「ただいまーっと」
「あ、丁度良かった。魅須丸が呼んでるよ」
「マジ?じゃあ出掛けてきまーす」
「そ・の・ま・え・にッ!!」
「はいはい……」
ある日、博麗神社に行くと、境内を掃除していた霊愛が俺を呼び止める。どうやら陰陽玉が完成したらしいので受け取りに虹龍洞へ向かおうとするが、霊愛が裾を引っ張って引き留める。
誰も近くに居ない事を目視で確認すると、背伸びしながらキス待ち顔に。屋外なんだから、一応キスだけでもやめておいた方がいいだろうに。
しかしお願いされると断れないのが俺の悪い癖。腰を屈め、そっと唇を重ねる。2人きりだからと、
「いってきますのキス」をオネダリしてくるとはまるで新婚の夫婦みたいだ。
「まるで新婚だな」
「!?」
「だってそうだろう?フフッ、いつか霊愛の口から聞いてみたいもんだ。『大きくなったらお父さんのお嫁さんになるー!』ってな♪」
「うっ……う、ううっ……そ、れはっ……///」
「照れちゃってカワイーねぇ。後で、霊夢に隠れてエッチしちゃうか?
「そ、それはダメ!絶対にダメだからっ!」
「ありゃ、珍しいね。俺から誘ったのに」
「だって……声さ……絶対に我慢できないもんっ……!せめてお母さんとか霊魔が居ない時……ね……?///」
「……ちょっと来て」
「えっ?掃除してるんだけど……ていうかお父さんも魅須丸のとこに行かないと……」
「すぐ終わる」
「……はい♡」
ヤリ小屋に娘を誘拐して、一通りの穴という穴を数回ずつ犯し尽くす。洗ってなくてもなんのその。結局、到着は一刻ほど遅くなってしまったものの、魅須丸は
「博麗霊愛くんから早めに連絡をもらっていたにも関わらず遅れるとは、全く、だらしないですねぇ。遅れた理由は分かっていますので弁明の余地はないですけど」
「弁明するつもりは無い。
「全く。形だけの謝罪は不要です。……早速ですが、完成しました。これが、あなたの専用武器……あなただけの陰陽玉です。受け取りなさい」
「ありがと。へへ、これで霊夢みたいに強く……!」
「ああ勿論、似たような武器を持ったからと自然に強くはなれませんよ。その武器の熟練度が無ければ彼女のように強くなれません。当然、言わなくても分かっていますね?」
「トーゼン。当たり前よ」
「なら良いのですが。それではこれからも私の手先として動いて下さいね」
「はいはい。……え?」
「いやぁ、器でもないあなたに、タダで武器を製作するワケないじゃないですか」
そう言って魅須丸はクスクスと笑う。やられた。そうだ、現在の陰陽玉の継承者の父親だからって、そんな優遇はしない。それが神ってヤツだ。
「……何をすればいい?」
「簡単です。あの大蜈蚣やその部下が掘った余分な龍珠を回収してもらうのです。聞くところによればあの大蜈蚣、龍珠を元請けに献上して、その余りを喰らっているのですよね。しかし最近は龍珠を喰うことにも飽きてきているとか。なら、これまでより掘られた龍珠を回収できるはずです。私はそれらを見過ごすワケにはいきませんので、私の代わりに、あなたに動いてもらいます。それが私への『礼儀』だと思ってください」
「……」
「返事は?」
「はい」
「よろしい。ではまずは今日。少しでもいいので、回収してきて下さい。あなたなら、大蜈蚣の部下を少しでも脅せば横取りし放題でしょう。頭を使って行動するように。いいですね」
「なーんか、まるで俺が普段から頭を使っていないみたいな言い方じゃあないか」
「実際その通りでは?」
「……」
◆
回収後は魅須丸に龍珠を献上。次の任務は、また霊愛を通して伝えると言われ、この日は一応自由になった。あくまでも魅須丸は俺を加護するつもりはサラサラ無いらしい。
そして新たな武器──陰陽玉を手に入れた俺は、早速特訓タイムに入る。久しぶりのガッツリとした特訓だ。吸収した力を溜めて溜めて溜めて溜めて、それから解放。それが第一の能力で、第二の能力は秘密らしいが、果たしてどんな能力なのやら。
分身に相手をしてもらおうとも思ったが、それはダメだ。分身が扱う力は即ち、俺が分身の生成時に使う力なので、分身を相手にこの陰陽玉を使うのは分身の力を吸い取り分身を消すのと同じだからだ。特訓相手には向かない。
そして、博麗神社にて。
