振り、密度を増やしていく。モルモーも次第に焦りを覚え始め、ほんの少しずつ時間停止を使うようになっていく。

 

「エスカルゴくんが言うにはぁ、停止、巻き戻し、スキップ、早送りが揃えばもう最強なんだって〜。最強ではなさそうだけど、でも、限りなく近くなるかもしれないよね。ね、どう思う?」

 

「はいはい、強い強い!なんでもいいよっ!!私が勝てば、それでッ!!」

 

「危なっ─────」

 

 チリッと弾幕が頬を掠める。それを見てフランは思わず舌打ちをするが構わず更なる追撃を加える。酷く弾幕の密度が増してくるが、モルモーは時間を止めてしまっているので被弾のしようがない。

 だがそこでフランに向かって攻撃をしないのが、モルモーがフランを舐めているという、何よりの証だった。

 

「何だっけぇ?止めるのが『ザ・ワールド』、巻き戻しが『バイツァ・ダスト*1』で……あとスキップが『キング・クリムゾン』、加速は『メイド・イン・ヘブン』なんだよね?エスカルゴくん言ってたし」

 

「ジョジョのボスじゃん!エスカルゴ、ジョジョにハマりすぎっ!でもそんなの、仮に使えたところで使わせたりしないから!!」

 

「それはどーかな?────」

 

(ッ───!!凄い濃密な魔力が溢れて……これは、まずい…………ッ!?)

 

「──────」

 

「禁弾『スターボウブレイク』!!」

 

 詠唱が要らないはずのモルモーが、魔法を使う為詠唱を始める。ただの時間停止ではない攻撃が、次発動する。察したフランはレーヴァテインを解除し更なる高密度な弾幕で力押しする事にした。

 

「これで…………どうだああああっ!!」

 

「────こっちのセリフよん♡」

 

「ジョジョのボスじゃん!エスカルゴ、ジョジョにハマりすぎっ!でもそんなの、仮に使えたところで使わせたりしないから!!」

 

「ぷぷっ♡……それはどーかな?」

 

「どうもこうも無い、すぐにぶっ倒してやるから、今すぐ覚悟の準備──ジョジョのボスじゃん!エスカルゴ、ジョジョにハマりすぎっ!でもそんなの、仮に使えたところで使わせたりしないから!!」

 

「くふっ……あっははははははっ!おっもしろ〜!!壊れたレコードみたい♡」

 

「は……?気持ち悪い……何笑ってるの……?」

 

「あなたがあまりにも面白いからさ〜……くふふっ、最っ高だわ♡」

 

「何が最高なんだか、全く意味わかんないっ!禁弾

『スターボウブレイク』!!」

 

「そのスペカ、2回目よ♡」

 

「…………え?」

 

「巻き戻してるからね。スペルカードはこれで残り0枚!ご愁傷様で〜す♡」

 

「なっ……!?そんなの反則!!」

 

「え〜?得意の魔法を使ってるだけなのに反則とかそっちの方がズルいんですけどー」

 

「!」

 

「じゃあいいよ、こっちにしよ────」

 

 次の瞬間、フランの視界からモルモーが消えた。更に、フランの「スターボウブレイク」の虹色弾幕なんかもすっかり消え失せていた。

 相殺されたのではない。フランが感じた手応えやこの感触は「撃ち終わった」時のもの。記憶に無い事だけが不安だが、確かに、とっくに「スターボウブレイク」を撃ち終わっていた。

 

「何処行っ……」

 

「────おバカさん♡」

 

 モルモーは、背後に居た。フランは振り向こうとするが、それより早くモルモーが手刀を彼女の首にトンッと打ち付けてやる。フランの視界は呆気なくブラックアウトし、地に落下してしまった。

 凄まじい耐久力を誇る吸血鬼だが、同族の攻撃の強さは当然だが同族に通用する。ましてやモルモーなんかは神話の時代から生きている。その強さは、折り紙付きならぬ血統書付きだ。

