※この作品はR-18です。

オリ主探訪日記   作:mimick

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転移前 現実世界
1.シンプルな日記帳


 ☆月★日

 

 俺は転生したらしい。

 いや、マジでさ。気がついたら赤ん坊で、目を開いても光がボヤ~っとしか見えなかったら、体が全然動かなくてスゲェ焦った。

 

 しばらくしてから、母親らしき人が来て俺の世話をしてくれたから、あぁ今の俺は赤ん坊なんだって気づいた。それよりも、赤ん坊が何でいつも寝てるのか分かったわ。すぐにスゲェ眠くなったもんな……

 

 未知の世界が怖いから、何があったか後で確認できるように忘れる前に日記をつけることにする。それに、子どもの頃の記憶は段々と思い出せなくなってゆくものだ。

 

 

 

 

 ☆月★日

 

 衝撃の事実。

 

 ある程度成長してから知ったんだが、地球環境はメチャクチャになって、人の生存領域は大幅に縮減されてしまっているらしい。

 

 今は、劣悪になった環境から人間を隔離するスペースを作って、人は生活しているようだ。ここは俺がいた地球の未来なのか? 明らかに人類の未来がなくて終わってるんだが……

 

 そういえば、そんな設定のゲーム、昔したなぁ。

 

 

 

 ☆月★日

 

 おい、聞いてくれ。

 

 衝撃の事実パート2、人間の社会も終わっていた件について。

 

 社会体制が崩壊していた。基本、アーコロジー内で社会が閉ざされているせいか、ある特定の企業が社会を支配する体制になっているみたいだ。

 

 パパンに聞いたんだが、企業が社会を支配しているせいで、賃金が下がり、ギリギリの生活しかできない人で溢れているそうだ。

 

 そのせいで、学校に通うことができない人もいるみたいで、小卒なんてのもザラなんだと。

 

 マジ、やべぇんだが……

 

 うちは幸いにも、パパンがアーコロジーの管理系の仕事らしく、それほど金には困っていない。

 

 周りを見てる限り、明らかに機械の発展レベル高そうだし、優秀なエンジニアは重宝されてるみたいだ。俺も今のうちから技術的なこと教わった方がいいかなぁ。

 

 

 

 ☆月★日

 

 今日初めてアーコロジーの外の世界を見た。

 

 空は厚い雲がかかって、日が射し込むことはない。日がささないので、光が必要な植物は当然全滅していて、今はアーコロジー内に保存されている植物か、雲の上の高地など、極一部、標高の高いところに僅かに生育してるのみらしい。

 

 マジかよ……酸素とかどうしてんの? って聞いたらアーコロジー内の機械で生成して、調整した濃度の酸素を空調で送ってるってパパンが言ってた。

 

 流石、アーコロジーのエンジニア。

 

 てか、ここ鋼殻のレギオスの世界っぽくない? いや、ないか。

 

 基本、外は死の世界って言っていいんだが、僅かだが人がギリギリ生存できる場所もあるらしく、文明を捨てた人が生活してるらしい。

 

 そいつらは、アーコロジーの人間を襲って物資を奪うらしく、アーコロジーの人間は奴らをレイダーって呼んでる。世紀末か! とか、フォールアウトかよ! とか突っ込みたかったが、実際生活してる身としては全く笑えねぇよ。

 

 

 

 ☆月★日

 

 パパンからエンジニアに必要な技術を学んでいる。

 

 頭パンクしそう。

 

 機械の発展度合いが高いから、修得しなきゃいけない学問も技術も高レベルの物が要求されるのはわかってるんだが……

 

 パパンは何で制御盤に手を突っ込むだけで、修理ができたり、設定の変更ができるの? 

 

 それ、明らかに物理だよね? 

 

 機械を叩いて直すんじゃないんだからさ……

 

 俺、エンジニアなれるのか心配になってきた……

 

 そういえば、転生してから何か特典みたいなのないかなーって探してたんだけど、特にないみたいだった。強いて言えば、割りと余裕のある生活ってことかな? 

 

 ありがとー、パパン、ママン。

 

 

 

 ☆月★日

 

 ちょっと! 学習装置があるなら早く教えてよ! 

 

 今まで必死こいて勉強してたのは、なんだったのさ! 

 

 そこっ、笑わない! 

 

 ……えっ? 

 

 学習装置を使うには特別な手術が必要? 

 

 専用のインプラントを埋め込む必要があるって……

 

 こえーよ! 

