チュンチュン…チュン…
「んにゅ……ふあぁぁ……」
起きた…?起きたのか……。
フランもレミリアもまだ寝てるか…。
起こした体を再びベッドに横たえる。
「ふふっ…」
フラン…可愛いなぁ…。
3人で同じベッドで寝てると、必然的に顔が近くなる。結構長いこと一緒に寝てるが…やはり慣れないものだな。
「………」スッ
寝ているフランの頬に手を置く。
「っ……」
一瞬ピクリと反応したが、起きる事は無かった。
柔らかい。その一言に尽きる。
もっちりと弾力のある頬…堪らないぜ。
「頼むから起きるなよー…」
ボソッと一言呟き、色々ヤリ始めた。
「エスカルゴ、どうしたの?」
食休み中、フランはそう言った。
「どうしたって…なにが?」
「何か機嫌良くない?」
「ふっ、そんな事無いさ」
「やっぱりなんか機嫌良いわね。何かあった?」
よく見てくれてるんだなぁ…。素直に嬉しいぜ。
「何でもない♪」
「ふふっ、教えてくれても良いんじゃない?」
頬杖をつきながらニコッとする。
「ダーメ♪」
「ぶー…ケチー…」
ほっぺを膨らませるフラン。
そんなに言うほどかな?
ふふっ…すぐ表情に出るからなぁ俺は…。
機嫌が良いというのは紛れも無い事実だ。
さっき、フランの頬をぷにぷに触ったからだ。
おでこくっつけたり…ね。
終いには、ほっぺにキスしたり…ふへへ…。
思い出しただけで興奮するぜ。
カタカタカタ……
「あら?…地震?」
「ありゃー…」
テーブル上の花瓶が倒れないように抑える。
震度2…いや、3くらいか。
何だって地震なんか……ん?地震?まさか…
ガタガタガタガタッッ
「うおっ!?」
強くなった!
「きゃあっ!」
シャラン…シャララン…
シャンデリアが音を立てて大きく揺れる。
───なんかやばい。
「フラン、外に!」
「うん!」
手近な窓から外に飛び出すフラン。
この揺れ、本能的にヤバいと感じた。
現在は震度6強くらいだろうか。
さっさと避難を…そうだ、レミリアと咲夜さんと小悪魔とパチュリー…メイド妖精たちの避難!
「あ!あんたの仕業だったのね!」
外からフランの叫び声が。
「どうした!?」
「エスカルゴ!!来て!!」
「ええ!?…わかった、今行く!」
フランと同じく窓から飛び出す。
「フラン、どうし……おい、何やってんだ?」
外に出ると、天子がオレンジ色に輝く剣を地面に突き刺している光景が目に入った。
んーと…あれは何してるんだ?
あれが地震の原因なのか?
地面にぶっ刺すとどーなるんだっけ…?
えーと……“剣を地面に刺すことで大地に気質を打ち込み隆起させる”ってのを昔ネットで…。
隆起…あ、紅魔館ピンチじゃん!
「あ、ご主人様♪」
「“あ”、じゃねぇ!さっさとそれ抜け!」
「やだー♪」
「はァ!?」
「ご主人様がちゃぁ〜んと構ってくれないんだもーん♪」
…昨日のことか…。
「か、構う!構うから今すぐ抜け!!」
「ほんとにぃ?」
「ああ!今から構ってやっからそれ抜け!!」
「はーい♪」
ズボッとそれを引き抜く天子。
少しずつ揺れが収まっていく。
「ふぅ…」
「さ、行きましょ♪」
腕を絡めてくる天子。
「やめろ、くっつくな!」
「エスカルゴ…」
寂しげに此方を見るフラン。
羽はしょんぼり垂れ下がっている。
「…す、すぐ戻るから。フランも中に戻りなさい…多分もう大丈夫だから」
「うん…」
最悪だ…フランにこんな所見られたくなかった。
2人でいつもの部屋に入る。
「今日はちゃんと構ってくれるのよね?」
「…ああ」
すぐ戻るとは言ったけど、コイツ相手にすぐ戻れるわけがない。だが。今日から俺は自由の身だ。
なんで今までこれを思いつかなかったんだろう?