「じゃーん見ろよ霊夢、俺の陰陽玉だぜ♪」
「は?霊愛のを持ってきたんじゃ……いや、それならそもそも触れもしないか。どういう事?どうして、アンタが陰陽玉を?」
「……霊夢に憧れて、さ。形から入るワケじゃあないけど、魅須丸に作ってもらったんだ」
「はぁ……?何でまたそんな……」
「俺だって霊力がある。妖怪退治の力があるんだ、陰陽玉を使えるように特訓しといて損は無いだろ?だからもし良かったら、教えてくれないか?」
「……分かった。外来なさい」
「はーい」
霊夢曰く「相手をボコす時に力を奪うみたいな」といった、何ともアバウトなアドバイスをされた。霊夢は真性の感覚派の天才だ。口での説明を求めた俺が間違っていた。
「ごめん霊夢、イマイチ分かんねェから俺にそれをやってみてほしい」
「ええ、そのつもりよ。アンタって理解力が腐ったミカンだもの」
「酷い」
「じゃあ行くわよ」
「ッ……げはっ……」
「集中。感覚を研ぎ澄ませなさい」
これは────どう例えたものだろうか。俺達が普段感知している気配、オーラとでも言い換えればいいだろうか。それを、綿あめなんかを作るように巻き取られるというか、そんな感覚がした。
手または足、果てはお祓い棒による打撃。相手に直接触れる部分で、相手の纏いしオーラを巻き取るというイメージで、力の流れをコントロールする……らしい。
しかし当然、そんな芸当がすぐできるようになるワケもなく。
「うーん、ダメねぇ。霊愛は土壇場で感覚を掴んだみたいだけどねぇ……5割もコツを掴めてないわ」
「うう……苦しい……」
「腹ばかり殴ったかしら。ま、すぐ治るでしょう」
「……」
怪我じゃなくて痛みだから治んねーよ、といったツッコミはしないでおいて、しばしの間、境内にて寝転ぶ。冷たい石畳が赤く腫れ上がった場所に衣服越しに触れ、湿布のような役割を果たしてくれた。
冷やされ、ジクジクした痛みも治まってから俺は遅れて中に入る。さっさと風呂に入って、家族皆で夕飯を食し、寝巻きに着替え眠りにつく。
いつもの流れだ。しかし、何かが、いつもと少し違っていた。
博麗神社の敷地内で、なにやら力の乱れのようなものを感じ取った。間違いなく場所は神社の敷地内である。そもそも俺は気配探知が割と下手なので、感知できる範囲が狭いからそう言い切れるのだ。
とはいえ不安だった。隣で眠る霊夢を起こして、妙な気配を感じる、力の乱れを感じると伝える。
「んぁぁ……?霊愛がオナニーしてるだけでしょ……そんな事でいちいち起こさないでよ……ふぁぁ……」
「はぁっ!?いやいやどう考えてもおかしいだろ、なんか力の流れが乱れてる感じしねーかッ!?」
「そりゃ興奮状態なんだし……普段通りの気配なワケないでしょ?今度、鈴仙に聞いてみれば?『普段の波長と興奮状態の波長って同じなのか』って。絶対違うからさー……もう寝ていい?」
「いや納得いかねえ!何か感じられる気配が変わるなんて凄いゾワゾワすんぞ……何か落ち着かねえ……何なんだよこの感覚はっ……」
「夜だから、感覚が鋭敏になってるんじゃないの?前にアンタが言ってた〜……深夜テンションだっけ?それみたいに普段と違う……ほら、なんていうの……?覚醒状態?みたいな感じになったんじゃないの……?ふぁぁ……」
「な……」
「私達はねぇ……力の流れや、気配を通して、相手の動きを擬似的に予知してんのよ〜……。例えばそう、魔理沙とか、割と分かりやすいわね〜……。魔力が、ミニ八卦炉に集まり始めたら……『ああ、次はマスパなんだわー』って、察せるのよ。だから、スペカの宣言、する前に……ぶちのめしゅ……だけ…………」
すぅすぅと寝息を立てて眠ってしまった。しかし何となく分かったような気がした。力の流れを見るというのは、少し前に妖忌から技を教わった時にも言われた事だった。
あの技を使う時だけでなく、打撃の時に、いや、常時使用する事によって気配探知も上手になる上、相手の力を吸収もできるし、それらを通して相手の動きを擬似的に予知する事も可能────そういう事なのだ。
ジョジョ2部の修行シーンにて、ジョセフは常に波紋の呼吸をする修行をしていた。しかし彼は酷く苦戦していた。それだけ「常に特殊な事をする」、そして「特殊な事を当たり前にこなす」という事がこんなにも大変なのかと、今更ながらに実感した。
