「お父さん」
「ん?」
「ちょっと、いい?」
「いいけど……どした、改まって」
「いーからちょっと来てっ……」
「??」
悪魔達が集まったパーティの次の日、博麗神社に来ていると、何故か霊魔が顔を赤らめながら、俺を縁側まで引っ張って行った。
幼くとも吸血鬼は吸血鬼。見た目は幼稚園児程の霊魔も、俺を引き摺れるくらいには既に力も強い。そんな息子が、俺に何の話だろうか。
「あのね……お父さん…………えっと……」
気になるが、急かしたりはしない。俺も、言葉に詰まる時はある。しかし急かされると余計に言葉が出なくなるし、言葉選びを間違えたりして、喧嘩や嫌われるなどの余計な事に繋がるからだ。
そして、彼が視線を床に落とし、指を絡ませ口をモゴモゴさせてから数分、漸く言葉が決まったのか意を決したように口を開く。
「僕にっ、セックスの仕方、教えてくださいっ!」
「………………え?」
「だから、そのっ……お母さんから聞いてると思う、けどさ……僕、昨日、お姉ちゃんとセックスして……でも、気持ち良すぎて、気絶しちゃって……。やり方とかも、全く分かんないし……僕ばっかり気持ち良くなっちゃったなって、思って……」
「え?」
「だから、お願いしますっ!!」
「……何の話だ?霊夢から聞いてるって?え?いや、全く聞いてねーぞ。え?どういう事?お姉ちゃん?誰お姉ちゃんだ?霊魔から見たお姉ちゃん多すぎて分からん」
「シガレットお姉ちゃん……」
「シガレットかァ〜っ…………そう来たか……へぇぇ、そう来るか……読めなかった、このエスカルゴの目を以てしても……なんて、リハクの真似はいいか」
「?」
「……教える前に……どうだった、霊魔。セックスはどうだった?」
「気持ち良かった……」
「……だよな。てか、もう精通してんの?」
「それなんだけど、まだしてないってお姉ちゃんに言われた。精液が、出てなかったみたい」
「あーね。つーことは?ドライオーガズムばっか?メスイキばっか……ある意味羨ましいな」
「え?」
「……今の内に、楽しんでおけよ。ただし俺の女には手を出すな。あとな、セックスは誰かに教わるもんじゃあない。結局は自分で掴んでいくんだから」
とか言いつつ、昔は小悪魔にテクを教わったが。さて、霊魔は誰を襲うようになるだろう。まさか、シガレットだけ……ではなさそうだが。何せ、霊魔も俺の子だ。ハーレムとまではいかずとも、何人かは犯しそうだ。
「因みにだけど、シガレット以外には誰と?」
「シガレットお姉ちゃんだけだよ」
「え?まぁ初めてだもんな」
「これからもシガレットお姉ちゃんだけだよ。僕はお父さんみたいにはできない。……恥ずかしいもん」
「女の子とヤる時はチンコ出すが、それに対して、俺が恥ずかしがってないとか思ってるのか?俺でも恥ずかしいからな?」
「え?なら、何で色んな人とエッチしてるの?もし恥ずかしいって思うならできるだけ少ない人にしか見せたくないと思うけど」
「……鋭いとこを突くねぇ。でも、気持ち良さの方が羞恥心を上回るんだよな。なんつーかさ、羞恥心を好奇心や欲望が上回って、初めて女の子に自分のを見せられるっつーの?だから霊魔も色んな子と経験すりゃ少しは人見知りも治まるだろうさ」
「……僕には、無理だよ。お父さんみたいにモテたい願望も無いし、そもそも、1人としかそういう事をするべきじゃないよ」
金槌で頭を殴られたような衝撃が走った。自分の子に、正論を言われてしまった。「1人としかHをすべきではない」、と。
分かっていた。分かっていた事だがいざこうして言われるとショックを受けざるを得ない。
「お前……本当に子供?物事を達観しすぎだろ……。いや、イイ事なんだけどね」
「そう……?普通、だと思うけど」
「……」
「あっ!いや、その、お父さんが普通じゃないって言いたい訳じゃなくてね……?」
「いいんだ、普通じゃあないのは自覚してっから。気にすんな」
「……うん」
「まぁ……セックスの上達についてはそんな感じだ。数をこなすしかない。精通前の息子に言うのも変な感じだが、頑張れ」
「うん。……ね、紅魔館に行ってきてもいい?」
「
「そのっ…………エッチの事、考えたら……ちんちん、おっきくなっちゃって……」
「……
「えっ!?で、でも………………いや………………うんっ、そうだよね……お父さんだって誰にでも手を出してる訳じゃないんだもんね」
「あ?あ、あぁ……そう、だな」
「分かった……!
