「夢幻姉妹とバトル、かぁ。2人が揃って一人前のあの2人だ、そう簡単には倒せねーぜ、モルモー。どうする?」
「どーするもこーするも……戦って勝つ。それだけ。私達なら、
「……そういう不正を無くす為に咲夜さんに進行役を任せたんだと思うぜ、レミリアは……」
「うっ!そ、そうだった……咲夜にも私の時間魔法は効かないんだった……うわー、一発勝負かぁ」
「普通そうだよ。やり直しなんて考えてちゃあね……うん、ダメだと思う」
「うぐ〜……」
「いやそれ夢月な」
効かないというよりは、俺やモルモーのように、巻き戻った事を認識してしまうのだ。だから、時を巻き戻す事が可能か不可能かで言えば可能だ。だが咲夜さんにそれがバレてしまうので、結果的に不正扱いとなり、負けになる。
尤も「時間を巻き戻してはいけない」などというルールは無かったので、屁理屈を捏ねれば可能だと思うが、絶対に嫌われるのでそうしない。
それに加え、戦ってくれる幻月と夢月に申し訳が立たない。やはりこれが一番大きい理由だ。もしもそうでなければ躊躇いなく時を巻き戻しただろう。
「じゃあ、私が勝手に巻き戻せばいいんじゃない?それならエスカルゴくんが嫌われる事はないし?」
「え?」
「『え?』じゃなくて。あなたの事だし、どうせ、不正したら嫌われるーとか、そんな事を考えてたんでしょ?」
「あ、ああ……まぁな。つーかよ、不正したら俺まで負けになるんだ。やめてくれよ?」
「はいはーい、分かってるわ」
「ったく……」
モルモーまで、俺の心を読んだかのような発言をするようになった。彼女達の中では一番付き合いが浅いし、時間も短いというのに。
人心掌握というか、読心というか。やはり彼女も伊達に長生きしていないという事か。
「へーっ、次はダーリンと……モルモー?誰あんた」
「んーとねぇ……簡単に言うとね、エスカルゴくんとスカーレット姉妹のご先祖様よん♪」
「それは流石に嘘臭い……ねぇ、姉さん?」
「先祖……ええっ!?全然老けてない!何なら私達と大して変わんないんじゃないの!?」
「そりゃ、モルモーちゃん、ほぼ不老不死ですし?デイウォーカーだから、吸血鬼としてもかなり進化してるしね。とりあえず宜しくね、悪魔ちゃん♡」
「……モルモーは、神話の時代から生きている特別な吸血鬼だ。まあ……かなりチートな能力もあるけど、不正にならない程度に全力で戦うぜ、幻月、夢月」
「不正上等!捻り潰してあげる!」
「ヒェッ……凡そ恋人にかける言葉じゃあないな」
「ふふ、夢月ったら乱暴ね。私が、ううん、私達が勝ったらお願い聞いてもらうからね。そのつもりで戦ってね、ダーリン?」
「そっか。じゃあ俺が勝ったら2人にお願い聞いてもらおう。なんかこれ、俺と幻月が初めて会った時みたいで少し懐かしいな。何年前だろ?」
「さぁ?でも懐かしいのはホントね。ふふ、初心にかえったカンジよ♡」
「へへっ……」
「ふふっ……♪」
「…………それでは、2回戦2試合目……初め」
丁度いいタイミングを見て咲夜さんが試合開始の合図を送る。
瞬間、夢幻姉妹は
「速ッ!?あの悪魔達、こんなに速いワケ!?」
「落ち着いて。大丈夫、気配を追えばいい。動きもある程度は予測がつくはず」
「気配………………いや、わっかんな!わっかんないわコレ!シャシャシャシャーッて動いてるし!」
「何を言いたいのか分かってしまうのが辛い……」
2人の気配を追いつつ動きを予測しようと、手や足は自然と即対応できるように構えられて、自然な流れで背中合わせになり、周囲を警戒する。
2人は姉妹。しかも双子という事もあり、気配はとても似通っている。故に、どちらが攻めてくるかなどは全く分からない。警戒しかできない。
しかしそんな時、絡まるコードのように混線する2人の気配が、一気に二手に別れたのが分かった。
「「来る
「「はあッ!!」」
