※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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結果オーライ?

 お父さんが隕石を破壊してから数時間後。私達は人里の宿に戻って身体を休めていた。明日から早速始まるんだ。破片探しが。

 隕石の破片は幻想郷の方々に散っていった。もしアレを探すとするなら極めて広範囲になるだろう。凄く大変な作業になるに違いない。更には、それの正体によっては更なる面倒事が潜んでいるだろう。

 私は、いやお父さんも、憂鬱な気持ちでいっぱいだった。ただ1人、蓮子を除いて。

 

「ワクワクするわねッ!」

 

「面倒事が増えたわ……」

 

「考えようによっては楽しい事になるわ!だって、ほら、後回しにした『幻想郷巡り』ができるし!」

 

「……そう考えれば楽しみに昇華できる?……の?」

 

「何で疑問形なのよ?だって、面倒事しかないって決まった訳でもないじゃない?」

 

「希望的観測は外れるものなのよ、蓮子。ほぼ常に絶望的観測を頭に入れておかなくちゃ」

 

「はぁ〜……まぁそれも必要だとは思うけどさ。何が起きても死なないっていうのは安心を齎してくれるものなのよね」

 

「思考が不老不死(それ)に順応するの早すぎよ」

 

「えっへへへ……」

 

 でも、身体の強度は私達妖怪と違いただの人間のままだから、「絶対に死なない」というだけで安心できるという理屈は分からなくもない。

 だからって無茶しまくるのはやめてほしいけど、蓮子の事だしあんまり私の言う事は聞いてくれないだろう。そこはもう諦めた。

 

 

 ◆

 

 

 隕石が落下してきた次の日。宿を出た私達は早速昨日の隕石の欠片について聞き込みを始めた。

 まず最初は人里の調査からだ。「灯台もと暗し」なんて事にならないよう、身近な人里から順繰りにしっかり調査していく予定だ。

 とはいえ、その辺の人に聞き回ったとしても洋服女子の2人組なんて、和服メインの人里ではかなり浮きまくるので、奇異の目で見られるし、なんなら避けられる対象とも言える。

 それならばと、人が多く集まるであろう飲食店の店員に尋ねることにした。そして聞く相手は妖怪。その方が寧ろ調査もしやすいというものだ。

 

「ねぇメリー、こんな人間だらけのところで本当に妖怪が働いてるの……?」

 

「ええ。お父さんの彼女が1人。だからお父さんのコネで何か情報を貰えたりしないかなってね」

 

「へ〜……屋台じゃなくってちゃんとした飲食店にも妖怪が居るんだ……凄いなぁ……」

 

 ワクワクした様子で店に入っていく蓮子。しかしその直後、彼女の悲鳴が響き渡る事に……。

 

「いらっしゃ〜い」

 

「ぎゃあああああああああぁぁぁ〜〜〜ッ!?」

 

「どうしたの蓮子!?」

 

「なななな生首生首生首ぃぃいいぃいいいい!!」

 

 流石の蓮子も、目の前に急に生首が現れたら驚くらしい。いや、これが普通の反応か。蓮子にも人間らしい部分があるのか、と少し嬉しくなった。

 少し前までは確かに彼女も人間だったのでこんな考えは失礼だと思うが。

 

「ああ……成程ね。お父さんの彼女って、あなたの事だったんだ、赤蛮奇……」

 

「……?あなたは?悪いけどあなたみたいな知り合い居ないと思うけど」

 

「エスカルゴの娘。八雲茜だよ」

 

「あの金髪の子供っ!?いや……、アイツの娘は長女ですら子供の姿のはず……」

 

「私に限っては身体だけ成長が早いの」

 

「……母親が母親だし、納得できる話ではあるけど。で、どうするの?」

 

「どうするって?」

 

「食べてく?友達、後ろでガクガク震えてるけど」

 

「……どうするの蓮子?」

 

「だ、大丈夫っ、ちょっとビックリしただけだから大丈夫っ……!」

 

「そ、ならいいけど。……2名様入られまーす」

 

「「いらっしゃーい!!」」

 

 フヨフヨと浮かぶ赤蛮奇の頭に案内されて私達は席に着く。頭が浮いてるというこの光景も、周りの客達は全く気にしていないらしい。

 つまり、赤蛮奇が妖怪である事を知って来ているという事だ。妖怪が人里で受け入れられている──これは凄い事だ。

 お父さんの場合は、威圧してる節もあるので少し良くないが、赤蛮奇はそういう事をしている様子も無い。なのにキチンと受け入れられているし本人もキチンと働いている。凄い。進歩している、としか言えない。

