「ヘカテー様の右腕として働くようになってから、更に数100年が経った。その頃になると人の世も神の世も以前と比べて平和になってきたからさ、私達も比較的自由に過ごすようにしてもらったの。それで適当にブラブラ
◆
「……!あれェ?もしかしてあんた、モルモー?」
「ッ!?……エリス様……!?」
エリス様に偶然再会した。どうせ、また悪巧みをしているんだろうけど、今はヘカテー様の配下ではなくて個人的な時間。だから問い詰めるなんて事はしなかった。
「え?やだもー、何で私に様付け?いいけどサ♪」
「あ、あはは……」
「……あれからどーなの?ヘカテーは」
「あ、はい……元気にやっています」
「でしょーね。憎き私を悪魔にしたんだしねぇ……。まっ、今ではエンジョイしてるけどねー。今では、大悪魔エリスで名が通ってるわよ?」
「へ、へぇ〜……凄いです……流石エリス様……」
そうだと思っていた。私もヘカテー様も。だってコイツは
確か、遠い東の国にはこんな言葉があったっけ。
「七転び八起き」、まさにエリス様にピッタリだ。良くも悪くも……。
「……ねぇ、モルモー?あなた、七つの大罪っていう7人の悪魔、知ってる?」
「あ、はい、知ってますよ。えぇと、傲慢、怠惰、みたいなアレですよね。大悪魔が徒党を組んでいるという話は私達も耳にした事がありますね」
「そそ、それそれ。今ねェ、その悪魔達全員、私に取り憑いてんの♡」
「……え?」
「なんかねぇ、コイツらってば言い掛かりが凄いんだよ?私が傲慢だからって、傲慢担当であるボスのルシファーが私に目を付けたみたいでさ、そいつの命令で全員がこの私に、同時に取り憑いたの!私を破滅させる為だって!」
「破滅……エリス様が……?」
「ンフッ♡ でも問題ないわ。コイツら、雑魚だし」
「え……」
「だってさ、今の私から他の悪魔の気配、あなたに感じられる?」
「…………いえ」
「正直なとこ、今話した『七つの大罪の悪魔が私に取り憑いてる』ってのも信じ難いでしょ」
「……ええ。正直、信じられないですね」
「でも事実なの。私が完璧に抑え込んでるからね。ほら、もう出てきなよ、ベルゼビュート。暴食とかこのエリス様には似合わないわ!」
カッとエリス様が眩く光ったかと思うと、身体のラインがクッキリしている悪魔が現れた。パッと見コイツは色欲のアスモデウスに思える。けれども、エリス様曰く、暴食のベルゼビュートらしい。
「ゼェーッ、ゼェーッ……なん、なんだ、コイツ……底無しなのか……際限ない、のか…………!?」
「だ、大丈夫……?ベルゼビュートとやら……」
「あん?何だ、お前?」
「私はモルモー。エリス様の……知り合い。あなたは七つの大罪の暴食担当……ベルゼビュート?」
「そうだが……」
「……あなたも大悪魔、なんだよね。……何で?」
「何で……って、私に言われてもな」
「あなた……いや、あんた、雑魚だよね。エリス様や私の方がずっと強いよね」
「あぁん!?何だお前、唐突に!」
「あんた如きが大悪魔とか名乗るなっつってんの。理解できますー?」
「はァッ!?何のつもりだ貴様、この私に歯向かうつもりか!?」
「
「……上等だ、相手してやるよ雑魚がァ……!」
◆
「────当時の私は、時間魔法も磁力魔法もまだ未完成だった。まだまだ開発段階でさ。創造魔法も満足には扱えなくって……。殆ど吸血鬼のフィジカルだけで戦ったわ」
「それで……どうだったんだ?結果は?」
「どうだったって……そんなの言うまでもないわよ。アイツが生きて幻想郷に現れた。それが結果の答えでしょ?」
「まぁ……殺せなかったんだなってのは分かったよ。勝敗はどうだった……?」
「ふふっ……なぁに?気になる?」
「気になるよ」
