そして、話を打ち切り、口を閉じたユリを前にして何でもないように男は一つ愚痴を溢した。
「それよりも、モモンガから友人の子どもに何してんだって罵倒されそうな方が俺は気になるんだがな……」
それは男が最も気にしていたこと。正直なところ、ユリの好意を最初に受け止められなかったのは、モモンガへの遠慮もあったのだ。
「ぇ……」
「ん? そりゃあ、そうだろう。モモンガからしたら俺は友人の子どもに手を出した、とんでもクソ野郎だからな」
そう自嘲し苦笑いする男にユリはショックを受ける。
その衝撃的な理由にユリは顔色こそ変わらないが、内心ではやはり願った事は間違いだったのかと、青ざめていた。
普段、アルベドとシャルティアの誘惑で有耶無耶になっている部分はあるが、モモンガにとってはやはり下僕達は子どもも同じなのだ。現に、そのモモンガは未だに二人の誘惑に乗ることもなく、褥を共にしていないことをユリは知っている。
つまり、モモンガは自らを含めた至高の御方々が下僕と性的に交わることに慎重な考えであり、ユリはその意志に反してしまっていることになる。
加えて、慎重になる理由のわからないユリでは計り知る事の出来ない深謀遠慮があったと考えるしかない。元々、守護者統括からの密命があったとはいえ、そこにユリは余計な一石を投じてしまったことになる。
しかも、それが原因でモモンガと御方が仲違いしてしまうようなことになってしまえば……
気がつけば、ユリはベッドの上で男に平伏していた。
「あ、あ、あぁ……そんな……ボクは何ということを……誠に申し訳ありません……アインズ様には全てボクの意思で行ったこととご説明し、御方様には無理を押してご慈悲をいただいたと釈明を──」
「おいおい、何してんだ! あーまぁ、モモンガと、会えたらやまいこさんには俺から謝っておくから。ユリは何も心配するな、俺に後悔はないよ」
男としては、『アンタ、なにやってんだよ!?』くらいは言われるだろうな程度の予測であり、ユリの失意とは重大度もベクトルも異なる。
何しろ、モモンガにはアルベドの設定を改変するという前科があるのだから。強く言える理由はないのだ。しかし、ユリはそんなこと知る由もない。
心なしか、白い肌を更に青白くさせたユリに男は苦笑し、再び落ち着かせるように抱き締め──項垂れるユリは不安と申し訳なさを感じながらも男を抱き締め返す。
「勇気を出して告白してくれたんだ。受け入れるからには全部背負うのが男の役目ってものだ」
「御方さま……」
ユリの男を見る瞳に熱が籠もり、潤む。
「まぁ、モモンガもちゃんと話して、覚悟があるとわかれば何も言わないはず」
「か、覚悟、ですか……?」
ユリの胸が期待に膨らみ、男を見やる。
「…………まぁ、年貢の収め時とまでは言いたくないが、つまらない生活はさせないようにするってことさ」
ユリの視線に圧力を感じ──男はそっと目を逸らした。
男は暗に苦労はかけるかもしれない、とでも言いたかったのかもしれない。ただ、そんな中でも退屈はさせないと。とはいえ、明確に責任をとるとは言わない辺りクズの発言だ。
ユリとしても期待した言葉ではなく、少しだけ残念に思ったが、その思いこそ自身には過分と戒める。今は素直にその言葉に嬉しく思うこととした。
そして──ボクも御方への忠誠、そして愛するということ、覚悟を新たにしなくてはと意気込む。
「だからなぁ…………代わりといってはなんだが、一つ頼みたいことがあるんだ」
「っ、はい……! 拝聴いたします」
男の真剣な表情に、ユリは気を引き締める。彼女を受け入れてくれた御方の期待に応えるために、その頼み事を一語一句聞き逃さないように集中した。
例えその願いが、非常に困難なものだとしても、ボクは絶対に達成しなければならないのだと意気を込めて。
「──眼鏡かけたままヤラせてくれ。そっちの方が後悔しそうだ」
「は?」
恋慕っている相手からまさかそんな予想外のアホな言葉が飛び出すとは夢にも思わず、彼女自身も驚くほど呆けた声が出た。
男はベッド脇にあるナイトテーブルに置かれていた眼鏡に手を伸ばし、素早くユリに掛けた。そのままベッドに押し倒して細い足首を掴み、抵抗させぬままに股を開かせる。
股座に腰を寄せ、黒のショーツを指でズラすと、ユリのドロドロに解けた女陰に剛直を宛がい、ゆっくりと挿し入れていった。
「あっ、えっ……えぇっ?」
急な展開に驚き、ユリは慌てているが、銀縁の眼鏡を掛けた彼女は、普段の真面目な印象に戻り、どこかお固い雰囲気に近づいている。
