「全員、揃ったわねっ!マイクテス、マイクテス。は〜い皆、こんにちは〜!今回の運動会の主催の、レミリア・スカーレットよ!」
壇上に立ったレミリアがマイクを手に話し出す。
遂に始まった。早苗が運営の指揮をして設営やら競技内容を考案したらしいが、まさか、観客に家族だけではなく、山の妖怪達やその他の野良の妖怪達まで含まれるとは思わなかった。
お陰で、参加者は20人の子供だけだというのに、ワイワイガヤガヤと、開幕する前からもう凄まじい盛り上がりを見せている。
放送・進行は相変わらずにとり、雛が担当する。早苗が声を掛けたらしい。小道具もにとり達の提供との事だった。
「今日は雲一つ無い快晴ねっ!これもきっと、皆の日頃の行いがイイからだわ!普通の吸血鬼だと死ぬけれど、弱点も取り除かれて普通の吸血鬼じゃない皆は、存分に身体を動かして頂戴!」
因みに、レイチェルは母に則って日光を克服していないが、運動会の今だけは、パチュリーの魔法で日光を克服しているようだ。
そんな事をするんなら永続的でもいいだろうにと思うが、レイチェルは、レミリアの言う「誇り」を大事にしているようだ。
「また、先日のリーグ戦で結果が奮わなかった子もそうでない子も、全力を尽くして、怪我のないよう頑張ってね!それから、これから戦う皆に、大事なお知らせがあるわ!チーム分けについてよ!」
「「「「!!」」」」
「知っての通り、子供達の数は19人。これじゃあ、素数だからチーム分けができない。……そう思った。何なら、巫月ちゃんに頼んで茜ちゃんを外に呼びに行くのを止めさせようとも思ったわ。そうすれば、18人だからチーム分けも容易になる。でもそれじゃ子供達を集める意味が無い!」
「「「「…………」」」」
「そんな時、私の元に1つの情報が入った。なんとエスカルゴの子供は、19人じゃなかったの!そう、あと1人、この世に存在していたッ!という訳で、チーム分けの前に、皆にお披露目よ!エスカルゴの十五女、霊烏路姫ちゃんですっ!」
レミリアの軽快に響く指パッチンを合図にして、パチュリーの転送魔法にて姫がレミリアの隣に瞬間移動してくる。初めての移動方法に姫は目を輝かせレミリアに飛び付く。
「れみぃあさんっ、しゅごいね!なかからここまできたよぉ!しろくなって、ぽんって!」
「ふふ、そうね。あとね姫ちゃん、少し、しーってできる?」
「できう!」
「そう、良い子ね。……話を戻すわよ。多分、大半の子はエスカルゴから聞いてるわよね!なので、早速この子も皆の輪に入れてあげてね!」
「「「「はーーーい」」」」
相変わらず良い子達だ。事前に話しておいたが、飲み込みも早くて助かる。とはいえ、嫁や彼女達、子供達に甘えるのも大概にしよう。そろそろ俺も、股間の緒を締めなければ。もし霊夢の堪忍袋の緒が切れたら、きっと地獄を見る事になる。
「チーム分けは、ランダムに行おうとしたわ。でもそうすると戦力が偏る恐れがある。だからここは、皆の戦力を見て、平等になるようチーム分けさせてもらったわ!」
「これは、クリスマスの時のリーグ戦の勝敗表よ。そしてそれを元に割り出した順位表がこれよ!」
「ただしこうすると順位が同じ子が数組あるから、そこは、その子同士の結果を考慮して、仮の順位を割り当てたわ。そして、チーム表や点数表は紅魔館門前に貼っておいたから、忘れてしまったら各自で確認してね。ではまず紅組!」
こうしてチーム分けが発表された。どうやらあのランキングの数字で振り分けているようだ。
