「先生、ダンスに出てくれませんか?」
「いいっすよ。自分、自信あるんですよね」
「私は遠慮します」
今度はダンスに誘われていた。歌ならいいが、ダンスはできない。もう少し生まれるのが遅ければ学校で習えただろうが、習っていない私は、音ゲーの矢印を踏むので精一杯だ。
「えー、出ましょうよー」
「嫌です」
この学校で過ごしていると、教養の差というものを感じることがある。いや、そう言えば前世でもそうだったな。学会とかに出た時に内容についての話の他に、繋がりを作るための雑談をするときに、皆の話題が芸術や歴史、楽器とかになると全く話題にはいれなかった。
「私は見る専門なので」
まあ、語れないだけなので、楽しいとか凄いとかは感じるので興味がないわけではない。剣術よりは楽しめるだろうし、一旦椅子に座りたいのもある。
「じゃあ後輩、私に格好いい所を見せてください」
「格好いい系っすかー、難しいっすねー」
「頑張ってください」
xxx
「いやぁ、どうでした?自分のダンス」
「うーん、大人っぽい?感じでしたよ」
エロチックなというか、官能的というか艶かしい動きの躍りだった。
「いやぁ、ちゃんとした衣装じゃないと動きにくいっすねー」
「それじゃあ今度衣装着て踊ってください」
R指定付きそうなエロスを感じる踊りだったが、衣装を着たらどこまでエロくなるのか…、興味がある。
「あはは、楽しみにしててください」
「本当に楽しみです」
法的にセーフなエロスの補給は貴重なため、どうにかしてカメラに納めたいなぁ、と思いながら適当にまた後輩と歩き回る。
暫く歩いていると、ラミン君が肩を落としながら歩いているのを見つける。しょぼんとした雰囲気が伝わってくる。後輩も何かを感じとったようで小声で話しかけてくる。
「ラミン君負けちゃったっすかね?」
「多分…」
「あんなに強くてもやっぱり上級生は難しかったんですかね?」
最後まで見ずに去ったこともあり、少し罪悪感が生まれる。
「あっ、せんせぃ……」
気づかれてしまったらしい、無視するわけにもいかないし話しかけよう。
「ラミン君、えーと、どうでした?」
「……」
彼の顔は寂しいような悲しいような表情のまま固まった。よほどひどい負け方をしたのだろうか。どうにか慰めの言葉を考えていると、パタパタと女生徒がやってきた。
「さっきのダンスの表彰があるので先生来てくれませんか」
「え、今ですか?センパイ、ちょっと行ってきます」
そういうと後輩は女生徒とともにパタパタと去っていった。……どうしようか。
「あの、ラミン君?」
「……怒っちゃってごめんなさい」
「え?」
どういうことだ?
「がんばったところ見てもらえなくて、少し嫌な気分になって……。他の競技に出てたんでしょ?」
「あ、ああうん」
話に乗っておこう。というかあの態度は怒ってたのか。
「なのに不機嫌になって……」
「いえ、良いんですよ。結果はどうだったんですか?」
「2位だったよ」
「え、凄いじゃないですか」
他にも武家だとか、なんとか流の継承者とかいたはずなのに。
「デパス先生がほかの強い人みんな倒しちゃったから楽に勝てたんだ」
「それでもすごいですよ」
デパス先生はあまり付き合いがないのでよく知らない。昔は戦働きしていた超強い人らしいのを知ってるくらいだ。
「せんせい、今日すっごい頑張ったんだ。頑張ったから……ご褒美、くれる?」
「……良いですよ」
私は笑顔を隠そうとして、口だけニヤリと歪めた。