そんな彼女をこれから犯すのだ。男はその固い雰囲気をドロドロに蕩かし、自分だけに女としての顔を見せて欲しいと願っている。
男がユリにのしかかり、大きな双丘が押し潰された。剛直がズルズルとゆっくり進み、途中で微かな抵抗があったが、しかし止まることなく力強く侵入してゆく。
「あ、あぁっ?」
挿入された剛直がユリの膣を抉り、侵入者のいなかった膣の内部をカリ首で掻き分けながら拡げてゆく。そして、奥まで力強く貫かれたことで剛直は子宮を圧迫し──
「ん、んんんんんん〜〜〜っ」
「うぉっ、なかなか締まるなっ、ユリっ」
ギュウギュウと締め上げ、腕を男の背中に回してきつくしがみつく。ユリの膣は冷たいというほどでもないが、熱もまた感じず、筋力の強いゾンビやデュラハンの種族を取っているだけあって、内で、外でとギリギリと男を締め上げる。レベルで勝っている男でなければ締め殺されていただろう。
しかし、男にとっては圧迫感が多少強めに感じる程度。強く締め付けられるのも、抱きしめられるのも、よりユリの体の柔らかさが感じられて心地良いだけだ。
一方、ユリはのし掛かかられ、男の体重を全身で感じた。感じるそれは幸福感を齎す、心地良い重みだった。
更には、否応なく男の熱を全身で感じられてしまう。ユリは逃げ場のない檻に閉じ込められたような気分になり、陶酔仕掛ける。
目の前にある男の首筋には先程付けた赤い点。鼻孔を擽る男の匂いにどうしようもなく頭がクラクラし、犯されているとの実感が背中にゾクゾクと快感を走らせる。
そして──ある程度ユリが落ち着き、迎えた異物に過剰に反応していた膣は一旦締付けを緩めると、痙攣するよう蠢いてヒクヒクと異物の存在を確かめる。
「どうだ、痛くないか?」
「い、痛く、ありませんが……」
深くまで貫かれ、体の中心から太い杭を打たれているような気分で、強い圧迫感がある。その杭は熱く、ユリの中を容赦なく灼いている。胎に感じる熱は特別な快感を彼女に与える。
熱を感じ、自身の中に至高の御方を迎えているという実感が生まれると、頬が緩んでしまうほどに嬉しくてたまらなくなった。伝わる熱が体を中から温めている気がした。それはまるで体の中に血を巡らせる心臓が新たに出来たかのようだ。
アンデッドであるはずの彼女の体が、生者であるかのように体温を持っているように錯覚してしまうほどに。
「おなかが、あたたかくて……きもちいい、です、よ……」
それは温泉に入った時のような心地良さにも似ているかもしれない。冷めた体にジワリと温かさが身に沁みる。そこにあるだけで、色んなものが体から抜け落ちていくようだった。
ユリはアンデッドであるために肉体的に疲労を感じない。しかし、精神は疲弊するものだ。真面目で責任感が強く、プレイアデスでも副リーダーを務める彼女のことだ。普段からの精神的疲労は他のプレアデスのメンバーよりも大きい。
特に、ここ最近の彼女の精神への負荷は如何ばかりのものだったかは想像に難くない。
「そうか……気持ちいいか」
「は、はいぃ……」
そんなやり取りに羞恥を覚える。今はまだ性的な快感よりも、精神的なホッとするような安心感や安堵感が大きかった。
いつまでもそこにいて、このままでいて欲しい。
このまま、一つになったまま御方が眠るのを側で見守れたら、それはどんな褒美にも勝る幸福なのだろう、と思う。
「っ、ううぅぅ……」
それと同時に胸が苦しくなるような愛情が溢れ、ユリは男の背に回した手で再びしっかり抱き締めた。
「ユリ?」
密着し、触れ合う肌の感触が心地よい。男がユリに体重を預けたまま、すぐ側にあるユリの顔を伺う。
ユリも男の方を向いており、顔を向き合わせるとユリの方から口づけた。口内で互いの舌を突つきあい、絡ませあい、二人の情欲の深さを表現する。
暫く互いに確かめ合うと、合わさりあった唇を離し、透明な橋が一本かかる──ユリの表情は眉尻が下がり、普段の涼やかな切れ長の目は熱を孕んだように蕩けている。今なら何でも受け入れてくれそうな、包容力を感じさせる視線で男を見つめていた。
「御方様……ボクなら大丈夫ですから……どうか御方様のお好きになさってください……」
そう耳元に向けて、静かに囁き──男は我慢を捨てたのだ。
□
部屋には、ベッドが軋む音と女の押し殺したような艷やかな声が響いている。
「ぁ、んっ〜! ……んっ! ……んっ!」
男は茂みに隠れた豆を指の腹で、押し潰したり、クリクリと愛撫しながら、それに合わせるようにグリグリと腰を強く押し付け円を描き、ユリの様子を伺っていたのだ。
