----四宮ネギ太郎---
学校は、謹慎処分だという。2週間ほど通わないで良いらしい。僕のせいで問題が起きたのは確実で、家から外で出る事も禁止されていた。
「琴鳴…なんで、出ちゃ行けないの?」
「2週間だけ、待って下さい。必ず、通える様にしますから」
平気で人を殺したことが原因なんだろうな。エリカも、レオも、美月も、幹比古も、僕に怯えていた。化け物を見るような視線を浴びた。まぁ、聖域の者は、人間から見たら化け物だと思われていると、賢者様に習ったので、ダメージは少ない。だけど、エリカに、そう思われるのは辛い…
「水波、暇だよ~」
「って、言われても…私、まだ中学生だから…」
だよね…琴鳴は仕事だし…深雪と真由美は学校だよな。誰が、構ってくれるのかな?
呼び鈴が鳴り、水波が応対しに行った。誰だろうか…心当たりは、真夜さんか葉山さんしか浮かばないんだけど…
「千葉エリカさんと、エリカさんのお兄様がいらしています。どうしますか?」
どのつら下げて僕はエリカに会えば良いのだろうか?
「断ってくれる」
「うん?もう、そこにいますよ…」
え?僕の許可は…
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リビングで、エリカと寿和さんと向き合って座っている。
「僕を逮捕しに来ましたか?」
刑事さんである寿和さんに訊いた。
「逮捕出来無い。お前の後盾は、俺程度の刑事が拒否できない程度だ。まったく」
「じゃ、何の用ですか?」
「おい、エリカ!お前、コイツに言う事があるだろ?」
「…」
僕では無く、テーブルを見つめているエリカ。
「なんだよ…ったく…エリカを助けてくれたことに感謝する。で、お前、アノ後、どこに行っていたんだ?暫くの間、消息不明だったが」
どこに?あぁ、賢者様達と掃除に…どこへだっけ?
「確か、ブラシの日本支社だっけかな?」
うろ覚えの記憶を口にした僕。
「はぁ?まさか…お前…『ブランシュ』の日本支部に行ったのか?」
「あぁ、そんな感じの場所です」
「どこだ?」
どこだっけかな?うろ覚えではあるが、座標点を伝えた。
「お前…経度と緯度で場所を覚えるなよ!」
あぁ、だって、転移魔法だったから…住所は知らない。
「使われていない倉庫だったです」
寿和さんは、僕の伝えた座標をどこかへ伝えた。しばらくすると、そのお返事が来たようだ。
「何?全員…で、ボスは?はぁ?頭部が潰されていた!おいおい…で、指紋照合の結果…そうか、ボスが判明したなら、背後組織を洗え。すぐにだ!」
溜息を吐いて、顔を伏せた寿和さん。そして、意を決したように、僕を見た。
「お前…一体、何人殺せば気が済むんだ?!」
『殺せば』って言葉に反応して、エリカの顔は青白くなり、身体が震えだした。
「え?倉庫では僕は一人も殺していないですが…」
「はぁ?じゃ、誰がやったんだ?!」
「賢者様の親衛隊です…」
「賢者様?どこのだ?」
「僕の鍛錬先で知り合った賢者様です」
「どこで、鍛錬したんだ?」
「言えません」
「殺戮集団を、お前は隠すのか?!」
「殺戮集団じゃないです。親衛隊の皆さんです!」
マズい…苛ついてきた。ここは抑えないと。寿和さんが危ない…
「暴走族か?」
「賢者様を愚弄しないでください…」
心を落ち着かせる事に集中する。エリカも危ない…
「はぁ?何て言う暴走族だ?」
「違うって言っているでしょ?!あぁぁぁぁぁ、ダメだぁぁぁぁ~!賢者様!僕を消して下さい。僕から二人を護って下さい。我らの守護神様!」
目の前が真っ暗になった。闇の世界へ飛ばしてくれたようだ。何も見えない、何も聞こえない、何も感じ無い、漆黒の闇に包まれている僕。これでいいんだ。僕は任務を失敗した。僕は消えてもしょうがない…
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『お前、融通が効かないないなぁ』
闇の世界の王様の声が脳裏に響いた。
『もっと、楽に生きられないのか?父様は暴走族って言われても怒らないよ。暴走行為は専売特許だし』
闇の世界の王様は、賢者様の息子さんだそうだ。
『まぁ、父様も暴発しそうな時は、銀河の果てに転移していたよ。周囲の者に迷惑を掛けないようにね♪』
そうか、自分で転移すれば良いのか。って、銀河の果ての座標を知らない…
『まぁ、ここで謹慎期間は過ごせよ♪』
え?2週間もここに?う~ん…でも、その後、ここを出るまで、ここでは誰の声も感じ無かった。これが禁固の刑か?
