更新できる作品から、更新していくのでよろしくお願いします。
アナベベの自家用ジェットで中国へやってきたターちゃん一家。北京空港から汽車とバスを乗り継ぎ丸三日かけて、一同は五里山中の白華拳の村に到着する。
「そーいやあの黒龍のヤツ、ちゃんと反省してんのかしら」
「ヘレンちゃんとゴリさんに任せはしたけど……どうだろうね」
ヂェーンが思い出したのは、前回襲いかかってきた黒龍の拳士。あいつはゴリさんとターちゃんが以前ワニから助けて、友達になった日本人女性『ヘレン野口』に警察へ引き渡すよう伝えてある。
『はい! 任せてターちゃん!』
恐らく今頃は大人しくお縄についている筈……とりあえずはそう思うことにするターちゃん一家。
さて話を戻します。
中国・五里山中の山奥にある西派32門派の村、その一つである白華拳の村。
左右に切り立った崖が立ち、その中央に石造りの家がいくつも建ち並んで村を作っている。
「ふーん田舎じゃない、西派の村って」
「のどかな所ですね。拳法の郷とは思えないや」
「ここが我が白華拳の村です。西派は各派ごとに村を持ち、五里山中には32の村が点在しています。十年に一度、西派トーナメントの時のみ顔を会わせて各々の技を競うのです」
趙の村についての説明を聞きながら村を歩いていると、村人が趙とターちゃん一家に気づいて集まってくる。
「あ、趙師範!」
「趙師範が三拳士を連れて帰ってきたぞ!」
畑仕事をしていた村人は野菜が入った篭を背負っていたり、鍬を持っている。ペドロが言ったのどかな雰囲気に合うように表情は皆穏やかで、戦いの前の重苦しい雰囲気は感じられなかった。
村人達は手を合わせ挨拶をしてくる。
「ニーハオ」
「こんにちは」
「ニーハオ」
「どうも」
「孫悟空だー」
「はは、エテ吉は孫悟空だって」
「あらま。じゃあ私は三蔵法師かしら?」
「ん~猪八戒」
「だれがやねん!!!!」
「沙悟浄ー」
「俺は河童か……」
「三蔵法師は君だぁ」
「えっ、僕が?」
西遊記に例えると、孫悟空は分かりやすくエテ吉。
猪八戒は見た目通りでヂェーン。「誰がじゃーい!」
沙悟浄は背が高いアナベベ。
そして一番小柄だからか、こうがが三蔵法師らしい。
「私だけないのだ……」
一人だけ役がないターちゃんはならばと下半身に手を持っていき。
「ならば私はピッタリの役を!」
「「「?」」」
「にょいぼう」※ち○こ
「あほかい!!!!」
◇◇◇◇◇◇
「次はこちらへ。門弟達が練習している場所へ案内します」
並び立つ家を通り過ぎると、遠くから掛け声のようなものが声が聞こえてきて、歩いていくにつれ少しずつ大きくなっていく。
「「「発ッ! 発ッ! 破ァッ!!」」」
石で出来た鍛練場では、百人は越えるであろうたくさんの門弟が鍛練の真っ最中だ。鍛えられた男達が、徒手武術――鋭い掛け声と共に拳や蹴りを放っている。
「………………」
「わーすっごい。門弟いっぱいいるじゃないの」
「こんなにたくさんいるなら父さん達が来ることはないんじゃないの、趙さん?」
「いえ、彼らはまだ門弟です。たくさんいたとしても、トーナメントを勝ち進む実力はありません」
今の白華拳で、トーナメントで勝てる実力を持つのは師範の二人だけ。残り三人の枠に助っ人のターちゃん達が入る。
「………………」
だがここに、趙の説明を聞かず不機嫌な男が、一人。
「おいターちゃん……」
「どしたのアナベベ」
「話が違うんじゃねーのか!? 俺ぁ中国のかわいこちゃんと! 中華料理と老酒でさしつさされつでウハウハだからっていうから連れてきてやったんだぞぉ!? トーナメントなんて聞いてねー!!」
「「「(えぇ……)」」」
これでも妻ズベタがいるアナベベの叫び。
この言い分はというと、中国への足+トーナメントに参加してもらう為にターちゃんが言ったでまかせによるものだ。
本当にそんな理由で……と趙やペドロ達から白い目を浴びるも、信じきっていたアナベベはターちゃんに詰め寄る。
「……いやアナベベ、私は何も全部冗談は言ってないのだ」
「なにぃ!?」
「「「発っ!! 発っ!!」」」
ターちゃんが示した場所には女性の門弟が鍛練中だ。こちらは武器を使う器械武術で、両手には剣が握られている。