初めてだったはずの彼女は早くも快感を覚えているらしい。男は刺激に慣れさせるためにアレコレと違う場所を責めてみたりした。
常人よりも太い剛直がユリの膣内を引っ掻きながら押し進む。抽送は彼女のことを慮ってかゆっくりではあるが、ユリの性感を煽るように、じっくりと奥深くまで突き挿す。
その度に、男が腰を抱え、剛直をユリの奥をグッ、グッと突き上げ、ユリの内蔵へと振動を伝える。
「ぁ、っ! んっ! ……はぁ……はぁ……」
艶めかしい声がユリの口から漏れ始める。
突き挿した剛直がゆっくりと引き抜かれ、拡げていた隙間が戻り、ユリは快感と共に喪失感を覚えてゆく。そして、再び剛直が挿入されると、快感とともに喪失感は埋め戻される──
そうした、ゆっくりとしたピストン運動を、ユリの膣に男根が馴染むまで繰り返した。
「あ、あぁぁ……ん……」
どれほど、優しく焦れったい動きが続いたか──ユリに経験がなかったということもあり、男は流石に自重していたようだが、ユリの様子を見るに一端に女の喜びを享受しているように見える。
「余裕そうだな? 少しずつ強くしていくからな」
今度は少し早めのストロークで膣の壁面、お腹側にあるスポットを強く擦るように、深く抽送をする。
「御方さま、お待ち、くだ……あっ……はっ……」
初め変化は大きくなかったが、ユリの表情はだんだんと眉を寄せた苦悩に変わってゆく。
ユリ自身もズルズルと、陰茎が出し入れされることで生まれる快感に集中しているのだろう。開かせた脚には力が入り、指先がのばされていた。
そして、その余裕を消すべく、また一段ペースを上げる──
「あ、ぁっ……はげしっ……ぁ、やっ……やぁっ……お許しをっ、御方さまっ」
「少し、ゆっくりっ……」
ズムズムとユリの体をベッドに沈める。どんどんと激しくなってゆくピストン。ユリは体を甘く蝕む絶え間ない刺激と、男の執拗な責めに耐えかねて少しだけ体を休める許しを乞う。
好きにして欲しいと言ったのは彼女なのに、いざ男の責めが彼女の許容量を突破すると、あっさりと降参して音を上げた。それでも男が許可を出さずに腰を振るのをやめなければ、まるで彼女は無理矢理犯されているかのように喘いだ。
「ぁ、いやぁっ……もうだ、めぇっ……おかしく……おかしくなってしまいますぅっ!」
パンッ、パンッと湿っぽい破裂音が響く。
ユリがイヤイヤと首を振り、豊満なバストが地揺れのように揺さぶられる。
しかし、彼女は眉をハの字に、口でこそイヤと言っていたが、その声音に拒絶感などのネガティブな面は無く、むしろ口元は段々と強くなる快楽のせいで、だらしなく開かれていた。
「嫌だったのか?」
「もっ、申し訳、ありませっ、嫌などでは、けっしてっ」
その間も男の抽送は止まらない。そのままにユリに尋ねると、返ってきたのは苦悩を滲ませる、余裕のない声だった。
「なら何故、嫌と言う?」
「あっ、うぅ……もうしわけっ……もうしわけ、ありませっ」
もはや謝るしかない程に思考は鈍り、同じ言葉をただ繰り返す。ユリ自身にも何故、イヤという言葉が出て来たのかわからないのだ。
悶えるような快感が断続的に襲いかかり、奥深くまで膣を抉りながら埋める男根が抜き挿しされる度に得も言われぬ興奮と喜び、思考を焼く快感が溢れてくる。
「お前、マゾだったのか」
「っ!」
その言葉に返事をするように、キュウと膣が締まった。
「なんだ……そうか。なら遠慮しなくていいんだよな」
「そっ、そんなこと、ありませっ……」
男の言い掛かりにも近い性癖の断定。ユリもユリで内心でドキリとしたが、遠慮しないとの言葉に慌てて否定しようとした。
人は誰しもがサディズム、マゾヒズムの傾向を持つという。ただその天秤がどちらに傾くのかは、その人が持つ攻撃性が外に向くか、内に向くかの違いなのだという。
それが彼女には当てはまるのであれば、ユリの攻撃性はどちらかと言えば内に向いており、マゾに近いとも言えるのかもしれない。
そして──彼女は行為が嫌なのではないのだ。しかし、イヤと言っているのに半ば無理矢理に求められているというシチュエーションに強く興奮してしまう。男から求められたい、愛されたいという承認欲求を根源とする感情が存在する。
それを指摘され、ユリも自身がかつてないほどに興奮していたのを自覚しており、突かれる度に頭の中に靄がかかり、次第に体に力が入らなくなってゆくのを感じていた。
「おかたさまっ、ボクを……あいして……あいしてっ……」
尚も腰の打ち付けは止まらない。