 

 だけど、学習装置を使うには絶対必要とか、うごごご……

 

 

 

 ☆月★日

 

 結局手術しました。

 

 学習装置の魅力には勝てなかったよ……手術後には、首の後ろあたりに金属が埋め込まれていて、首の可動には問題ないんだけど、やっぱりちょっと気になる……

 

 だが、これでやっと学習装置が使えるぜ! 

 

 

 

 ☆月★日

 

 学習装置マジ、チート。

 

 こんなんあったら、社会ぶっ壊れるわ。

 

 確かに便利だが、学習装置の台数は限りがあるらしく、大抵の人は使うこともできないらしい。

 

 何でうちにはあるの? って聞いたら、昔、企業上層部の人が新しく買い替えるとかって時に貰えたらしい。

 

 逆にコネがあるパパン、スゲーなと思いました、まる。

 

 

 

 ☆月★日

 

 うへへ……やっぱり新しい知識を頭に入れんのは脳汁が出るみたいにキモチーぜ。

 

 こう、ダウンロードした瞬間にゴッてなって、目の前がグルグルになる感覚がいい。

 

 最初は苦手だったんだが、だんだん癖になってきたんだよなぁ。

 

 

 

 ☆月★日

 

 悲報。学習装置の使用がパパンによって制限された。

 

 あんまり詰め込むと廃人になったり、逆に阿呆になるらしい。今まで企業上層部でも何人かいた、と。

 

 ……早く言ってよ! こえーよ! 

 

 ……でも、制限しながらちょっとずつ知識を入れるのは大丈夫らしく、少しずつ使っていくことにした。

 

 やっぱり、普通に勉強するよりは効率が全然違うからなぁ。

 

 因みに、俺のお気に入りの知識は剣術、弓術、盾術、槍術等、様々だが古今ありとあらゆる扱い方を知っている。

 

 その他は農業の分野とかエンジニア系の知識全般をシミュレータを使って、実践することで体に覚えこませている。

 

 てか、それでもパパンの物理式の機械操作が何で出来るのかわからないんだけど? 

 

 

 

 ☆月★日

 

 パパン、マジチートじゃね?

 

 やっぱり俺の転生特典は生みの親に違いない。学校での成績も上位に入って、順調だ。

 

 このまま行けば、アーコロジーのエンジニアなれるか? 

 

 

 

 ☆月★日

 

 あの、マジ? 

 

 パパン、転生特典じゃなかったのー! 

 

 優秀過ぎて、今後の人類生存領域を広げるための宇宙開拓団の宇宙船技師として選ばれたらしい。

 

 残念だが、地球に戻れないかもしれないらしい。ママンもパパンについていくって? 

 

 うごご……あの、マジ大丈夫なの、それ? で、どこまで行くの? 火星とか? ……外宇宙!? 

 

 

 ☆月★日

 

 パパンとママンが惑星開拓宇宙船で旅立って行った……

 

 ねぇ、何でよ? 

 

 開拓団員の家族は一緒に乗れるんじゃないのか? 

 

 俺が乗れないとか、納得いかない。

 

 アーコロジー環境の管理はお前に任せたって企業上層部には伝えてあるとか、言ってんじゃねーよ! 俺が乗れなかったのは、そのせいか阿呆! 

 

 

 

 ☆月★日

 

 アーコロジー管理の仕事に就いた。

 

 基本、今まで学習してきたことをなぞっているだけだから、楽っちゃ楽なんだが、代わり映えもない毎日でツマラン。

 

 そういえば、転生してこの方、ゲームとかもしてこなかったし、暇潰しに何かしてみるかなー。

 

 

 

 ☆月★日

 

 あるとは知っていたがVR技術を応用したゲームってスゲーな。

 

 注文してしばらくしてから、届いたのはデカイ、リクライニングチェア型の物で、懐に余裕のある俺でも買うのを躊躇ったくらい高価だ。

 

 ゲームはユグドラシルって奴だ。

 

 かつての地球の自然を再現すると共にファンタジー要素を盛り込んであるって話題にもなったやつだ。

 

 うちには学習装置もシミュレータもあるから拡張現実には慣れているが、よくここまで作り込んだなって思うよ。

 

 

 

 ☆月★日

 

 おい、ゴラァ! 

 

 てめぇら、プレイヤーキラーばっかりして来やがって! 

 

 こちとら、ゾンビの外見しちゃいるがれっきとしたプレイヤーなんだよ! 

 

 他人に迷惑かけるようなプレイすんじゃねぇ! 

 

 はっ倒すぞ、ゴラァ! 

