「……!ヤベェ美鈴、やめろ!やめろ!!」
「ッ!何故ですか、まだ力を出し切ってませんよ、私はァッ!!」
更に出力を上げ、ベルゼビュートに攻撃を加える美鈴。力を出し切ったらマズイというのに、彼女は力を出し切ろうとしている。きっと、倒せるという確信があるからなのだろう。しかし……。
「発勁と同じ……吸収してんだよアイツ!カウンター来んぞコレ!」
「ご主人様、美鈴を止めるんじゃなくて……!」
「俺らまで巻き添え喰うぞ!?いや俺は構わねえが天子まで吹き飛んだらッ……下手したら死ぬぞ!」
「オートの治癒魔法掛けてくれたんだから、大丈夫でしょ!ほら、行くわよ!」
「…………ええいっ、ままよ!」
虹色の極太光線を正面から受け止める敵を、俺と天子が追い討ちをかけるようにしてトドメを刺す。ここは館の中なのでかなりの破壊力を持つあの技は使えない。となると、一点集中タイプの技がイイ。すぐ近くに天子が居ることを考慮してもそのような結論になる。
「一点集中ッ……やっぱ、俺にゃこれしかねぇわな。絶技『天翔雷霆零槍』ッ!!」
「トドメよ!剣技『気炎万丈の剣』ッ!!」
極太の槍を生成。壁を走り天井を蹴って、床へと急降下する。位置エネルギーと合わせたこの攻撃は床に大穴を開けベルゼビュートを地面に固定した。
そこに天子の剣技……とも言い難いハチャメチャな斬撃も加わり、美鈴の気功波で全体を吹き飛ばす。普通に考えればかなりのオーバーキル。並の妖怪で考えれば10回は軽く死んでるレベルの攻撃。1人につき少なくとも3回は殺せている程だと思われる。
「ぐぁっ、ぎゃああああああぁぁっ……ががががっ、が、がああああああぁぁっっ…………!!」
「きっ、効いてる……のか!?今だ、全員、全力出し切れええええっ!!」
「「了解ッ!!」」
天子は、剣を振り回しすぎて痛む腕も構わず剣をひたすら振り回し、敵を細切れにせんとばかりに、斬撃を加えていく。
美鈴は、これで全気力を使い果たさんとばかりに自身の「気」を放出している。ここは室内。地面と触れ合っていない為に植物の「気」を吸収できず、出力や威力はこれ以上上がらない程になっている。
俺はというと、ブッ刺した槍に更にエネルギーを流し込み体内から敵を壊そうとしている。
「ぐぐぎぎぎぎぎ…………このッ……雑魚、共、が……!よくも、この、私にィ……楯突いたなァァァ!!」
最後の叫びと同時に全身が発光したかと思うと、美鈴の気功波よりずっと細いバージョンの気功波が奴の全身から吹き出した。
小分けにすると何回も可能──小分けにすれば、同時に、多数の方向に放つ事も可能らしく、俺達はベルゼビュートの気功波に滅多打ちにされ、別々の方向へと吹っ飛ばされた。
「ぐっ……なんて、貫通力……ッ!?細い、だけで……こんな………………こりゃ……まずい、です……ね……」
「げふっ…………早くっ……治って、よ……!!」
「美鈴ッ……天子ィッ…………!!」
手刀で首を貫き自殺。すぐさま復活するも、その隙にベルゼビュートはとうに消えていた。その事に気付いた途端、凄まじい量の冷や汗が溢れ出した。
館の中も既に滅茶苦茶な上、今の貫通力に優れた気功波で、館の誰が傷付いたのか……。残りの魔力をほぼ全て使ってでもすぐ回復させなければ。
「治癒『
魔力が完全に底を尽きると、妖怪はブッ倒れる。クラリと足元がフラついたが、そんな事はもう問題じゃない。奴を、絶対に咲夜さんの所に行かせてはいけない。ただ、それしか頭に無かった。
「クソがァァ……召喚『大悪魔降臨』……!!」
分類すれば奴隷系になるであろうスペルを発動。今回スキマにて召喚した悪魔は、神代のギリシャを生き抜いたあの悪魔。最古の吸血鬼、モルモーだ。
「ちょっと何よこれ……!?ヤバいくらいにボロボロじゃないの!さっきから続いてた地震の原因って、やっぱ戦闘だったワケ!?」
「頼むモルモー、代わりに時を止めてくれ……!すぐ敵に追い付くから……ッ!リセットしたって、魔力はそんな復活しねえからさ……頼む……」
「あー、そういう事ね……。魔力切れなんて、全く、エスカルゴくんもまだまだ若いわね。んじゃ、私が殺ってやろうじゃない!オナニーの邪魔した天罰を下してあげるわ!時符『ザ・ワールド』!」
「あ、俺の……」
「魔力切れのキッズは寝てなさい、あなたが起きた頃には全て終わってるわ♪」
「待っ────」
モルモーの可愛らしいウインクを最後に、意識は暗転した。
◆
「さァて、悪魔はどこに行ったのかしら〜……っと。ああ、このルート…………成程ね。咲夜か赤ちゃんが狙いなのね。てか……何よ、このムチムチボディ……エッロ……じゃなくて、ムカつく!」
