「破ッッ!」
「ぐっ! オオオッ!!」
「くっ、こいつ!?」
「だらぁぁぁ!!」
「ごはっ……!」
「それまで!」
青掛拳との三回戦では、白華拳先鋒として出場しているペドロが大立回りをしていた。
「すげぇぜ、あのペドロって奴!」
「気を使えないのに、青掛の中堅まで倒しちまったぞ!」
「ハァ……ハァ……ふんっ……!!」
気の攻撃を何度も食らいながらも、必死に食らいついて、三人抜き。
血まみれのボロボロになって尚、闘志は折れていない。
「ペドロ……もう体力的には限界の筈なのに」
「今のペドロさん、いやペドロを支えてるのは精神力だけだ」
ターちゃんとの修行で鍛えられた心身。どんな相手にも立ち向かうファイティング精神、それだけがペドロを戦わせている。
「それだけじゃないわ。ペドロちゃんは、アナベベが抜けた穴を補おうとしてるのよ」
「ペドロさん……」
アナベベがおりたのはあくまでアナベベの意思。けれども自分が責めたのもある、とペドロは後悔を力に変え、戦いの力としていた。
その強き姿は、白華拳の面々に、熱い感情を抱かせた。
「ペドロさん……ごめんなさいっ……!」
「なんて奴だペドロ……」
「見直したぜ、ペドロ」
「流石です……!」
それよって初めて生まれるチームの絆。
“今の”白華拳が、一つになった瞬間であった。
「「ペドロ!」」
「「ペドロさん!」」
「ペドロちゃん!」
「「「「「頑張れぇ~~!!」」」」」
「………………」
↑
戻ってきたけど出るに出れないアナベベ
「白華拳先鋒対青掛拳副将。試合ーー始め!!」
「せぇぇぇあっ!!」
「くっ!?」
迎えた四戦目。
首まである長髪の男のラッシュに押されるペドロ。
なんとか回り込もうとするも、これまでのダメージで動きが鈍い。
少しずつ追い込まれたいく。
「破ッッッ!!」
「ぐっ!」
強烈な右ストレート。首をひねり紙一重で回避する。
直後。
クン、と副将の右腕が曲がり、肘が顔面に迫ってきた!!
「ストレートから変化した肘打ちです!」
「あぶねぇよけろ!!」
「ぐうっっっ!!」
バキィッッッ!!!!
固いものが砕ける、凄まじい音が響き渡る。
交差したペドロと副将。
その結果は、肘“に”炸裂であった。
「が、あっ……!」
肘打ちに対し、ペドロも肘打ちを使っていた。ペドロの肘が、副将の肘をへし折ったのだ。
「すげぇぜ。拳士の肘を砕く程の肘とは……」
「肘はターちゃん流空手の必殺技だからね」
「きっと、血の滲むような修行の果てに会得したんでしょうね!」
ちなみにその修行方法がこれ。
ぐりぐりぐりぐりぐりぐり。
『ちょっとー、もっと力込めてよね。全然きかないわよー』
『お、押忍!!』
肘でひたすら、ヂェーンェーンの腰をマッサージ。
以上。
これで鍛えられるヂェーンとは凄い存在である。
「おいコラ何を言うか」
「母さん空見て何言ってるのさ」
「……あのー」
↑
帰ってきたけど気づいてもらえないアナベベ
それはそれとして。
「ダメだな、骨が砕けている。試合続行不可能につき、勝者、白華拳!」
「よし……!」
遂に副将まで倒した。
残るは大将一人。
「青掛拳大将、前へ!」
「やれやれ……こんな老いぼれが担ぎ出されるとは……」
最後の一人は白髪と白髭の老人。ゆっくり、ゆっくりと闘技場に上がってくる。
「青掛拳の胡文(こぶん)老師だ。まだ現役だったのか」
「ペドロちゃんちょろいわ! 相手はじいさまよ!!」
「いいえ、油断してはいけません。胡文老師は『酔拳』の達人なのです!」
「酔拳って、あの?」
酒を飲んで酔い、ふらふらとした動きから繰り出す拳法。酔えば酔うほど強くなる、というあれだ。
「んぐんぐんぐ……ヒック」
腰に提げていたひょうたん水筒で酒を飲み、酔っぱらう胡文。
頬が赤くなってふらつきだした。
「試合ーー始め!」
「ご老人といえど、容赦はしません!」
一言だけ言ってから、ペドロは先制攻撃を仕掛ける。
ふらふらしている胡文ふ、駆け出した勢いを乗せ、残る力で全力の一撃を放つ。
「でぇぇぇやぁ!!」
「……ほいっと」
それを、ふらつきによる不規則な動きから胡文は屈んで避け、
「ほいな」
ガッッッッ!!