巫月と霊愛は、どう足掻いても戦う運命らしい。いや、2人の実力が拮抗している故なのだろうが、そう思ってしまうようになる。
「あー成程。これを見るに、紅組は奇数組なのな。巫月、霊魔、霊麗、弦月姫、魅玖、マエリベリー、ここあ、駆翔、阿弥、樹理愛……か」
「白組は偶数ね。霊愛ちゃん、穹ちゃん、妖舞くん、レイチェルちゃん、虔魔くん、シガレットちゃん、綺愛羅ちゃん、恋夜くん、緋月、姫ちゃん……ねぇ。ねぇエスカルゴ、他に隠し子とか居ないの?」
「姫の存在を確認した後に確認したさ。でも他には居なかったよ。今、赤ちゃんを孕んでる彼女とかが居なければ……の話だけどね」
「……不安だわ」
「奇遇だね、俺もだよ」
「何キメ顔してるのよ、全く……」
「なははっ、今日ばっかりは鈴仙も辛辣だねぇ」
「そりゃあ、辛辣にもなるわよ。エスカルゴってば何回こんな感じのパターンになってるのよ」
「何回もだね。いちいちカウントはしてないなぁ。魅玖ちゃんからこうなったってのは覚えてるが」
「全くもう……次は怒るからね」
「はいよ」
俺は巫月の居る紅組を応援する事にしよう。ただ少し懸念はある。優曇華院姉妹、更にシガレットと霊魔が敵同士な事だ。
緋月はのんびり屋なので俺が巫月だけ応援しても何も思わないだろう。だからそれはいいとしてだ。霊魔とシガレットが敵同士なのが、何とも可哀想なものだなと思ってしまう。
想い合う男女が敵同士────俺なら気が引けて本気を出せない。
「なー鈴仙、最初の種目は何だっけ?」
「えっと、玉入れね」
「へー……これは外の世界のと同じなのかな」
「外のはどんな競技なの?」
「名前の通り、玉を入れるんだよ。高い位置に設置したカゴに、お手玉みたいな玉を入れてくのさ」
「へぇ〜……」
カゴの高さはかなり高い。目測で約5mはある。何だかバランスがおかしく見える。因みに、カゴはメイド妖精が支えている。10人の子供に囲まれて、どこかビクビクしている様子だ。
「はいはーいどうもー、皆さんお馴染み、にとりんレイディオの河城にとりと!」
「鍵山雛です!今回は進行を担当させてもらうわ。皆さん宜しくね♪」
「それじゃあ、玉を配置してる間に、父兄や観客の皆さん向けにルール説明をさせてもらうねっ!まず最初の種目は玉入れだよ!どちらのチームが多くの玉をカゴに入れられるかを競うゲームだよ!カゴを支えてるメイドに危害を加えないような許容範囲内だから、頑張ってね!」
「カゴを中心に半径5mの線を引いてるけど、足や手など、身体の一部が線を越えたらアウトですっ!スキマを使ったとしても身体の一部が円から出ちゃダメです!気を付けてくださーい!」
なんという事だ。まさか妨害が可能とは。これはかなりまずい。下手すれば巫月のチームが圧勝するかもしれない。紅組は霊魔が居る。防御においては飛び抜けて最強と言える霊魔が。
「玉は両チーム100個っ!創造魔法とかで増やせないように数を設定してるから誤魔化さないようにね!!飛ぶのは禁止!制限時間は30秒!3回勝負ね!」
「それじゃあ玉入れ、よーい………スタート!!」
雛の合図により玉入れがスタートした。しかし、誰も動かない。子供達はヒソヒソと話し合っていて作戦会議をしているようだった。
勿論、全員ではない。紅組では駆翔、樹理愛が、白組では緋月、姫のたった2人ずつだけが、必死にカゴに玉を投げ入れていた。