 

 

 マジ、ムカ着火ファイアーなんですが。

 

 

 ☆月★日

 

 ちっ。

 

 運営に迷惑プレイヤーを通報した。だけど、ユグドラシルはプレイヤーキラーも前提の一つとした、自由度の高い世界を売りにしているってニュアンスの回答があった。

 

 そうかよ、そっちがその気なら此方にも考えがあるぜ。

 

 数には数が必要だろう。

 

 有象無象はいらねーが、ある程度の頭数を揃えなきゃ、対抗することも出来ねぇ。

 

 とりあえず同じ異形種のプレイヤーで強いやつを仲間として集めて行こう。きっと、この状態にムカついてる奴も多いはずだ。

 

 

 

 ☆月★日

 

 たっち・みーっていうプレイヤーと仲良くなった。

 

 たっちも異形種がプレイヤーキラーの対象になりやすいことに憤っているらしい。熱く語っていた。

 

 随分、正義感の強いやつだな? 

 

 だけど、そこがいい。

 

 あの、馬鹿どもを共にはっ倒してやろうじゃないか! 

 

 

 

 ☆月★日

 

 オラオラ! 

 

 てめぇらみたいなクズ共は駆逐されるんだよぉ! 

 

 まーた異形種狩りしやがって! 

 

 どんだけはっ倒せば、お前らプレイヤーキラーはいなくなるんだぁ? 

 

 お前らも大概だが、こっちにだって意地がある。

 

 殺るなら殺られる覚悟はあんだろうなぁ! 

 

 

 ☆月★日

 

 てか、たっち強い。

 

 リアルのことを聞くのはマナー違反だと思うんだが聞いてみた。

 

 警察官らしい。

 

 警察官なら剣の扱いのレクチャーとかがあるのかもと思うが、それにしたって扱いが巧みだ。

 

 今度、ちょっとPVPしてみない? 

 

 

 

 ☆月★日

 

 うごご……

 

 学習装置であらゆる武器の使い方を学んだ俺だが、たっちの剣術には及ばなかったか……

 

 いや、中々惜しいとこまでいったんだ。プレイヤースキルでは劣っていなかったとは思う。

 

 ただ、才能の違いというのだろうか、ちょっとした小競り合いとか膠着した状況の打破とか、機転が利くし、直感で動くことができるのは流石としか言いようがない。

 

 だが、負けたままではいられない! 

 

 こちとら、学習装置で古今の武術を身につけてんだ! 

 

 もう一回勝負しようや! 

 

 

 

 ☆月★日

 

 今日、人間種のプレイヤーに追いかけ回されている骸骨を助けた。

 

 装備から推測するに、まだレベルは低いようだった。

 

 いや、プレイヤーキラーに粘着されてるようだったし、デスペナでいくらかレベルダウンさせられていた可能性もあるな。

 

 モモンガってネームらしい。モモンガって随分かわいい名前つけるんだな……

 

 それ、昔いたリスって動物の仲間って知ってた? 

 

 フレ申請が来たのでOKしといた。

 

 

 

 ☆月★日

 

 あまのまひとつ、ウィッシュⅢ、武人建御雷、弐式炎雷、フラットフット、エンシェントワン、モモンガ、たっち・みー、俺の9人でナインズオウンゴールというクランを作った。

 

 目的は勿論、あの馬鹿どもを駆逐することだ。傍迷惑なプレイヤーキラーなんぞ、俺がキラー返ししてやるわ! 

 

 

 

 ☆月★日

 

 ブループラネット。

 

 昔の自然を直接知っている者として、ユグドラシルの再現された自然がどれほどまでに精巧につくられているのか確認してみたいと思い、自然の多いフィールドを探索していた時に出会ったプレイヤーだ。

 

 彼も異形種だったのだが、やはりプレイヤーキラーが多くて困っていたらしい。

 

 彼自身はユグドラシルの、再現された自然を目的にプレイし始めたらしいのだが、プレイヤーキラーのせいで満足に観察ができないので困っていたようだ。

 

 あいつら、マジろくなことしてねぇな……

 

 

 

 ☆月★日

 

 ブループラネット、マジ、ブループラネット。

 

 驚くほど自然の知識を持っている。

 

 自然に対する熱量がすごい。

 

 だが、直接自然を見てきた俺には敵うまい! 

 

 ……かつて、森林が枯れ果てる前に担っていた環境を維持する役割ってな~んだ? ……正解だ。

 

 太陽が昇った直後、または太陽が完全に沈む直前、緑色の光が一瞬輝いたように見える現象? 

