「すみません、待たせちゃいましたか」
「ううん、全然」
良くあるやり取りだが、やってみると何か楽しい。
今日は普段の服とはちょっと違う物を着てみた。普段はややフォーマルかつ動きやすい仕事着か、過ごしやすいが色も少なくみすぼらしく見える普段着を着ているのだが、今日は滅多に着ない女の子らしい服にしてみた。
肩出しかつふわふわとした装飾の青色のトップスに、逆にシンプルなデザインの白くて長いスカートを高めの位置で留めている。
ファッションは余り得意でなくわからないが、店員さんと私の中の性欲が有りだと判断したためこの服に決めた。
「今日の服はいつもと違う雰囲気だね!普段は綺麗なせんせいって感じだけど、今日は可愛いお姉さんな感じで凄く良いと思う」
「ありがとうございます」
変じゃないか不安だったので、お世辞かもしれないがちょっと安心する。
「それじゃあ行きましょうか。美術館からで良かったですよね」
「うん」
歩き出そうとすると、ラミン君が私の手をぎゅっと握った。
なにかデートらしいことを言おうかと思ったが、上手く思い付かなかったので、私よりも小さい彼の手を握り返して一緒に歩き出した。
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「うーん、どうやって書いてたんだろ」
「レンズを使って歪んだ世界をみて書いている……ってこの間読みましたね」
世界が変わればマナーも変わる。この世界では美術館で話をにするというのは普通の行為であり、むしろ見ている美術品について話すのは好ましいこととされている。
少し回りに耳を傾けると、絵や作家についての蘊蓄が聞こえてきたりする。
「お土産売り場だって、せんせい!」
「これはサインと……下書きとボツになった絵?これ、こんなに普通に売ってて良いんでしょうか……」
「ほとんどの人は展示されてる気に入った絵を買うし、未完成品は好きな人しか買わないからこんなものじゃないかな」
値段をみると悩ましい値段だ。外食1回分くらいの値段なら買っても良いのだが……、ちょうど私の月給の2割8分か……ポンとノリで買える値段じゃない。見るだけで良いか。
「せんせい、この中だとどれが一番好き?」
「えーっと1番か……この羽車が動いているなかを虫が飛んでる絵かな」
何だか男の子心をくすぐられるというか、おっきな無機物の世界で小さな生き物が並んでると何かワクワクする。
「じゃあ、この絵を下さい。これからまだ回るので後で取りに来ます」
「ありがとうございます。明日以降になりますが、指定の場所、時間にお届けすることもできますがいかがでしょうか」
「うーんせんせいどっちが良い?」
「え?ええと、……輸送?」
「じゃあお願いします」
「はい、こちらにお届けの時間と場所をお願い致します」
「じゃあ一旦おれが受け取って、後で先生に渡すね」
「……ありがとうございます」
何か気がついたらプレゼントされるらしい。嬉しくはあるが、なんというか普通に買われたため何だか頭が処理できずに戸惑っていると、手を引かれる。
「あっちは新作だって、見に行こう!」
私は考えを一旦置いといて、彼に引かれるままついていった。