改めて本編、どうぞ。
第11話 ターちゃん流空手道の巻
ユンケル帝国ではマスクマンとして出場したアナベベが優勝。1000万ドルを手にし大金持ちとなった。
ユンケル帝国よりターちゃん一行がアフリカに帰ってきて早二週間。
ジャングルは変わらず。自然のリズムを刻み続け動物はのんびりと暮らしている。
「キー……キキキ……キキィ……(ターちゃんにこうが……エテ美寝とられたんだけど……どーしたらいいかな……)」
「「えー……」」
……一部変化したものはさておき。
「せあ!!」
「うりゃ!!」
「発ッ!!」
「ぬぅ、まだまだ!!」
早朝から、ターちゃん家の庭では力強い発声がいくつも発せられている。
声の主達は以前はいなかった、がたいのいい男達。金髪の白人、黒人、アジア、ヨーロッパと様々な人間がいて、空手にマーシャルアーツ、ムエタイ、太極拳、柔道にサンボ、相撲と、行っている格闘技も様々。
十人十色な彼らは、ターちゃんの弟子達だ。
ユンケル帝国より帰国してから間もなく、男達がやってきてターちゃんに弟子入りを懇願してきた。ユンケル帝国のオープントーナメントはテレビで中継されて世界中に流れており、ターちゃんの戦いぶりに感動。この人こそが師匠だと思い、はるばるアフリカにまでやってきた。
とはいえ、最初ターちゃんは断ろうとした。ターちゃんは大人数に教える為に格闘技をやっているのではない。
けど断ろうとしたしたら、入門料やその後の授業料で稼げる、と踏んだヂェーンがOKをしてしまい、男達が来てから一時間も経たず『ターちゃん流空手道場』が設立。トイレットペーパーの会員証まで発行されて、弟子入りが決定してしまった。
……とまあ、ほぼターちゃんの意志は無視されてこの師弟関係は始まってしまったという訳なのだが。
それでも始めてみたら、ターちゃんに憧れアフリカまでやってきただけはあり、皆ターちゃんから見てもなかなかの腕前。組手を見てやったり、一緒に筋トレやランニング等の基礎練習に付き合ったりしてターちゃんも悪い気はせず、と思ったりもしていた。
「298! 299……! さん……びゃくっ……!!」
「よし、ちょっと休憩! 終わったら組手だよこうが」
「おう……っ!」
トレーニングを積む弟子達の中で、一際気合いを入れトレーニングに励んでいるのはこうがだ。トーナメントでターちゃんの戦う姿を見て触発され、帰ってきてから、ターちゃんのようになるのだとこれまで以上の気合に満ち溢れている。
早朝のランニングから始まり弟子に混ざり筋トレ、組手。
当然、今までより厳しいから何度も倒れるし挫けそうになるが、トーナメントでのターちゃんを思い出して奮い立たせる。七転び八起き。ターちゃんを目標にし、毎日毎日汗を流すこうが。
「皆さーん、朝食ができましたよーっ」
「お、趙君だ。皆、ご飯にしよーか」
「「「はいっ!!」」」
キリのいいところでトレーニングを切り上げ休憩に入るターちゃん達。
朝食の仕込みをしていて呼んだのは中国からきた、青い胴着につばなし人民帽を被った小柄な少年「趙」。
彼が作ってくれた野菜たっぷりのスープをお椀に注いでもらい、皆は受け取っていく。
「はいじゃあ皆。この世の食材全てに感謝を込めて」
「「「いただきまーす!」」」
ターちゃんが以前に知り合った青髪のグルメな大男より教わった挨拶をしてスープを食し始める。
「う~ん、うめぇ!」
「腹減ってるからしみるわー!」
「ありがとうございます。皆さん」
「悪いねー趙君。いっつも家事やってもらって」
「いえいえ、小さい頃からこういうのは慣れてますから」
「趙さんおかわりー!」
「はいはい」
こうがが空になったお椀を差し出す。それに続くように、弟子の皆も「俺も」「俺もだ」と次々におかわり要求。大好評なスープに趙は慌てず全部にスープをよそい、笑顔でふうと一息ついた。
そんな趙にはターちゃんがスープをよそってあげる。
「はい、お疲れ様」
「ありがとうございます。いただきます」
食事を始める趙。その趙に気になることがあって、ターちゃんは聞いてみる。
「そーいや趙君。趙君は弟子入りだけで来たようには見えないんだけど。何かあるのかい」
趙も弟子の一人としてトレーニングに参加している。そんな中で趙は時々、皆のことを、特にターちゃんを静かに見ていることがあって、ターちゃんは気になっていた。
「うーんそうですねー。例えて言うならば、桃太郎が鬼退治に行く為に、おともの三匹を探しているような感じですね」
