「そんな……凩……」
「クフッ、グハハハハッ!!死んだか!死んだのかあの天狗は!本気だの何だの言っておきながら!!アーッハッハッハッハッハッハッハッ!!無様だ、無様だなぁ天狗よ!はははははははははははははははははははははははははははっっ!!」
「……やめろ」
「あぁ?」
「下卑た高笑いをやめろと言っている」
「……ふふ……」
凩を血の球で爆殺した虹牙は、天魔の目の前で、遠慮を知らない高笑いをする。涙を流し、あまりに面白いものを見たような、そんな笑い方だった。
天魔は虹牙を、怨恨の入り交じった鋭くて冷たい目で睨み付ける。穴が空くほど睨みつけられて漸く笑いを止めた虹牙は、満を持して、全能力を使用し天魔を殺そうとする。
「次はお前の番だぞ?すぐに部下と同じ所へお前を送ってやるよぉ……!」
「貴様如き雑魚にこの私の動きが捉えられるか?」
「ッ!?」
虹牙の視界から天魔が消える。弾丸の如き速度ですれ違いざまに一撃を浴びせ、虹牙の左腕を一撃で切り落としてしまう。
「ほう、防いだか」
「ククッ、危ない危ない。殺すなら首を刎ねるのが常套手段だ。見えなくとも、防ぎようはあるのさ。さぁ、次はこちらの番だ!!」
「な……ッ!?」
「あの世から見ているか、黒禅!お前の能力は今も役に立っているぞ!!」
虹牙と全く同じ気配を放つ黒い霧が溢れ出した。能力の持ち主は黒禅であったが、過去に虹牙は彼の一部を喰って取り込んでいた。だから黒禅の能力をそのままコピーし、そして使用できるのだ。
天魔は気配を探ろうとするが、まるで虹牙自身が気化して広がっているかのような、そんな結果しか得られず、天魔は気配を追う事を諦めた。
万事休すだな、と下唇を噛み切る天魔だったが、そんな彼女の肩をポンと馴れ馴れしく触れる者が、1人。
「どーも天魔様、お待たせしましたっす」
「あっ……お前は……!」
「山の英雄、参上!なんちゃって♪」
特訓を強制終了させられた俺は、天魔を守る為に彼女の前に立つ。一瞬驚いた顔をすると、すぐ顔に力強い笑みを浮かべ、バシンと背中を叩く。
「エスカルゴ……!遅いぞ!何をやっていた!」
「えっと……社会性を身に付ける特訓?みたいな?」
「こんな時に!……いや、すまない。そも、部外者のお前に頼るのが間違っているというのにな……。いやこれももう何度も言ってるな、すまない」
「今更なーに言ってんすか、見せ合いオナニーした仲でしょ?」
「今それを言うか。でりかしぃ〜に欠けるヤツめ。儂はまた部下を失ったというのに……」
「失ってない。今回は、誰も死んでないよ。だから気楽にね」
「は……笑わせてくれる。先程、私の目の前で部下が死んだのだぞ。お前が見ていなかっただけだろう」
「いーや違うね。……じゃんっ!これ、なーんだ?」
「刀……?お前、剣を使うのではなかったか?」
「ここ、ここ。銘を見てよ」
「陣風丸……陣風丸だと?ひょっとしてこれは、凩の刀なのか?何故、お前が持っている?これは彼女の遺体と共に地に落ちたはずだが……。まさか遺体から奪ったのか?」
「俺のだよ、この刀。俺が、俺の為に、ギリシャの神様に依頼して鍛えてもらったんだ」
「違うッ!これは凩のモノだ!残留している妖気で分かるんだ!」
肉体を作り替えれば、発せられる気配も変質するらしい。だから、凩形態の俺は鴉天狗に極めて近い気配になっていたはずだ。
文をベースにして鴉天狗の美少女をデザインし、肉体を変質させた。そのせいで吸血鬼の力は出せず酷く弱体化してしまっていた。
肉体を変質させるというのは、魔法の精度を特訓するという意味もある。そして、持続力もだ。先程駆翔に指摘された事だが、俺は特訓に対しては熱心なので、持続力に関してはかなり鍛えられた。
因みに、わざわざ山社会で生活しているのに凩の姿でもボッチだったのは、魔力切れによって変身が解除されるのを危惧しての事だ。
そして魔力切れを起こさなかった原因としては、色々と考察できる。見た目だけ変身させると、内在する力と肉体という器のバランスが取れなくなり、肉体ごと作り替えるとバランスが取れるからでは、という、魔法初心者の俺の考察だ。とりあえずは、また今度パチュリーと考える事にするが。