ほんと俺って⑨だわ。
「『分身』」
バチバチバチ…
「…ヤァ」
「おう」
鞭打ち、縛るだけなら3時間はもつだろう。
エネルギーが切れたら霧散して消えるはずだ。
「キャッ♡ ご主人様が2人も♡」
「オイ。アイツノ相手、俺ニ任セテ良イノカ?」
「ああ、存分に可愛がってやってくれ」( ˆᴗˆ )
「ワカッタ。…天子チャンヨォ、俺ハアイツミタイニ甘クネェゾ?覚悟シヤガレ」
両手にムチを出し、ニヤニヤしながらベッド上の天子に向かう分身。
俺も甘くねぇよ、と毒づき、俺は退室。
あの様子なら、何をやるかはわかっているんだろう。ま、あいつは俺の中にいたんだから当然だな。
「よっ、フラン」
「もう大丈夫なの?」
「いや。あいつの相手を分身に任せた」
「なるほどっ!流石エスカルゴね!」
「流石も何も…今頃思い付いたんだぜ?今までの時間は何だったんだろうな…はぁ…自分が情けねぇよ」
「まぁまぁ、思い付いたんだからイイじゃない!自分を責めちゃダメよ♪」
「ありがとう…フラン…」
いい子だなぁ…。
2時間後
「ヒイィィィィ!!」
「ん?あ…」
なんでお前がそこに?
「あれ?エスカルゴの分身じゃない」
何故か分身が此方向かって走ってきている。
「おい、何やってんだよ?」
ガシッ
「アイツハ俺ノ手ニ負エナイ!オ前ガヤレ!」
俺の両肩を掴むなり怯えた表情で叫ぶ。
「最初から説明頼む」
「ア…アァ…。最初ハ、イツモト同ジク、縛ッテ鞭打ッテタンダ…」
「ふむ?」
「ソシタラアイツ…『もうソレじゃ物足りないから踏んで!蹴って!殴って!』ッテ言イ始メテ…」
『うわぁ…』
フランもドン引きである。
エスカレートしちまったか…。
「ソンデ、怖クナッテ逃ゲテキタンダ…」
「踏んでやればいいだろ」
「気持チ悪イダロ!!」
「お前、鞭打ちはノリノリだったよな?」
「ソレトコレトハ話ガ別ダ!!」
やれやれ…わがままな分身だぜ。
「しゃーねーな、わかったよ」
「オッ!ソレデコソ俺ダゼ!ジャ、フランチャンノ相手ハ俺ガスルカラオ前ハ楽シンデコイ」
楽しまねぇよバカが。
「触んなよ?」
「ワカッテルッテ」
「ならいい」
くるりと背を向けて部屋へ向かう。
だが、嫌な予感がしたので振り返ると……
「フランチャン、髪サラサラダナァ」
「えへへ〜」
触ってんじゃねぇか!!!!!!!
引き返してブチ壊そうとしたが、フランをこれ以上1人にさせたくないと思ったので、破壊衝動をグッと堪える。
「お待たせ」
「ご主人様ぁ〜♡」
「…おう」
手足は普通のロープで縛ったんだな。
「やっと踏んでくれるのね!」
うーん…俺が言う事聞くしかないからって調子乗ってるな?ここらで1遍脅しとくか。
あまり気は乗らねぇが…。
「お前さ、調子乗ってないか?」
「ほぇ?」
「俺がお前のこと構わなきゃ幻想郷が終わる。だから俺はお前のこと構うしかない……って思ってるよな?」
「そうでしょ?」
トロンとしたドMモードから一転、キリッとノーマルモードの表情になる天子。
「いいか?俺は、その気になればお前を殺すことが出来るんだぞ?刀が折れたところで、首を絞めるとか、他にも色々な方法があるんだからな?お前を構ってやってんのは俺の気まぐれに過ぎねぇんだからな?」
「フーン…やってみなさいよ」
「………」
コイツ…意味わかってんのか?
お前を殺すって言ってるんだぞ?
「どうしたの?殺せないの?」
「フンっ、今すぐ殺すとは言ってねぇ。これ以上要求がエスカレートするようなら殺すってことだ」
「ふーん?じゃあ今すぐ踏んでもらおうかしら」
ノーマルモードのままドM発言するのは見てて気持ち悪いな…せめてドMモードになってくれ…。
「ダメだ。鞭打ちまでだ」
「あら?それ以上の要求をしたら殺すんじゃないの?」
「死にたいのかお前は」
「ご主人様にペットを殺す勇気があるのかしら?」
「………………………………あると思うぜ」
多分…ある。仮にも俺は吸血鬼だ。
いざそうなれば吸血鬼の本能が目覚めて…
「なら今すぐ殺してみなさい」
「…良いだろう。じゃあな」
……ここでストレスの元を断ち切ってやる。
ガシッ
馬乗りになり、天子の細い首に手をかける。
グググ…
「ぐっ…」
苦痛に顔を歪める天子。
「吸血鬼の力…舐めんなよ?」
グググッ…
「んぐ…」
…おかしいな?力が入らない。手が震える。
「こんな…もん、なの?吸血鬼の…力ってのは…」
掠れた声で煽る天子。
「ち、違う!舐めんじゃねぇぞ…!」
だが、どうやってもそれ以上力が入らない。
「クソッ!」
これ以上やっても無理だと判断し手を離す。
「ケホッ、ケホッ…。ほらね、殺せないでしょ?」
殺されかけたにも関わらず笑顔を向ける天子。
「うう…」
どうにかしてコイツを始末しなきゃいけないってのに…やっぱ殺すなんて俺には無理だ。
前はさ…暴走してたとはいえ、大好きなフランのこと殺しかけたってのに…なんでこういう時に本能は目覚めないのかなぁ…?