 

「はい残念、モルモーちゃんの勝ち♡……時間関係に慣れてるって油断してたのが運の尽きだったわね、フランちゃん♡」

 

 繰り返しになるがモルモーは永い時を生きる中で時間魔法を究めている。究めるというのは言葉通りこれ以上なく成長させる事である。

 その効果は何も「時間の停止」のみに留まらず、

「時間の巻き戻し」、「時間のスキップ」、果ては

「時間の加速」まで含まれている。

 時を集めて空間拡張という、十六夜母娘の特有の技術は、そもそも真似しようとすらもしていない。もしもこれを真似しようとすれば、コツさえ掴めばモルモーとて真似できるのだろう。

 基礎は全てに通ずる。この事実を当てはめれば、時間操作が万全なモルモーなら、応用である時間を集める事も可能だろう。

 

 

 ◆

 

 

「────っ!」

 

「あらぁ、お目覚め?ぐっすり眠ってたじゃない」

 

「……モルモー……。私……負けたん、だね……」

 

「このモルモーちゃんが子孫に負けるワケないし、落ち込む事は無いわ〜。負けて当然の戦いなのよ。負けイベってヤツ?」

 

「……」

 

「あ、そうそう。今、私ね、エスカルゴくんに錬金魔法と合わせて時間魔法も指導してるのね?」

 

「…………えっ」

 

「もし彼も時間を操作できるようになったらまさにサイコーよねっ!完璧な時間操作ができるのなんてこれまでモルモーちゃんだけだったのに、それが、愛し合う2人が同じ力を持つ!対等って感じよね!や〜ん、もっと分かりやすく教えたくなっちゃう♡時の止まった世界で2人で愛し合って……きゃー♡」

 

「……咲夜も弦月姫ちゃんも居るけどね」

 

「そこはぁ……まぁ…………モルモーちゃんも、少しは特訓が必要かしら……。完璧とは言ってもその2人に私の時間魔法はほぼ通じないしね……はぁ」

 

「もし咲夜達の対策をしたら、エスカルゴ対策にもなっちゃうよ?エスカルゴが動けるのは、咲夜達の細胞のお陰なんだから」

 

「……!あの雑味は咲夜達の血の味かぁ……成程ね。でもさ、エスカルゴくんに私と同じ魔法を教えるんだから、私が咲夜達の対策をしても、魔法を使えるようにさえなれば私が成長しても彼も一緒に動けるようにもなるわ」

 

「……」

 

「と、いうワケで!モルモーちゃん相手に彼の独占するのは絶対に許しませ〜んっ!他の誰かなら別に構いませ〜ん!」

 

「……分かったよ。もしエスカルゴから『モルモーに会いたい』って言ったら、会わせてあげる」

 

「うん、それでいーよぉ」

 

 しかし、フランは確信めいたものを感じていた。もしも自分と2人きりになったとき、エスカルゴが自分から「他の女に会いたい」と言う事は無いと。

 そしてモルモーに負けはしたものの、結局自分の

「独占」が揺らぐ事はないと、心の中で密かに安堵していた。

*1:
ジョジョ4部「ダイヤモンドは砕けない」のラスボス、吉良吉影のスタンドである「キラークイーン」の第三の爆弾。詳細は省くが、時間を「爆破」する事により、一時間だけ時を巻き戻す能力を持つ。




「究めてる」上に「咲夜の上位互換」を自称する位なので時間スキップもできて当然です。隠し玉ってヤツです。
でもやはり正しくは「相互互換」なのでしょう。
巻き戻しって、何気に怖い……。
キラークイーンのバイツァ・ダストと違うのは術者本人が「巻き戻った」事を認識できている点です。
バイツァ・ダストは吉良吉影でさえ巻き戻った事を認識できません。直接ではなく、「何かを介して」察する事ができる程度……らしいです。
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