 

 ……くそ、クイズで負けた。

 

 ねぇ、どうなってるの? てか、それ転生前にテレビで見たような記憶あるけど、名前なんて覚えてないよ! 

 

 リアルじゃ、大気汚染のせいでもう見られない現象じゃん! 

 

 ……認めよう、アンタは確かに自然オタクだよ。

 

 俺から自然オタクの称号を送りたい。

 

 てか、アンタすげぇ自然への憧れが伝わってくるんだけど……何かロマンチストだな。

 

 聞いたりしなかったけど、研究者かなんかなのか? フレ申請しといた。

 

 

 

 ☆月★日

 

 ナインズオウンゴールのメンバーの一人に装備を作って貰うために、鉱石の採取に、採取スポットとして有名な岩山に来ている。

 

 何か知らんが岩場でひたすらゴーレムを作り続けているプレイヤーがいた。

 

 立ち並ぶゴーレムたちが、迫力満点で、あまりにも異様だった。

 

 近くでよく観察してみたら素晴らしい出来だ。奴はるし☆ふぁーと言うらしい。

 

 プレイヤーに話を聞いてみようと思って、話しかけたのだが……これが間違いだった。正直、後悔する時もある。

 

 なにしろ、イタズラ好きで、他人に迷惑かけることを省みない、人がトラップにかかってアタフタしているのを遠くから見ているのが趣味という変態だ。ひたすらにウザい。

 

 だけど、いい作品作るんだよなぁ~。

 

 そこで、奴には腐れゴーレムクラフターの称号を送ってやった。

 

 フレ申請が山のように来て画面がいっぱいになった。うぜぇ……

 

 

 

 ☆月★日

 

 何かすごい、中二っぽいのに出会った。

 

 いや、わかるよ? 

 

 魔法発動するときに、やたらすごいことが起きそう! ……な詠唱をつけるのって楽しいよね~。

 

 ただ、見てる側からしたら、生暖かい目になるっていうか……あと、悪に対するこだわりがすごい。

 

 俺はよくわからんが、悪には悪のプライドがあるってことかな? フレ申請しといた。

 

 

 

 ☆月★日

 

 ブループラネットと一緒に、過去の自然遺産をモデルに設計されたフィールドに探索にきた。

 

 どこかで見たような風景で何だか胸が苦しくなった。きっと郷愁とか感動とか色んな感情がないまぜになったんだと思う。

 

 ……あの、そこかしこに興味引かれるのはわかるんですが、全然探索できてないよ? 先に進みましょうよ……

 

 

 

 お? と思ったら、何か超強そうなボスがいたんだが。

 

 攻略情報とかに詳しいモモンガに聞いたんだけど、未発見のボスかもしれないって。

 

 とりあえず、俺が突っ込んできてボスの特徴、調査してくるから~。

 

 

 

 うーん、なかなか強い。

 

 一人じゃ無理だな、こりゃ。

 

 まぁ、当然のことだが、クランを組んで戦うようなボスだ。

 

 攻撃の回避自体は問題ないんだが、こちらから攻撃しても、体力ゲージが減る様子がない。

 

 一人でどこまで削れるかやってみてもいいんだが、時間かかるからな……皆に応援を頼んでみよう。

 

 

 

 ☆月★日

 

 一人でワールドエネミーに挑むとか頭可笑しいって言われた。

 

 俺が敵のフィールドに入った瞬間、プレイヤー全体に運営から、ワールドエネミーが出現したってアナウンスがあったらしい。

 

 あの、俺にはアナウンスきてませんが……? 

 

 皆からは、ただの気のせいだって言われたんだが、本当にそうかぁ? 

 

 バグかなんかか? 

 

 

 ☆月★日

 

 オラオラ、オラァ! 

 

 ただひたすらにワールドエネミーを切り刻む。

 

 攻撃がくれば回避すればいいし、どうしても避けられないような全体攻撃は防御がめちゃめちゃ高い代わりに一撃で壊れる盾を構えることで凌いだ。

 

 まだまだストックはあるんだよぉ! 

