※この作品はR-18です。

ジャングルの王者ターちゃん~新ファミリー物語~   作:剣聖龍

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第16話 趙の実力の巻

「紫陽拳、中堅! 前へ!」

 

「次は中堅か……。一体、どんな武器を使うんだろーか」

 

 

 紫陽拳次鋒をなんとか倒したペドロの次なる相手が審判に従い闘技場に上がる。

 

 髪を首裏で三つ編みにしている大男。紫の胴着をばさりと脱ぎ捨てる。

 

 その両手に、先鋒と次鋒のような武器はない。

 

 

「こいつ、武器を持っていない?」

 

「油断するなペドロ! こういう奴は何かあるぞ!!」

 

「お、押忍! 先生!」

 

「ほう。流石はターちゃん流空手の総帥だな、ターちゃん」

 

 

 もう次鋒戦のような偶然はないと覚悟していたペドロは、武器がないのに少し気が緩見かけたが、師であるターちゃんの言葉で気を引き締め直す。

 

 師範でもある梁は感心した。きちんと相手を観察しているのだと。

 

 

「見ろ、相手の体毛が逆立っている。気が充実しているんだ」

 

「あの毛をハリネズミみたいに飛ばしてくるぞ! 気を付けろ!!」

 

「もしくはその毛から分身が出来るかも!!」

 

「んな訳あるかい!!!!」

 

 

 ……おバカ親子変わらず。

 

 無視して、中堅戦が始まろうとしていた。

 

 

「始め!」

 

 

 開始宣言が響いた瞬間。

 

 紫陽拳中堅の『武器』が牙を剥いた。

 

 それは……両手の親指に挟まれた『鉄球』!

 

 

「まずい! 奴の武器は『指弾』だ、近づくな!」

 

「しだん?」

 

「うぉぉぉ! 一気に勝負を――」

 

「阿ッッッ!!」

 

「うぁっ!?」

 

 

 梁の警告空しく、気を溜めた指弾が発射される。

 

 目にも止まらぬ速さで打ち出された鉄球は、格闘を仕掛けようとしたペドロのまず眉間に当たり、

 

 

「ぐぁッ がっ、うわぁぁぁぁ!!」

 

 

 身体中に鉄球の雨あられが降り注ぐ。何もできず、鉄球に滅多打ちにされてしまうペドロ。

 

 

「ペドロさんが!」

 

「梁師範、指弾ってなんだ!?」

 

「中国拳法の奥義が一つ……それがあの烈火指弾だ」

 

 

 鍛え上げた強靭な指で鉄球を弾き出す。その威力は杉板五枚を軽く貫通する程の威力する強力な奥義だ。

 

 その指弾に流れ弾が出て、観客席に降り注ごうとしていた。

 

 

「「危ない!」」

 

 

 すかさず防ぎに行くターちゃん親子。

 

 流れ弾は四発。

 

 

「あっ!?」

 

 

 ターちゃんが手でガード。一発目。

 

 

「いっ!?」

 

 

 続いて足を出し止める。二発目。

 

 

「だぁ!?」

 

 

 頭を思い切り伸ばし額で防いだ。三発目。

 

 

「ラストいっぱーーホゥアッッッ!!!?」

 

 

 四発目は防ごうとしたこうがの○マキンにクリティカル。

 

 なんとか、ホントになんとか防ぎきった。

 

 

「おぉぉううあぁ……た、タマが、タマがァァァァァァ……」

 

「えらいえらい」

 

「ほっとけ! 観客は全員拳士だ、指弾くらい避けれる!」

 

「えっ」

 

「それよりもペドロが!」

 

「が、あ……まだ……」

 

 

 闘技場には、指弾の連射を浴び血だらけになったペドロの姿。

 

 本人はまだいけると踏ん張っているが、もう戦う力がないのは、誰の目にも明らかだった。

 

 

「がっ……」

 

「それまで! 勝者、紫陽拳中堅!」

 

「ペドロちゃんが……やられちゃった」

 

「ぺ、ペドロー!」

 

 

 倒れたペドロをターちゃんが助けに行く。

 

 これで一勝一敗一分。

 

 戦いを見て、険しい顔を浮かべる梁。

 

 

「……二人もやられた。趙、どうやらお前の目は曇っていたようだな」

 

