「さぁ、今日はいよいよ、待ちに待ったクリスマスパーティよ。エスカルゴ、家族達に連絡は済ませてくれたわね?」
「モチのロンだぜ」
「咲夜、弦月姫ちゃん!会場の拡張は?」
「「既に済ませております」」
「宜しい」
今日は聖夜。クリスマスである。まだ秋だろうと思っていたが、もう、年末も間近な季節となった。子供達も大きくなったし、それくらいの月日は既に流れたのだろう。ついこの前まで、秋姉妹と青姦を楽しんでいたように思えるが……。
そして今夜は紅魔館でパーティだ。今回は全ての家庭の全ての子供達が一堂に会する、初めての日となる。恋夜と綺愛羅の存在は話だけで伝えていた。しかし皆が彼らを目撃するのは、今回が初めてだ。
家族達に「弟と妹であり、息子と娘でもある」と伝えた時の皆の驚かなさは、流石に俺の方が驚いたくらいだった。
霊夢なんて「神綺との子でしょ?別にそんなんで驚きやしないわよ」とか言うし、鈴仙だって「逆に今まで耐えてたのがビックリ」などと言う始末だ。
レミリアは「でしょうね」の一言、フランからは大笑いされ、文なんかは夢子が夜這いに来た時から察していたそうだ。文曰く「夢子さんはお堅いお方ですから主より先に手を出すとは思えないのです」との事だった。成程と納得はできたが、こんなにも気楽だと、寧ろ申し訳なくなってくる。
子供達にとっては、恋夜と綺愛羅は「伯父・伯母であり弟・妹」とかいう複雑怪奇な関係になるが、子供が増えるのはいつもの事だし、とすんなり納得してもらえた。俺の子は飲み込みが早くて助かる。
その時、ゴオッという豪風と共に2つの人影が。1つは長身、1つは子供。翼はあるようだが蝙蝠の翼ではなく鳥のような柔らかそうな翼。
「やぁやぁレミリア嬢!久しぶりだな!」
「俺も来たぞ!レミリア嬢っ!」
「あら、いらっしゃい早鬼、
「おうっ!いっぱい運動してるしいっぱい食べてるからなっ!えっへん!!」
「ふふっ、元気なのは良い事ね。さ、どうぞ、もう料理は並んでいるわ。あなた達が一番よ」
「おっしゃあっ!俺らが一番だって、お母様!俺ら最速だぁ!」
「フフン、当然だ。これくらいで喜んでいたら全然ダメダメだ。もっと大きな目標を目指すんだ!」
「ハイ!」
「よし、獲物に喰らい付けッ!!」
「ハイッ!!」
2人は駆け出し、会場に並んでいる料理を好きに食べ始めた。相変わらず元気で何よりだ。俺の事をスルーしたのは少しビビったが。
そして突如、目の前の空間がパリパリッと放電し始め、グニャリと歪む。向こうからやってきたのは永遠亭メンバー、永江家の2組だ。
背景が天界である事から察するに、巫月が2人を迎えに行ったらしい。
「来たよエスカルゴ〜!」
「えすかるご〜っ!」
「お父様っ!」
「んー相変わらず可愛いぞお前達ィ〜!よーしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよし!あぁ〜柔らかいなぁ〜巫月ぃぃ〜ッ、よしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしっ!!緋月も相変わらずの垂れ耳だな、ふにふにとしてて柔らかいぞぉ!!魅玖ちゃんも相変わらずキュートだからお父さん安心したぞ、よしよしよし♪」
「えへへ〜、わたし、ふにふに!」
「ありがとうございますっ、お父様っ……!」
「巫月は相変わらず甘えん坊だなぁ、よしよし♪」
「ふふふっ、これ以上はダメだよぉ、皆見てる♡」
「はははっ、いつもの事だろう?」
「それもそーだねっ♪」
抱き上げ、ぎゅううっと抱き締めてやる。巫月は俺の首筋に噛み付き吸血。それで一旦彼女の性欲を抑えさせるのだ。
反対に、俺の息子が主張し始めてしまうのは少しどうしようもない所ではあるが。
「……相変わらず、おかしいくらいラブラブよねぇ、巫月ちゃんとエスカルゴ……」
「えへへっ、将来は結婚するのでっ♡」
「いやまぁ一応まだ未定だけどな?」
「もしそうなったら式場は提供するから言ってね」
「ありがと〜レミリアさん!」
その後、永遠亭メンバーと永江家はパーティへと向かい驪駒親子と対面。するとすぐにちょっとしたトラブルが発生した。
駆翔は足の速さに自信がある。巫月も駆け足には多少腕に……いや足に覚えがあるようで、2人による競走が始まった。
「能力は使用禁止っ!ただ走るだけだッ!いいな、お姉様!」
「問題無いよ。お姉ちゃんに楯突くとどうなるか、優しく教えてあげるね」