「……凩は、俺が魔法で女装した姿なんだ。ごめん、天魔様。騙す気は無かったんだよ。天狗社会という社会に一度身を置いて、少しでも社会性を養えって言われてさ」
「誰にだ?……もしそれが本当なら察しはつくがな」
「紫さん。だから、天魔様が紫さんに頼んで、凩の頭の中を覗いてもらったでしょ?でもって、怪しい所は無い、と潔白を証明した」
「うむ……」
「おかしいと思わなかった?凩ほど主張が強くて、正義感がある天狗なら、例えその時点では弱くとも俺が暴れた時に俺を止めに出てくるはずだろって」
「うむ。儂もその辺を含め怪しいと思ったから紫に頼んで潔白を証明してもらったんだ。紫の手引き、だったのか……それなら仕方がないな。お主の特訓の為に山社会を利用するのは気に食わんがな」
「ごめんって。責任をもって虹牙を殺すからそれで許してくれない?」
「……許す。いってこい。儂はもう疲れたよ。色々な意味でな」
「へへ……すんません……」
「でも……凩が死んでいなくて本当に良かったよ」
気が抜けたように微笑む天魔。その笑顔はまるで年頃の少女のようで、普段の威厳も何もなく、俺の目の前には、ただの天狗の女の子が居た。
虹牙の気配を放つ霧が、風に乗って動き出した。虹牙もいよいよ動くつもりのようだ。いつまでも、こうしては居られない。
「そう思える天魔様は本当に優しいね。……んじゃ、また後で。気を付けて避難してね。とりあえずは、この黒い霧さえ抜ければ問題ないから」
「ああ。武運を祈る」
「ヘヘッ、不死身の俺に真の敗北は無いのさ」
そうニヤリと笑うと天魔が彼方へ飛んで行った。本当に瞬間移動に近い速度だ。気配を追いたくても一瞬で俺のアンテナの範囲外に出てしまう。一体、時速で表すならどれ程の速度なのだろうか。勘だが音速を超えているのはまず間違いない。
「ククククッ、良いのかァ?女を逃がして良い気になっているところ悪いが、勝つのは私だぞ?」
「知るかボケナス。俺の可愛い凩を殺しやがって、テメェ、生きて幻想郷を離れられると思うなよ〜?お前に
「威勢のいい事だ。私の姿も見えないのに」
「……だから雑魚だってんだよ、お前は」
「……あ゙ぁ!?」
「目に頼ってるようでは未熟だっつってんだよ!!雷爆符『ヨタサンダー』ッ!!」
「は……!?」
自爆。今回は麗葉を殺した時のようなエネルギー爆散型に指定した。ただし威力重視で範囲は狭め。せいぜい、半径数10mが吹き飛んだ程度だろう。
しかしそれでも虹牙の霧を吹き飛ばして、本体にそれなりのダメージを与えるのには丁度良かった。
ここは上空だし、妖怪の山の自然にはダメージは殆ど無いはずだ。爆風で落ち葉が吹っ飛んだ程度で済んでいるくらいだろう。
そして霧が晴れ、虹牙が姿を現す。どうやら腕の切り口を押さえていた腕までが吹っ飛んだようだ。正直、ざまぁみろとしか思えない。なんせ、可愛いこの俺……いや凩を殺したのだから。
「げはっ……ぐ、うぐっ、うっ……なんとか、耐えてみせたぞ……!」
「耐えたからどーだってんだ。アッホクセェ〜」
「次は貴様が吹っ飛ぶ番だと言っているんだ!!」
「!?」
直後、凄まじい爆発が俺を襲う。が、その瞬間に爆風を斬ってやったので、俺にダメージは無い。
それにしても俺がこの威力を出すには命を対価にしなくてはならないというのに、技を真似ただけのコイツは、同質の威力を「耐える」といった一瞬のリスクのみで使ってみせるとは。少し悔しい。
この技を使うにあたって、不死身ではない虹牙も死ねば良かったのに。
「成程、受けた攻撃をパクれる能力持ちか。なら、その能力の元の持ち主は白戸か。一度だけなら特に問題じゃあねぇな。逆にどこまで耐えられるか拷問してやるのも面白ェ……!!」
いっそその能力を奪ってやろうか。しかし吸血鬼らしさを求めるのなら、俺が奪うべきは赤霈の能力かもしれない。選べるのは1つ。虹牙の能力を奪いこれから7つの能力を吸収してもいいが使いこなす自信が無い。果たしてどちらを選ぶべきか。
《ねー、へカーティア。この『陣風丸』にさ、俺が渡した伊弉諾物質を使ったんだよね?》
