※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活   作:エスカルゴ・スカーレット

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怠惰の悪魔

「あ゙〜〜〜ッ……あっつぅ〜〜〜…………もう夏だぁ、この季節は何度体験してもムカつくしダルい……」

 

「ムカつく……?」

 

「逆にムカつかないの霊魔ぁ!?暑いし、やる気も強制的に0にさせられるしさぁ!」

 

「僕は初めて体験するからよく分かんない……」

 

「……そーだ、あんたまだ0歳なんだ……お父さんの子は基本的に成長が早すぎるから、私も未だに混乱するんだよな〜……」

 

「それは仕方ないって。私と霊魔は吸血鬼だけど、お姉ちゃんは半妖で成長は比較的人間的だしね〜。でも最近は成長も遅いんじゃない?」

 

「そーそー、そーなんだよねー。いよいよ本格的に成長止まったか〜!って感じ」

 

「……?全く分かんない……霊愛お姉ちゃんのどこが成長止まってるの?」

 

「具体的に言うと……髪があんま伸びなくなったね。この前お父さんと里に行ったきり、変化無しだよ。ま、変化なんて無くていいけど」

 

「へー……」

 

「これは多分、長年お姉ちゃんを見てきた私にしか分かんないから仕方ないよ、霊魔♪」

 

「なんか悔しい」

 

 子供達が風通しのいい縁側で話していると、そこよりは風の来ない室内にいる霊夢が、怠そうな声で3人を呼び付けた。

 

「ほらぁあんた達ィ、そろそろ掃除とか諸々の仕事始めなさいよねー」

 

「朝から暑いのにやぁだぁ〜っ!吸血鬼は暑いのに弱いんですー!」

 

「あんたは半妖でしょうよ、というか寧ろ誰よりも動くべきなんだから……!」

 

「嫌すぎる……!霊魔やってよー、ダルいからー!」

 

「えぇ……」

 

「コラ、弟に投げるんじゃないわよ、ったく……」

 

「だってぇ、ダルいんだもーーーん!あ、そーだ、樹理愛に雲出してもらお!」

 

「紅霧異変モドキになっちゃうでしょうが、迷惑になるからやめなさい」

 

「能力の悪用に当たると思うよ」

 

「弟なのに尤もらしい事言わないでよーっ!ねー、霊麗は何か良い案あったりしない!?」

 

「あるよー」

 

「おっ!さっすが霊麗、頼りに……」

 

「さっさと終わらせることっ!そうすれば、あとはダラーリ、ノンビリできるよ?」

 

「UGAAAAAAAAAAA!!そういう事じゃあないんだよぉ〜〜っ!!ヤダヤダ、ダルいのー!!今日は働きたくないいいい!」

 

「騒いだら暑くなるだけなのに、バカね」

 

「ぐぬぬぬぬっ……うぐぅぅっ、暑い…………!!」

 

 その時、博麗神社の境内に、輝く魔法陣が出現。鈍い光と共に邪悪な気配が溢れてくる。ドロドロと粘つくような、気持ちの悪い気配。湿気のようにも感じられる。

 

「見付けちゃったぁ……お前さー、そんなダラしない生活してると太るよ〜?」

 

「んなっ……!?開口一番、何なのこいつ!?」

 

「ダラしない怠惰なヤツに取り憑くのが、アタシの仕事なワケよ。でもそれすらもダルいからさ〜……。

『悪魔に取り憑かれたくなければ生活を改めろ!』みたいに注意してまわってんだよ、世界中〜」

 

「いや、あんたは何なのって!」

 

「アタシィ?怠惰の悪魔、ベルフェゴールってモンだよ。こんな未開の地の住民じゃあ、七つの大罪は知らないかな?」

 

「……知ってる?」

 

「うーん……知らなーい」

 

「僕も知らない」

 

「これだから未開の地は……。怠惰なヤツもあんまり居ないし、何だってルシファー様は、こんな世界を選んだんだか……やれやれだよ全く」

 

「つまり敵なの?」

 

「敵ィ?……少なくともお前の味方ではないな」

 

