---新発田勝成---
真夜様に呼び出された。当主様の部屋へと行く。昨日の壇上にいた彼女とは違い、物凄く冷酷な目で俺を見つめていた。
「なんで、呼ばれたか、わかりますよね?」
「いえ、わかりません」
正直な話、何もわからない俺。
「では、あなたの指示では無かったって、ことですか?」
「何の話でしょうか?」
「私の孫のネギ太郎が、彼の所有するエリアで襲われたのです」
占有エリアがあるのか?
「彼以外の立ち入りを制限したエリアに、侵入して襲うって、計画的ですよね?」
どこまでも冷たい声。
「俺は襲っていない。その件は関係ないです」
「そう。じゃ、侵入した賊はこちらで処分しますわ。葉山、お帰りよ」
「はい、真夜様」
真夜様付きの執事に付き添われ、奥の院の入り口まで連れて行かれた。
「では、この件は、奥の院で処理します。お部屋のお戻りください」
そういうと、奥の院の入り口の扉は閉ざされた。
---堤琴鳴---
うっすらと覚醒していく意識。ぼんやりと天井が見える。ここはどこ?周囲を見回すと、メイド姿の少女がいた。
「お目覚めですか?」
「ここはどこ?」
身体中が筋肉痛のようで、全身が痛い。あれ?全裸だけど…どうして?
「ここは奥の院にあります離れです」
離れ?そうだ、アイツを襲ったんだ。で、どうしたのかな…
「どうして、ここに?」
「記憶が無いのですか?ネギ君を襲って、返り討ちに遭ったんですよ」
返り討ち…そうだ。弟は…アイツに…メイドの彼女を羽交い締めにした。人質にしよう。
「え?何するんですか?」
「人質になりなさい」
「え?私が?ならないでしょ?」
その瞬間、壁に激突した私。
「私、防御結界が固有能力なんですよ」
身体に防御結界を纏っていたのか。異物として弾かれたようだ。
「どうした?水波…」
アイツが隣の部屋から現れた。
「あぁ、ネギ君。彼女が私を人質に…恐かったよ~」
嘘泣きでアイツに抱きつくメイド。何?
「そうか、恐かったのか。よしよし♪」
頭を撫でてあやしているアイツ。ふざけるなよ!
「ふざけていないよ。琴鳴さんだっけ?コキュートスで動きを制限させてもらったから」
え?全然、発動の動作がなかったじゃない…でも、アイツの言う通り身体が動かない。
「生きている蝋人形って感じかな」
お尻の谷間に竿を挟み込んで来た。身体が動かないのに、感じる。悶悶としていく。アイツの手の平が背中越しに乳房を触れた。ダメ…この身体は勝成様の物。
「あぁ、勝成ってヤツが、琴鳴さんを好きにしていいって、真夜さんに言ったそうだよ。だから、僕のガーディアンにして貰ったから」
私を好きにしていいって…まさか、そんなことを言う筈が無い。
「君の弟さんの死骸を見せたらしいけど、こんな物知らないから、ゴミ箱に捨てて置いてって…」
酷い…勝成様の為に動いたのに…
「ゴミ箱は酷いよね。拾えるだけ拾って、荼毘に付して、そこのお墓に祀ったから」
彼の指差す先には、真新しお墓があった。
「ここは僕の占有地。誰にも汚されない。潔く戦った相手だもの、それなりに弔いたい」
そうか…って、コイツの竿が私の中に吸い込まれて行く。あっ…昨日も…恥ずかしい記憶が脳裏に浮かびあがるだけ浮かびあがって消えてくれない。そうだ、彼の行為で果てたんだ…絶頂の向こう側に連れて行かれたというか…
「ここに置いてくれるの?」
「勿論♪でも、深雪が許嫁だから…あまり出来ないけどね」
って、主変えもありかな…
---新発田勝成---
俺のガーディアンである琴鳴達の姿が見えない。どうしたんだ?