《そうよ?そして能力は『未定』。ヘパイストスによると任意で吸い取れるみたいだから、その虹牙はおあつらえ向きの相手ね。なにせ自分好みの能力を集めてるんだから。その刀の進化はあなた次第よ》
《まるでイーブイだな。……んでもって、吸い取れる能力は1つ、吸収した後は固定されるので、能力はゆっくり選べ────と。了解した、ありがとう》
《いいのよ。私の器を強化する事は、私にとってもメリットがある事だからね。強くなりなさい、私を楽しませられるくらいにね》
《……善処しまーす》
俺がチルノを「吸血鬼を脅かすライバル的存在になってほしいから」という理由で育成するのと同じことで、へカーティアも俺を「遊び相手」として、育成してくれているようだった。なんだかなぁ、と思わなくもない。
へカーティアを楽しませるだなんて、今の俺でも無理難題だろうと思ってしまった。今やギリシャの最高神であるへカーティア、その強さは俺より更に青天井。遊ぶつもりの彼女でさえ、倒せやしない。いや、傷1つだって厳しい。
「……そんな神に比べりゃ、虹牙よぉ。テメーなんぞ風の前の塵に同じだぜ……?分かるかよ、平家物語。暗唱してやろーか?尤もテメーは盛者必衰どころか盛者にすら成れてねェだろうがな!ヘッへッへッ、もうテメーには抵抗すら許さねぇ。それが運命だ!受け入れるんだなぁ、これが己の運命だと……!」
「それが何の事か知らんが、地獄の英雄よ、お前に殺される謂れは無いなぁ」
「あるさ。お前は、畜生界を手に入れようとした。悪ィがな、畜生界は俺の庭なんだ。でもって
「部外者のクセに何を……」
「陣風丸『善し悪しを決す関風』」
「……ッ!?」
また、ある「概念」を斬ってやる。虹牙は、目をぱちくりさせ、どこも怪我していないのを怪しむ。全く面白いものだ。それにしても、ここまで簡単に斬れてしまうとは……。この虹牙という女、よっぽど俺よりも格下らしい。
「怪我してない、なまくら刀か、とでも思ったか?残念だが、お前の全能力を斬った。もう何の能力も使えねーよ、お前」
「そんな……そん……」
「そして、お前の能力は頂いた。おっと、厳密には白戸の能力だったかな」
「何だと……!?」
「あと……ありがとな。俺の闇の能力の、最終形態を見せてくれて。お陰で、俺はまた強くなれる!!」
「ほざけ!!私はまだ負け─────」
「さよならだ」
首を斬り落とし、その命を尽きさせた。どうやら本当に不死身ではなかったようで、その決着は俺が思っていたよりもずっと呆気なかった。
麗葉のように妹紅の能力をコピーしていなくて、本当に良かった。
「それにしても、俺も衰えたなぁ。まさか、能力の限界を自分自身で決めちまってたとはね。あーあ。変だとは思ってたんだ。同じ『闇』の能力なのに、ルーミアとまるで方向性が違うんだもんな。それも
『心』がベースになってる『闇』の能力だなんて、想像もつかなかったけど、マジなんだと思ってた。でも、本当は違ったんだ……」
こんな言葉がある。「心に影を落とす」。これは主に「なにかがその人に不安や悪い影響を及ぼす」という意味で使われる言葉だ。
思えば闇の能力を使いこなせるようになったのは彼女達により殺されかけたあの一件での事だった。そう、この能力は「闇を操る」ものではなく「影を操る」能力だったのだ。
完全なる影は、光を綺麗に覆ってしまう。恐らくそういう事だ。
チルノの本質が熱を操る能力であるように、俺もまた、明るさと暗さを共に備えていたのだ。
虹牙が今回コピーしたのは、複数ある俺の能力の中の一つ。たまたまコレだったが、もし他の能力をコピーしていたなら、きっとこの結論には至れないままだった。全く偶然の産物だが、この偶然には、感謝するしかないだろう。
◆
「えっ!?そんな嘘だろう!?虹牙、エスカルゴが倒しちゃったのか!?」
「わりーわりー……結構危ない奴だったから、早鬼と合流するより俺が倒した方が確実だって思ってな」
「そこはさぁ、組長たる私や次期組長の駆翔の顔を立てるとかさぁ!しろよぉ!!」
「すまんすまん……」
「あーもー!生意気そーなコイツの顔、踏み付けて潰してやりたかったのになー!!」
「すまんて」