---七草真由美---
ネギ君のメイドから緊急呼び出しをされた。私、達也君、深雪さん、堤先生が、彼の家に着いた。
「ネギ君が…ネギ君が…」
メイドの少女はパニック状態であった。堤先生が、彼女の意識を狩り、達也君が彼女の記憶を読み取った。
「千葉寿和!お前はネギに何をしたんだ?!」
その場にいた、千葉さんのお兄さんに掴み掛かった達也君。彼女の記憶から何を見たのだ?
「真実を知ろうとしただけだ。俺は刑事だからな」
「なんで、ネギが闇の炎で焼かれていたのに、助けなかったんだ?お前達の目の前だぞ!」
闇の炎で焼かれた?誰の術だ?私と深雪さんが千葉兄妹に対して、臨戦態勢を取った。堤先生は意識を刈り取った少女に付き添っている。
「しょうが無いだろ?助け方なんか、知らないんだから!」
「俺はお前ら千葉家を許さない!ネギを消し去って満足か?」
ここまで激高した達也君は、初めて見る。いや、私も深雪さんも怒りのボルテージはトップギアだと思う。
『達也さん、ダメだよ!真由美も深雪も落ち着いて』
脳裏にネギ君の声が響いた。
『僕が望んだんだ。だから、二人を許してあげて』
「ネギ!どこにいるんだ?」
達也君が叫ぶが、あの人懐っこい笑顔は、現れなかった。周囲を見回しても、気配すら感じ無いネギ君。
『僕は今、闇の世界で、禁固刑2週間を課せられています。だから、心配しないでください。深雪と真由美に甘えられないのがつらいけど…2週間がんばります』
禁固刑?望んで?闇の世界?どこ?
「達也君、それはどこにある?」
千葉兄妹には聞こえなかったのか、私達の行動を呆気にとられて見ている。
「わかりません。人間には触れてはいけない領域かもしれません」
残念そうな達也君。
「おい!アイツは人間では無いのか?何者なんだ?」
千葉さんのお兄さんが、達也君に詰め寄った。
「千葉寿和よ!お前の知る事では無い。これは四葉家と七草家の問題だ。部外者は帰ってくれ!」
千葉兄妹を力尽くで排除する達也君。
「師族の作り上げた化け物か?」
「ネギを化け物呼ばわりするな!お前達に、アイツの何がわかるんだ!」
千葉兄妹を、家から叩き出した達也君。
「調整体のアイツらの何がわかるんだ…俺だってわからないのに…」
哀しそうな表情の達也君は深雪さんを見ている。まさか…彼女も…
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場所を変えて、達也君と二人きりになった。
「深雪さんも?」
直球を投げた。
「水波も琴鳴さんもだ…」
変化球が投げ返されてきた。ネギ君の周囲の女性陣も…皆、自分が人間であることを疑っていない感じである。
「自分自身が、調整体であることを知っている者はいない。皆、ネギだけが後5年だと思っている。だけど…」
堤先生は短命を乗り切ったのかな?すでに20代半ばに近い。
「化け物じゃない。違うんだ…」
達也君が泣いている。ネギ君にしているように、優しく抱き締める。
「ネギ君を見ていて思うの。彼は化け物じゃないわ。だから、彼女達も」
その晩、私は達也君と…
---千葉寿和---
師族の作った化け物部隊があるようだな。七草家配下の公安の目を掠めて、調べを進めていく。まず、賢者と呼ばれているリーダー格の化け物だ。
警察庁にある特捜部の部屋で、検索をしてみるが、ヒットしない。どこの賢者かが問題なんだろうな。親衛隊を持つ賢者では、どうかな?ヒットしない。う~ん…
「あぁ、たぶん、それは聖域の賢者じゃないですか?」
見かけない顔のヤツに声を掛けられた。特捜部の新人か?