駆翔に、昔の妖舞の面影を見た。今の妖舞は多少大人しくなっているが、少し前まではまさにあんな感じで弦月姫に挑んでいたと聞く。血は争えない、という事だろうか。
「ごめんなさい早鬼、巫月ってば負けず嫌いで……。もう18人のお姉ちゃんなのに、子供過ぎて……」
「なぁに問題は無い。勝っても負けても良い経験になるだろうからな。存分に楽しめよ、駆翔っ!!」
「ハァイッッ!!」
「スタート地点は
バキャアッと床を壊し、巫月と駆翔は駆け出す。初速は巫月が上。初速が既に最高速度になっているようだ。しかしジワジワと駆翔も追いついていく。
そこで早鬼は後ろから声を掛けた。
「勝てばお前は若頭だッ!史上最年少だぞ!!」
「史上!?……最・年・少ッ!!最・年・少ッ!!」
大股で跳ねるようなフォームに変わった。普通は遅くなる走り方だ。しかし、早鬼の脚力が駆翔にも受け継がれているのだろう。かなりの速度で巫月に迫り、遂には隣に並んでしまった。
ゴールである門まで20mも無い。あと瞬き一度もするかしないか程の時間でゴールインだ。やはり、俺は巫月推しだ。だから彼女を応援する事にした。
「勝ったらご褒美だ!何でも願いを叶えるぞ!!」
「……ご褒美ッ!!」
次に着地した瞬間、足にとてつもない力を溜めた巫月。駆翔はその隙に巫月を抜かし、ゴールに手を伸ばすが────先にゴールラインを割ったのは、巫月だった。
溜めに溜めた力を解き放ちミサイルの如く全身で突っ込んだのだった。
「ハーッ、ハーッ、ハーッ…………!嘘、だろ……!?俺が、足で……負けた……!?」
「……ふぅ。この程度で息を切らしてちゃあ、私には勝てっこないよ」
「つッ……強い!強すぎる!舎弟にしてください!!巫月の姐御!!」
「姐御とかやめてよ!」
「あっはっはっはっは!!いやあ綺麗に完敗したよ鈴仙!お前の子は強いな!」
「長女だもの。でも駆翔くんもかなり速かったわ。もしかしたら巫月もいつか負けるかもね」
「ふっふっふ……そうかもしれないな!」
愛娘にはエッチなご褒美を要求されたので、今度ヤろうという事で合意。駆翔には、ドンマイだぞと声をかけ、慰めてやった。ぶっちゃけまだ赤ん坊な駆翔が巫月と一瞬でも張り合えた時点で、賞賛して余りある程の凄い事なのだが。
「お父様」
「どした虔魔」
「あの男の子は……あの駆翔なのですか?」
「そうだぞ?」
「随分、大きくなりましたね」
「……お前もな?」
「恐縮です」
執事見習いの虔魔は、こんな調子だ。相変わらず天然なんだかのんびり屋なんだか分からない子だ。虔魔も、やる時はやる男なのだが。
「あ、あのっ、お父様っ!」
「今度はシガレットか、どうした?」
「霊魔くん、来ますか?来ますよねっ!?」
「あー、今日皆に言うんだっけ?付き合ってるの」
「はいっ!」
「そっか。霊魔のこと、任せたよ」
「は、はいっ、ありがとうございますっ!!」
俺が孫の顔を見るのも、そう遠くない未来の事……なのかもしれない。何となくそう感じた。
続いてやってきたのは射命丸母娘。穹を一目見てすぐに「速度に優れた者」と見抜いたらしい駆翔は先程のように勝負を挑む。駆翔はまたコテンパンにされた──とまではいかないが、穹の辛勝だった。
飛ぶのは速くても走るのはそこまで、との事だ。誰しも得手不得手がある。きっといつかは穹も彼に抜かされる日が来るのだろう。
摩多羅母娘が来た時は、フランが母娘の方へ行き何事か話しているようだったが、彼女が楽しそうにしていたので、敢えて聞かないでおいた。阿弥も、最初の無表情・無感情さは何処へやら。フランには心からの表情を見せているようで、俺は安心した。
「うううっ、俺、負けてばっかだ……っ!最速最強の勁牙組なのに……!」
「……まぁ……お兄ちゃんお姉ちゃんばっかだから、仕方ないさ」
続けて妖舞、霊愛、霊麗、霊魔などと競争するも駆翔は敗北、良くて引き分けだった。因みに、彼と引き分けたのは霊愛と霊魔である。霊愛は半妖だし霊魔は防御に特化しすぎるあまりそれ以外が拙い。なので幼い駆翔に負けるのも仕方ない所はある。
「よォし、次だ次!おい!そこの黒髪!勝負だ!」
「え、俺?……兄ちゃん、この子誰?」
「四男の、驪駒駆翔ってんだ。走るのが好きでな。かけっこで勝負したいんだってさ。恋夜、どうだ?一応、恋夜の兄ちゃんに当たる子だぞ」
恋愛コンビから見て俺の子供達は、兄や姉であり甥、姪である。年下の伯父伯母と年上の甥姪とは、まさにジョジョで言うと仗助と承太郎のような関係である。複雑だ。