「いーや許さん!コイツの顔を模した埴輪を袿姫に作ってもらえ!そんでぶっ壊す!そうでないと私は許さん!!」
「分かった、分かったから、どうどう……」
「私は馬じゃなぁぁぁーーいっ!ペガサスだ!」
「とりあえず落ち着いて……」
早鬼と合流し虹牙の生首を見せるなりそのような反応をするものだから、思わず、馬を諌めるような対応をしてしまった。ウマ耳をピコピコさせながらプンスカと怒る様子は、とても可愛らしい。全く、このウマ娘は……。
そういえば俺の幻想入り前に、ウマ娘という馬を擬人化させた育成ゲームのようなスマホのゲームが発表されていたが、配信されたのだろうか。外界に遊びに行っても新しいスマホは買わないし、欲しいとさえ思わないのだが、キャラのビジュアルが好みだっただけに少しだけ気になるかもしれない。
また今度、蓮子が幻想郷に遊びに来たときにでも聞いてみる事にしよう。因みに俺が気になったのはマルゼンスキーだ。
「……んあ?どーしたんだよ、人の顔ジロジロ見て」
「…………早鬼」
「ん?」
「いつか2人目も作らないか?女の子も欲しいな」
「はっ……はぁ!?おまっ……あのな!?よくそんな返り血だらけの格好で言えるな!?」
「あ」
「確かにお前は私が認めた男だから、別に『次』は構わない!だけどな!だけど、少しくらい格好とか気を付けて欲しいぞ!?私でも分かる!」
「ごめん、普通に忘れてた」
「おいおい……しっかりしてくれよ?」
「はは……しっかりするよ……」
「頼むぞ、ホントに〜」
ポイと首を投げ捨て、血塗れの服から普段の服にその場で着替える。血腥い服はスキマへポイ。すぐ新しい服を創造して着替える。創造魔法はやっぱり便利で使い易い。日常的に使えるのが大きい。
「ところで、陣風丸凩って女の天狗、知ってるか?駆翔が会いたいらしいんで、探してるんだが……」
「……何でソイツと会いたいんだ?」
「『アイツお父様だと思う!』って聞かなくてな。2人が並んでるとこを見せてやろうと思ったんだ。認めさせないと梃子でも動かなそうでなぁ……。一体誰に似たんだか、あの頑固さ。なぁ?」
「あはは、マジか。分かった、探して連れてくよ」
「頼んだぞ。早く帰りたいのに、帰れないからな。駆翔か私の気配を目印に来てくれ」
「はいよ」
その後、凩の姿の分身を作り駆翔と対面。これで駆翔の中では「凩≠エスカルゴ」の式が成り立った。俺が女装していた事実を知る者は、神様と紫さん、そして天魔以外は何処にもいない。
さて。この数日はずっと性欲を溜めていたのだ、ササッとシャワーでも浴びたら、すぐに妖精狩りに出かけよう。今は、本気で誰でもいい。
◆
「いやぁ〜、しかし驚いたぞ紫。まさか凩の正体がエスカルゴだったなんて……」
「あらそぉ?そこそこ分かりやすいと思ったけど」
「お前が主導したのだから、そりゃお前には分かるだろうて。儂には分からん」
「そう?凩形態の時は魔力の流れに脳のリソースの大半を割いてるから全力の半分も出せないのよね。もし魔力の流れを間違えれば消費する魔力が一気に跳ね上がって……変身が解けるからね」
「変身を維持するのは変わらないのに、消費魔力に変動があるのか?どういう理屈だ、それは?」
「ええ。全身に回路が張り巡らされてるイメージで考えて。最短ルートを通るのが一番節約できるわ。でもそれから1本でも横道に入ると距離が伸びる。そして消費魔力が増えてしまう」
「成程のぅ。だとしても凩がエスカルゴだなんて、そんなの分かるかっ!」
「うーん……まぁ、凩という名前から察せられるのはそれこそヒビキくんくらいだものね。でもそれ以外からも察せられる要素とか散りばめておいたつもりなのよ?それに今の彼は山の味方ポジションなワケだからね、変に敵対しそうな雰囲気だけは避けたいじゃない?」
「うーむ。だがな紫よ。せめて……せめて儂には一言欲しかったぞ……。それなら不死者が死んで慌てたりしなかったものを……」
「いいじゃないの、如何に彼が不死身だろうと彼の死を悲しむ者が居たっておかしくないわよ。それがあなたの優しさでもあるじゃないの」
あまり「褒められる」という立場に無い天魔は、そう言われ意図せず口元が緩んでしまう。褒められ慣れていないと天魔と言えどもそうなってしまう。