だんだんと頭の中が真っ白になり何も考えられなくなってゆくと共に、クポリ、とユリの膣の奥の空間が膨らんでゆく。子宮口は通常時よりも傾きを変え、挿入される男根に対して真正面に位置するようになる。所謂、子宮が降りてくるという状態だ。
男はそんな膣の奥が緩くなったことで、彼女の限界が近いことを悟る。
悶えるユリを眼下に、男は未だ黒のランジェリーで隠されていたユリの胸をはだけさせ、その豊満な乳の頭頂部にある乳首をクリクリと弄び、反対の山も舌で舐った。
「あぁっ! やぁっ、むねっ、だめぇっ!」
「ユリ、お前を愛しく思っているぞ。俺たちは始まったばかり。少しずつ、その気持ちを育てていこうか」
その言葉を聞いたユリは……
快感が吹き荒れる嵐の只中──普段では決して見られない、少女のような微笑みを浮かべた。
快楽に幸福感が混じる。彼女は焦燥に似た未知の感覚に落ち着きがなくなり、手の位置を忙しなく変えていたが、暫くして落ち着ける場所を見つけたのか、背に腕を回してしっかりと男にしがみついて耐え忍んだ。
「うれしい、です……おかたさまっ、おかたさまっ」
そして──そこでユリは初めての中イキを経験した。糸をたぐり、頂上への見えない出口を探すように、足首から先を伸ばして感覚に集中し始める。
「いいか、気持ちよくなる時はイクって言うんだぞ」
「は、はぃ……ぁ……イクっ、イクっ、イキますっ」
「ぁ、ぃやぁ……なに、これ……すごいの……すごいのきちゃいますううぅぅぅ」
出口が見え始め、しかし、ユリは未知の感覚を恐れるように目を固く瞑っている。だというのに、いざ出口を出た瞬間、瞼の裏では視界がスパークし、頭の中までもが真っ白になった。
「あっ? あ、あ、あああぁぁぁっ!」
体がビクンビクンと痙攣を起こし、身体全体にゾクゾクと震えが走る。膣がヒクヒクと蠕動するのを自身でも感じながら、奥へ奥へと愛しい男を引き込んだ。
「ぁっ……ぁ、っ……ぁ……」
絶頂──体が緊張し、全身全霊で快楽の波を受け止めるためか、ギュッと体の筋肉が締まる。骨盤周りの筋肉が緊張を起こして膣口がキュ〜っと狭まり、無意識に息を止めて男根をきつく抱き締めてユリの好意を体で伝えた。
膣内で初めて迎えた絶頂。そして、訪れる脱力感。ユリは止めていた呼吸を荒々しく繰り返した。一度絶頂を迎えた体は力が全て抜けたようで重い。頭の中の靄は晴れていたが、しかし、今度は体がフワフワするような相反する不思議な感覚がしていた。
子宮が男の精を求めて、ヒクヒクと膣壁が蠕動し始めるのを感じていたものの、結局精液が吐き出されることはなく、ユリはどこか物足りない満足感を得る。
「も……もうひわけ、ありましぇっ……また、ボクばかり……」
物足りない満足感。胎には何かを渇望するような飢餓感──その理由を彼女は知っている。男は未だ絶頂を迎えてはいなかったのだから。吐き出されているはずの精液はなく、胎が満たされることがなかったせいだと。
精を注がれて初めて、安心できるような気がしていた。彼女は、それを愛情の証とでも捉えていたのかもしれない。
胎が熱を孕んでいて苦しい。ユリはどこか夢心地のままで、僅かな疲労感を含む、飢餓感を煽る絶頂の余韻に翻弄されていた。
しかし、ユリはそのドロリとした感情に意思を持って蓋をした。主の前で自身の感情を優先するなどメイド失格だから。
目の前の主はまだ一度も絶頂を迎えていない──主に仕えるメイドとしても、想いを叶えた女としても、意地というものがある。このまま休む訳にはいかなかった。
だからユリは男に満足して貰うために、奉仕しようと動く。そんな様子を男は眺め──
「ユリ。お前は可愛いなぁ。なら今度は動いて貰おうか」
「ひゃっ」
男はそう言ってユリの体を腕で支えるようにして身を引いて起こす。ちょうど男の膝の上にユリが跨り、男女が向き合う対面座位の形になる。男性よりも女性が優位に動ける体位。
「〜〜っ」
体勢を変えた振動による快感と、先程とは異なる感覚のせいで、ふるふると体が震えた。
先程の正常位よりも二人の距離がはっきりと近くなり、股座は当然の如く密着している。ユリの体重がかかる分、より深くまで挿入されることになり、奥に感じる強い圧迫感の心地良さにユリの声が漏れそうになる。
また、真下から天に向かって突き挿さっているためか、先程よりも男の剛直の太さや長さ、熱さ、時折男がピクピクと男根を跳ねさせる振動までユリには鮮明に感じられていた。
胎に集中してみれば、自身の体の中に天に向かって熱い芯が一本通っているような感覚がある。
その状態で男は好きに動いていいと告げた。