どこかキリッとした顔付きで、彼なりの勝負服に着替えた後、霊夢に出掛けてくる旨を伝えてから、紅魔館に向けて飛び立った。
人見知りの霊魔が自分から1人で外に出るのは、これが初めてだった。理由は兎も角、息子が1人で出掛けられるようになったというのは、親として、とても喜ばしい事だなと飛び去る姿を見てしみじみ思っていた。
「さて、と。……なぁ霊夢」
「あー?何?」
娘達が子供部屋に居るのを確認した上で、霊魔について霊夢に話す事にした。
「霊魔について、何で俺に言わなかったんだよ?」
「あー……。アンタに相談しても、やっぱり肯定しかしないんだろうなって」
「だとしてもだ!せめて言うだけ言ってくれりゃあ良かったのにさぁ。確かに霊夢の言う通りだけど」
「ほら見なさいよ。今、霊魔が出掛けたのだって、シガレットちゃんとヤリに行ったんでしょ?」
「ケジメ付けて来いって言ったんだ。付き合うのか否か、シガレットに言って来いって。ま、その結果としてまたヤるんなら止めはしないけどな。だって霊魔だって人間で言う保育園とか幼稚園児だしな、下手すりゃ普通の人間でさえ自慰に目覚めかねない時期だ。早いのかもしれんが、正常の範囲内だよ。俺と違って複数の子に手を出さない所存らしいし、信じてやろうぜ、ここはさ」
「そりゃ信じたいけどさ。……本当に、外の人間でもあんな子供でも自慰行為に目覚めたりするワケ?」
「ああ。女の子だと特に分かりやすいぞ。一輪車に乗ってると、自然と股間に体重が乗るだろ?しかも二輪車……普通の自転車と違って手を着く場所がないお陰で、股に全体重が行く。それによって、刺激を受ける事が多いんだ。それで、オナニーと知らない間に、オナニーに耽る場合があるよ。角オナとかが最たる例だよな」
「だよなって言われても知らないけど……。確かに、一輪車は男の子より女の子の方が乗ってるらしいしそうなのかもしれないわね。男の子はどうなの?」
「『ちんちんいじってたらなんかきもちいい!』が始まりだよ。子供って何でも触るだろ?自分の股にぶら下がってるモノをニギニギしてたら、何故だか気持ちいいってなるんだ。精液は出なくても、一応イけはするし。で、大きくなり性知識を身に付け、ああ、アレはオナニーだったんだって気付くんだ。霊夢は、そういうの無かったのか?」
「……身体洗ってたら、少し気持ち良くなった事は、一応あるわよ。怖くなったからすぐやめたけどね」
「そーなんだ。ま、そういう人も居るよな。まぁ、そういう事でさ、子供でも性に目覚めるのは、何らおかしくないんだぜ。しかも霊魔なんて性的な事と理解してる上での行動だからな、無茶はしねぇさ。理解してないと何をするか分からねー。こっちのが何倍も危ない事だ」
「そう……じゃ、そういう事にするわ。血の繋がりが無いとはいえ、家系図上で見るなら異母姉弟だから公にはしない方がいいと思うけどね」
「だな。そこは同感だよ」
「なら良かったわ」
◆
「あれっ?霊魔くん、どうしました?何か、忘れ物でもしました?」
「あ、あああのっ、美鈴さんっ……」
「はい?」
「中っ……えっと、その…………紅魔館に、入っても、いいでしょうかっ…………!!」
「はい、霊魔くんでしたらいつでもどうぞですよ!ささ、お入りください♪」
「あっ、ありがとうっ、ございます……っ!」
喜び半分、羞恥半分で紅魔館に入る霊魔。数々のメイド妖精とスレ違うが、彼は尽くスルー。早速、地下の大図書館に向かって行った。
「お姉ちゃんッ!!」
「ひょわっ!?」
「あっ……あの、ここあお姉ちゃん……、シガレットお姉ちゃんは?」
「ああ、シガーならあっち整理してるよ」
「ありがとっ!」
「あっ!図書館は走らないで……はっや……」
トッと軽く床を蹴り、霊魔は弾丸のように進む。大図書館の中はパチュリーの気配に溢れていて今の霊魔では気配で個人の探知が不可能だ。だから姉のここあに尋ね、向かって行った。
そしてそんな彼の気配を感じ取り、シガレットもまた、大図書館内を走り出していた。
「霊魔くんっ!」
「お姉ちゃんっ!」
数時間ぶりに再会した2人は、力強く抱き合う。少々苦しかったシガレットだが、今はそんな痛み、苦しみさえも、どこか嬉しいものに感じられた。