たくさんの中国のかわいこちゃん。
……うん、間違ってはいない
「ほれ、中国のかわいこちゃんとさしつさされつしてこい」
「ちょオイあーっ――「「「発っ!」」」(ぶすぶすぶすぶす)あれ~~~っ!!!?」
これがほんとの、刺しつ刺されつ。
「んな訳あるか~~っ!!」
「アナベベさん生きてますかー?」
閑話休題。
ここで、趙に話しかける新たな人物が現れる。
「よー趙じゃねーか。今帰ってきたのか」
髭を生やした長身の男。顔に大きく斜めの傷が入っていて、白華の名前通り白い胴着を着ている。同時に、ターちゃん達格闘家には分かる力強い雰囲気が男から放たれている。肉体は無駄なく鍛え上げられ、雰囲気と相まってこの男がただ者ではないことを現していた。
「「(この人……強い)」」
「すげぇ力……」
「紹介します。彼は梁師範、白華の最高師範です」
「よろしくな。……ふーむ、趙が連れてきたのがおめーらか。まーまーってとこか」
同じチームで戦うことになるターちゃん達を、梁はジーっと見てざっと実力を測る。
「じゃあ五拳士揃ったとこで、大導師様へ挨拶に行くぞ。ついてこい」
「ちょっと待ってよ。確か師範は二人いるんでしょ、もう一人は?」
「あれ、言ってませんでしたか?」
ヂェーンの疑問に答えたのは趙であり、自分で自分を指差している。
つまり……。
「私です」
「「「……えっ」」」
ターちゃん一家にとってすっごい新事実が判明したが、挨拶があるのでいつまでも驚いている訳にいかなくて、鍛練場の中を進んでいく。
一番奥に大きな塔型の建物がそびえ立ち一際目立つ。扉の前まで来ると、なんと触れることなく扉がすーっ……と開いて、趙と梁は中に入っていく。
「手も触れずに、扉が開いた!!」
「まさかこれって!」
「これは……本場中国の、『気』の力ね」
「あ、それ自動ドアなんです」
「「「だぁーーーっ!?」」」
すーっ……(ドア戻る)
「ギャー!! 挟まれたのだーーーっ!」
「……こいつら大丈夫かよ、趙」
「……恐らくは」
おちゃらけに師範二人が不安に思いながら、全員が中に入り建物の奥へ移動していく。
「そういえば、挨拶する大導師様変ってどんな人なんですか?」
「大導師様である蓮苞様は、白華拳開祖の血をひくただ一人の後継者。現在の75代目の大導師であられる方です。あ、大導師様は気の力で相手の心が読めるので、失礼のないようにお願いしますね」
「ひぇ……なんか怖そうな人……」
趙の忠告に、こうがをはじめとしてちょっと不安になる。
果たして、大導師とはどんな人物なのだろうか。
一番奥につくと、そこにはカーテンで遮られた部分があって、向こうには椅子に座っている人影が見える。
趙と梁は片膝をついて頭を下げて、ターちゃん達も慌てて真似する。全員が視線を低くしたのを確認して、趙が向こうの人物へ報告する。
「大導師様。アフリカより、三人の拳士を連れて参りました」
「ご苦労様、趙」
聞こえてきた声は女性のもの。静かにカーテンが開いて大導師がその姿を見せた。
心を読むという凄い力を持つから、てっきり目力の強い男か、もしくは二メートルを越える大男かと思いきや。
綺麗な黒髪を短く切り揃え、整った顔立ちの綺麗な女性。
彼女こそが、趙と梁がつかえる大導師の蓮苞である。
「皆様、遠路はるばるアフリカよりよくいらしてくれたした。75代目大導師、蓮苞と申します」
綺麗だがそれだけでなく、言葉遣いや雰囲気から気品が感じられる美しい女性。
その美貌は、ターちゃん達が思わず見惚れてしまう程。予想と全然違うことなど、忘れてしまう程だ。
(べっぴんさんだなー)
(うぐ……ちょっぴり負けてるなぁ)
(どひゃー……美人で力も凄いとか……)
《ふふ、面白い人達ね》
心が読める蓮苞はターちゃん達のオーバーな内心に思わず微笑む。
そんな蓮苞へ、綺麗に頭を下げる男が一人。
「アフリカより参りました。このアナベベ、貴女の為にこの身命を投げ打ちましょう」
「まあ、なんて頼もしい!」
……一見カッコいいのだが忘れてはいけない。
蓮苞は気で心が読める。
すなわち……。
「どうかご安心を、大導師様」
(ごっつーええ女やんけー仲良しになってさしつさされつ後ろから前から~……!)