「ぐぁっ……!?」
流れるように気を込めた裏拳が、ペドロの顔面右側に叩き込まれ、一撃でペドロをダウンさせた。
「それまで!」
「ぺ、ペドロー!!」
「未だ気の衰えなしか、老師胡文」
「めめめ、めっちゃ強いじゃんあのおじいちゃん!!」
「うぃーヒック」
闘技場でまた酒を飲んでいるが、胡文の強さに戦慄する白華拳。
倒れたペドロをターちゃんが肩を貸し、運んでくる。自分達の陣営で寝かせてやるが、ペドロの様子がおかしい。
「ぐぅ、うぅ……」
「呼吸が荒い。それに心臓の鼓動が弱くなっていくぞ!?」
勁の技、それも老師の技を食らったことで衰弱していくペドロ。
白華の皆や次鋒で出る予定の趙、あと気づいてもらえないアナベベもペドロに呼び掛けたり、どうにかできないかと考える。
「あっそうだわ! 趙ちゃんアフリカで弟子を治したやつがあるでしょ。あれやってよ!!」
「内養功を、ですか」
確かにあれなら治せる。
だが、それには全身の気を使う必要があり、使ってしまえば試合に回せる気がなくなってしまう。
「……分かりました。治療します」
趙は頷いて上がりかけていた闘技場から下りる。
それがどういう意味かを分かった上で。
「白華拳次鋒。闘技場より下りたとは即ち、試合放棄と見なすが?」
「構いません。友達の命には変えられませんから」
「ならば白華拳次鋒、棄権により勝者、青掛拳大将!!」
「まぁ~泣かせるのぉ。ええ話やないか~」
「ちなみに胡文老師匠は泣き上戸だ」
「おのれがいためつけたんやろが!!!!」
とりあえず。
試合をおりた趙は早速、ペドロの治療を開始。
【通明賢気……骨禎枸根……黄考建中……】
「内養功の術か。バカめ、あれを使えば明日の準決勝は戦えんだろうに」
「……ふぅっ」
気と試合を引き換えにペドロの体を治していく趙。彼が息を切らす頃には、ペドロの呼吸は安定し、心臓の鼓動も強くなっていた。
「すみません先生……最後まで、戦えませんでした」
「何言ってるんだ、十分よくやったよ。あとは私に任せなさい」
「白華拳中堅! 前へ!」
弟子が頑張りを見せたのだから、師匠も頑張らなければいけない。
闘技場に上がり、胡文へ構えるターちゃん。
「おいおい、まさかこのまま白華はあのじいさん一人に負けちまうんじゃねえだろうな」
李功の言葉はあながち嘘ではない。胡文の実力と気は相当手強いからだ。
「んぐんぐんぐ……」
闘技場では胡文が更に酒を飲んで酔いを強めている。
酔えば酔うほど強くなり酔拳。ペドロの時より強力になっているだろう。
「せ、先生……気をつけて下さい……!」
「大丈夫さ。いいかペドロ、こう戦えばいい」
「試合ーー始め!!」
開始と同時。
「よっ!」
ターちゃんの姿が、“消える”。
「んっ!?」
ポコン!!!!
「あひぇ」
「ごめんね。おじいちゃん」
ばたり、と後頭部にたんこぶを作った胡文が倒れる。その一メートル後ろに現れるターちゃん。
やったことは簡単。一瞬で距離をつめて殴っただけ。ただスピードが桁違いだった。
ほんの一瞬、一撃。あった。
「それまで!」
「な、なんだ今のは!」「まったく見えなかったぞ!」「何が起きた!?」
「う、嘘だろ……」
周りから見たら、いきなりターちゃんが消え気づいたら胡文が倒れたようにしか見えず、何があったんだと騒ぐ観客。
黒龍の李功ですら見えなかった。
この会場でターちゃんが見えたいたのは数人だけだった。
「三回戦第四試合、三人残し勝者、白華拳!!」
「やははー。どうもーどうもー」
「あれアナベベさん。なんでこんなとこにいるの?」
「……つまり、そのー、ね」
↑
やっとこさ気づいてもらえたアナベベ
◇◇◇◇◇◇
「だぁぁぁ! てぇりゃあ!!」
「ぐぉ!?」
次の日の準決勝。相手は橙色の胴着の橙ショウ拳。
白華拳の先鋒として、アナベベは出場していた。
「凄い。動きが一回戦とはまるで別人だ。勁の技をかわして攻撃を続けている……」
戻ってきた後、トーナメントをおりたことを土下座して謝りもう一度戦うと宣言。
この準決勝ではボロボロになりながらも四人を倒し、大将まで辿り着くという、梁が下を巻く程の戦いぶりを見せている。
「でもアナベベさん、急にトーナメントに戻るだなんて、一体何があったんだろう」
「何か心変わりするようなことがあった、とか?」
「何か、ねぇ……」
ターちゃん達が不思議がっているそのアナベベはというと、闘技場でまさに力の限り戦っている。
「どらぁ!!」
(ここで、こいつらを倒さなきゃーー)
「ちぃ、このぉ!!」
「ぬっぐぅ!?」
(西派32門派が、ターちゃん達に牙をむいて殺しに来る!!)