 ベルフェゴールはニタリとギザ歯を見せて笑う。戦闘態勢に入る霊魔と霊麗は霊愛を守るように前に立つ。霊愛も戦おうとするも、頭も沸騰するような夏の暑さとダルさ、更にそこに「自分がヤバい奴に狙われている」という尻込み要素も加わってしまい彼女は中々戦闘態勢に入れなかった。

 そんな中、縁側に出てきた霊夢が、子供達、更にベルフェゴールにもわざとらしく声を届けるようにして言う。

 

「エスカルゴによると、『元々ソイツは神様だったハズだ。バアル・ペオルって名の神様を前身とする悪魔で、好色の罪を司る面もあるぞ。ベルゼブブの配下でもあり、彼の料理長であり権天使の長のニスロクと同一視する説もある』……だって」

 

「えっ……お母さん、お父さんと通信!?」

 

「エスカルゴと通信してる諏訪子を降ろしただけ。コイツは、私達で片付けるわよ。今回ばかりはもう仕方ない。霊愛は引っ込んでなさい」

 

「……うん」

 

 霊夢が境内に出ると、霊愛は縁側まで後退する。結界を張り3人と大悪魔の戦いを見守る事にした。

 ベルフェゴールは、余裕そうな表情を崩さない。霊魔はともかく、霊麗すらも足が竦む程の凄まじい気配を放っている。霊夢は、娘が標的にされた事の怒りを隠さずに、彼女も彼女でとてつもない気配を放ちベルフェゴールに相対している。

 すると突然、ニタリとしていたベルフェゴールが焦りのような表情になり、尊大な雰囲気もすっかり消え失せてしまった。

 

「えっ……ちょっと待って。アタシ本気で殺される?そこまでガチられるような雰囲気出してない……と、思うんだけどな…………え、ダメ……?」

 

「あー?あんたが私の娘に手ェ出そうとするから、それならそれ相応の対応をしようって言ってんの」

 

「あーそれは分かる。母親として娘を守りたい……、そういう事か。だが……」

 

「そうじゃない。ああ見えて、あの子は、この世界そのものにとって大事な存在なの。もう少しで私はこの仕事を引退するから、そうなったら、あの子に私の仕事を継がせる。もしそんな子が怠惰になればこの世界のパワーバランスは崩壊……世界の崩壊にも繋がりかねないわ」

 

「…………マジ?」

 

「ええ」

 

「じゃあ、スマン!」

 

 パァンッ!と良い音を鳴らして手を合わせると、ベルフェゴールは頭を垂れる。予想外の行動に霊夢含め全員が呆気に取られる。

 敵意は無いとアピールする為かベルフェゴールは境内にそのまま座り胡座をかく。両手は足の上で、もし霊夢達が襲いかかってもすぐに動けなさそうな格好だった。

 

「どういうつもり?」

 

「どうもこうも、世界の崩壊の一端を担うのは少し気分が悪いだけさ。アタシは、マモンや他の輩とは少し気質が違うんでね。七つの大罪のはみ出し者、それがアタシ。誰かを怠惰にさせて、そいつの怠惰エネルギー的な?気質的なのを吸い取って、自分のエネルギーにするのが目的なんだけどさ〜……ほら、ダルいじゃん?」

 

「……」

 

「え、まだ怪しむ?……だからぁ、世界を壊すのは、アタシとしても本意じゃないんだよ!ぐーたらするバカ共を観察するのがアタシの趣味だからさぁっ!世界を壊しちゃったら趣味が成り立たないじゃん?そんくらい伝わるっしょ!?」

 

「……まーね」

 

「その子をダメにしただけで世界が終わるんなら、アタシはこの世界から手を引く。……けどね、紅白とぐーたら娘。これだけは言っとくよ」

 

「……紅白……」

 

「……ぐーたら娘……」

 

「アタシは全世界を視てる。もし、次もぐーたらとしていたら…………その時は、本気で取り憑くよ」

 

「ッ……」

 

 

 ◆

 

 

「はー、やっぱ自分の世界が落ち着くわ〜。さぁてあのチビッ子はまともに働いてるかなーっと…………お、ちゃんと掃除してんね。やればできるじゃん」

 

「────こんにちは、ベルフェゴール」

 

「んぁ?誰だ?……アタシの世界に入れるなんて……あんたも大悪魔(なかま)かな?」

 