背中合わせの丁度真横から突っ込んでくる。その速さたるやほぼ文に近いかもしれない。ここまでの速さだと、慣れてるとか慣れてないとかに関係なく目で追えなくなるので、自然と受け身からの行動になり、そのせいで反撃がワンテンポ遅れてしまう。
俺は右からの攻撃を腕で受けモルモーは左からの攻撃をバリアを張って防ぐ。しかし、そのあまりの勢いに、身体は場外ホームラン級に吹っ飛ばされ、モルモーはバリアを砕かれた上で吹っ飛ばされて、散り散りになってしまう。
「ッ……この強烈なパワー……やっぱり……」
「1on1だよ、おにーさん……♪」
「チッ、俺の相手は夢月かよ……!」
そしてモルモーは────。
「このモルモーちゃんのバリアを……何の抵抗もなく壊せるですって!?なんて馬鹿力なの……!」
「
「私の相手は姉の方って事ね。いいわよ、掛かってきなさい。潰してあげるわァ!!」
牙を剥き出し、幻月に立ち向かうモルモー。多分大丈夫だろうと半ば安心していると、俺の目の前に夢月が迫って来ていて……。
「余所見してる暇なんてあるの?」
「ッ!!」
胴回し回転蹴り。凄まじい夢月の蹴りが、顔面に炸裂した。鼻の骨は折れるどころか砕けて、鼻血が壊れた水道のように勢いよく吹き出す。
「もう一丁だよ────ッ!」
「っ……!!」
ほぼ同じ角度から放たれる蹴りを手で受け止め、彼女の足をグッと指が食い込む程に強く握り、全く動かせないように固定する。更には、足にそのまま牙を突き立て、じゅるじゅると血を吸う。
「ちょッ……ええ!?嘘、なんで足からッ……んっ、ううっ……痛い、のにっ……気持ちいい……!?」
徐々に身体の力が抜けてくる夢月。彼女の足は、とても柔らかくてとても靱やかだった。牙でなく、唇で触れていたいと思ってしまう程に……。
「はふぁ〜……///」
「力抜けちゃってんね、夢月?こんな状態で、俺に勝てるかな?」
「そんにゃの……ムリィ……♡」
少し血を吸ってやるだけで、超強力な筋弛緩剤を打たれたかのように相手を脱力させる事ができる。これだから吸血鬼はチート種族だと言われるのだ。
ぐでんぐでんになった夢月をお姫様抱っこして、ゆっくり場外に降ろしてやろうと降下した、まさにその時。
「────なんて言うと思った?」
「え」
「一緒に堕ちよう?そして一緒に負けるの……あとは姉さんに任せて、私は退場♡」
俺の首に手を回していた夢月はそのまま俺の首をギチギチと握り潰してきた。血が巡らなくなって、すぐに視界が白んでくる。
吸血鬼の強靭な肉体でも、悪魔や鬼なんかの力で締められたら、堕ちるのも必至だ。しかしどうにか耐えて、夢月の拘束を解こうと、雷のエネルギーを体内で爆散させる事で自殺する。今回は自殺アリのルールで助かった。そうでなければ負けていた。
「っ!まずい……ッ」
俺が復活すると共に現れる蝙蝠は、強烈な電気を帯びている。夢月は、それを肌で感じ取ったのか、慌てて俺が復活し始めた地点から回避した。
「くくくっ、惜しかったな夢月……!もう少しで俺を堕とせてたな」
「ノーモーションで自殺とか流石だよ。これだから何かを操る系の能力者は厄介なんだよね……やっぱ、正攻法しかないかぁ」
「そうだね。尤も、俺には弱点らしい弱点は無い。弱点を克服するのが、ある意味生き甲斐なのでね。まぁ、ゴリ押ししかないだろうさ」
「フーン、なら、これはどう……?」
「ッ!?」
スカートを持ち上げ、純白のパンティを覗かせる夢月。しかも微妙に食い込んでいて、布地の下の、スジが薄らと見えなくもない。
目に全神経を使い、夢月の股間を食い入るように見つめていると────時が止まった。
「ん?」
「ちょっとちょっとエスカルゴくん!まさか、まだ気付いてないワケ!?」
「え?────うわっ!?」
モルモーに呼ばれ振り返ると、そこには、したり顔で蹴りを見舞おうとしている幻月が居た。当然、時が止まっているので動きはしないが、振り返った俺の目の前に攻撃の体勢を整えた幻月が居るという光景は、どうしても驚いてしまう。
