ハンターを追っ払った時、趙に危機を救ってもらったターちゃん。家に帰ってくるなり、その趙はターちゃんとこうがとヂェーンへ座ったまま頭を下げてきた。
「ターちゃん。私は、力を貸していただきたく中国よりやって参りました」
「いやいきなり言われても……」
「どーいうこと趙さん?」
「説明いたします」
趙によると二ヶ月後、中国の五里山にて中国拳法の大会が行われるそうで、ターちゃんに趙の門派の拳士として出場してほしいのだという。
早い話がスカウトだ。
それを聞いたターちゃんはやっぱりか、と思う。ユンケル帝国のトーナメントで一躍有名になったターちゃん。弟子にしてくれと格闘家が現に来たのだ、スカウトが来ても何も不思議ではない。
「拳法かぁ……あっ、僕出来ますよ」
「えぇ! 本当ですかこうが君!? 北派の少林長拳ですか!? それとも南派の詠春拳!?」
「見ててよーはぁぁぁぁ~~~ほいっ!!」
「な、なんという拳なのですか!?」
パー。
「じゃん拳」
「だああぁぁ!?」
「そして足からは! ふんっ!!」
「アキレス拳、ってか」
「そゆことー」
「……真面目に聞いて下さいよぉ」
ごめんごめんと謝るターちゃん一家。話を戻します。
「私が所属する門派の拳法は中国拳法の中でも必殺拳と言われるものなのです」
その名を西派拳。趙の属する白華拳を中心に、32の門派を持つ武道集団。
先程趙の言葉に出てきた北派は『勁』、内外に存在する『気』の力を練り上げ使う。
南派は反対にトレーニングによって鍛えた筋肉、『力』を使う。
そして西派はその両方、『勁』と『力』を使い、二つのパワーを融合させた圧倒的力を秘めた中国拳法なのだと趙は語る。
その為に、西派は今から五百年前から北派・南派との他流試合を禁止し、十年に一度だけ、西派32門派によるトーナメントで技の向上を図るようになったのだという。
ここでヂェーンが質問。
「だったらターちゃんは思いっきし部外者じゃない。何でスカウトするわけ?」
「……トーナメントは各派の精鋭五名による団体戦なのです。ですが、我が白華拳の出場拳士三名が邪悪な手段によって出場不可能になってしまったのです……」
「それで私をスカウトに来たということか」
「お願いですターちゃん! 是非入門して下さい!」
入門届けをターちゃんへ差し出し、頭を下げて頼み込んでくる趙。
『入門届け
入門したからには腕が折れようが首がもげようが一切文句は言いません
印 氏名 』
(((なんだこの内容……)))
「スカウト料として一万元も用意しました。お納め下さい」
「一万元っていうと、ひーふーみー……ちょっと十万円と少しじゃない、それでターちゃんをスカウトしようっての?」
「申し訳ありません……私の門派は貧しくてお金はそれが精一杯です。後は……入門特典として、32門派スペシャルブックとポスターとテレカがありますが」
「ほんまに特典やんけ!!!!」
「……事情があるのは分かったけど、残念ながらお断りするよ。私は進んで戦いたいわけじゃあないのだ」
入門届けを返してターちゃんはノーの返事を返した。つい二週間も前にユンケル帝国トーナメントがあったばかりだし、弟子達をとってしまっているから放っておくわけにもいかない。何よりターちゃんの一番の仕事はジャングルの平和を守ることだ。
だから趙へすまない、と謝り断るターちゃん。
「そう……ですか」
「なんだ父さん、出ないのか……」
断られてしまった趙は、うつむいて落ち込んでしまう。てっきりそのまま帰るのかとターちゃん一家は思っていたが、それは違った。
「洗濯物干しておきますねー」
「お願いね趙君」
ターちゃんに断られてから一ヶ月。それだけ経っても、趙はターをの元にいた。断られたのに帰る様子をひとつも見せず、毎日家事をしたりと働いている。今日も今は洗濯物を洗っていて、終わったらターちゃんの修行に加わる予定でいる。
「正拳突き、千回!」
「「「押忍!!」」」
「せあっ!」
ターちゃんは弟子達プラスこうがとトレーニング中。その姿を洗濯物を干しながら、趙はじっと見て動きを分析している。
「続けて横蹴り、二千回!」
「「「押忍!!」」」
「うりゃー!」
「諦めるもんか。ターちゃん程の格闘家は世界中に二人といまい、一体どうしたらあんな強者が……」
「ラストー! ふにふに一万回!」
「「「ふにふにふにふにー!!」」」
「ふにふに~っ!」
(……本当に間違ってなかったかな?)