「真夜様のお孫様が襲われたそうだと」
「どこの家だ。まだ、刃向かうのか?とばっちりはゴメンだぞ!」
外で、分家の当主クラス達が噂話をしている。うん?まさか…琴鳴達か?!真夜様に訊かれた一件って琴鳴達の起こしたことなのか?俺は、奥の院の扉の前に行き、真夜様との謁見を希望した。だが、
「あなたとの話は、済んでおります」
真夜様付きの執事に一蹴された。
「賊の件なんだが…」
「総て、奥の院で処理したしました。分家筋の方には、ご迷惑をおかけしませんよ」
「賊の顔を見たい」
執事が難しい顔をした。
「真夜様の前で、関係無いと言われましたよね?あれは時間稼ぎですか?」
「知らなかったんだ。昨日から俺のガーディアン2名が、見当たらないんだ。だから、もしかして…」
「真夜様があなたを呼んだのですよ。調べをつけてからの招集。なのに、あなたは、知らないと言い切りました。手遅れです」
「ふざけるな!俺にとって大事な者達だ!」
「ネギ様は真夜様にとって、大切なお方ですよ。それを襲わせたんですから、それなりに、覚悟を持っていてください」
くそっ!囚われているのか…救い出さないと…
---堤琴鳴----
鍛錬の前に、あの子のお墓に、祈りを捧げてくれているネギ君。
「ネギ君の宗派って何?」
「宗派?なんだろう。僕の信じている神様は、名の無い神様だから…宗派なんか無いんじゃないかな?」
ネギ君の信じている神様。『星の守護神』と呼ばれている神様だと言う。地上の者には、神様の名前は知られていないそうだ。
「って、どこで、その神様のことを知ったの?地上には信仰が無いんでしょ?」
「鍛錬先だよ。鍛錬先の者達は皆、その神様を信仰していたから」
名の無い神様…でも信仰する者がいるのか…なんか、不思議である。
「そう不思議なんだよ。神様なのにお線香を上げるんだよ」
って、ネギ君って、読心術が出来るんだ。
「そうだよ。鍛錬先でまず、習うのが読心術。みんなが出来れば、嘘吐きがいなくなるでしょ?」
確かに…
「じゃ、行って来るよ」
「私も行きます。ガーディアンですから」
「頼みマス♪」
---新発田勝成---
黒羽の叔父に、文弥と亜夜子を借りた。三名で、ネギの占有領域に潜入した。
「いいか。あのネギとかいうやつを仕留めるんだ。じゃないと、呪いが解けないからな」
潜入理由を偽った。俺のガーディアン救出では、彼女達を借りられないと思ったから。
「そうね。ふって湧いたような、孫って、おかしいよね?」
何かがいそうな気配がする森。ここを抜ければ、奥の院の裏手に出るはずだ。
「あれ?誰かがこっちに来るよ」
目をこらして見る。有り得ない。琴鳴とアイツが楽しげに歩いた。
「琴鳴!」
声を掛けた。ビクッとしてアイツの背中に隠れた琴鳴。洗脳したのか?ふざけるなよ!
「文弥、亜夜子、行くぞ!」
文弥はアイツに『ダイレクト・ペイン』を放った。が、文弥が苦しみ出した。なんだと?
「琴鳴、逃げろ!僕が時間を稼ぐ。達也さんを呼んで来てくれるかな?」
「わかりました。無茶をしないでくださいね」
琴鳴がアイツに気遣いの言葉を掛け、逃げていく。俺は後を追おうとするが、いつの間にか、アイツが目の前に移動していて、ケリ込まれた。琴鳴と逆方向飛ばされる俺。ふざけるなよ!格闘戦で俺に勝てる思うなよ!
しかし、アイツに一発もパンチもキックも入らない。逆に殴られ、蹴られ、投げられていく。なんだ、コイツ…
「あぁ、鬱陶しいなぁ」
え!身体が動かない。警戒していた『コキュートス』が発動されたようだ。いつ発動したんだ?これが『八重唱』の力なのか?
「砕かれたいか?なぁ~」
あの女と同じ目で睨むアイツ…孫…それは事実のようだ。狂気に染まった瞳。亜夜子…頼む。
「いやぁぁぁぁぁ~!」
亜夜子の叫び声…亜夜子が襲われたようだ。
「黒羽姉妹を捨て駒に使うって、豪華な布陣だよね?君達は捨て駒だよ。何をされても文句は言えないんだよ」
俺の目の前で、亜夜子が全裸でアイツとスキンシップをしている。身体の動かない俺は、ただソレを見ていることしか出来無い。文弥は苦しみ藻掻いている。
「ネギ!」
達也の声だ。琴鳴が呼んで来たようだ。
「あぁ、達也さん。また、襲われたよ。どうすれば良い?」
「懲りない奴らだな。まさか亜夜子ちゃん、文弥君まで加担か?そうだな。ネギ、勝成さんだけを転移出来るか?そうだな。黒羽の叔父の処に」
「う~ん…ちょっと待ってね。居場所を特定するから」
索敵能力も有るのか…コイツの戦力は、達也よりも上なのか…
「見つけた♪」
俺の目の前に魔法陣が現れると、次の瞬間、黒羽の叔父の前にいた。
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「なんだと!俺の娘と息子が人質に?お前、何をしでかしたんだ?!」
俺は、本来の目的を隠して、偽った理由だけを伝えた。
「おい!術者を殺しても解けない呪いもあるんだそ!その場合、術者を殺せば、二度と解けないんだ。バカか、お前は!」
激高している黒羽の叔父。
「新発田よ。どうしてくれるんだ?お前のバカ息子のせいで!」
「すまない。おい、勝成、お前も謝れ!」
謝る?