「聖域の賢者?なんだ、それは?」
「都市伝説に出ていると思いますよ」
調べて見るとあった。
「あったよ。サンキュ…」
ヒントをくれたヤツに礼を言おうとしたのだが、もういなかった。特捜はせっかちが多いからな…次に会ったら礼を言おうかな。で、出て来た内容は、
『聖域…人間がたまに迷う込むという不思議な世界。そこは時間の概念が人間界と違うらしい。ルールは人間界の法律と違うらしい。そこでは人間は種族の1つ…もっとも低い種族に当たるらしい』
う~ん、化け物の世界ってことか。ネギは化け物の世界の出身者ってことだ。そうなると、四葉家と七草家は何らかの方法で、聖域と呼ばれる化け物世界と交流があるのかもしれないな。
「人間らしい発想ですね」
突然、声を掛けられた。先程のヤツだ。
「人間は他の種族を化け物だと言う。コチラ側から言わせて貰えば、人間の方が愚かで醜い化け物なんですがねぇ」
コチラ側?コイツ、化け物か…
「あぁ、僕を化け物というのは許しますが、僕の大切な者達を、化け物呼ばわりをして欲しくないなぁ」
「大切な者達?ネギと七草家、四葉家の奴らか?」
「違いますよ。四葉家の奴らも七草家の奴らも、全員では無いですよ」
「貴様の目的は何だ?」
「目的?依頼者の想いを成就させることです」
「依頼者だと…想いを成就だと…具体的に言えよ」
「この世界の寿和さんは高飛車ですね。僕は高飛車な人間は嫌いです。しょうが無いですね。あなたに罰を与えます。僕のエリカと戦う権利を与えます。思う存分、戦ってみて下さい」
色々突っ込みたいのだが、戦闘フィールドのような場所に転移させられた。ヤツのエリカ?どういう意味だ?目の前にエリカが立っている。素手で俺を殴り掛かって来た。避けながら、特殊警棒を手にした。マジで戦わないと、ダメなレベルの相手とみた。コイツは俺の妹のエリカよりも、手練れのようだ。どういうことだ?
バキッ!
何?特殊警棒を叩き折りやがった。戦車に傷を付けられる警棒だぞ…その時、目の前の敵に恐怖が芽生えた。パンチやキックを一発でも貰えば、生死の境を彷徨いそうだと。
パンチやキックを受け流すが、衝撃が骨に響き渡る。ヒビが入った気がする。受け流してもダメなのか?避けまくる俺…息が上がっていく。苦痛で顔が歪む。しかし、相手は息すら上がらないで、始めと変わらない速度で攻め来ている。コイツも化け物なのか?
ズッン!
腹部にケリを貰った。口から血反吐が大量に…ここまでか…
---千葉エリカ---
アニキが職場で襲われたそうだ。病院に向かい、症状を訊く。内臓が破裂しているようだった。腹部に衝撃を受けて、背骨が粉々になるダメージを受けたそうだ。襲われた現場には、アニキの特殊警棒が2つに折れた状態で見付かったそうだ。戦車すら傷を入れる強度としなやかさを持っている警棒が…
何に襲われたのか不明らしい。警察庁はパニック状態だという。警察庁建屋内で起きた襲撃事件。監視カメラに映像が無いそうだ。監視カメラの死角で起きた計画的な襲撃らしい。
「兄上…」
兄上も父さんも心配そうに、ベッドに横たわるアニキを見ている。見ていることしか出来無いのがつらい。
「私のせいだよ…ネギを見殺しにしたから、その報復なんだ…」
「どういう事だ、エリカ!」
兄上に訊かれたので、目の前で起きたことを話した。
「ネギ君が炎に包まれたのに、灰になるまで、アニキとエリカは見ていたのか…」
「だって、アイツ、化け物だったんだよ。だから…」
「父上…」
兄上が父さんに何かを言いたげであった。
「修次…エリカを頼む。私が詫びに行く」
「しかし…眉唾的な情報ですよ」
「そうだが…他に手は無いだろ?私達は守護神様を怒らしてしまったんだ」
「守護神様って…」
知らない言葉を訊いてみた。いや、ネギも言っていたような。
「初代千刃流の当主様が信仰していた神様だよ。ネギ君は神殺しって言ったんだろ?」
頷く私。確かに、そう言っていた。
「それは守護神様の二つ名だ。名乗れる者は守護神様が認めた者だけだ」
アイツ…神様の弟子なのか…衝撃的な事実に、身が震えた。
「まぁ神様も化け物の一種だ。お前達の考えは間違ってはいないが…古来より神の怒りを鎮める方法は1つだ。これから、家に帰り、私がそれを行う。修次、後を頼むぞ!」
返事を返さず、父さんの去って行く背中を見つめる兄上。何をするんだ?父さん…後を追おうとする私を兄上が制止した。
「お前は行くな。あの儀式に女性は…うっうっうっ…」
私を抱き締めて、泣き崩れる兄上。父さんのしようとしていることが、なんとなく分かった。私は、兄上を振り切り、父さんの後を追った。