だから負けれない。何があっても、絶対に。
絶対にターちゃん達を、友達を傷つけさせる訳にはいかない。
決意を胸に、アナベベは血を流しながらも戦う!
「うぉぉおおりゃぁぁぁっ!!」
「あー分かったわ!! きっと、帰りの山道で旅の娘に会ってね」
「「「ふんふん」」」
「ぐはぁ!!」
「介抱している内にアナベベがスケベ心を起こして草むらに連れ込んだわけ」
「「「ほうほう」」」
「こんにゃろー! ぶへぇ!?」
「ところが娘は実はタヌキが化けてて、預金通帳と判子をくわえて逃げちゃって」
「「「成る程成る程」」」
「ぎひぇ~~っ!?」
「そんでやけくそになっちゃって、帰ってきたと」
「「「あるある」」」
……きちんと伝わっているかは微妙だが。
「こいつ、逃がすかぁ!」
「ちぃ、うぉりゃっ!!」
「ぬお!?」
試合の方はというと、二メートル越えの巨漢、橙ショウ拳大将が掴みかかろうとしてかわし、背後をとるアナベベ。
首に手足でしがみつき締め上げる。
「おっしゃあ絞めたどぉ!!」「ちょヂェーンさぐぉあ!?!?」
「ぬぉぉぉぉっ……!」
「がぁ、ぐっ、おぉぉ……!」
「そのまま絞め落としたれ~~!!」「く、くるし、おごぉ」
これまでの戦いで最早アナベベは満身創痍。ここで決着をつけなければ、戦う力はもうない。
残る力の限り、ぎりぎりと締め上げる。
「れ、煉……」
【煉精……化気……】
対し、相手の大将は絞められながらも、手を合わせ気を練り出す。
「不味い、気を叩き込むつもりです! 早く絞め落とさないとやられる!」
【煉精化気……煉気……】
「やらせるか~!」
ギュム!!!!
「は、はが……ふが……はひ……」
なんとアナベベは、気を貯めている相手の口を足で広げ、呪文を言わせないようにして勁を封じたのである!!
「「「け、勁を封じたぁ!?!?」」」
「あんなんで防げたの勁って!?」
「お、思い付かなかった……呪文を言わせないようにするなんて」
「アナベベ、そのままやったれ~!!」「た、たすけ……がくっ」
「ぐ、お、おっ……」
限界まで絞められ呼吸すら出来なくなった大将が、ドシン、と崩れ落ちる。
アナベベの方はふらつきながら立って、審判が判定を下した。
「それまで! 五人残し、勝者白華拳!!」
「おっしゃあ落ちたぁ!! やってくれたわねアナベベー! ……んっ?」
「(きゅう)」
「……Oh,no」
……大将だけでなく、約一名の意識も落ちたが。
「驚いたな……今回の白華は、一人で勝ち抜きやがった」
観客席には毎回偵察に来ている黒龍拳の四拳士。
彼らですら、アナベベの戦いぶりには驚かざるを得なかった。
「あの助っ人の奴等、実力を隠していたんだ。三回戦のペドロといい、今日のアナベベといい……」
「心配するな、俺だって準決勝まだ一人で勝ち抜いてんだ。あいつらにだって実力は負けてねえ筈さ」
「頼むぜ、龍炎に化剄。雑魚どもはお前らで片付けてくれよ」
四拳士の中で白華を最も警戒しているのは李功。
ペドロとアナベベもそうだが、最も警戒しているのは残る三人。まだ本気を出しきっていない『あの三人』。
「やーははは」
ーーターちゃん
「どうもー」
ーー趙
「……おぅふ」
ーーそして、梁
「あ、あのさ梁ちゃん蘇生しないんだけど、どーしよ」
「え、なんで気絶してんのぉ?」
「母さんなにしたのさ」
(三回戦の時……俺ですらターちゃんの動きが見えなかった)
「そーいえば人を起こすには“活”を入れてやるといいってテレビで言ってたな。やってみようか」
(……果たして、俺は奴に勝てるのか……)
「ーー活!!」
ドゲシッ!!!!(腹に)
「おぅっ」
「父さんそれ逆」
「案ずるな李功。ターちゃんは、俺が倒す」
「……兄さん」