「なぜ?今、アイツをどうにかするのが先決でしょ?」
考え込む黒羽の叔父。
「お前、八重唱を甘く見過ぎだ!下手したら、8つ同時に撃ち込まれるぞ!」
静の叔父が叫んだ。
「しかし!」
「死に急ぎたいのは、だ~れ~だ~♪」
アイツの声がした。いつの間にか、アイツと達也、深雪、琴鳴、亜夜子がいた。
「おい!琴鳴の洗脳を解け!」
アイツに叫ぶ俺。しかし、
「私は洗脳なんかされていません。自分の意志で主を代えました」
琴鳴の無情な告白。
「どうして?」
「弟をゴミのように扱いましたね?そんな者は知らないと…彼は…私の新しい主様は大切な者にするように、荼毘に付してくれ、お墓をつくってくれ、祈りを捧げてくれています」
「俺は、ゴミのように扱っていない。まさか、お前達とは知らなかったんだ」
「では、なぜ、一目見て確認しようとしないんですか?」
それは…俺の落ち度だ…
「私達姉弟の忠誠心を考えれば、想定出来たでしょ?」
琴鳴の目を真面に見られない…顔を伏せてしまった俺。
「亜夜子…お前も洗脳か?」
「違います。そこにいる勝成に騙されたんです」
黒羽の叔父達が俺を睨み付けている。
「アイツが亜夜子と無理ヤリ…」
「違います!私が叫んだのは、ネギ君が後2年待ちかなって言うから…いや~って。で、私の方からせまったというか…」
頬を赤らめて顔を伏せる亜夜子。
「え?だって、まだ中学2年だよねぇ?2年は待とうよ」
困った顔をしているアイツ。それを深雪と琴鳴が笑って見ている。
「なんでよ~深雪さんと数ヶ月違いだよ~」
「おい…じゃ、お前が望んで抱かれたのか?」
「望んでっていうか、私の身体を好きにしていいから、文弥を助けてって…そうしたら、まだダメだって、言うんだもの」
涙目で訴える亜夜子。
「文弥はどうしたんだ?」
黒羽の叔父がアイツに訊いた。
「僕の家で休ませています。マジックキャンセル出来なさそうだったから、フルカウンターしちゃって…」
アイツの発した2つの単語で、場の空気が凍り付いた。『マジックキャンセル』『フルカウンター』って…おいおい…
「お前…魔法が効かない上に、物理攻撃も効かないのか…」
黒羽の叔父達の顔から血の気が引いている。
「端的に言うと…効かないですよ。たまに、選択ミスして、効く事もあるけど…『超再生術』で再生しますよ♪」
鉄壁の防御能力…その上、再生するのか…攻撃が無意味…
「そんなネギを攻撃する方が、頭がイカれていますよ」
達也の声。
「達也…ちなみにソイツのアイドリングしている魔法って言うのは?」
「コキュートス、マテリアル・バースト、あと同等クラスが6つだそうです。ですので、迂闊に試せとは言え無いです。それもあり、実際には試し撃ちしないと、詳細は難しいかと思います」
国家認定の戦略魔法師レベルの魔法を8つ、いつでも撃てる状態なのか…だから、発動動作なんて存在しないのか…恐怖…いや、畏怖しか感じ無い。目の前の化け物魔法師に…
「後、俺と深雪は広範囲が得意ですが、ネギはピンポントが得意です。暗殺、狙撃自由自在ですから、ケンカは売らない方が良い」
慶春会で見せた、悪意を持った手下クラスだけを爆散…ピンポイントで同時多発発動が可能ってことだな…
俺達は、目の前の化け物に屈服するしかないようだった。