 

「注文が決まったら呼んでね」

 

 赤蛮奇はそう言うと、厨房の方へ戻っては料理を頭に乗せ他のテーブルに運び始めた。他の従業員も居るので彼女だけが働いているという訳でもないがなにぶん客が多い。彼女の頭を複数出せる能力が、かなり役立っているようだ。

 1人で数箇所から注文を取れ、運べるのが何より大きいだろう。

 

 

 ◆

 

 

 やがて料理が運ばれてきて、赤蛮奇の本体と会話する機会が巡ってきた。

 

「お待ち遠様」

 

「ねぇ、ちょっといい?聞きたい事があるの」

 

「……何?」

 

「昨日、隕石が爆発した事件があったの、わかる?私達、その破片を探してるの」

 

「何で?」

 

 チラッと蓮子を見るが私が望む「明確な答え」は蓮子も持っていないらしく、静かに目を伏せた。

 少々答えに詰まってしまうが、とにかく、思った事をそのまま伝えてみよう。それなら彼女のような少し気難しい者にも想いは伝わるはずだ。

 

「嫌な予感がするから、かな。明確な理由は無い。ただ気になるだけ、なんだけど……胸騒ぎがしてさ。なんて言えば分からないんだけどね……」

 

「ふぅン……。まぁね、気になるってのは分かるよ。何なら1つ、破片持ってるけど……見る?」

 

「「えっ!?」」

 

「家に置いてあるから、仕事が終わったら来なよ。今日はあと5時間後くらいに終わるから、店の前で合流しよう。帰宅ついでに見せてあげるよ」

 

「あ、ありがとうっ……!」

 

「ありがとう!あなたも良い妖怪ね!」

 

「何それ」

 

 少し顔を綻ばせて、仕事に戻ろうとする赤蛮奇。しかしすぐに踵を返し、少しトーンを落として何かシリアスな面持ちでヒソヒソと言った。

 

「……そうだ。1つだけ、訂正させて」

 

「?」

 

「私、アイツと付き合ってないよ」

 

「えっ!?」

 

「何でもう付き合ってる事になってるのか、意味がわからないんだけど。とにかく、付き合ってない。それだけ訂正ね」

 

「そ、そうだったんだ、なんかごめん……」

 

「別に。こんな私にデレデレする男なんて、アイツくらいだしね。周囲から見たら付き合ってるように見えるのかもだけど。……っとに迷惑……///」

 

「でも満更じゃないんでしょ?」

 

「ッ!?」

 

「ちょっと蓮子っ……なんでそうストレートに……」

 

「じゃあ、付き合っちゃえば?付き合ってないのにデレデレしてるんだったらさ、エスカルゴも断りはしないんじゃないの?あなたの口振りからも、彼を嫌ってるようには思えないし」

 

「……別に。今は……これでいい。客と店員、それで満足。下手に距離を縮めたら……相手の嫌な所まで、見えてきそうだから」

 

「嫌いになるのが怖いの?」

 

「さぁね。子供に話せるのはここまで。他人の恋愛事情に首突っ込むのは野暮だ。これ以上はやめて。隕石の欠片、見たいんでしょ」

 

「うぐ……。分かったよ、これ以上は何も言わない。それでいい?」

 

「OK。じゃ」

 

 

 ◆

 

 

 数時間後。私達は再び赤蛮奇の働く店へ。店前で彼女と合流して、彼女の住まう江戸時代さながらの長屋へと移動。

 気難しめだからか家には上げてくれなかったが、玄関でその隕石の欠片を見せてくれた。素手で石に触りたくないからなのか、彼女は両手に厚い手袋を着けている。

 

「わぁ……何これ水晶……?鉱石と宝石が合体してるみたいな見た目だね……」

 

「鉱石と宝石というよりは、宝石の原石ね。でも、何、この感じ……何か変に冷たい感じ。赤蛮奇さん、この石はどこで見つけたの?」

 

 成程、確かに蓮子の言うように原石にも見える。無色透明な部分、赤黒くも黒くも見える石のような部分が少し謎ではあるが。

 そしてこの石を見た時から妙な違和感があった。蓮子は何か掴んだだろうか。

 