「あっぶねー……間一髪だったのか。サンキュー」
「そーそー。幻月がね、急に方向を変えてそっちに向かったからさ、エスカルゴくんを挟み撃ちにするつもりなんだと思ってぇ。慌てて時を止めたけど、まさか陽動作戦だったとはね。ねぇ、ドスケベ?」
「……返す言葉もない……」
「ま、仕方ないわ、それがエスカルゴくんのキャラなんだもんね。克服しようのない弱点だわ〜」
「ぐ……っ」
「で、どーすんの?」
「何が?」
「とぼけないで。折角時を止めてるのよ?あの子、犯さないの?」
「犯…………ええっ!?いやいやいや、それはない!それはないから!」
「え〜?つまんなーいのー」
「あのねぇ……咲夜さんも弦月姫もこの近くに居るんだぜ?」
空中で、しかも時姦だなんて。こんなジャンルの組み合わせは中々無いと思う。しかし、今はそんな事をシている時ではないのだ。
「俺は真剣勝負を望んでる。きっと夢月もだろう。でも、正攻法では難しいと判断したからこそ、陽動作戦にしたんだ。多分。だから俺は、今この2人を正面から打ち倒して、後日2人を犯す事にするよ」
「あっはははははは!犯すのは既定路線なのねっ!やっぱ面白いわあなた、あははははははははっ!!もーだめ、耐えらんないわー、ふふ、ふふふっ……」
「……まだこの2人とはヤッてなくてさ」
「へーっ!モルモーちゃんにはレイプまでしたのにこの子達にはスグに手を出すワケじゃないんだ〜?へー?ふぅ〜ん?」
「何だよ?」
「んーん、何でも?それより、この後はどうする?解除したらどう動く?」
時間を止められるなら、戦闘中にも作戦会議可能なのである。それに気付き、思わず苦笑いをする。犯すかどうかを聞いたり、作戦会議を始めたりと、色々ブッ飛んでるヤツだ、モルモーは。
「よし……それじゃあこうしよう。2人を傷付けずに終わらせる、良い方法がある。正々堂々とは、少し掛け離れてるけどね……」
◆
「いよいよ始まります決勝戦!戦うのは、こちらの2組!霊夢&お嬢様ペアvs旦那様&モルモーペア!どのような戦いを見せてくれるのでしょうかっ!?頑張って下さいお嬢様、旦那様!」
「……さっきの幻月と夢月の最期から察するに、今のエスカルゴとモルモーは凄まじいコンビネーションだと言わざるを得ないわ。そして、得体の知れない魔法を使う。最大限に警戒して臨むわよ、霊夢」
「ええ、そうね」
「何か……彼の使う新しい魔法に、心当たりは?」
「無いわ」
「そう……なら秘密裏に開発していたのでしょうね。向上心の塊であるエスカルゴらしいわ」
夢幻姉妹は、極々シンプルなやり方にて倒した。モルモーの時間停止によって幻月の攻撃を回避したその後は、彼女が時間停止を解除させた直後に間髪入れず俺がキンクリを発動。
その後も幾度と無く互いの拳、蹴り、弾幕などが交錯するが、遂に決着の時が来た。
幻月の蹴りは空を切り、十分な隙を突いて羽交い締めにして、ガッツリ吸血してやる事で脱力させて場外に下ろした。尚、俺が幻月を羽交い締めにしたその頃、モルモーは夢月に襲い掛かり、ほぼ同時に絞め落としていた。同時ノックダウンという事で、綺麗に勝利を飾ったのである。
因みに、戦っている最中に幻月は「時間停止」、夢月は「時間スキップ」を無効化した。戦いの間、1つだけ技を無効化させるという、夢幻姉妹特有のあの特性だ。
それにより、2人は時間魔法そのものを擬似的に克服。なので、技ではなく吸血という手段にて打倒したのである。
「ナイスコンビネーションだよな、俺ら」
「血筋ですもの。これくらい、合わせてくれなきゃごめんだわ」
「あはは……」
さて、ついに待ちに待った決勝戦だ。1対1なら霊夢に勝とうとは思わないし勝てもしない俺だが、こうも2対2なら話は別である。片方でも堕とせば勝ちなら、ひたすら攻めるだけ。
例え相手が霊夢だろうと、レミリアだろうとも、俺とモルモーが組めば、勝てなくはないだろう。
1級フラグ建築士エスカルゴ。