こうして白華拳は決勝戦は駒を進め、残り一戦を控えるのみとなった。
「皆さん、お疲れ様でした。明日の決勝戦に備えて、今日はしっかり休んでくださいね」
試合から戻り白華の村。
戦ってくれた選手達に労いの言葉をくれる蓮苞。今日の夕食は彼女や村人達が明日の為に心を込めて作ってくれた中華料理だ。
「よーし皆、手を合わせて。この世の食材全てに感謝を込めて!」
「「「いただきまーす!!」」」
テーブルにずらりと並べられた料理を皿に盛り口に運んでいく各々。
「うん、うまい」
「とっても美味しいや、ほっぺたが落ちちゃいそうです」
三回戦と準決勝で活躍したアナベベにペドロ。
「ターちゃん頑張ってね」
「任しといて」
村の子供からエールを送られるターちゃん。
「こうがも頑張れよー」
「出ないけどねー」
「言ったなー、こんにゃろー!」
「「あはははー!」」
同じく子供達からからかい半分のエールをもらいじゃれて遊ぶこうが。
皆たくさんの試合を潜り抜けてきたことで、全くの無傷ではない。
それでも明るく振る舞い、村人達を不安にさせないようにしているのは明日の試合で西派の未来が大きく左右されるから。
皆、全力を持って決勝戦に望むべくしっかりと食事を取っていく。
「こうが、ちょっといいか」
「なんですか梁師範」
「こいつを持ってくれ」
そう言われ渡されたのはみかんに棒を差した謎の道具。これを二本渡される。
「これで肩を叩いてくれ」
「は、はぁ」
ポンポンポンポン……
「ふぅ~……効くぅ~」
「いっぺんも戦っとらんのに疲労感漂わせてどーすんじゃい!!!!」
◇◇◇◇◇◇
賑やかな食事が終わると、風呂で汗を流し、借りている宿舎にて直ぐ眠りにつくアフリカ組。
それだけ今までの戦いで消耗していたのだ。
すっかり熟睡しているアナベベ、ペドロ(とヂェーン)。
「ふぁ~……トイレ……」
「ぼくも……」
夜中。催したターちゃんとこうがは他の皆を起こさないように起きて用を足してくる。
その帰り道でのことだった。
「……? 父さん、あれ……」
「なに?」
ふとこうがが見て指差した先に二人の人間がいた。
それは並んで立つ梁と蓮苞の姿だった。しかも、かなり近い距離で。
「梁……お願い死なないでね」
「……あぁ」
そう言い蓮苞が梁の背中へ抱きつく。
相手が大導師にも関わらず拒もうとしない梁。
「えっ、まさか!」
「お二人は、そういう関係……!?」
驚くターちゃんとこうが。ここでお決まりというか、落ちていた枝を踏んでしまい、パキリ、と響き渡ってしまう。
「やべ……!?」
「っ、誰だ!!」
「わ、わんわん……」
「わおーん」
「なんだ、犬か」
「「ホッ……」」
咄嗟の動物モノマネでやり過ごしたターちゃん親子は胸を撫で下ろす。直ぐに近くの草むらに隠れて、様子を窺う。
「知らなかった……二人があんな関係だったなんて」
「うん……」
普段の様子からはそんな素振りは全く見られなかった二人。だけども、こんな夜中に人目を盗むように会っているのを見ると、何か事情がありそうだ。
「二人は結婚を誓った仲なのですよ。白華の拳士が毒殺されるまでは……」
「趙さん」
疑問は直ぐに答えられることとなった。偶然話を聞いてきた趙がターちゃんとこうがの元にやってきたのだ。
梁と蓮苞に聞かれぬよう少し離れた位置に移動すると、趙は語り出す。
「代々、白華の総帥である大導師は開祖の血を引くものによって継承されてきました。先代の74代目大導師様には、三人のお子様がいらっしゃいました」
一人が今の大導師である蓮苞。
長男の王精(おうせい)。
次男の秋瑾(しゅうきん)。
次の大導師は、男二人のどちらかになると言われていた。
が、王精と秋瑾は師範の一人もろとも毒殺されてしまった。
「それで残った蓮苞さんが大導師になった、と」