しかし、駆翔と樹理愛ばかりが入れるばかりで、白組の緋月、姫の投球はどこか心もとない。一体、作戦会議なんかして何をやっているのやら。
声を掛けてみようと思った直後、戦いは動いた。
「はーい、じゃあ皆、私のスキマに入れてねー」
紅組では巫月がスキマを開く。その出口はカゴの中らしく、紅組の玉は次々にスキマの中へと消えていった。数秒後には巫月の率いる紅組は100個の玉を入れ終えていた。
「あッ!……チッ、お姉ちゃんって……!!皆、本気出すよッ!!」
鬼気迫る表情の霊愛の指示により、白組の子達が玉を投げる速度はグングン上がっていく。しかし、ただ投げるだけでは玉を外す事も多い。そこで遂にレイチェルが動いた。
「能力を使用しましたわ、霊愛お姉様♪」
「ど、どんな風にっ……!?」
「『10分間、投げた玉がカゴに入る確率100%』。今の白組は、言わばフィーバータイムですわよ♪」
「レイチェル、ナイスすぎ!ドンドン投げるよ!」
ちょっぴりお嬢様気取りのレーテが、この上なく可愛すぎて堪らない。そして紅魔館メンバーの中でアスモデウスが「流石ですレイチェル様!」などと声援を飛ばしているのが面白すぎて、軽く吹いた。
しかしそのままやられる紅組ではない。既に玉を入れ終えている余裕からか、次は紅組による白組の妨害が始まった。
「霊魔。結界とか張ってカゴに蓋しちゃってよ」
「えっ!?そ、そんな事、してもいいのかな……」
「良いんだよ、そういうルールはないしね。飛行、手足とかでの妨害が出来ないのなら、能力、弾幕、結界とかの、各々の持てる技術を使って妨害する。それがこの競技、『玉入れ』の真髄!さぁ霊魔!」
「わ、分かったよ……」
巫月の指示により霊魔は白組のカゴに蓋をする。するとレイチェルによる確率バフをされていても、物理的に「100%不可能」なので、確率バフを無効にされてしまった。
「霊ぉぉぉぉ魔ぁぁぁぁああああああッッ!!!」
霊愛の怒号が観客席まで響いてくる。素晴らしい程に腹の底から声が出ている。合唱コンクールなら単独での優秀賞か何かを貰えそうだ。
「姉上、俺が壊すから安心しなッ!」
「飛ぶのは禁止だかんねっ!反則負けとかホントにやめてよ!?」
「飛ぶのはルールで禁止だけどよォ〜ッ……跳ぶのは禁止じゃないんだよなぁぁッ!!」
ジャンプをした。ダンクシュートと同じ要領で、カゴよりも高く飛び上がった妖舞は、手から出した二振りの刀で一瞬の間で何度も切り付けた。しかし霊魔の結界は巫月の攻撃でやっと壊れる強度。妖舞だろうとそう簡単に壊せはしない。
「ぐべらっ!……いってぇ〜ッ、背中打った……」
「ちょっとー、どーすんの妖舞ー」
「姉上こそ。何か作戦考えてくれよ、俺じゃ霊魔の結界は壊せねーぜ」
「うーん……とりあえず向こうの妨害するしかない?穹はどう思う?」
「妨害しかないかと。この玉入れは3回勝負です。この戦いは捨て、次は、私が風を吹かせて向こうの玉入れを妨害しますよ。カゴの中を掻き乱すように強風を吹かせれば、玉をスキマで入れようとも関係ありませんから」
「……うん、いいかも。それでいこう。でもね、穹。この戦いを捨てる事だけはしないから」
「と言うと?」
「残り20秒はあるはず。結界が張られた以上、もうこれ以上は玉を入れられない。でも、これ以上中の玉を減らさないとも言える。つまり、向こうの玉を減らせばいい。穹の風でね」
「……ッ!分かりましたよ、姉上っ!風神に勝るとも劣らない風を吹かせてみせましょうッ!地表付近の下降気流をご覧あれ!!」