がたいのいい男達が関節ぐにゃぐにゃしてるある意味凄い光景はさておき。
「ひどいなぁ先生。いつの間にそんなにたくさん弟子をとったんですか」
男の声が聞こえてきた。ターちゃんを『先生』と呼んだ。
その呼び方を使うのは、一人しかいない。
「あーっ、ペドロ!」
「ペドロさんだー!」
「ただいま帰りました先生、こうが君」
「母さーん! ペドロさんが帰ってきたよーっ!」
そう、カシオに鼻を潰され入院していた一番弟子のペドロだ。手術によって潰れた鼻は元通り。それどころか、前より少しハンサムな顔立ちになっている。
「あらまペドロちゃん、お帰りー。ハンサムになったじゃなーい」
「ただいま帰りましたヂェーンさん。実は私もそう思ってるんですよ」
コンパクトで確認までするペドロ。本人もかなり気に入っているようである。
早速ターちゃんはペドロを、弟子達に紹介する。
「皆、一番弟子のペドロだ。仲良くしてあげてね」
「よろしく」
「「「よろしくお願いします、先輩!!」」」
「先輩か。いい響きですね」
「で、トーナメントを見て弟子入りしてきた弟子の皆だよ」
「先生の名は一気に有名になったでしょうからね。
あ、ただし!
弟子だからって先生の独り占めはだ・め・よ♪」
「……なんか変わってないかペドロ」
……まあそれはさておき。
「よしペドロ、久しぶりに稽古をつけてやる。かかって来なさい!!」
「押忍っ!!」
対峙するターちゃんとペドロ。
ターちゃん流空手、師匠と一番弟子の戦い。見逃がすわけにはいかないと弟子達とこうがが見守る中、戦いの火蓋は切って落とされる!
「はああぁっ!」
「ふん!」
「せああぁ! だぁっ!」
「ぬん、ふぅん!」
ペドロの右正拳突きをギリギリ首を捻ってかわすターちゃん。ペドロが繰り出す突きや蹴りあげ、回し蹴りといった攻撃の数々をターちゃんは時に体を反らしたり捻って回避、腕を交差しての防御でさばいていく。時にカウンターを繰り出し、ペドロは回避か防御して、再び攻撃ラッシュを仕掛ける。
二人が戦う姿を見ていた趙は、分析しながらペドロに目を向けていた。
(ペドロさんも凄い格闘家だ。……これならば、“奴等”と戦えるかもしれない)
趙は勁の力を使い、頭の中の声を遠くに飛ばす。勁の超能力が一つ、他心通。所謂テレパシーであり、中国にいる同門の師と会話する趙。
《――師範、ターちゃんに続き二人目の拳士となりうる人物を見つけました》
《そうか。なんとしても二人の協力を得てくれ》
《分かりました》
《だが気を付けろ。『黒龍拳』が我らの動きに気づいたようだ。
――そちらに刺客が送り込まれたかもしれん、気を付けろ》
《……はい》
「よーしこれまで。お疲れ、ペドロ」
師範との他心通を終える趙。丁度ターちゃんとペドロの稽古も終わって、弟子達が今の組手について色々聞いている。
だが、趙の表情は浮かない。
怒りによって、大きく歪んでいた。
「黒龍め……そうまでしても、西派の実権を握りたいか……!!」
ペドロが戻ってきてから数日。
時々ハンターが現れてターちゃんとペドロがぶっ飛ばし、怪我をした動物を治療したり、等はあったがそれ以外は特に変わったことはなく一日が過ぎていく。
ターちゃんがいない時、または指導が出来ない時はペドロが兄弟子として弟子達を指導。
「2997! 2998! 2999! 3000!! よーし休憩!」
「だはぁ~っ!」
「き、キツいぜ……!」
「あ、足が……動かない」
滝のように汗を流してスクワット3000回を終了。どのトレーニングも生半可なものなどないが、毎日のトレーニングは弟子やこうがを少しずつ、だが確実に成長させていた。余分な脂肪がとれ、筋肉がつき、引き締まってボディがその証。
トレーニングの後は畑仕事。その後は皆で、ヂェーンもターちゃんに教わりながら昼食を作ってから昼食をとる。
午後からは家事だ。
「じゃあ先生、果物を取りに行ってきます!」
「気を付けてねー」
ターちゃん達は洗濯。弟子達は果物を取りにジャングルへ向かう。
談笑しながら訪れたジャングルで早速、木になっている美味しそうなオレンジを発見。むしりとるジョニー。
「こいつぁ美味そうだなー。……ん?」
木の裏からいきなり、黒い胴着を着込んだ男が現れる。
なんだ、とジョニーが言うより早く。
男は、ぼんやりと光る手刀を振り上げる。
「――っっっ!!!?」
次の瞬間。
ジョニーの右腕が、宙を舞った。
こうが
「次回予告!
弟子の皆さんを襲われた!
そいつから明らかになる野望。
父さんはそれを聞いて、一つの決意を固める。
次回、ジャングルの王者ターちゃん~新ファミリー物語~
第13話 黒龍拳の陰謀の巻
気の力が使えない!? なら僕にも使える気を見せてやる!」