ユリが男に奉仕しやすいように、男が女性優位の体勢に変えたことに、彼女は気づいていた。
未だにこういった営みに疎いユリとしては、奉仕はしたいがどのようにして動けばよいのか勝手がわからず、その配慮が申し訳なく、嬉しくも思った。
だから、彼女は自身から動くということに羞恥を覚えなくもなかったが、その期待に応えるべく動き出す。
「ずっと、おしたいしております……おかたさま……」
「ごほうし、させていただきますね……」
ユリが眼鏡の奥にあるトロリと蕩けた瞳で男を見つめ、首に腕を回すとキスを強請る。瞳を閉じ、ディープキスに興じる姿は恋人同士にしか見えない。
キスを続けながら、ユリは腰を動かし始める。
最初は大きく上下に男根の全体を扱くように動く。途中からは男がユリの腰を支え、動きをサポート──だんだんと上下の幅は狭くなってゆき、やがて剛直の根本をコンパクトに扱くように変化してゆく。
「んむぅっ……んぁっ、んっ!」
舌を絡ませ合い。また、男が腰を前後に揺するように導けば、ユリもそれに合わせてゆく。ただ、その動きは男の恥骨にグニグニとユリの淫核が押し当てられるのか、ユリ自身も悩ましい息遣いになっていった。
「ふぁ、っ……ぁ、あっ……こぇ……めっ……だめ、ぇっ」
くぐもった声。そして、腰を前後するように揺する度に、ユリの深い場所──子宮口に亀頭が擦られる。次第に、胎の奥がだんだんと重く、怠くなってゆくような感覚があり、ユリはその感覚に無視出来ない欲望と焦りを覚えてしまう。
淫核から伝わる甘く痺れるような快楽と、子宮に籠もる熱と陶酔感がユリに行為を強制するのだ。このままでは良くないと思ってはいても、今のユリでは腰の揺さぶりを止めることも遅らせることも出来なかった。
「また……ら、めぇ……らめ、なのにぃ……」
腰をヘコヘコと前後にグラインドさせ──股を偉大な主に擦り付ける背徳感が、男の一部を自らの体に受け入れている一体感が、ユリをどうしようもなく高揚させる。自認している暴走を止めるべく自身の行動を冷静に客観視しようとして、しかし、男の性処理道具のようになっている自分の姿に更に興奮してしまった。
悪循環──このままでは再びユリだけが絶頂を迎えてしまい、奉仕とは名ばかりになってしまう。
「うっ……うぅ……こし……とまらな……」
彼女に当初僅かながらあった自ら動くのが恥ずかしいという意識も既に欲望に流され、ただ浅ましく絶頂に登り詰めることに熱中してしまっている。
男が手助けのためか腰を抑え、奉仕とは名ばかりになりかけているユリの動きを止めようとしたが──
しかし、行為を止められないユリはその静止を振り切るようにして、腰を動かしてしまう。
「とんだ淫乱だな」
嘲るような冷たい声音が耳に届く。しかし、その声に今のユリでは背がゾクゾクするのみ。
「っ、ごめんなさい……ごめんなさい……きらっ、きらいに、ならないで……くださぃ……」
「ボク、ボクっ……おかたさまにおあいしてから……ずっと、おかしい、んですっ……」
「でも、これも、ぜんぶっ、おかたさまのっ、せい、ですよねっ?」
正気であれば、ユリが男に何かしらの失敗の原因をなすり付けるなどありえない。今の彼女がそれだけ、正気ではなく理性がとんでいるということか。後で正気に戻り、思い出した時にユリは頭を抱えることになるのだろう。
瞳を潤ませ、すがりつくように首に腕を回し、ヘコヘコと腰を揺すった。
「奉仕も出来ないのを、人のせいにするなよ」
ユリの細い腰を掴み上げて落とし、男が下から突き上げた。
「あ゛っ……! かっ……ご、ご、めんなさいぃ」
熱が溜まり、発情状態になっていた胎に剛直に殴りつけられた衝撃が伝播した。そのせいか、ユリは体をふるふると震わせ、悶えるようにして動きを止めた。
その隙に男は自身が動きやすいように、ユリが膝をベッドに着けるように跨っていた体勢から、膝を立てさせ、スクワットの状態で座り込んだような体勢にかえさせた。
「だけどまぁ、初めてにしては上出来だよ」
「あぁっ、あっ、まっ、てっ、んっ、あっ、はげしっ」
「まだっ、まだっ、ほうしちゅうっ、なのにっ」
大きくM字に足が開いた状態で腰を浮かせ、男は後ろ手を付いて激しく腰を打ち付ける。
その衝撃でユリの背がビクビクと跳ねた。
潤沢な愛液を分泌するユリの女陰。小さく、しかし激しく破裂するような音が断続的に続き、ユリはもはや言葉も発せない程に意識を朦朧とさせており、彼女の意識には再び濃い靄がかかる。
「あ……ぉ……あ……おかた、さまぁ」
「すき……すき……すき、ぃ」