「へー趙さん鬼ヶ島に行くんだ。じゃあ犬と猿とキジを探さないと」
「そりゃー大変だなー」
趙の例話に、弟子の一人、ツンツンした金髪白人ジョニーが乗っかる。こうがは真に受けているが。
そんなこうがの父はどう受け取ったかというと。
「じゃあ、恋人寝とられて自殺未遂をはかった猿はどーう?」
「「「だあああ~っ!?」」」
「例えゆうとるやんけ!!!!」
さて、朝食を済ませたら後片付け。休憩を挟んでからは午前のトレーニング。
持久力強化のランニング。ターちゃんを先頭に弟子達が列を作り、ジャングル中を駆け回る。
「ターちゃん空手! ファイトーそーれ!」
「「「ファイト! ファイト! ファイト!」」」
「もっと大きな声でー!!」
「「「押忍!!」」」
掛け声を発しながらランニング。走って走って走りまくる。
時間が経つにつれて、流石に皆体力を消耗して息が切れてくる。
「あ、ゴミとかあったら拾ってねー。美味しそうなフルーツがあったらむしって籠に入れてねー」
「お、押忍……!」
「なんて持久力だ、ターちゃん先生は……! もうかれこれ六時間なのに……!」
白人の柔道家リッキーを初め弟子の皆はついていくのがやっと。全くペースが落ちないターちゃんの姿に、黒人の空手家ブライアンは驚きながらもういていく。
「はっはっ、ほっほっ……」
「ぬおおぉぉぉおおおお~~~っ!!」
弟子の中では、一番小柄にも関わらず趙が余裕そうに走っている。こうがは根性で必死に食らいついているだけだが。
「あっ、キウイ」
「うぉ……エッチ本落ちてた」
「プロレス大百科みーっけ!」
ランニングの途中、休憩中。
ターちゃんがいきなり弟子とこうがを集まらせ、近くの茂みに共に移動する。
「見ろハンターだ。皆はここでじっとしていなさい」
弟子達を茂みに伏せさせ身を隠す。ハンターは二人。どちらも銃、オーストリア軍向けブルパップ式アサルトライフルAUGを装備している。
銃口の先にはシロサイ。角目的での密猟で数が減り、準絶滅危惧とされている動物。
「ジャングルの平和を乱す奴はゆるさん!!」
「ちょっ!? 先生行っちまったぞ!」
「ムチャだ! 相手は銃を持ってんのに!」
「大丈夫ですよ」
飛び出していったターちゃんにハンターが気付きアサルトライフルを撃ちまくってくる。
高速で迫る鉛弾の群れ。普通の人間ならば蜂の巣にされてしまう雨の中へ、ターちゃんは突っ込んでいく!
弾丸と弾丸、僅かな空間を縫いに縫って駆け抜けるターちゃん!
「嘘だろ弾丸の中走ってやがる!!」
「これが先生の力なのかよ!?」
驚きを隠せない弟子達。それを見てターちゃんの強さも納得できた。マシンガンの弾丸を避けることが出来るのだ、そう簡単にはターちゃん捉えることなど、できはしない。
「ターちゃんパァァァァァンチ!!」
「「ごっひゃあああ!!」」
(凄い。これがターちゃんの力か)
ハンターを豪快にぶっ飛ばすターちゃん。その姿を趙は一挙一足見逃さんと分析している。
凄まじい運動神経に強靭な筋肉。
これならば、自分の目的を果たせるかもしれない。
彼こそ、一人目の拳士、だと。
「あいてー弾かすっちゃったよー消毒消毒」
「た、ターちゃんめぇ……」
アフリカから離れていて勘が鈍ったせいか、お尻に弾がかすってしまったターちゃん。柔軟な体を折り曲げ傷口をペロペロ舐めていると、まだ意識のあるハンターの片割れが、倒れたまま懐より取り出したピストルで狙撃しようとする。
「あ、危ない!」
弟子達が叫ぶ。
だけども、弾丸は発射されなかった。
「な、なんじゃあこりゃあ!」
ハンター周辺に生えている草。それがまるで生きているかのように伸びて、ハンターの手足に絡み付いたのだ。自然の拘束具に動きを封じられるハンター。
そんな超常現象を起こしたのは、胴着姿の小柄な少年。
「大丈夫ですか。ターちゃん」
「し、趙君?」
にっこり笑う趙。
けれどもターちゃんは、趙に疑問を抱かずにいられなかった。
彼は、何者なのだと。
この趙の存在がターちゃんを、ファミリーを新たな物語へ進ませる。
ジャングルの王者ターちゃん~新ファミリー物語~
第二章の始まりです。
こうが
「次回予告!
中国からやってきた趙さん、目的は中国でのトーナメントに参加してほしいとのこと。
父さんは断るけど趙さんは諦めない。
そんな中で、あの人が帰ってくる!
次回、ジャングルの王者ターちゃん~新ファミリー物語~
第12話 西派拳法の巻
な、なんかキャラ変わってますよ貴方~!?」