「見付けたんじゃなくて、コレが屋根を突き破って落ちてきたんだよ。だから今は、適当に当て板して穴を塞いで雨漏りを防いでる」

 

「あっぶな……」

 

「お客さんから聞いたけど、私の他にも、そういう

『危なかった』パターンの人は居るみたい。あと、人里にもそれなりの数が落ちてきたからさ、隕石の欠片を持ってるのは人里にも結構居たはずだよ」

 

「居た(・)?過去形なのはどうして?」

 

「この石、日光に当てると溶けて消えるんだって。その噂を実証すべく、多くの人が日光に当てたって専ら噂になってたよ」

 

「あ、だから玄関(ここ)で見せるって事か……」

 

「そう。今の時間帯だと角度的に日光が当たらないからね」

 

「……因みに、これを日光に当てるのは?」

 

「ダメ」

 

「でっすよね〜」

 

「……この欠片、宝物にしたいと思ってるんだけど、どこか不気味でもあるんだよね」

 

「不気味?主にどこら辺が?」

 

「だってこの欠片、血腥いよ。まるで、この欠片で誰かを殴り殺したかのように、血の匂いがする……。それに……この透明な部分は多分、石じゃない。この透明の部分は氷だと思う。冷たいしね」

 

「こ、氷……!?なのにこの透明度……空気とか全く含まれてないよ、この氷……。科学世紀とか言われる現代日本でもこの透明度の氷は高い値がつくはず。それがどうして隕石として降ってくるの……?」

 

 この鉱石のような物体の殆どを包んでいる透明な物体は、鉱石ではなく氷らしい。確かに手を翳すと冷気は感じられるが、氷だとは……。

 

「宇宙に水分があって、それが凍った……?大気圏の突入でも溶けきらない程の分厚い氷だったのかな」

 

「もし仮に水分があったとして、だよ。それじゃあこの鉱石みたいな部分は一体何なんだろう?メリー何かわかった?」

 

「全然。サッパリよ」

 

「んー……ねぇ赤蛮奇さん、これを手で温めて氷だけ溶かすとか、そういうのはダメ?」

 

「……それなら……いい、かな」

 

「ホントッ!?やった、ありがとう!じゃあ、それ貸して!」

 

「落とさないで」

 

「わかってるわかってる!うわ冷たっ……うん、これホントに氷だ!」

 

 素手で触れば氷はすぐに溶ける。遂に鉱石部分の黒っぽい部分が露わになる──とワクワクしながらそれを覗き込んだ、その時。

 

「えっえっえっ!?えええっ!?どっ、どうしようメリー!?」

 

「わわっ、煙になった!?」

 

「ちょっと……何で消えるの……ッ」

 

 氷が溶け出したかと思うと、中の黒い鉱石部分もシュワシュワと溶け出し、蒸発。蓮子の手の中には残り少ない溶け掛けの氷だけが残った。

 

「うわあああああっ!?ごめんなさい赤蛮奇さん、まさかこんな事になるなんてっ……!?」

 

「……いいよ、別に。所詮、タダの石だ」

 

「本当にごめんなさいぃぃ……」

 

「いいって。……どうしたの、茜?」

 

「えっ?あ、うん……あの消え方……どこかで……」

 

「消え方?何かが蒸発する時は、大体あんな感じの消え方なんじゃない?石が蒸発なんて、聞いた事もないけどね」

 

「そう、だと思うんだけど……ねぇ蓮子、この消え方どこかで見た事ない?」

 

「え?あぁ、エスカルゴが消えた時にそっくりね!しかも血の匂いがしただなんて、エスカルゴの肉片とかじゃないのこれ?あはっ、そんな訳ないか!」

 

「あー、確かに、お父さんの消え方に似てたね……」

 

 なら後でお父さんに聞いてみる事にしよう。何か分かるかもしれない。

 私は、お父さんの血を強く引いてる訳でもない。だから、血の匂いだと言われても、どこの誰の血の匂いなのか、とかそういうのは分からない。

 赤蛮奇だって、妖怪なので「血の匂い」という事くらいしか分からないようなので、そこは吸血鬼のお父さんに聞くのが良さそうだ。

 そうすればあの鉱石……のようなあの物体の正体も分かるだろう。

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