「でも、それだけで二人の結婚の障害にはならないんじゃないの?」
「いえ……それだけではないのです」
ターちゃんが尋ねると趙は首を振る。
「西派の掟により、西派を統率する門派の大導師は、他門派から配偶者を迎えて結婚しなければなりません」
理由は一門派に権力が集中するのを防ぐ為。五百年も前から続く西派の掟だ。
そして大導師の血筋である以上、掟を無視することは出来ない。
白華拳が西派32門派のナンバーワンである限り、二人は永遠に婚約出来ない運命にある。
「ちょ、ちょっと待って。それってつまり……!」
これまでの内容からあることに気づいたこうが。
それは、明日の試合にも関係していることだ。
「もし明日、白華が負けて、実権が黒龍に移ったら……二人は結婚出来るってこと!?」
「……その通り。皮肉な運命です」
◇◇◇◇◇◇
「俺は、戦わなければならない。黒龍が実権を握れば、暗殺者集団が世界に解き放たれてしまう。それは絶対に防がなきゃならねぇ」
「梁……」
西派拳法を暗殺の道具にしてはならない。師範として。拳士として。
鋼よりも固い梁の決意。
蓮苞もそれは理解している。白華の為に戦ってくれるのは当然嬉しい。
けど、戦えば戦う程、二人は結ばれない。
梁の決意の分だけ悲しくなってしまい、蓮苞は涙を流す。
「あぁっ……! 何故、私は大導師の家に生まれてきたのでしょう……。自らの運命を呪います……!」
「……蓮苞」
彼女を優しく抱き締める梁。
「お~~っ!! いったぁ~~っ!!」
↑
耳を像にしてやり取りを見てるヂェーン
「ふ、二人がそんな関係だったとは」
↑
同じくペドロ
「そんなぁ~大導師様ぁ~~!!」
↑
嫉妬で血涙を流すアナベベ
「熟睡してたのにこういうことには敏感やね皆」
「「何をやってんだ皆さん!?」」
興味津々に草むらから覗きこむ大人組……は無視して。
梁と蓮苞は抱き合った姿勢から互いに顔を近づけていく。
「いけ……!」
更に近づく。
「いけっ……!!」
そして距離が……完全になくなった。
「蓮苞……」「梁……」
「よっしゃぁぁぁ~~~っ!!!!」
満月の元、口づけをかわす梁と蓮苞。
どうあろうとも、どんなことになっても、二人の愛に変わりはない。
それを証明するかのように……二人はいつまでも抱きあっていた。
「うわぁ~~ん!! あんなの見せつけられてやってられるかぁ!! 俺もう帰る!!」
「アナベベさん戦うって決意したじゃあないですかー!!」
「「だぁぁぁ~~!!」」
「……こんなんで明日大丈夫かなぁ」
蓮苞に惚れていたアナベベがヤケになって帰ろうとするのを食い止めるペドロ。
ヂェーンは変わらず覗き見を続け、趙とターちゃんはずっこける。
こうがの心配通り、本当に大丈夫なのか心配である。
夜が明け、次の日。
例えどんなことがあろうと時間は止まらない。
会場には観客に加え、これまで参加した流派全てが、これから行われる試合を見るべく、緊張感を放ちながら沈黙している。
西派トーナメント、決勝戦。
優勝した流派には向こう十年の実権が与えられる大事なこの試合。
「これよりトーナメント決勝戦! 白華拳対黒龍拳の試合を開始します!」
勝ち抜いてきたのはターちゃん達助っ人を組んだ白華拳。そしてここまで一人で勝ち抜いてきた黒龍拳。
対を為す両雄がここに揃った。
西派の運命をかけた決勝戦が今……始まる!
こうが
「次回予告!
遂に迎えた黒龍との決勝戦!
奴等の陰謀を止めるため、絶対に勝たないと!
出場選手は……まさかのあの人!?
一度も出てないあの人の実力、遂に解放!!
次回、ジャングルの王者ターちゃん~新ファミリー物語~
第20話 決戦、黒龍拳!!前編の巻
な、なんてすごい技なんだーっ!!」