「……ジョセフも霊夢もヤベェな……俺に出来んのかそんな事……。ちっ、何年後だろうな、俺が
無力な自分が腹立たしくなり、不貞腐れるようにわざと霊夢に背中を向け、布団を被って丸くなる。その時、寝言なのやら、はたまた意識があるのか、霊夢が呟いた。
「強く、なるんでしょ…………なら……やりなさい……。むにゃむにゃ…………んぅ…………」
「!」
可愛すぎた。
◆
次の日。何処かに行く前に、昨日のおさらいだ。そもそも昨日のあの感覚を今日も再現できるのかと自らの感覚を早くも疑問視したくもなったが、俺はできる、俺ならできると言い聞かせ、ひたすら力を磨く事に決めた。
自然の、大地の、妖精の、風の、全ての流れを、五体で受け止め、五体で認識し流れを読む。これら全てが自然にこなせてこそなのだろう。
「あれっ?お父さん、どっか行ったと思ったらまだ居たんだね」
「何だ霊愛、今日はツンモードか?」
「違うし。お父さんの気配を感じなかったからさ、もう行ったんだなって思ってたの」
「そうなのか?霊愛でもそう感じたのか?」
「うん。でも、居たんなら良かった♪」
「何で?」
「何でって……ほら、いってきますのちゅー……まだシてないじゃんっ……///」
「……ツンツンが凄かった霊愛とは思えない発言だ。嬉しいけどね」
「もうっ、だったらそういう事言わないで!あれ、私にとって黒歴史?ってヤツなんだからさぁ!!」
「そうなんだ、じゃあ毎日イジるか」
「んなぁっ!?」
「それとも、別な意味でイジッちゃおーかなぁ〜……なーんてな♪」
「フンッ、やっぱド変態じゃんっ……」
「はははっ、そうだな」
(最近凄くノリノリじゃんっ……最初はあんなに反対してたクセに……好き……♡)
箒を持って、くねくねと身体をくねらせている。誘っているワケではなさそうだ。ニヤニヤしながら何か考えているらしい。顔にも態度にも出ている。何を考えているかは知らないが、可愛いものだ。
「ところで霊愛、少しでいいから特訓相手になってくれないか?掃除は後で手伝うから」
「え?私じゃお父さんの相手にもならないでしょ、昨日みたいにお母さんに頼めば?」
「霊夢は感覚派過ぎてな……」
「それは私もだよ。この前、お姉ちゃんに土壇場で
『夢想天生』が2回も使えたのだって、あれくらいギリギリだったから。何故か、あれから1日に1回くらいしか使えない。霊力は足りてるのに。スゴく調子が良くて2回なんだよ。……だから、そんな私がお父さんに教える事なんて何も……」
「じゃあ、教えるとか教わるとかじゃあなくてさ、2人で特訓しようか。それならイイだろ?」
「イイけど……ごめん、今日はダメ」
「何で?」
「妖怪退治の依頼があるの。まぁ、霊麗と行くからすぐ終わるけどさ、念の為にね」
「そっか。仕事ならしゃーないな。俺が出しゃばるワケにもいかないし……」
「それに…………これ以上お父さんと一緒に居ると、おかしくなる。何もしてないのに……濡れるの……///
ムラムラして、パンツが……///」
「それは霊愛の問題だな。とりあえず分かったよ、また今度にしよう。じゃあ俺は行くぞ」
「うんっ……ほら、ちゅー……」
「っ…………ほら、もう良いだろ?」
「イッた……♡♡」
「このロリエロ巫女が……」
「〜〜〜〜〜っっ♡♡」
「コラ抱き着くな、飛べねーだろ、うわぁっ!?」
「今……ムラムラが限界突破した気がする……!1回だけでもいいから激しくおまんこ突いてぇっ!」
「俺より見境ねーなオメー!!」
「早く来て、納屋、来てよぉっ!」
「あーもう分かったよ!」
「うひひっ♡ ありがと、大好きっ♡」
霊愛の潜在的Mに気付かされた、半刻後。愛娘のお陰でスッキリした俺は場所を変え、改めて特訓に励む事にした。
今回は紅魔館に来ている。まず俺は、物理攻撃を介して力を奪うのを学んだ方がいいと感じたので、美鈴に相手を頼んだ。
「おーっ……本当にエスカルゴさんが陰陽玉を……!凄いですねぇ、違和感の塊です!」
「それな」
マジでそうだと思う。本当に。俺が陰陽玉を扱うなんて、少し前なら考えもしなかった。けれども、白黒で、
「お手柔らかに、美鈴」
「ええ、そちらこそ!」
こうして、美鈴との陰陽玉を使用した手合わせが始まった。