 

 勝ちはしたものの、ファイティング精神を失っていたアナベベ。偶然の勝利と指弾に成す術もなくやられたペドロ。

 

 梁は負けてしまった二人へ少しの失望を含めて、連れてきた趙へ言った。

 

 確かに試合を見たままでは梁の言う通り。事実には言い返せない趙だが、それでも、二人の戦いが全く無駄ではないと返す。

 

 

「お言葉ですが梁師範。アナベベさんもペドロも決して弱くはありません。負けはしましたが……お二人とも、この戦いで学ぶものはあったと思います」

 

「……そうだと良いがな」

 

 

 闘技場から血塗れのペドロが運ばれてくる。

 

 

「せ、先生……申し訳ありません……不甲斐ない姿を、見せてしまい……」

 

「喋るなペドロ。よく頑張ったのだ」

 

「すみません……でも、攻略法は見つけました……」

 

「何……?」

 

(やっぱり)

 

 

 血塗れで息も絶え絶え、それでもペドロは力を振り絞り。

 

 ターちゃんへと、指弾の攻略法を……『渡した』。

 

 

「戦う時は……この、磁石を持っていって下さい!!」

 

「だぁぁぁぁ!?」

 

「……趙、お前の目は大丈夫なのか」

 

「……あー、そろそろいいかね。白華拳、中堅は前へ」

 

 

 ターちゃん一家はいつもの調子だがいつまでもバカやってる訳にはいかない。

 

 次は中堅。

 

 白華拳からは師範の一人、趙が出場する。

 

 

「ちっ、なんてこった。たかが一回戦で中堅まで出すことになろうとは……。白華始まって以来の失態だ」

 

 

 厳しい意見をこぼす梁。

 

 彼と同じ師範が相手とあり、紫陽拳中堅には冷や汗が流れる。

 

 

「始め!」

 

「――阿ッ!!」

 

 

 開始早々、指弾の雨あられ再び。

 

 マシンガンの如く無数の鉄球が、趙へと降り注ぐ。

 

 

「趙君!」

 

「心配すんなターちゃん。黙って見てろ」

 

【赤蛇帰身……天花乱墜……】

 

 

 練り上げた気を手に纏わせる趙。その手で指弾を迎え撃った。

 

 気に触れた途端、鉄球は力を失い、受け止められていく。

 

 

「なんだなんだ!?」

 

「気で、止めてる……!?」

 

 

 趙は気を手に纏わせクッションにし、次々と鉄球を無力化していく。

 

 撫でるようにして、飛んできた全ての鉄球を止めきってしまった。

 

 

「全部で、137発」

 

 

 一発も溢すことなく、鉄球は全部趙の手の中に。

 

 

「この鉄球を使って……」

 

「投げ返すのか!?」

 

 

 ジャラジャラジャラジャラ……カチャーン♪

 

 

「お願いしまーす」

 

「はーい、チョコレート二つね」

 

「交換してどうすんじゃい!!!!」

 

「お、俺の指弾が効かん!」

 

 

 中堅は渾身の奥義が防がれたことに動揺している。

 

 新しい鉄球を指に装填しなおし、再び指弾を放とうとしたが、

 

 

「ふっ!!」

 

「うわっ!?」

 

 

 趙は体から気を放出して一瞬で相手へ接近、驚いて倒れこんだ中堅へ拳を叩き込んだ。

 

 

「ま、参った……!」

 

「それまで!」

 

 

 拳は中堅ではなく、頭のすぐ横に決められていたが、中堅は敵わないとみて降参。趙の勝利となった。

 

 

「始め!」

 

「せああぁぁっ!」

 

 

 次の副将戦。

 

 紫陽拳副将の武器は次鋒と同じ柳葉刀で、幅が広く青竜刀のような形状。

 

 相手の気を込めた一閃を趙はジャンプで回避し、空中で身を捻って頭の後ろへ回り込み、

 

 

【印】

 

「ぐが……!」

 

「それまで!」

 

 

 気を頭に注入して、意識を奪い勝利。

 

 

「始め!」

 

「ぬん……せぇやぁ!!」

 

 

 最後の大将戦。

 

 流星錘と呼ばれる鎖に重りが付いた遠距離武器を紫陽拳大将は振り回し飛ばしてくる。

 