愛おしげで、甘えたな声音。互いに見つめ合い、答えを聞くことなく情熱的な口づけを始める。二人の熱量が上がり、精神の高揚が頂点に到達する。
「ん……またっ……きちゃっ……もっと、すごいのっ……」
「さみしいのは、いやぁっ……こんどはっ、いっしょっ、いっしょがいい、ですっ」
ユリが体を寄せて密着し、女の本能のまま幸せそうに、苦悩するように男の口を吸い、濡らす。
ユリの限界はすぐそこまで来ている。胎はグツグツと湯が煮えるように熱を孕んでおり、ダムが決壊する一歩手前のような、何かしらの刺激で彼女の緊張の糸は一瞬で切れる。
「ぁ……イクっ、イクっ、イキ、まずっ、おかたざまぁっ」
激しく腰がぶつかり合い、揺さぶられたユリが振り落とされまいと腕に力が入る。イヤイヤと首を振り、その表情は快楽に翻弄され、悩ましげ。長いウェーブのかかった黒髪を振り、乱れた。
ユリの体は絶頂を迎える寸前であり、徴が浮かぶ。アンデットのユリに血流量の変化がどうして起きたのかは不明だが、豊満な胸は一時的に膨らんで乳首が立ち、茂みに隠れた淫核はぷっくりと膨らむ。
「ぅ、あ……あ……」
体の内側から込み上げてくる何か──ゾクゾクと全身に電流が流れたように体がビクビクと痙攣した。ユリの中のダムが決壊し、意識を漂白するような強烈な快楽が彼女の意識を洗い流す。
しかし、例え意識がとんでいようと、女として喜びを受け止める本能は活きていたのだろう。
ユリは虚ろな瞳でパクパクと声にならない喘ぎ声をあげ、天を仰ぎ──ガクリと脱力したが、次の瞬間には胎に溜まった快楽が再び彼女を叩き起こした。
ユリの膣がキュッと収縮しては緩んでと、緊張と解放を繰り返した。ヒクヒクと膣が痙攣したように男の逞しい棒を抱き締める。
「ぐっ……受け止めろっ」
「あ、へ、あ、あ、ああぁぁぁっ──」
そして、男もとうとう限界を迎える。
最後に男が力強く腰を打ち、ユリの会陰へと押し付ける。男が絶頂に達しドクドクと精液が放出され、ユリの膣中を精液の熱が灼く。
ユリは胎の中に熱い塊があるのを感じた。確かな熱を。膣壁にへばりつき、最初は小さな、しかし確かな熱量がジワリとその範囲を増してゆく。ユリの胎に沁みるように広がってゆくのだ。
「ま、たっ……ィクぅっ……」
数度、覚醒と脱力を繰り返し──ある程度絶頂が治まると、ユリは長く断続的な性的緊張からの解放に、ヘロヘロと力なく男へともたれかかった。
ユリの体には未だ絶頂の残滓が残る。
荒い吐息。膣は男根を愛おしげに蠕き、骨盤周りの筋肉がピクピクと痙攣していたのをユリは余韻の中で感じていた。接合部からはゴプリ、と白い白濁液が流れ出ている。
そして彼女は──心に満ちる安心感と深い幸福感に身を委ねるのだった。
□
ベッドの中、男は寄り添う女に尋ねる。
「なぁ、ユリ。お前にとっての喜びとは何だ?」
心地よい夢心地の中、それに彼女は何の疑いもなく答えた。
「それはもちろん、至高の御方々にお仕えすることです」
男にとっては容易に予測できた答え。
「……それだけじゃ、つまらなくないか?」
「そのようなことありません。至高の御方々にお仕えするのは私達の存在意義ですから」
男は少しだけ残念そうに答えた。ただ盲目的に仕えるだけの存在にはなって欲しくないという想いが男にはあったから問うてみたのだ。
しかし、彼女らは主に仕えるために生み出された存在であることには間違いない。現実──彼女たちは至高の御方に仕えるということが自身の重要な基盤だと理解しており、実際に仕えることに喜びを感じている。それをわかっていたからこそ、彼女はその答えに疑いを持つことはない。
「前にも聞いたな、それ……なら、何でもいい。他にユリが見つけた、ユリだけの嬉しいこと、楽しいことを知りたい」
「私だけの……?」
「そうだ。俺たちの背を見てるだけじゃなくてな。ユリが心からやりたいと思っている事が知りたい」
「……」
主への恭順。その意識は根強く、男だって今更、彼女たちの存在意義に関わるようなことをアレコレ口出しして、苦しめるようなつもりはなかった。
だから、新たに尋ねた。
ユリには嬉しいと思うこと、楽しいと思うことはあるのか、と。
ただ仕える──それだけが生きる理由とするのは、やはり寂しすぎるのではと男は思うから。
ユリの思考には幾つかの、ぼんやりとしたヴィジョンが浮かぶ。しかし、それが果たしてナザリックの方針に合うのか、果たして口に出して良いものかもわからず、すぐに答えることができなかった。
一方、その沈黙が答えだと思ったのか、男は更に続ける。
「俺はお前たちが盾となる事を望まない。それはモモンガも同じだろうさ」