屋敷の破片を元にして、ベルゼビュートの頭上に巨大な岩石を錬金。物理的に潰されるなら、彼女の暴食の能力の範疇外だ。モルモーはそれを知ってか知らずか、真上から押し潰す事にした。
「────そーいえば私、こないだも潰したっけ。あの鬼を氷で潰したときもそーだったなぁ……。同じ攻撃ばっかであんまり華が無いわね。ま、いっか。
────そして時は動き出す……ってね♪」
「よしよし、此度の標的はもうすぐそこだ────ぬぁあああっ!?」
「あは♡ どいつもこいつも押し潰しには弱いのね♡一撃で撃沈なんて、ザ〜コザ〜コ♡」
「ッッ…………ま、だ……潰れて、ないぞ……この、腐れ吸血鬼がァァァァッッ…………!!」
「ひゃっ!?た、耐えてるっ!?嘘、マジぃ!?」
「んぎぎぎぎぎぎィッ……んぐうううぅぅうううああああああッッ!!!!」
「わー……力任せだねぇ……」
潰される寸前で耐えたベルゼビュートは、巨岩を館の壁へ投げ付けた。壁は破壊されて、その部屋に避難していたらしいメイド妖精達は酷く逃げ惑う。
「何やってんの、慌ててないでさっさと逃げな!」
「「は、はいいいいっ!!」」
「……フン、悪魔のクセに優しいんだね。……ん?」
「ん?……あれェ?よーく見たらあんた!ベルちゃんじゃぁん!?エリス様にフルボッコにされた雑魚の1人のっ!ひっさしぶり〜♡」
「お、お前はッ…………ヘカテーの右腕、なのか!?ギリシャの吸血鬼だろうお前は!どうして日本の、しかも異世界に居るんだ、お前が!!」
「モルモーですぅ〜!右腕じゃありませーんっ!」
「どっちでもいい!邪魔するなら殺すぞお前!!」
「いいよぉ〜?あんた如きに負けるモルモーちゃんじゃないからさっ♡」
「フンッ、魔法もロクに使えない未熟者が!」
「……言っとくけど、モルモーちゃん、もうあんたも殺せるから。決着つけましょ?ベルちゃん?」
「良いだろう!吸血鬼の真祖だか何だか知らんが、お前の野望はここまで────」
「時符『ザ・ワールド』」
時間を止めたモルモーは、創造魔法で生み出したナイフにてベルゼビュートの心臓を次々に串刺しにしていく。するとすぐに、奴の胸の前後はナイフの持ち手でいっぱいになる。
「あんたは……死んだ事にさえ気付いていないのよ、クソザコなベルちゃん。『七つの大罪』の肩書きに胡座かいてたツケが回ってきたわね」
「────ッ!?」
時間停止を解除したその直後、ベルゼビュートの心臓は穴だらけとなり、血を吐いて静かにその命の灯火を消した。
モルモーはどこか悲しげにも見える目で、無言のままで彼女の亡骸を見つめ、やがて踵を返し、彼の眠る場所へと戻って行った。
◆
「──き〜て〜。起〜き〜て〜ってば、エスカルゴくーん。魔力あげたでしょー?」
「ご主人様、起きて、もう終わったわよ!」
「エスカルゴさん、起きないと発勁ですよっ!」
「……サイコーの目覚めだ……へへ……」
モルモーから魔力を流された俺は、ボロボロからピカピカになった紅魔館の廊下にて目を覚ました。魔力の気配からしてモルモーが館を直したらしい。
天子も美鈴もかなりの大怪我をしていたはずだが一応怪我は治っている。ベホマズンの効果だろう。だからってまさか完全に魔力を使い果たすなんて、とは思ってしまうが。
「……助かったよモルモー、サンキュ」
「いーのよん♪」
「はぁ……短時間とはいえあんなに疲れる戦闘はもうコリゴリだわ。……あ、お嬢様に報告に行かなきゃ。ほら美鈴、行くわよ」
「フフ、案外ノリノリですね天子さん!」
「ばっ……バカ言ってんじゃないわよっ、咲夜が育休だから仕方なくこうしてんのよ!あとね美鈴、今後私と手合わせする時に手を抜いたらブッ飛ばすわ!いいわね!」
「はいはいっ♪」
「…………俺も咲夜さんとこ行かねーと……」
「え〜?モルモーちゃんにご・ほ・う・びぃ〜♡」
「分かった、分かったよ。咲夜さんとこ行ったら、その次に行くから」
「えぇ〜〜〜?絶対よぉ?」
「うん、絶対。だから咲夜さんとこ行かせてくれ」
「はぁ〜い♡ 待ってるね♡」
その後、咲夜さんの所に一部始終を軽く話して、俺はモルモーの待つ地下牢へ向かった。ご褒美を、というよりは、彼女の話を聞きに。
それぞれがベルゼビュートを殺せる力量はあるのに何故殺せなかったか。殺せるには殺せるけれど一撃必殺ではなかったからですね。
破壊の能力使えって?創造魔法?確かにそうだけど主人公の決め手としては少しつまらないし……。