 

 攻撃組が懸命にアタックするんだが、堅いのかなかなか攻撃が通っていない。

 

 後ろにいる魔法使い組から特大の魔法がいくってメッセージがあったから急いで後退した。

 

 放たれた魔法がワールドエネミーすら飲み込み、特大ダメージを与えた。

 

 もうすぐ体力ゲージがゼロになるって時に突然、ワールドエネミーの攻撃パターンが変わった。

 

 さっきまで自然で溢れていた背景がいきなり宇宙を思わせる深淵に変わり、全体に特大ダメージを与える攻撃をしてきて、リタイアする仲間が続出した。

 

 急ぎ回復しようとするも、フィールドの効果なのか回復が規制されている。

 

 結局、残ったのは俺の他にはたっちと後方で控えていたモモンガくらいで、さっきの全体攻撃で皆やられてしまったらしい。

 

 たっちが攻撃の余波をくらって退場した。

 

 くそっ! あとは俺とモモンガだけなんだが、モモンガはやや諦めムードだ。

 

 魔力が少ないのか支援魔法は掛けてくれているが、攻撃するほどの余裕はなさそうだ。

 

 やるしかねぇ、攻撃は絶対食らわないで避ける! 

 

 隙ができたら攻撃する! 

 

 ただこれだけだ! 

 

 あと体力ゲージはちょっとなんだ、こんなとこで諦められっかよ! 

 

 

 

 ☆月★日

 

 流石に疲れたぞ……スゲー時間かかったわ。

 

 しばらく攻撃を避けて、チクチク攻めていたわけだが、何とか倒しきることが出来た。

 

 最後はほとんど意地だけだった。特殊スキルの使用回数はとっくにゼロになっていたし、魔力だってすっからかんだ。

 

 ワールドエネミーが倒れ、姿が露と消えると運営からワールドエネミーが討伐されたとアナウンスがあった。

 

 なんだ、ちゃんとアナウンスされんじゃねーかと思っていたら、ワールドエネミーの第一発見、第一討伐の報酬ってことで特殊な種族クラスとワールドアイテムを得られるってポップが出てた。

 

 早速、新たな種族を得るためにレベルの調整を行った。

 

 一度レベルを減らした関係で今まで使っていたスキルが使えなくなってしまって悲しい思いをした。

 

 だが、新しいクラスには代えられない。レベルキャップが解放されればなぁ……

 

 

 

 ☆月★日

 

 新しい種族だが、不死人ってクラスみたいだ。

 

 モモンガのチョーセンオブアンデッドとはまた違うようで、特殊なスキルを使えるらしい。

 

 拠点に特殊なマーカーを設置することでデスペナなしで復活できる他、経験値を死ぬまでストックすることが可能で、経験値使用を前提とするスキルなどで変換もできるようだ。

 

 また、経験値を使用しなければならないが、人型のアバターを召喚して戦ってくれるらしい。

 

 召喚できる数は、経験値の使用量によるってところか。

 

 ワールドアイテムは白いサイン蝋石って言うらしい。

 

 召喚系の魔法、スキルを極大に補助するみたいな効果があるようだ。

 

 種族クラスで得た新しいスキルと相性がいいアイテムで助かる。クランの皆から羨ましがられた。

 

 

 

 ☆月★日

 

 モモンガから新しいスキルを見せて欲しいと言われたので、使ってみたが、何体かの傭兵が出てくるのみで使えないスキルだということが判明した。

 

 運営は、なんでこんなスキル作ったんだ……

 

 白いサイン蝋石で補助してスキルを使用しても多少強くなった傭兵が2倍の体数で出てきただけだった。

 

 悲しい……

 

 恥ずかしいので、スキルを使うことを止めた。

 

 だが、ワールドアイテムは俺が所持している。

 

 宝の持ち腐れと言われるかもしれないが、これは俺が頑張った証なので、そんな羨ましそうな顔されても売らないし、あげませーん! 

 

 

 

 ☆月★日

 

 最近、クランに入れてくれって奴が多い。

 

 まぁ、顔見知りか仲のいい奴ばかりなので、俺としては別にいいんじゃないかと思っている。

 

 何人か新しくナインズオウンゴールに加入することになったのだが、9人じゃないのにナインズってどうよ? って話になった。

 

 それなら一度、ナインズオウンゴールを解体して、新しくギルドとして再生させればいいんじゃないかってモモンガが珍しく意見を出した。

 

 まぁ、確かにこのままナインズってのも可笑しいし、これからもメンバー増えるかもしれないことを考えたら、それもいいんじゃない? って言っといた。

 

 デカイ拠点できてしまったら、なかなか変更することも出来ないしな。これも切っ掛けって奴かねぇ。

 

 

 

 ☆月★日

 

 皆で新しく作るギルドをアインズウールゴウンとすることを決めた。

 

 せっかく作るならデケェギルドにしたい。

 

 これから決めることはたくさんある。

 

 新しい拠点はどこにするかもだし、コンセプトもデザインも、あれこれ話をしている最中だ。

 

 ちなみにギルドマスターはモモンガがなる。世の中には言い出しっぺの法則というものがあってだな……

 

 だけど、たっち。お前は面倒になっただけじゃないよな? 