「そ、それではボクたちの存在意義が……」
「なぁ、ユリ。本来、親という存在の役目とは子を守る壁となり、高みに上がらせるための踏み台になるってのが通念だな。俺も親は決して子に守られる存在であってはならないと思う」
彼女たちの世界はまだ狭いのだ。
彼女たちは今までナザリックに行動の自由を縛られ、存在意義に縛られ、これまで踏み出すことがなかったから。
無論のこと、男だって無理矢理にナザリックから羽ばたけなどと言うつもりはない。
ただ、そういう存在だと自ら決めつけている彼女たちはもう少し世界を広げるべきだとも思う。
「っ、ボクは……」
新しい関係を築くと決めた男が、彼女達に何をしてやれるかと考えた。
それはきっと、彼女らが望むような主として在り続けるのではなく、彼女らに寄り添い、師として友として、または恋人として共に歩む存在としてあること。
彼女らが友人たちの残した子であると認めるならば、導くのもまた男らの役目なのだろう。
「仕えてくれることを否定するつもりはないが……それだけが自分の存在意義だ、なんて思い込むなよ」
そう言って、ユリの長い黒髪を指で梳き、ユリは物思いに耽る。
自身のやりたい事──ツアレはセバスのために命を使うと決め、クレマンティーヌには男がいつか王となる日のために下地を整え、その信仰を広めるという野望がある。
ならボクは……と。
『やまいこさんは教師だったんだ』
『やまいこ様が……』
『お前はその理想の姿をしてる』
ユリは男のその言葉を、ずっと覚えていた。
何故なら、かけられたその言葉にどうしようもなく惹かれ、彼女の胸に小さな火を宿したのをその時、確かに感じていたのだから。
「さて、風呂に入るかな」
「お背中、お流しいたします」
男が思い立ったように身を起こし、慌ててユリもその温もりを追いかけるように続いた。
ここは第九階層、ロイヤルスイートにある至高の41人の私室。バスルーム程度、当然の如くある。
結局、場所を変え二人は再び体を交える。その日、彼女の矯声は暫く止む気配はなかった。
□
仕事に入る前のミーティング。
彼女たちプレイアデスの面々は第十階層に続く階段前にて今日のスケジュールの確認と申し送り事項の共有を行うのが毎日のルーティンだ。
一通りの確認が済み、ミーティングを終え、これから各自作業場所へ移動しようかという時、ルプスレギナが疑問を発した。
「ユリ姉、なんかあったっすか?」
「……何よ。何もないけど?」
ルプスレギナがスンスンとユリの匂いを嗅ぐように鼻を鳴らす。ユリ自身は無臭に近く、その上から彼女が愛用する香水の香りが仄かに香った。匂いで彼女が感じた違和感の正体は掴めない。
「えー? おっかしいっすねー」
「ユリ姉に視線の揺れを確認」
ルプスレギナが訝しげに首を捻っていると、シズが援護射撃を行った。
「やっぱり何か変っすよ。昨日の夜も部屋に戻らなかったし……」
ルプスレギナはユリとナーベラルと同室だ。ナーベラルは任務柄、たまに戻らないことはあるが、ユリはナザリックに帰ってきてから他に任務があったとも聞いてはいなかった。
妹の援護を受け、やはり何か可笑しいとルプスレギナは目を細め、責めるようにユリを見やる。
「そうかしら、よくわからないわ。昨夜に戻らなかったのは御方様の元にいると勝手に思っていたのだけど?」
「御方様の元に? そういえば、何か余裕のようなものも感じるわね」
「お腹いっぱいなのぉ?」
そんな三人のやり取りを目にしたナーベラル、ソリュシャン、エントマも興味を持ったのか、ユリへと観察するような視線を向けた。
そんな時──
「あっ、ユリ! どうだった? ちゃんと受け入れて貰えた? ……って、その顔を見る限り上手くいったみたいだね! 良かったじゃん!」
「ユリさん……僕たちとても心配してたんですよ。御方様にユリさんの気持ちが受け入れて貰えるか……でも、その様子なら大丈夫だったみたいですね! 本当におめでとうございますっ!」
「今度、皆でお祝いしよ!」
「うん! それ、いいと思う!」
「ふ、ふたりともやめてっ……」
第十階層に用事があったのか、アウラとマーレが通りかかる。彼女たちはユリの姿を見つけると近くに駆け寄りユリの顔色を伺うと祝福の言葉をかけた。
その言葉にユリは悲鳴を上げる。御方に思いを告げる前に、勇気を貰おうと彼女たちに連絡したのは間違いだったと後悔した。
「なになに? 受け入れて貰ったって何がっすか?」
「あらあら……」
「もしかしてっ……ユリ姉様!?」
「ユリ姉、すごい」