「霊魔くん……また来てくれたの?」
「お姉ちゃんにっ、言いたい事があって……」
「いいよ、聞いたげる。なぁに?」
「お姉ちゃん……僕の彼女さんになって……?」
「……ふふ、嬉しい。でも、いいの?私、お父様ともエッチしちゃうような、イケない女だよ?」
「関係ない。これからシなきゃいいよ」
「!……霊魔くんがお父様に似てるのは、見た目だけじゃないんだね」
「え?それってどういう……」
「いいよ霊魔くん。でも、私の彼氏さんになりたいなら、沢山、エッチに付き合ってもらうよ?もし、精液がちゃんと出るようになったら……お姉ちゃんがぜ〜んぶ搾り取ってあげるから。無駄打ちなんて、たったの1回もさせない。一滴残らず貰っちゃう。その覚悟はあるのね?」
「うん……!僕は、お父さんとは違うよ。お姉ちゃん一筋だから……っ!だ、だからっ、お姉ちゃんも、僕一筋になって!!」
「こ〜んな可愛い弟が彼氏になってくれるなんて、私、幸せ……♡」
「お姉ちゃん……」
「ねっ……お姉ちゃんさ……なんだか……」
「エッチしたくなってきちゃったの……?」
「ふふ、分かっちゃう?」
「僕も
「じゃあ……その前に、お母様とパチュリー様に挨拶しておきたいから、付き合って?」
「うん、わかった」
手を繋ぎ、主人であるパチュリーの元へ向かった2人。そんな2人の様子を見て、パチュリーは話を聞く前から察して、シガレットが話を切り出す前に口を開く。
「事情は把握しているわ。……業務に支障のない程度だったら好きにしてもらって構わないわ。というかそもそもそういう契約だからね。デートしようと、エッチしようと、そこら辺は好きになさい」
「「……!」」
「それで?霊魔くん?」
「はっ、はいっ!」
「シガーの主人は私よ。この子と付き合ってるなら私に言っておかなくちゃいけない事……あるわよね?それが言えなきゃ交際は認められない……かもね?」
「────っっ」
「そんな!パチュリー様っ!」
「あなたは黙ってて。これは、霊魔くんにとっての通過儀礼みたいなものよ。彼が乗り越えなきゃね」
「…………」
「さぁ霊魔くん。あなたの口から聞かせて。……と、急に言われても困るわね。ヒントをあげる。『手を出した男として絶対にやらなくてはいけない事』。これがヒントよ」
「────」
霊魔はますます混乱した。物心ついた頃から今日までの記憶を走馬灯のようにグルグルと巡らせて、死に物狂いでパチュリーの問いに答える為の言葉を見つけようとしている。
◆
「────ねぇ。お父さんはどうしてそんなに浮気してるの?」
「ストレートだねぇ霊魔は。どうして、か。可愛い女の子が好きだから、かな?」
「お母さんとかも居るのに?」
「ああ。許してくれるから、甘えちゃうんだよな。サイテーな事だって分かってる。けど……なんかね。やめられないんだよな。女遊びには中毒性がある」
「ふーん……?」
「霊魔はこんなクズ男になるなよ。霊夢が悲しむ」
「言われなくても」
「ま……世界が滅ぶ前までには完璧に責任を取るさ」
「責任?」
「ああ。手を出したからにゃ、相手に本心から納得してもらえる方法で責任を取るのさ。大抵の場合はやっぱ『認知』と『結婚』と『説明』かな」
「何それ?」
「『あなたの子は俺との子です』と認める。これが
『認知』。んで結婚願望がありそうならこちらから
『結婚』を申し出る。あとは、フランとか霊夢とか鈴仙とかのメンバーに、こういう経緯で孕ませて、子供ができましたと『説明』するんだ。じゃなきゃローテーションをスムーズに変えられないからな」
「責任を取る為に結婚するの?それって……」
「そういう言い方をするとクズさが増し増しになるかもだな。訂正するか。ほら、やっぱ俺って外から来た奴だからさ、今でも結婚=幸せのゴールっつーイメージがあんのよ。だから2人でゴールする為に結婚すんだ」
「でも、お父さんは責任を取ってゴールしたいから結婚する……ってこと?なの?好きだから結婚するんじゃなくて?」
「いいか、霊魔?お前も俺の子なら覚えておけよ。結婚っつーのは、最高で最強で、最大の束縛の称号なんだ。だから俺は『全員と結婚したい』。心から