「ご主人様は優しいから、ペットを殺すなんて事は出来ないのよ」
「優しくなんかねぇよ」
「じゃあ、なんで今まで言うこと聞いてくれたの?」
「幻想郷守る為だっての」
「なんで幻想郷を守るの?」
「なんでって…そりゃあ…」
あれ?なんでだっけ?…いや、幻想郷を守ることがみんなを守ることに繋がるからだ。
「幻想郷がご主人様に何をしてくれるの?」
「…………」
何をしてくれるか…だと?うーん……。
いや、コイツのペースに呑まれるな。
とりあえずコイツを何とかしないと…。
何とかって何だ…?
ストレスばっか溜めてても、自分の寿命減らすだけなんだぜ?……自分が情けなくて涙が……
「ね、踏んで♡」
「…………」
性懲りも無く…!
おかげで涙引っ込んじまったよ。
「鞭打ちまでだっての!」
「ふーん…幻想郷壊されたいのね?」
「うっ…ならその前にお前を殺す!」
「今出来なかったクセに?」
「ぐっ…」
「わかった?私の相手するしかないのよ?」
「くぅぅ…!」
八方塞がりかよ…。
「私の言うことを聞きなさい」
「…チッ…わかったよ!」
こうなったら、なるようになるさ。
ケ・セラ・セラ…ってやつだ。
「どっちがご主人様だかわかんねぇな」
「あ♡ 私のことペットって認めてくれた♡」
あっ、やべ(・_・;)
「し、仕方なくな」
「やったぁ♡ じゃあじゃあ、踏んで?」
「どこを?」
「…どこでもいいからぁ、早くしてぇ♡」
既に顔を真っ赤にさせ、ヨダレを垂らさんばかりにハァハァ喘いでいる。
切り替わり方が気持ち悪いほど早い。
うわぁ…コイツ、ぶっ壊れてやがる…。
2時間後
「じゃあな、もう来んなよ」
「またね、ご主人様♡」
「チッ…」
「“明後日”、また来るわ♡」
「え?あ、ああ…」
何かあるのかな?
「あら?明日も来ていいの?♡」
「ふざけんな」
「うふふ♡ じゃ、また明後日ね♡」
「………」
少しコイツについてわかったことがある。
ノーマルモード……謎の上から目線、強気
ドMモード…………何事も快楽と化す
そして、ノーマルモードからドMモードの切り替わりはスイッチのようにカチッと切り替わる。
…踏んだからか、いつもより疲れが酷いな。
「あ、エスカルゴ来た!」
「おう」
「チッ」
「おいお前、なんだ今の舌打ちは」
「何デモネェヨ」
「そうか。…俺の中に還れ」
ブスッ
右人差し指を分身の首に突き刺す。
むっ…少し痛いな。
「エッ…アッ、ナンカ吸イ込マレテ…」
シュンッ
「…ふぅ…」
成功したか。
「えっ?今何したの?」
首を傾げるフラン。
「分身を吸い込んだ」
「へー!そんな事出来るの?」
「今初めてやってみたけど…出来るみたい」
「凄いわね!」
「まぁね」
少し胸を張ってドヤってみる。
エネルギーを形にし、出す事が出来るのなら、形を無くさせてエネルギーに戻す事も出来るだろうと思っただけだ。
吸い込んだおかげで、少しは体力が回復した。
「あいつに変な事されなかっただろうな?」
「うん!頭撫でられただけよ!」
「よかったぁ…」
「なんかずっとパチパチ聞こえてきたけど」
「へー…」
それは電気の音で間違いないな。
あと、この分なら、これからもあいつにフランの相手任せてもいいかもな。あくまでも、俺が天子の相手してる時だけな。
「ね、エスカルゴ!」
「ん?」
「まだ外明るいし、どこか行かない?」
天子はいつも、俺らが朝ご飯食べて少し経ってからか、昼ご飯を食べて少し経った頃に来る。よって、朝ご飯の後に来た今日はいつもよりも時間が余ってる。
「そうだな!行こう!」
「やったぁ♡」
2人きりのデー……
「私も連れて行きなさい」
「レミリア!」「お姉様!」
驚かすな!
