「なーんか全然来ないけど、本当にちゃんと声掛けしてくれたんでしょうね?」
「当たり前だろ?これまで招集に失敗した事なんて無いじゃあないか」
「それもそうだけど、もう夜よ?」
「時間を決めてなかったから皆困惑してる説」
「……ねぇ咲夜、今夜は満月……なのよね?あの日の丁度1週間後だし」
「パチュリー様の占い結果ですし間違いないかと」
あの時アスモデウスから教わった、日付けなどを忘れてもすぐに月齢を導き出せるような、天文学に関するあの術だ。
因みにこの術は俺も教わったので俺にも使える。確かに今夜は満月と出ている。しかし誰も来ないとなると……。
「もしかして曇ってるのが原因なんじゃあねぇの?そのせいで皆は『今夜は満月じゃないのかな』って認識してるとか?」
「えー……ねーエスカルゴ、アレ晴らしてきてよ」
「はいはい」
《神使いの荒い器だな、お前は。ま、戦闘以外でも力を貸すと言ったのは私か……》
《そういう事です。お願いします、神奈子様》
《雲を晴らす程度でいいんだな。よし》
神奈子様から力を借り上空に強烈な風を発生させ雲を吹き飛ばす。それから数分後、チラホラと客がやってきた。やはり雲のせいで今夜が満月だと認識していなかったようだ。
客の中には霊愛も居る。一瞬、「何故?」という顔をしたレミリアだったが、月光に照らされて翼を生やした彼女を見て、納得したようだった。
「良かったです……せっかく準備したお料理が無駄にならなくて済みました……。ありがとうございます、お父様っ!」
「もしそうなるなら俺が食ってたさ。料理の時間を止めりゃ鮮度は保てるもんな。さて、俺はエリスの迎えに行って────」
「ダ〜リィィンッ!来たわよぉ!」
「……今迎えに行こうと思ってたとこだよ。なんか、魔界から来たにしては早いな」
「え?だって1週間後って今日でしょ?」
「ああ、月を見て判断したんじゃなく日にちで判断したんだ。それなら良かったよ」
「……?1週間後って言ってたじゃない」
「うん。良かった良かった」
「??」
まるで子供にするように、若干昔のノリに戻ったエリスを撫でていると、それを見たレミリアが手にグラスを持ったまま優雅に現れた。
「あらあら、逃げる事しか出来ない大悪魔様、よくおいでになってくれましたわね?」
「イヤミありがと、レミリアちゃん。逃げるのも、1つの手段なのよん。無闇矢鱈に攻め込むだけが、戦術ではない。覚えときなさい♪」
「さぁて、私がそんな戦術を使う日が来るかしら。誰かさんより強いので?そんな日は永遠に来ないと思うけれど♪」
「ふふ、そうだといいね〜♪」
「ま、まぁまぁ……」
バチバチに火花を散らす2人を見ていると本当に寿命が縮む思いをする。そしてエリスと別れた後、レミリアに手招きされたので彼女の方へ向かうと、ガッと胸ぐらを捕まれ小声で怒鳴られる。
「ちょっと、どういうつもりよ!?なんでエリスも呼ぶのよ!?」
「だ、だって、エリスだけ仲間外れはちょっと心象良くないし……アイツも改心したんだし、もういいと思うんだよ。レミリアはアイツを毛嫌いし過ぎだ、もう少しくらい譲歩してもいいと思うんだけど……」
「余計なお世話!アイツは私の敵よッ!?それを、よくもホイホイと呼んでくれたわね!少しくらい、空気を読んでくれてもいいと思うんだけど!?」
「ッ……」
「あのね?誰しもがあなたみたいにすんなり誰かを許せるワケじゃないのよ。そんな事くらい、あなただって分かるはずでしょう?そんなにバカじゃないでしょ、あなたは。ねぇ?どうなの?」
「っ、う、うん……」
「歯切れの悪い回答ね。まぁいいわ。今後の為に、一応言っとくけど、私は今後もアイツと仲良くするつもりは無いわ。アイツの出方によっては殺す事も視野に入れてる。そのつもりで居なさい」
「……分かった。ごめん」
「いいのよ。『エリス以外呼んで』なんて言うと、私の器が小さいと思われかねないし、これからも、アイツを呼ぶのは許可するわ。でも、私はアイツと仲良くする事は無いし、場合によっては殺す。一応それだけは覚えていてね」
「はい……」
目の前で逃げられるなんて、レミリアにとってはかなりのブチギレ案件だ。だから、エリスを呼んだことで彼女を怒らせてしまったのは俺が悪い。
だが、一度呼んでしまった以上、今からエリスを追い返すワケにはいかない。仕方ない。2人が喧嘩しないよう俺が気を付けて見ておくべきだろう。
「お、お父さんっ……来た、よ……」
「何そんなにビクビクしてんだ、霊魔?1人で俺の所に来るだけで精一杯とは言うまいな?」