『皆と結婚したい』、俺はそう思ってるよ。霊魔の言う通り皆の事が好きだから皆と結婚したいんだ」
「……!?」
「気付いてないようだから敢えて教えとくけど、今俺が言った『お前も俺の子なら』って言葉、これも束縛の一種な」
「えっ」
「これを言う事によって、霊魔の心の中にゃ『僕はお父さんの子だ』っていう意識が芽生える。または再確認する事になる。どうだ?覚えはないか?」
「……ッ!!」
「……そういう事だよ。物理的に縛る事だけが、束縛じゃあない。相手の心……精神をも束縛してこそだ。そしてこれが相手の心を掴む、掴ませてもらう上でたまに必要になるからね。たまーにね」
「ふーん……覚えとく」
「クズ男にはなるなよ」
「分かってるって」
◆
「どうしたの霊魔くん?言えない?」
「……僕が、シガレットお姉ちゃんと結婚します!!何かあっても、僕が責任、取ります!だ、だから……お姉ちゃんと、結婚させてくださいっ!!」
「「えっ……えええええっ!?」」
深々と頭を下げる。そんな彼を見てパチュリーもシガレットもつい声を上げずには居られなかった。2人が思っていたセリフと、大きく違っていたからでもあるし、そこまで考えてたのか、と、勢いだけだったとしてもそう言えるだけの胆力に驚いたからである。
「あっ……あのね、霊魔くん?」
「は、はいっ……」
「その……なんて言うのかしら。結婚宣言はまだ少し早いわよ。私が言ってほしかったのは……そうね……
『責任を取る』だけでも良かったのよ。それ以上はまだ考えられないだろうと思ってたから……」
「……へっ!?」
「でもまぁ良い言葉が聞けたし、結果オーライね。唐突にプロポーズされたようなものだけど、シガーとしてはどう思……うん、聞くまでもないわね」
シガレットは泣いていた。幼い弟が勇気を出して宣言した事が嬉しくて泣いた。そして、単に「凄く好みだから」という理由で彼を襲った自分を恥じて泣いた。
魔力体とはいえ彼女は夢魔、サキュバスとあまり変わらないので、恥じる事はない。しかし理性ある1人の女として、そう思わずには居られなかった。パチュリーはそんな彼女を見て、安心したように、小さく溜め息をついた。
「うっ……ひぐっ、う、うぅっ……!ありがど……っ!ありがとうね、霊魔くん゙……うわあぁぁんっ……」
「えっと……良かった、のかな……?」
「ええ、良かったのよ。ま、精々色々と気を付けて楽しみなさいね」
「はいっ……!お姉ちゃん、エッチしよっ……!」
「ッ!?……そ、そうね、えへへ……♪」
(この流れでソレを言うか……!幾分かマシだろうと思ってたけど、イキナリの結婚宣言に加えて露骨なセックスへの誘い……。やっぱり霊魔くん、どこからどう見ても、エスカルゴの子供だわ……。霊魔くん、恐ろしい子……)
◆
「お〜。ちゃんと責任取る旨を伝えたみたいだぜ。お父さんもこれで安心できらァ……。実質、婚約したみたいなもんだよな、アレ。あんな子供が婚約とかこの世界の倫理は一体どうなってんだ?最高かよ?」
「息子の告白を覗き見だなんて、悪趣味な父親ね。それにしても、霊魔……ある意味、一番ヤバいわね。うちの子はどうしてこんなに性に奔放なのかしら。霊愛といい霊麗といい……全く……」
「
「あ゙?」
「……何でもない」
スキマで霊魔の行方を見ていたが、一応成功したようで安心した。霊夢も、安心はしているようだ。彼女なりに、言いたい事はあるにはあるようだが。
「はぁ。シガレットちゃんもシガレットちゃんよ、恋愛感情とか無さそうに見えたのにどうして……」
「セックスから始まる恋もあるって事だな。全く、平和なこった」
「何言ってんの、コイツは」
「いや、ぶっちゃけそういうのもあると思うぞ〜」
「何?それは経験談?」
「ノーコメントでお願いします」
「……」
ぶっちゃけ、モルモーに対してはそれに近かったかもしれない。可愛さに一目惚れはしたがいつもの恋愛感情とは異質なものがあった。だからこそ俺がレイプを仕掛けたワケだ。今となってはアレは成功だったと言えるが一歩間違えていたら…………。
何故だか妙な寒気を感じ、身体を震わせてしまう俺であった。