 

 新しいギルドを作るっていうんで、メンバーも増員したいって話があった。

 

 そこで、個人でいくらか募集をかけて欲しいらしい。

 

 誰に声をかけるか……

 

 

 ☆月★日

 

 とりあえず、探索仲間のブループラネットに声をかけてみたら、来てくれるらしい。

 

 元々、ギルドを作ってみたいという考えを持っていたみたいなんだが、資金的にも労力的にも難しく乗り出せずにいたようだ。

 

 ブループラネットはギルドで夜空とか自然を再現してみたいらしい。

 

 マジ? もし作るならスゲー大変そう……

 

 

 

 ☆月★日

 

 奴がきた。

 

 腐れゴーレムクラフターだ。

 

 どこからか俺たちがギルドを作るという噂を聞いて、来たらしい。

 

 正直なところ優秀なデザイナーがいるのは助かるんだが……

 

 コイツをギルドに入れて本当に大丈夫なのか……? 

 

 

 

 ☆月★日

 

 誰だよ! アイツ連れてきた奴! 

 

 ……俺でした……すんません……モモンガ、迷惑かけて申し訳ない。

 

 だが、こんなでも優秀なデザイナーなんだ。これからのギルド作りには何かと必要になるし、何とか怒りをおさめて……

 

 オイコラ、てめぇ! 

 

 なにヘラヘラしてんだ! 

 

 もとはお前が共有ボックスの希少アイテム無断で使い込んだのが原因だろうが! 

 

 ブーたれてんじゃねぇよ! 

 

 

 

 ☆月★日

 

 なかなかギルド作りは進んでいない。

 

 気分転換もかねて探索に行っていた弐式炎雷から新しいダンジョンを発見したと連絡が来た。

 

 皆、煮詰まっていたので、皆で攻略しに行くことになった。

 

 先行して探索していた弐式炎雷によれば、このナザリック地下大墳墓は全六層しかないらしいが、氷河、溶岩地帯、地底湖、森林、墳墓で構成されているらしい。

 

 てか一人で踏破しちゃったの? 

 

 変態か。

 

 

 順調に攻略は進んだ。

 

 エリアが複数あるということもあり、様々な属性のエネミーがいるが、今のところ問題なく対処出来ている。

 

 ボスはバカでかいアンデットだった。初見殺しな即死攻撃とかありですか? 

 

 運良く耐性を抜かれなかったメンバーで倒しきることに成功した。

 

 えっ? ワールドアイテムあったの? 

 

 諸王の玉座という拠点系のアイテムらしく、NPC作成可能レベルが上昇するそうだ。

 

 ちなみに攻略によってナザリック地下大墳墓は拠点とすることも可能になっていた。

 

 かつ、初見クリアのボーナスもあるとか。これ、もう決まりじゃない? 

 

 

 

 ☆月★日

 

 メンバーで話し合い、ナザリック地下大墳墓をアインズウールゴウンの拠点とすることにした。

 

 まぁ、こんだけ条件が良かったら当然だよなぁ……

 

 皆、ここを好きに改造できるとわかって、興奮している。

 

 その中で、るし☆ふぁーが大人しくしているのが、怖い……

 

 

 

 ☆月★日

 

 ギルド拠点の整備は順調に進んでいる。

 

 るし☆ふぁーも今は作業に夢中になっているようだ。

 

 デザインとかプログラムをたてられないやつらはデータクリスタルとか装備の素材の収集に行った。

 

 俺は一応、プログラムをたてることができるので、他の奴らと一緒に設計している。

 

 デザインは出来ないこともないが、センスがあるとも言えないので、そちらは奴らに任せたいと思う。

 

 

 

 ☆月★日

 

 ヘロヘロ、大丈夫か? 