ススッと肩を擦り寄せて来て、甘い目でこちらを見上げてくる。するとその瞳に暗めの影を落とし、俺に身体を預けるようにすると、トーンを落として呟く。
「……引き分け。戦いが泥沼化したからさァ、それを見飽きたエリス様が、一旦出したベルゼビュートを取り込んだのよ。確か、『取り憑かれた時の感覚を再現した』みたいな事、言ってたかな」
「えぇ……」
「エリス様、やっぱバカじゃないし、それどころかどちらかと言うと天才な方だと思うの。ちょっと、その能力の使い所が変なだけでさ?」
「分からなくもないな」
「ふふっ……。んね、そうだよね、ホントさ。能力の使い所がズレてるんだよね〜……。それで、結局は、七つの大罪の悪魔はエリス様にフルボッコにされて近年やっと復活を遂げたみたいよ」
「はぇ〜……。あれ?モルモーが魔法を究めたのは、そのvsベルゼビュート以降、なんだよな。てことは魔法をフル活用して吸血鬼狩りしてたのは割と最近なのかな」
「ベルゼビュートと戦ったのなんてもう何年前だか覚えてないわ、ず〜っと昔の話だもん。それにさ、吸血鬼狩りなんて魔法使わなくても余裕だもんね」
「それもそっか。…………
「何で自分のセリフに首傾げてんのよ……」
「それでそれで?その後は?」
「吸血鬼狩りしてたわ。ヘカテー様は冥界じゃなく地獄の女神が本業になってた上に、そんなところについて行けるのなんてクラウンピースだけだった。地獄のニンフ、だからね。今思えば、ヘカテー様が地獄の女神をやり始めた頃から私達配下は殆ど放任だった。いや、この時点で解散も同然だったわね」
「ッ……」
当時は、今では考えられない程にへカーティアに心酔していたのだろう。へカーティア関連の話題になると決まって悲しげな目になるので、俺まで少しズキッとよく分からない痛みを感じてしまった。
「エンプーサはさ、私が倒してスカウトされた感じだったからさ。……配下の中で一番ツルんだわ。別に好きでも嫌いでもないけど、ずっ………………と1人で過ごすよりかは、幾分かマシだったからね。1人も悪くはなかったけど、コレジャナイ感あったし」
「じゃあ、吸血鬼狩りしてた頃の話、聞かせてよ。話せる範囲でいいからさ?」
「えぇ……?何よ、ヤケにエッチ嫌がるわね?もう、私とエッチするの、嫌……?そうならごめん……もしそうなら出てくから──」
今にも泣きそうになりベッドから立つモルモー。腕を掴み振り向かせると、一筋の涙がポロリと流れ落ちる。やってしまった。そんなつもりなんて全く無かったのに、泣かせてしまった。彼女の涙を見てギョッとした。縮み上がるような思いをするというのは、まさにこんな気分なのだろう。
「そんなんじゃないんだよ、ただもっとモルモーの事が知りたくって……!」
「ホント……?」
「ああ。大体モルモーとのエッチが嫌だってんならハナからここに来てないし……元は身体目的で連れて帰ってきたんだから、飽きたら追い出していたか、屍姦目当てで殺してたと思う……」
「もー……素直にそう言えるの、ある意味ヤバいよねエスカルゴくんって〜……うふふっ……」
「……ごめん……」
「ううん、違うのよ、責めてる訳じゃないわ。その馬鹿正直なトコもあなたらしいなって、思うようになってきた。……じゃあ、次は、私の吸血鬼狩りからヘカテー様に捨てられて、ここ……幻想郷に侵入するまでを話すわね。そしたらエッチしてくれる?」
「ああ……勿論。もっと話して聞かせて……!」
「ふふ……分かったっ♪」
子供が生まれる以前の話は敢えて聞きたくない。何故なら、モルモーに子孫がいるという事はつまり俺以外の男とセックスした訳だ。俺はそういうのが嫌いだ。だから仮にそういう事実があったと認識はしていても、その話は聞きたくないのである。
そして、改めて彼女の口から、彼女の歩んできた過去が語られた────。