「なに?文句でもある?」
「いや、何でも…」
少し声を落とすフラン。
フランも2人きりが良いと思ってくれてたの?
俺もやっぱフランと2人きりが……いや、最近はレミリアと居る時間も短いんだ。
一緒に行った方がいいな。
「よしっ、3人で行くか」
「そうね」
「フンッ、そう来なくちゃ」
3人で外に出る。
門番は寝ていたので咲夜さんに報告しといた。
「どこ行こうかしら?」
…今度からはどこ行くか決めてから出よう。
「湖の周りグルグルするとかはどうかしら?」
「( 'ω')ファッ!?」
「それじゃつまらないわよ」
「そうかしら?エスカルゴとなら何しても楽しいわよ?お姉様ったら子供ね」
やれやれ、と言わんばかりに首を振る。
「ムキィィィ!」
「ね、エスカルゴ、それでいい?」
「うん、そうだな」
少し物足りないような気もするけど…確かにフランとなら何しても楽しいしな。
しばらく歩いてて、あることを思い出した。
「そーいえば、この前誰かから“遊びに来て”ってお誘い受けたような」
「え?そうなの?」
「誰だったかな…この前の宴会で……」
あー…うーん…誰だっけ…?
「エスカルゴ、色んな人と喋ってたものね」
「そんなに喋ってないと思うんだが…」
思い出せないほどだから…そーなのかー?
「もしかして、さとりじゃない?」
「え……あ、そーだった!」
すっかり忘れていた。
「よく分かったなレミリア」
「あの時、やけに2人が盛り上がってたからね。そうなんじゃないかなって思ったの」
「なるほど」
そんなに盛り上がってたか?
てかその様子を見てたのか。
「なんでさとりがエスカルゴのこと誘うの?」
「確か、動物の話で盛り上がったんだよな。そんで、遊びに来てって誘われた」
「へー…そうだったんだ…」
ん…明日は天子来ないし…明日行こうかな?
「明日行くか?」
「なんで明日?」
「明日は天子来ないから」
「なんでわかるの?ほぼ毎日来てるじゃない」
「明日は何か用事があるんだとさ」
多分。
「じゃ、明日行きましょ!」
「よし!レミリアも…」
「私はパス」
『え?』
「地底っていったら、鬼やら妖怪やらがいっぱい居るじゃないの…」
「吸血鬼も妖怪だろ」
「そ、そうだけど、万が一戦闘にでもなったらどうする気!?」
『倒せば良いだけだ(じゃない)』
「フランまで…」
「俺とフランは1回地底で暴れたからな、それくらいは何とも思わないさ」
「暴れたって言い方はどうかと思うけど…確かに結構戦ったわね」
「ええ…なら尚更嫌よ…」
「でもよ、あの時は異変解決しに行ったんだ。明日は遊びに行くだけだぜ?」
「そうよそうよ」
「うう…」
もしレミリアが来ないとなったら…咲夜さんはレミリアの方につくに違いない。
そうなったら2人きり…悪くない。
だが遠出するのに2人は寂しいような気がする。
「ま、ゆっくり決めようぜ。今無理して決めることないさ」
「そ、そうね。明日の朝までに決めればいいんでしょ?」
「そうだな」
いつでも良いって言ってたし、明日急に遊びに行っても大丈夫なはずだ。
『ただいまー』
「おかえりなさいませ。ふふっ、デートですか?」
「まぁ、そんな所ね」
「久しぶりね♪」
「だな♪」
今日は何ともなくて良かったぜ。
デートの度に何かあるからなぁ…。
「あ、咲夜さん!」
「なんでしょう」
「明日、朝ご飯食べたら地底へ出かけます」
「わかりました」
やっぱり、保護者にはどこ行くのかは伝えるべきだもんな。…咲夜さんって保護者なのか?
いや、保護者でいいだろう。
ふふっ、明日が楽しみだぜ。
エスカルゴのストレスの原因ランキング
1位:嫌いな所へ行く(学校など)
2位:嫌いな人間に会う
3位:勉強
4位:雨などが原因で運動が出来ないこと
5位:天子の相手
※幻想郷には嫌いな所、嫌いな人、勉強が無い上、室内が広いおかげで運動が出来ないこともまず無いので、幻想郷でのストレスの原因は天子でしかない。