「ん……そ、そういう事にしとくかの。……そうだ、1つ聞いておきたい事がある」
「なぁに?」
「儂の直属の精鋭部隊の事は知ってるだろう?凩、いやエスカルゴはそこに籍を置いていたわけだが、今、彼はそれを抜けている。欠員をどうしようかと思っているのだが、何か案はあるかの?」
「うーん……そうねぇ、それは難しい質問だわ……。エスカルゴが倒した奴をもう一度着任させれば?」
「それは叶わん。本人が、女に負けたのは恥だと、逃げるように去ってしまったからな。今はどこかの下っ端に属しておるはずじゃ」
「あらら。恥に思ってるんじゃそいつはダメだわ」
「うむ。かといってこれから1人だけを選ぶのも、これまた骨が折れるのォ……」
「もう9人でいいんじゃないの?」
「キリが悪いからイヤじゃな。無断でエスカルゴを潜入させたのだから、紫も知恵くらい出せ」
「えー、面倒ね。……この際、彼の子である穹ちゃんなんて入れたらどうなの?」
「記者見習いは言語道断。せめて戦闘員じゃ」
「何よそれ、ワガママねぇ……。じゃあヒビキくんと穹ちゃんを対決させてみなさいよ、絶対穹ちゃんが勝つわよ?」
「それは……否めないが……」
否めないどころか確定である。穹の速度に対処が可能な天狗など、それこそ母の文、天魔くらいだ。はたて、龍でさえまともな対処はできない。それ程穹は天狗の中でも飛び抜けて圧倒的に速いのだ。
当然、選りすぐりの戦闘員である天魔直属部隊も穹には勝てない。
「ほら見なさい」
「だが穹には自由に動いてほしいのだ。彼女は山の将来を担う者として……知見を広げてほしいからな。もちろん、穹だけではないぞ?あの世代から皆だ。ある程度は規律ある生活をしてもらっているがの、自由は多めじゃ……。あの子も飛び抜けて自由が多めだからな」
「へ?他に穹ちゃん並に自由な子って…………あぁ、あなたの姪っ子の……」
「あぁ。姉上の一人娘の朱美じゃ。儂は次の天魔をあの子にしようと思っておる。強さだけが絶望的に足りないのだがな……」
「成程、穹ちゃんを朱美ちゃんの側近にしようと、幼少のうちから2人を組ませてるのね」
「いいや、あの2人が組むようになったのはただの偶然じゃ。意図しておらん。だがそれによって儂はそう考えるようになった。本来なら儂は天魔を継ぐはずじゃなかったんだ。朱美に天魔を継がせるのは地位を返す意味もあるのじゃ」
「……紗那……」
「もし儂が自由になったら、山の冥王と戦って潔く討ち死にでもしようかの!どう言い繕ってもやはり奴は母上の仇じゃからな!数年前に死去した姉上も儂と同じ事を考えていたよ!アッハッハッハッ!」
「やめなさいよ。あなたが妖忌に敵うはずがない。仇討ちしたい気持ちは分かるけど、それではまた、朱美ちゃんがそう考えるようになってしまうわよ?あなたは、朱美ちゃんの人生を歪めてまで無意味な復讐を選ぶと言うの?」
「…………全くこれだから賢者は。いつも正論ばかり吐き捨てる」
「仕方ないでしょ、事実なんだから。まともな戦いだったら、妖忌には誰も勝てないわよ」
「……」
「まず文は少し前まで幻想郷最速を自称していた。そして妖忌の孫である妖夢は瞬間的ではあるもののその文でさえも目に見えない程の速度を出せるわ。そして彼女の子である妖舞くんもその領域に片足を突っ込んでる。当然、彼らの師匠の妖忌が、2人に劣るはずがない。
「……文は能力の関係上とはいえ儂より速いはずだ。そんな文でさえ認識できんのであれば……な。勝てるビジョンが見えぬ。とりあえずは諦めておくかの」
「とりあえずどころか未来永劫諦めてなさい」
「フン。……さて、儂はそろそろ仕事じゃ。後始末ができておるか、見てきてやる」
「じゃあ私は帰るわ。お疲れ様、紗那」
「そちらもな」
しかし、やはり最愛の母を殺された恨みは深い。いつか紗那が役目から解放され、真に自由となったそのときには────彼女は、鋭く研ぎ澄まされた、復讐鬼と化すのだろう。
武器解説
銘:陣風丸
類:刀
能力:未定→斬った技を一度模倣する程度の能力
魅須丸からの依頼で百々世から伊弉諾物質を奪ったエスカルゴは、ギリシャ神界を完全統一してみせたへカーティアを通してギリシャイチの鍛治神であるヘパイストスに武器の製作を依頼。