「俺の事はどうでもいい。お前を殺しに来たよ」

 

「あー?アタシ、どっかで恨み買ったかな……」

 

「神からの仰せだ。というワケで────殺す」

 

「え、待ってよ、身に覚えがないのに殺されるのは流石に嫌なんだけど?」

 

「Kneel before me!」

 

「へ?……何だと?」

 

「跪けって言ったんだ。……選択肢は用意してやる。未来の悪魔使いに仕えるか、今ここで死ぬか、だ」

 

「は?意味不明。誰かに仕えるとかダルいし」

 

「そうか。殺さずに済むなら、と思ったんだが……。なら、死ね」

 

 俺が右手をギュウッと握ると、ベルフェゴールの肉体は爆発四散。彼女の世界が消える前に俺は瞬間移動で元の世界……魔界へと退散した。

 

《殺したよ》

 

《……ありがとうね。あの子……ベルフェゴールは、怠ける心に漬け込む。だけどあの子自身も怠け癖があるから、そこまで大事に至った事は無い。でも、これ以上は見過ごせない。管理下に無いからね……》

 

《正直、無抵抗な奴を殺すのは俺も抵抗があった。でも、娘を監視されてちゃあ、気分が悪いからな。そう思って殺す事にしたよ》

 

《ええ……それがイイわ、精神衛生上ね》

 

《……》

 

 あの見守り方から察するに、アイツは、そこまで悪い奴じゃないだろうに。やはり俺でも心が傷んでしまう。少なくとも、過去には戦争を起こしたこの大悪魔よりは全然マシなハズだ。

 

「……ま、今では心を入れ替えた……みたいだけど。な、エリス」

 

「うんっ……大丈夫よ、もう悪い事はしないわ……。ヘカテーに殺されそうになった私を助けてくれた、あなたに恥じない生き方をするから……。これからも私を見てて……?」

 

「ん……分かってる。まだ少し慣れないけど、従順なエリスも悪くない……のかなぁ……?」

 

「えへへ……」

 

 少し縮こまるようにして照れる。少し前の、自信たっぷりなエリスとは本当に見違えるようだ。この美少女が、あのトロイア戦争を起こした?ヴィナで戦争を起こして滅ぼした?────信じられない。

 だが彼女が凄まじい強さを持ち、強気のレミリアからも逃げ仰せたのだから、きっとそれらのことも事実なのだろう。

 

「でも本当なのか?大罪の悪魔とは知り合いって。しかも取り憑かれたのに無事って……」

 

「私の方がずっと強いもん」

 

「そうなんだろうけど……うん、まぁ、そうだよな。エリスは強いもんな」

 

「えへへへっ♪……ありがとっ♡」

 

「お、おう……///」

 

「あー♡ 赤くなってるぅー♡」

 

「うっさいっ!お、俺ァ大罪の悪魔について質問をしに来ただけなんだよっ、同じ大悪魔だからなっ!まさか取り憑かれてたとは思わなかったけど……」

 

「質問しに来ただけって言いつつ、殺した後にまた会いに来てくれるの、嬉しい、よ……?」

 

「目をウルウルさせるなぁ!!誘惑する気か!!」

 

「誘惑……してるよって言ったら、どうする……?」

 

「!?」

 

「……どうする?シちゃう?」

 

「突然の展開すぎて頭が追い付かないけど……」

 

「ウダウダ考えないで、シちゃお……教会(ここ)で♡♡」

 

「なんて不敬な……けしからんッッ」

 

「あはっ♡ もうおっきくしてるじゃない♡」

 

 拝啓、神綺母さん。怠惰の悪魔より強い悪魔には残念ながら俺でも抗えません。教会なのに、悪魔の誘惑に負けそうです。




怠惰の悪魔・ベルフェゴール
能力:怠惰を司る程度の能力(仮)
元は神だったが、神としての名を捨てたので当時の能力は失われている。身も心も悪魔に堕ちた。
怠惰に対する美徳は勤勉。


ぶっちゃけ怠惰な原作キャラって居なくないです?
だからオリキャラに無理矢理にでも当て嵌めるしかないという悲しみ。
嫉妬は結局パルスィ>エスカルゴです。彼女の方がより純粋な嫉妬心なので。
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