「えー……うーん……まぁいいけどさ……俺弱いよ?」
「まぁまぁ。全力で頼むぜ」
「はーい。じゃ、駆翔兄ちゃん、勝負だ」
「おう!ゴールは門だ!ここから一直線に走って、先に門を越えた奴が勝ち!」
「分かった」
恋夜vs駆翔のこのかけっこ勝負は、意外な事に、それなりの大差を付けて駆翔が勝った。体術を全く磨いていない恋夜なので、身体能力なんかもあまり鍛えていないようだった。
そして、兄と兄の対決を見ていた綺愛羅が動く。
「駆翔お兄ちゃん」
「ッ!?……て、天使だ……!天使が舞い降りた!」
「駆翔お兄ちゃんって強いんだね。それなら私とも勝負しよう?私、恋夜お兄ちゃんより速いよ?」
「へへっ、いいぜ!女の子だろうと、手加減なんてしないからな!」
「そんなの要らないよ。……エスカルゴお兄ちゃん、よーいドンお願い」
「はいよ。それじゃ、よーい…………ドンッ!」
綺愛羅は恋夜と違い身体能力を鍛えている。身体能力強化の魔法は使うがそれに頼りきりではない。だから走るフォームは恋夜と違い洗練されているし翼と腕、足の動きが完璧に合っていて、さながら、彼女自身が一つのリンク機構のようにも見えた。
「んぬ、お、お、おおおおおおおおおおっっ!!」
「……」
全力で走る駆翔。これまでの疲れを感じさせないパワフルな走りだ。しかし対戦相手の綺愛羅は表情ひとつ変えずに冷静に走る、走る、走る。
ジワジワと2人の間に差が開いていき、最終的に5mは離されて決着となる。綺愛羅の勝ちだった。
「へぇ〜……あの白い子、速いんだね」
「あ、巫月……見てたのか」
「うん。で、あの子、名前は?」
「綺愛羅。俺と母さ……神綺との子だよ。末娘だぞ」
「『末娘』なんて称号、どうせまたすぐに別の子に移るんだろうなぁ〜」
「うっ」
「にしても神綺さんとの子かぁ。言われてみれば、ちょっと神綺さんに似てるかも。ふぅん、少し複雑だね。あっちの子の方が肉体的には強そうだよ?」
「あの子?……ああ、恋夜な。綺愛羅の双子の兄貴。霊魔に似てるよな」
「つまりエスカルゴに似てるって事だね」
「そうとも言う」
「でもエスカルゴより優しそうだね」
「……」
「あははっ、冗談冗談っ♪」
「……」
「怒ってる?」
「……怒ってない」
「良かった〜!後でエッチするの忘れないでよね、エスカルゴ♪」
「はいよ」
全く、マセた子供だ。まさか、巫月が駆け引きのような真似をするようになるとは思わなかった。
いつまでもファザコンなワケないと思っていたがあんな駆け引きをしてくるのなら、きっと、当分は大丈夫だろう。
「お父様」
「どした虔魔」
「あの子は、お父様と天使との子ですか?」
「神綺母さんとの子だぞ」
「どうして天使の翼が……。不思議ですね。お2人に天使の翼は無いのに」
「母さんがそう設定したんだよ。遊び心ってヤツ、だと思うけど」
「暇を持て余した
「何でそのネタ知ってんだ」
「ふふ、それは秘密ですよお父様。ところで今日は子供達の子供達による子供達の為の戦いがある、とお姉様から伺っていますが、それはいつ頃に?」
「え、何それ知らん。お姉様って誰?それは誰から聞いた?」
「巫月お姉様です。総当たり戦だと言われました。メイド長と副メイド長が拡張した戦闘区域にて行う予定のようで、既に全ての子供に伝わっています。各々準備を開始していますので、俺も副メイド長と準備に取り掛かります」
「そうか。……つーか19人でリーグ戦とか時間かかりすぎだろ」
「そうですね、何試合になるでしょうか……」
「リーグ戦の試合数はな、この数式で求められる。
『n(n-1)÷2』だ。つまり、19(19-1)÷2、だから試合数は……171試合か」
「えぇ……そうなんですか?19人からそんなにも数が増えるなんて思えませんが……」
「ん、俺も計算ミスを疑いたくなってきた。うん、永琳先生に聞いてみるかな……」
しかし、永琳から帰ってきたのは非情なる現実を示す答え。彼女曰く「正解」との事。しかも巫月はそれを計算した上で実行しているとも言われた。
各試合1分で終わらせたとしても、最速で171分。約3時間を使う計算だ。勿論、待ち時間は各試合を見ていたり食事したり、色々するのだろうが。
ましてや、上の四姉妹や力をつけた下の四兄妹の試合はそんなに短時間で終わるはずもない。かなり時間がかかるのは約束されているようなものだ。
幾つかの試合を同時進行するのなら、ある程度の短縮も可能だろうが……それでもかなりの時間が必要だろう。一体、巫月は何を考えて────。