それにより出来上がった武器が「陣風丸」である。
また、「名前」は大事だからと、エスカルゴ自身が刀に名前を付けた。
しかし名付けの由来は「言葉の響きがいいから」と少々思い付き気味。そして妖忌の愛刀「風来丸」も参考にしている。(紗那が聞いたら曇る)
因みに今のエスカルゴは雷神要素を持ちつつあるがヘパイストスもかつては雷神及び火山の神であったからか、彼からエスカルゴへの好感度は少々高め。
そもそもヘパイストス自体が人間に対して友好的な神であり、対象のエスカルゴが元人間であるのも、理由の1つかもしれない。
しかし、彼の前妻のアフロディーテがヤリマン且つ浮気性だったので、エスカルゴのハーレムに関して快く思っていない。だから好感度は少々高い止まりであり、彼自身に協力的ではない。
今回武器の製作を引き受けたのは、最高神となったへカーティアからの声が掛かったからで、それでも完全で立派な武器を製作したのは鍛治の神としてのプライドがある上に、彼女の顔を立てる為である。決してエスカルゴの為ではない。
「能力的にシンパシーを感じなくもないんだけど、なんだかなぁ……」と、モヤモヤしている。やはり、神と言えどそう簡単に過去は忘れられないもの。
(現実の試作戦闘機「陣風」とは無関係ですので、悪しからず)
魅須丸としても、本来ならばそうホイホイと伊弉諾物質を使用した道具や武器などを第三者に委ねたりしたくないです。
ただ、盗掘者(百々世)に食べさせたり渡すくらいならと「仕方なく」エスカルゴに融通しています。彼は複数の神から好かれてもいるのでそれも理由の1つですね。
時系列
魂魄妖忌、力試しのため山に攻め入る(数百年前)
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先代の天魔(紗那の母)、妖忌に殺されて風来丸を奪われる
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紗那と姉、涙を飲んで耐え忍ぶ
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次期天魔は本来なら姉になるはずだが、姉は病弱で身体が弱く、強さも並なので、紗那が天魔を継ぐ
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妖忌、仕事をロリ妖夢に押し付けて頓悟する
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姉が朱美を出産、間もなく死亡(周囲には病死したという事にした)
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一般の天狗と同じように育てられた朱美だったが、大きくなるにつれて周囲との違いが浮き彫りになり孤立気味になる
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穹、特別扱いされ過ぎて天狗社会で浮き始める
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「浮いてる者同士、仲良くしましょ♪」「はい!」
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「そんなんだから浮くのよ」と委員長タイプの如月弥生、浮きがちな2人の面倒を見るようになる
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ロリ天狗トリオ爆誕
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妖忌、冥界に帰還
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エスカルゴの関係者から妖忌の帰還を知った紗那、引退後は妖忌と戦い仇討ちでもしようか、と考えるようになる←イマココ!