紅組のカゴの真上にて空気が揺らいだ。ゴォッとほんの一瞬だけ、強烈な風がカゴの中を狙い撃ちで吹き降ろされた。直後、ブワッと宙に投げ出された紅い100個の玉……。
白組は歓喜の声に溢れ、紅組は苦虫を噛み潰したような顔になる者が多数。
「対流か……ッ!空気を対流させて外に出すなんて、流石だね……!あと数秒、本気出すよッ!茜、結界!他の皆はスキマに投げ込んで!!」
白組の詰めの甘さが効いてきた。残り時間が更に少なくなってから玉を追い出していればこの時点で白組の勝利だった。
しかし、まだ数秒の猶予がある時点で玉を外側に追い出してしまったので紅組に僅かな反撃の猶予を与えてしまった。
霊魔の結界で白組のカゴを塞いだのと同じ事で、メリーの結界によって紅組自身のカゴも塞いで風を防ぎ、巫月のスキマにてカゴの中に直送する。後は全員で玉を入れる。それだけだったのだが……。
「そこまで!いやぁ、最初から激アツだったね!」
「そうね!メイドさん、お願いします!」
「「はーいっ!」」
進行2人の声に合わせて、紅組、白組のメイドが空高く玉を投げ上げる。
「「……じゅーう!じゅーいち!じゅー……あっ」」
紅組の玉が尽きた。やはり数秒ではそんなに多く玉を入れられなかったようで、紅組は11個で、白組は32個という結果に終わった。
点数は1勝につき10点との説明が入った。よってまずは白組に10点が入った。
「……2戦目だよ。ここで勝たなきゃ負ける。本気で勝つからね!紅組〜ッ!!」
「「「「ファイ、オーッ!」」」」
紅組は巫月が音頭を取って円陣を組んで、白組はその頃、作戦会議をしていた。
「それでは2戦目、よーい……スタート!!」
にとりの合図で玉入れがスタート。白組は霊愛、紅組はメリーが結界を張って自分達のカゴをカバーする。紅組は巫月やメリーのスキマがあるからいいとして、どうして白組までもが結界を張ったのか。
その理由はすぐに分かった。
霊愛がお祓い棒にて空間を裂いて、短距離限定のスキマを開いて、チーム全員揃ってカゴの中に玉を入れているのだ。
スキマ対決だ。しかしそうなると両チーム揃ってすぐに玉を入れ終わるので後は妨害対決だ。カゴに蓋をしているとどういう妨害になるかというと……。
「姉上、どうしましょうか……!」
「……妖舞、穹。あっちのカゴ、斬れる?」
「あぁ、俺なら斬撃も飛ばせるし、よゆーだぜ」
「私も鎌鼬で追撃します。妖舞、先にどうぞ」
「なら、やらせてもらう……ぜッ!」
「はあッ!」
と、白組が妨害を始めれば……。
「お、お姉ちゃんっ、攻撃が……」
「慌てない慌てない。霊魔、結界だよ」
「う、うんっ……!」
紅組は霊魔の結界で全体を防御する。泥試合だ。しかしそこは強かな巫月である。先程の穹の妨害を参考に、時間ギリギリになって酷い策を強行した。
「……あ!姉ちゃん、霊愛姉ちゃんっ!!」
「あ!?何よ恋夜、今妨害を妨害してんだけど!?あんたもやりな!」
「それどころじゃないよ!玉が零れてきてる!!」
「はっ!?」
白組のメンツが自陣のカゴを見てみれば、巫月のスキマにより溜めたはずの玉は全てカゴの外に零れ落ちてしまっていた。
「あ、ああっ……お姉ちゃん!これは酷いよ!!」
「残念だったね、霊愛♪」
「そこまでーっ!!」
「くっ……!」
集計の結果、白組は0個で、紅組は100個という、完全なる勝利を収めた。だがこれで1対1である。決着は第3戦目に持ち越される事になった。