「精一杯だよ……知らない人、その辺にいっぱい……強そうな人も……」
「あー?……ああ、アスモデウスも来たな。ホント、レミリアも器がデカいからな……レイチェルの従者とするのも認めて…………くれそうだな、良かったぁ」
視界の端でレイチェルとレミリアが対談、そしてアスモデウスを召喚して色々と事情を説明しているのが見えた。レミリアがレイチェルを抱き締めて、頭を撫でているのを見て漸く安心できた。
「居た居た。おーいシャロン、前に言っといた通り霊魔を頼むよ」
「はいっ、お任せ下さい!宜しくお願いしますね、霊魔くん!」
「よっ、よよ、よろろっ……よ、ろしくっ…………///」
「おいコラァ、なぁに赤くなってんだ?俺の従者を見て照れるなんてオメー……」
「ごごっ、ごめんなさいっ……うう……」
「大丈夫ですよ霊魔くん!さ、さ、私がエスコートしますから、ついてきてください!」
「お、おっ……お願い、しますっ……」
霊魔の人見知りもここまでだと病気と変わらないように思えてしまう。母曰く知らない人にも普通に挨拶するような子供だった俺からすれば、霊魔は、少し人見知りが過ぎる。
何れは、誰とでも普通に会話できるようになってくれれば幸いなのだが……このままだと少し難しいと思われる。とはいえ知らない人に会わせまくるのも逆効果になりそうだ。果たして人見知りを治すにはどういう事が効果的なのだろう。
永琳に、今度、
◆
やはりと言うべきか、この集まりは会合と称したパーティだ。会場は紅魔館の庭だし、誰かが登壇し演説をするであろう台、マイクまで準備してある。
所々にあるテーブルには飲み物やら食べ物やらが沢山並んでいて、まさに選り取りみどりだ。
最初から素直にパーティだと言えばいいものを、大人ぶりたいからかわざと変な言い回しをして……。そこがレミリアの可愛いところでもあるが。
そして用意してあった台に上がると、オッホンとわざとらしい咳払いをしてレミリアが宣言する。
「悪魔の皆!今夜は集まってくれてありがとう!!早速、これから皆でレクリエーションを始めたいと思うの!食事しながらでいいから、よく聞いて!」
なんだなんだ?と、皆が壇上のレミリアに視線を送る。そんな様子を見て、彼女は満足そうな笑みを浮かべ、意気揚々と宣言した。
「これより、タッグマッチを行うわ!以前、地底で開催されたようにトーナメント形式を採用します!ペアはもうこちらで決めてあるわ!」
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┏┻┓ ┏┻┓ ┏┻┓ ┏┻┓
霊 レ こ く 夢 博 霊 カ
夢 │ こ る 幻 麗 魔 ル
& テ あ み 姉 姉 & ゴ
レ & & & 妹 妹 弦 &
ミ ア シ エ 月 モ
リ ス ガ リ 姫 ル
ア モ │ ス モ
│
俺の相方はどうやらモルモーらしい。彼女の時間魔法は敵に回すと恐ろしい。味方なら安心できる。
事前に決めたと言う割にエリスが入っているとは思わなかった。俺がエリスを呼ぶのはレミリアには分かっていたらしい。または、俺がエリスを呼ぶかどうかについて未来でも視たのだろう。
アスモデウスもキチンと入っているし、もし、今決めたのでないのであれば、未来を見たのは確定と言っても良さそうだ。本当に便利な能力だ。
そして、フランが居ないぞと訝っていると、心を読んだかのようなタイミングでレミリアが言う。
「『悪魔』の定義は、実に様々だわ。でも、一説によれば魔法使いのこともそう定義することがある。という訳で、特別ゲストよ!」
┏━┻━┓
┏┻┓ ┏┻┓
魔 ア ユ 妹
理 リ キ ア
沙 ス & リ
& & マ ス
フ パ イ &
ラ チ 幽
ン ェ 香
「尚、私の従者の十六夜咲夜は、まだ産後1ヶ月も経ってないから参加は見送りよ。あと、本人の強い希望で小悪魔は参加してないわ!」
それが本当なら、もしエリスが居なければ、人数合わせとして小悪魔が参戦させられていただろう。やはりエリスを呼んで良かった。
結果論かもしれないが、小悪魔の為にもエリスを招待して良かったと言わざるを得ない。
「え?風見幽香は魔法使いでもない?ええ、確かにそうね。けれど、過去にアリスから究極の魔法なるものを奪ったと言われているわ。なら、もう彼女もそう定義していいハズよっ!悪魔組と魔法使い組の頂点同士が戦い幻想郷の悪魔の頂点を決めるわ!」