 

 なんか健康診断ではほとんどの項目でイエローになってるらしい……肝臓にいたってはレッドだとか。

 

 マジでヘロヘロじゃねーか。

 

 ちょっと体休めた方がいいと思うよ……

 

 ナザリックに仕えているという設定のメイドをひたすら作り続けてるんだが……無理すんなよ。

 

 

 

 ☆月★日

 

 悲報。

 

 るし☆ふぁーが遂にやらかす。

 

 ゴキブリ型のNPCを作ったばかりか、貴重な金属を勝手にちょろまかしてゴキブリ型ゴーレムを作っていやがった。

 

 女性メンバーとかスゲー嫌がってんだが……モモンガに至っては、貴重な金属を使われて、怒りで声がプルプルしている。

 

 まぁ、当然だよな。

 

 ゴキブリ型NPCは恐怖公というネームで階層を守護する一体になるようだ。

 

 

 

 ☆月★日

 

 ブループラネットに誘われて、夜空を再現することになった。

 

 あの、星を一つ一つ配置してくんじゃないよね? 

 

 主要な星座だけ配置して、あとは適宜という訳には……

 

 あ、はい、そうですね。

 

 空に対する熱い気持ちはわかったから! ちゃんと手伝うって~。

 

 

 

 ☆月★日

 

 我らがアインズウールゴウンの拠点、ナザリック地下大墳墓の内装が完成した。

 

 全10階層からなるダンジョンで、中はトラップ、状態異常がかかる嫌がらせなどが満載だ。

 

 最後の仕上げとして、ギルド武器であるスタッフオブアインズウールゴウンを円卓の間に設置して、完了だ。

 

 細かいところは、時間をかけて作り込んでいくことにしよう。

 

 

 

 ☆月★日

 

 たっちが公式主催の大会で優勝した。

 

 特別な装備とワールドチャンピオンの職業が運営から送られたようだ。

 

 これでまた手がつけられない強さになるんじゃないか? ただでさえ、PVPで負け越してるのに、勝率が更に落ちそうだ。

 

 俺も大会出れば良かったかなぁ。

 

 

 

 ☆月★日

 

 ちょこちょこ、人間種のプレイヤーがナザリックを落とそうと攻め込んでくるようになった。

 

 アインズウールゴウンは異形種のトップギルドというのもあって、討伐隊みたいなのが組織されつつあるらしい。

 

 まぁ、ワールドアイテムの所持数が全ギルド中でトップってのもあるしな。

 

 たった42人しかいないのに、これだけの規模を誇っているとか、ここだけだし。

 

 変態プレイヤーばっかりだ。

 

 

 

 ☆月★日

 

 久しぶりに種族スキルの召喚を試してみたら、呼び出される傭兵の種類が増えていた。

 

 よくみたら俺が過去に倒したことのある人型モンスターばかりだ。

 

 なんでだ? と思ってモモンガたちに相談してみたら、特定のフラグをたてることで召喚されるモンスターが増えることがあるらしい。

 

 ぷにっと萌え、ヘロヘロに協力してもらって調べたら、呼び出される傭兵は登録式らしい。

 

 見ることができない名簿のようなものがあり、そこからランダムで召喚されているようだ。

 

 完全にランダムらしく、召喚される傭兵のレベルの差が酷く開いていたことから、登録された時のレベルが反映されるんじゃないかって、ぷにっと萌えが考察してた。

 

 プレイヤーキャラクターにも反映されるかはわからないが、もし反映されるなら戦力的に素晴らしいことなので、ギルドの皆にPVPを申し込んで回った。

 

 

 

 ☆月★日

 

 大規模討伐隊がナザリックに攻め込んできた。

 

 その数なんと1500名! 事前情報をぷにっと萌えが手に入れてたため、対策を取ることができたのが幸いだった。

 

 流石に1500もいると、プレイヤーもピンキリで、ナザリックのトラップにかかったり、苛烈な状態異常に耐えられず次々にリタイアしてゆく。

 

 それでも、対策してきている連中は突き進んでくるし、各階層に設置した守護者たちNPCも次々と打ち取られてゆく。

 

 これ以上はトラップ代もバカにならないし、いっちょう出てきますか! 

 

 幸いここは俺の種族スキルで設置したマーカー、篝火があるし、何度死のうともデスペナなしで復活できる。

 

 そう考えたら、このスキル、防衛向きでもあるよな~。

 

 

 

 

 ワールドアイテムに目がくらんだ阿呆共をリタイアさせてやった。

 

 流石に多数対一人じゃ、耐えてるだけでじり貧だが、スキルを活用してチクチク削ってやった。

 

 時にはトラップに誘導して精神的に追い詰めたり、時にはぶっ飛び効果のある弓矢で溶岩に落としたりと楽しかった。

 

 他のメンバーも対応してたし、あっという間に1500いた討伐隊は数をすり減らしていった。

 

 それでも執拗に攻め込んでくるので、九階層にまで来たときには流石にヤバいか? と、ヒヤッとした。

 

 

 

 

 

 完・勝! いや、かなりギリギリなとこだったんだが、勝ちは勝ちだ。

 

 俺も何度リスポーンを繰り返したことか……1500もいたとあって、ドロップしていったアイテムも物凄い量になっている。

 

 なかにはワールドアイテムも混ざっていて、ギルドの皆の内心はウハウハだ。

 

 

 ☆月★日

 

 先日の討伐隊が運営にチートだ、ブラクラだって訴えたらしい。

 

 阿呆か。勝てばいいんだよぉ! 