「あ、アナベベ……」
「オイこいつ邪気が気に乗ってもれまくってるぞ」
「あ、あははは……」
ターちゃん一家と師範二人はドン引きで流石に蓮苞も苦笑いするしかなかった……。
「………………」
「大導師様。トーナメントの説明を」
「……あっ。は、はい」
蓮苞は梁をじっと見つめ何かを思っていたが、梁が言うと紙を取り出し、トーナメントの説明を始めた。
「それでは、明日の一回戦でのチーム構成を発表します。これは試合毎に変えられます」
先鋒はアナベベ。
次鋒はペドロ。
中堅は趙。
副将はターちゃん。
大将は梁。
まずはこのチーム、この順番で、明日からのトーナメントへ望む事となる。
このあとは梁と趙からトーナメントのルールと、勁の力と気の力について説明会を受け、用意された宿舎でターちゃん達は休んだ。
そして次の日。遂にトーナメントが始まった。
会場は四方を崖に囲まれ、観客として各門派の拳士が所狭しと座っている。歓声はなくしん……と静まり返っており、ユンケル帝国のトーナメントとは対照的だ。
中央には石で作られた四角形の闘技場。西派の実権を決める戦いが行われるそれを挟む形で対戦する門派が控え、早速第一試合で戦うターちゃん達の白華拳は闘技場側にいた。
「う~ん! やっぱ本場の肉まんは美味しいわねー!」
もっしゃもっしゃばりばりと肉まんやらお菓子を食らいまくっているヂェーン。中国でも相変わらずの彼女、観客席に座っているが何処にいるか一発で丸わかりである。
「まず一回戦の相手は紫陽拳。油断のならねえ相手だ、気を付けろ。アナベベさん、まずは相手をよく見て西派拳法の技に慣れてくれ。体で覚えるんだ」
「あいよ」
「次ペドロさんも、よく見ておいて下さい」
「押忍!」
「だが勁はまともに受けるんじゃねーぞ。下手すりゃ一発でダウンされかねんからな」
白華拳の師範二人が最初に戦うアナベベとペドロにアドバイスする。
助っ人であり、先鋒アナベベと副将ターちゃんも白華拳の胴着に着替えて準備完了。ペドロは元より空手の胴着なのでそのまま。
石の闘技場に「審判」と名札をつけ眼鏡をかけた矮躯の男性が上がり、戦う二つ門派へ指示を出す。
「これより、西派32門派トーナメントを行います。まずは一回戦、白華拳対紫陽拳。両チームの先鋒、闘技場へ出てください」
審判に従い、白華拳からペドロ。相手から名前通り紫の胴着を羽織った男が闘技場に上がる。
対峙する両者。
「アナベベさん、頑張って下さい!」
「ファイトー!」
「賞金でないけど頑張れよ!」
「余計なこと言うなターちゃん」
「ではーー始め!!」
ワッッッッ!!!!
審判の開始の合図と同時に、会場から歓声が上がる。
それと同じタイミングで、紫陽拳の先鋒が胴着を脱ぎ捨て半裸になり、
チャキン……。
「な、なんだこいつはぁ!?」
腹に巻いた帯に挟んだ、ヌンチャクのような武器を構えたのである!
「梁師範、あれ反則じゃないんですか!」
「な訳あるか。紫陽拳は器械武術の門派、素手で来るわけがねえ」
「そ、そんなっ!」
どうなる、中国での初陣!?
こうが
「次回予告!
相手の紫陽拳は武器を操る流派だった!
気を使う武器に、アナベベさんやペドロさんが翻弄される。
二人とも頑張って! 気をかわして戦うんです!!
次回、ジャングルの王者ターちゃん~新ファミリー物語~
第15話 失われたファイティング精神
あぁ、大変だ! アナベベさんが~!!」