 

「ふんッ!」

 

「がっっっ!?」

 

 

 趙は重りを難なく避けて、回収の時を狙い接近。頭を闘技場へ叩きつけ勝負を決めた。

 

 

「それまで!」

 

「アナベベやペドロが苦戦した相手を、あんな簡単に……」

 

「趙君、めっちゃ強いじゃない……」

 

「たりめーだ。一門派を統率する師範なんだぞ、趙は」

 

 

 これまで仲間を回復する場面、トレーニングで体を動かすのは見ていたが、趙の実力を間近で見て、ターちゃん達は驚きを隠せない。

 

 三人抜きという大立回りをして、汗一つかいておらず息も乱れていないのだから。

 

 

「………………」

 

 

 けれども当の本人は勝ったというのに浮かない表情を浮かべている。

 

 

「どうしたんだろ趙さん、怪我したのかな?」

 

「違う。あれはセーブして戦ってたからその気疲れだろう。趙が本気を出していたら相手は死んでる」

 

「つまり、F1レーシングカーが30㎞で走らされたようなもん?」

 

「そんなとこだな」

 

「じゃあそれを応援してた私はレースクイーンってとこかしら!」 

 

「んな訳あるかよ!!!!」

 

 

 ……とにもかくにも。

 

 まず白華拳は最初の試合に勝ち、次へ駒を進めることとなった。

 

 

「勝者、三人残し白華拳!」

 

 

 審判の宣言に観客が沸き上がる。声援に応えて、ターちゃん達アフリカ組(ペドロとアナベベ除く)が手を上げたりしているが、梁は不満ありあり、といった表情でいる。

 

 

「はは、どうもどうもー」

 

「イェイいぇーい」

 

「……何を浮かれてんだか。たかだか一回戦に中堅まで出して、師範である趙の手の内まで晒したのによ」

 

「ちょっとアンタ!! いい加減にしなさいよ、勝手なことばかり言って! 誰の為に戦ってると思ってんのよ!!」

 

「そうですよ梁師範。ペドロさんも、アナベベさんも、命がけで戦ったんですよ」

 

 

 文句をグダグダと言う梁へ、家族と仲間を馬鹿にされたと感じたヂェーンが怒鳴り、趙も頷いて続く。

 

 アナベベは引き分けでペドロは一勝一敗。勝ち星は少ないが、二人が必死で戦ったからこそ、この一回戦は勝てたから。

 

 そしてそれは、梁にも分かっていることだった。

 

 

「そんなこと分かってる、分かってるさ。だけど、我らは白華拳が敗れるような事があってはならないんだ」

 

 

 裏で動く黒龍拳の陰謀。西派の実権が彼らに渡れば、西派32門派は暗殺集団へと成り下がってしまう。

 

 それを防ぐ為に負ける訳にはいかない。

 

 

「だからこそ、こんな無様な戦いを見せちゃからないんだよ!」

 

「「どうもー、どうもどうもー」」「おまんらはええ加減にせんかい!!!!」「「どぐっはぁ!?」」

 

「……黒龍拳は外道だ。今日戦った紫陽拳の様に甘くはねーぞ」

 

「――ほう。外道で悪かったな」

 

 

 梁の言葉に続くように、誰かの声が聞こえてきた。

 

 白華拳メンバーのものではない。『彼ら』は観客席の中から現れ、白華拳の前へとやってくる。

 

 白華拳と対となる黒い胴着を纏う五人の男達。禿げ頭の男二人、おかっぱの青年、黒髪で三つ編みの男、そして白髪混じりの男性。

 

 

「てめえら……黒龍拳!!」

 

 

 そう。

 

 刺客を差し向けてターちゃんの弟子を襲わせ、スカウトを妨害し、今回のトーナメントでは黒い企みを進めている件の流派……。

 

 黒龍拳が、姿を現したのである!




こうが
「次回予告!

僕らの前に現れた黒龍拳。奴等が戦う様ははとんでもなく酷いものだ。

こんな奴等に負ける訳にはいかない。

そして僕らの次の試合。今度は父さんが先鋒で出場する!

次回、ジャングルの王者ターちゃん~新ファミリー物語~

第17話 非道なる黒龍拳の巻

父さんの動物パワー、炸裂だ!」 
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