 

 お前ら、ワールドアイテム取られて悔しいだけじゃねーか! 

 

 またナザリックに挑戦してくるがいい。まぁ、その時にはナザリックは更にパワーアップしてるだろうがな! 

 

 

 

 ☆月★日

 

 ユグドラシルを始めて数年がたった。

 

 最初はここまで、このゲームにハマるとは思ってもいなかった。

 

 数年プレイも続けていると、ゲームをやめていく奴もいる。リアルがあるし、しょうがないってのもあるが寂しいよなぁ。

 

 たっちが家族サービスよりゲームを優先してるってことで嫁と大喧嘩したらしい。笑った。

 

 

 ☆月★日

 

 モモンガがオフ会しませんか、って言うからリアルで飲み会を計画した。

 

 数年やってきて、リアルでは初めて会う奴ばっかりだったが、話をしてみれば、まんまプレイヤーキャラクターなので笑った。当然だが。

 

 ウルベルトも流石にリアルでは中二を自重してるらしい。

 

 ブループラネットは岩のようにゴツい顔で、照れ笑いを浮かべながら自然を語る熱い奴だった。

 

 お前もゲームの中でも、そのままだな。

 

 俺も自然は好きなので、自然のロマン、自然と過去の世界遺産の調和など熱く語りあった。

 

 いいやつだわー。

 

 ちなみに、たっちはリアルでもイケメンだった。ウルベルトとの言い争いもゲームそのままだ。

 

 

 

 ☆月★日

 

 アインズウールゴウンからどんどんメンバーが抜けていく。まるで穴の空いた盃の様だ。

 

 ユグドラシルもサービスが始まってから長いからなぁ……他のゲームに流れたり、リアルの事情でやめざるをえないってメンバーも多い。

 

 今残ってるメンバーも忙しくてログインできなかったりで、在籍してはいるが顔を見せなくなった奴だっている。

 

 俺もリアルが忙しくなってきたし、プレイ時間も昔と比べれば少なくなってきている。

 

 

 

 ☆月★日

 

 モモンガ、大丈夫なのか? 

 

 ログインすれば大体の確率でモモンガがログインしている。

 

 みんなで作ったナザリックを守りたいって? ……気持ちはわかるが……それでリアルを犠牲にしちゃお前の為にはならないと思うんだが……

 

 勿論、生きにくい世界だってのは承知している。

 

 ……俺はあまりにもナザリックに思い入れを持っているモモンガに言葉をかけることが出来なかった。

 

 俺はなんて言ってやれば良かったんだ? 

 

 

 

 ☆月★日

 

 最近、仕事が忙しい。

 

 忘れてるかもしれないがアーコロジーの管理を疎かにしていては、居住してる人の命に関わる。

 

 この前、一部の空調システムがイカれて不調を訴える人が続出したのだ。

 

 そのせいで、俺も職場のみんなも少しでも早く復旧しようと大わらわだ。

 

 あー、昔に戻りてー。

 

 

 

 ☆月★日

 

 リアルでも付き合いのあった奴が病気になった。

 

 アーコロジー外の汚染された空気を吸い込む生活を続けていたらしい。

 

 何を思ってそんな自殺志願者みたいなことしたのかは知らないが……お前にとっちゃ、自然の死んだ世界なんてつまらないだけだよな……

 

 全く、この世界は人が住むには厳し過ぎて嫌になる。

 

 もし、次に生きられるなら、自然が溢れるところに行けるように祈るよ。

 

 今はもう廃れたが、昔は輪廻って思想があったんだぜ……? 

 

 

 

 ☆月★日

 

(掠れた文字で読むことが出来ない)

 

 

 

 ☆月★日

 

 モモンガからユグドラシル最終日に皆で集まらないかって連絡がきた。しばらくログインしてなかったが、最後にモモンガに会いに行くのもいいかな。

 

 

 

 

 日記はここで途切れている。

 

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