「???」
興味津々な様子で彼女の妹たちがユリに視線を向け、ルプスレギナが代表して問い質す。ユリは妹たちの興味を含む視線の強さにたじろぐ。
「なっ、何でもないわっ! 各自、移動を開始しなさいっ!」
しかし、腹に力を込めて視線に耐え、さっさと仕事場に移動しろと促すと、不満げな妹たちと驚くダークエルフの姉弟を置き去りにする勢いで自身も誰よりも早足で移動を開始する。
「ひゃあっ」
第九階層の廊下を早足で駆ける。注意力散漫となっていたユリが何か大きな物体に衝突し、尻もちをついた。
「大丈夫か?」
「ぁえっ!? おっ、御方さまっ、も、も、申しわけ──っ?」
かけられた声は聞き覚えのあるもの。声を聞いただけで、心臓が飛び出しそうになり、ユリは男の顔を見やった。
先程まで肌を重ねるほど近くにいたのに、数時間ぶりに男の顔を見た途端に胸を締め付ける恋しさと、先程までしていた痴態を思い出して目も合わせていられない程の羞恥を感じ──
ユリは目もくれず逃げ出した。
「お、おい──?」
「昨日の夜、一体何があったっすか、ユリ姉!? ユリ姉ぇぇー!」
逃げ出すユリの背後から続々とプレイアデスの面々やダークエルフの姉弟までもが駆けつけ、小さくない騒ぎになった事は間違いなかった。
□
「きぃぃ〜〜!! 羨ましすぎるわ、ユリ! 私だって……私だって、こんなにアインズ様にアピールしてるのに……」
泣き崩れる、羨ましさと失意で顔面崩壊したアルベド。
「御方様とユリの……産まれてくるのは、至高の不死人とデュラハンのサラブレッドとも言える御子……? こ、これは素晴らしいでありんす。うへ……うへへ……将来はわたしが優しく×××なことや、×××なことも教えて差し上げて……」
よろしくない妄想を繰り広げているのはシャルティア。
「フム、アインズ様。御方サマトノ御子ノ後見ハ、ゼヒワタシニ」
「コキュートス。それは欲張りというものだよ。君はアインズ様の御子の後見にも手を挙げていただろう? その役目は私が果たそう」
コキュートスがすかさず御子の世話役に立候補したが、デミウルゴスはそれに待ったをかけた。
「いいえ。デミウルゴス様はカルマが極悪ですので教育係には相応しくありません。ここは私が責任を持って引き受けましょう」
「セバス、君では世界のあるがままを教授することなど不可能だろう。世界の根幹にあるのは、欲望と悪意さ。御子を無知のまま育てるつもりかい?」
ともすれば、セバスがデミウルゴスに反対の意を唱え、自身こそが世話役に相応しいと訴えた。当然、デミウルゴスはその言葉に反発する。
「ウヲー! ジイト、ジイトオヨビクダサイ!」
「いいえ。御方様の御子とあれば、世界の暗闇への対処など自ずと学ぶことでしょう。デミウルゴス様の言う、欲望と悪意をわざわざ吹き込むべきではありません。それは御子の生来の資質を歪めるものです」
「うぅ……アインズさま……」
「偉大なる御方様の御子がたかが世界の悪意で歪められると? だいたい君はだね、竜の血のせいか少々、多淫すぎる。いいや、少々ではすまなかったね! そんな君が教育係になれるわけがないだろう!」
「ウヘヘヘ……ハッ……も、もしかして、この関係はオネショタという伝説の……?」
「これは異なことを。私は女性への心遣いを怠らないだけ。それに、もし男子ならば父親の背中を見て育つもの。女性との接し方は私が教授せずとも御方様より受け継がれるでしょう」
「はっ! 君がいう資質は全て御方様より受け継がれると。ならば君は何も御子に教授出来ていないじゃないか! それでは本末転倒というものだ。私ならば──」
「いいえ、私ならば──」
場が混沌とし、玉座の間に集まった各階層守護者たちが己の意見をぶつけ合い、ある者は妄想に浸り、またある者は羨ましさと失意で泣き濡れている。
「なにこれ」
「お姉ちゃん、御方様の御子、楽しみだね!」
「そ、そうだね」
ダークエルフの姉弟はそんな騒ぎの外におり、姉のアウラは同僚たちに呆れていたものの、弟のマーレは意に返さずマイペースに姉へと笑顔を見せた。
友人の残した子どもも同然の存在が、最近ナザリックに帰還したばかりの友人に寵愛を受けたとの噂。
守護者たちはその噂から未来へと想いを馳せ、益々賑やかになってゆく──その様はかつてのナザリックを彷彿とさせる光景でもある。
そんな子どもたちの騒ぎを仕方ないといった風に眺める。盛り上がる場には混ざらず、ナザリック地下大墳墓の苦労症の主は眉間を押さえ、溜め息を吐く仕草をした。
後で、友人を問い詰めることを心に決めて──