どこからともなく、パチパチと拍手が上がった。それに続くように、少し遅れてあちこちから拍手が上がる。ふと霊魔の方を見てみると、シャロンから頭を撫でられ、大丈夫だと言い聞かされているようだった。
弦月姫と霊魔は交流が無いに等しい。あのような反応を起こすのは仕方がない。霊魔がもう少しだけアグレッシブなら、こうはならなかったのだが。
そして、弦月姫と合流────霊魔はシャロンの後ろに隠れつつも、弦月姫とコミュニケーションをとろうと頑張っているようだ。
一方の弦月姫は、あまりに人見知りな霊魔に対し困惑しているようだが、そこは紅魔館の副メイド長である。しっかりコミュ障な彼にも真摯に対応して会話を盛り上げようと頑張っているようだ。
レミリアは早速霊夢の方へ向かったかと思うと、今度は咲夜さんが虔魔をおんぶしながら登壇する。まさか、進行役を咲夜さんに任せるとは。虔魔は、スヤスヤ眠っているようだが、彼もそろそろ弾幕は使えるようになるかもしれない。
「それでは、早速始めて行きたいと思います。私、今回のトーナメントの進行役を務めさせて頂きます十六夜咲夜と申します。それから私が背負っておりますは、先日生まれました愚息の十六夜虔魔です、以後お見知りおきを。……さて、早速になりますが、戦う舞台などの説明に移りたいと思います」
曰く、戦う舞台は紅魔館の敷地内の上空。つまり空中戦で、外塀の範囲が戦いのステージ。そこから逸脱した時点で敗北だそうだ。
スペルカードは無制限。ただし同じものの上限は4枚。そこは地底の大会のルールを引用したそう。
片方または両方がギブアップを宣言、または気絶した時点で決着とし、自殺はアリで、殺害はナシ。逃げる事も許さず、取り憑く事も禁止。
なお、自殺は俺へ、取り憑くのはアスモデウス、逃亡はエリスへ向けてのルールである。
因みに、唐突の咲夜さんの出産報告に、俺の宿泊ローテに含まれていないメンバー達は酷く驚いて、俺と咲夜さんとを何度も交互に見ていた。
「咲夜さぁ〜ん。相手を自殺に追い込むのってぇ、ありよりのありですかぁ〜?」
「なしよりのなしです」
「えー?悪魔同士の戦いなのに、そんなのって少しつまんないなぁ〜?ま、いーけどね♡」
「……まーたそうやって無駄な威嚇する……。そんなだから嫌われるんだぞ?エリス」
「私は嫌われてないわ、だってダーリンが居るし。それでいいもん。それにさ、本当にそんな事をするつもりが無いのは皆分かってると思うけど?」
「分かってるだろうさ、でも余計な事を言うとまた目を付けられるだろ。レミリアとかにさ」
「まーねー。でもいいの、本当に死にそうになれば逃げるだけだもん。ルールもへったくれもないわ。逃げるが勝ち。生きてりゃそれで儲けもんよ」
「……本当に反省したのか?」
「したわよ!言っとくけど私が本気で泣いたなんて数万年生きてきてあの時だけなんだからね!?」
「はぁ……。まぁ、くるみんとこ行ってきなよ。俺はモルモーと組むみたいだから」
「フン、いいわ!決勝で
「おう、そうなるといいな」
「そうして見せるわ、このエリス様の魔法をね!」
拳をコツンとぶつけて、俺達はそれぞれの相方の元へ向かった。
◆
「モルモー」
「あ、エスカルゴくん。やっほぉ〜」
「すっかり満喫してんなぁ……。地下牢に来てるはずなのに、ここだけまるで別世界だよ」
「お陰様でね。で、もうモルモーちゃんの番?私は誰と組まされるの?」
「ペアになって戦うのは聞いてたんだな。組むのは俺とだよ。レミリアが事前に決めてたらしい」
「えっマジ!?神采配じゃんっ!!レミリアに感謝しなきゃ!よーっし、優勝を掻っ攫うわよ〜っ!!モルカルいくぞーっ!おーっ!」
「お、おーっ……テンション高ぇな……」
「だってさ、知らない奴と組まされる可能性の方が高かったのよ?エリス様だったらまだいいけどさ、やっぱ、身も心も相性のイイ奴じゃないと気乗りはしないワケじゃん?」
「まぁそうだな」
「だものテンションも上がるわ!ましてやあなたは神の力も借りれるんだものほぼ勝ち確でしょ!」
「相手にも神の力を借りれるのが1人、いや、2人居るけどね。油断したら負けるぜ」
「……マジ?」
「マジ」
「な、なら敵情視察に行くわよ!」
「うん、その為に呼びに来た」
「まだ出番じゃなかったんだ。なら、良かったわ。さて、行きましょ行きましょ!」
「腕を組むな……」
牢を飛び出したモルモーを連れパーティに戻る。どうやらとっくに1試合目が始まっていたようで、地底の大会と遜色ない程の、凄まじい盛り上がりを見せていた。