※この作品はR-18です。

ジャングルの王者ターちゃん~新ファミリー物語~   作:剣聖龍

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第21話 決戦、黒龍拳!!中編1の巻

「こっちだこっち」

 

「くそおっ!」

 

 

 後ろに回り込んだ梁へ蹴りを放つ龍炎だが、易々とかわされ、また後ろを取られる。

 

 試合が始まってから龍炎の攻撃は一度 も当たっていない、全てかわされていた。

 

 

「ちくしょう!! うぁぁぁぁ!!」

 

 

 焦りで熱くなり激しくなる龍炎の攻撃。それも梁は涼しくかわしていく。龍炎は無駄に体力を使っていくだけで、既に息が上がりはじめていた。

 

 龍炎とてトーナメント参加選手に選ばれる程の男。決して弱くない。

 

 ただ余りにも、梁の実力が上回っているのだ。

 

 

「くっ……! 龍炎拳!!」 

 

 

 このまま無様にやられるらいなら、せめて一撃。龍炎は気を貯めた両手を斜めに掲げ、大技を発動させる。

 

 

「来ます。奴の必殺拳、奥の手です」

 

「えっ。もう使っちゃうの」

 

 

 しかし、龍炎と梁の間に大きく実力差があるのは明らか。一か八かの勝負に出る龍炎。

 

 

【――虚室生白】

 

 

 大技の発動に梁がここで初めて手を組んで印を結ぶ。気を練って全身に纏わせ迎え撃つつもりだ。

 

 

「はぁぁぁぁっ!! 烈!!!!」

 

 

 限界まで気を溜め込んだ両手を頭上で合わせ、一気に振り下ろす。大量の気は龍となり、闘技場を切り裂きながら梁へと一直線に向かう!

 

 

「――虚ッッッ!!!!」

 

 

 命中する寸前、梁は体を左へずらし、気を両手に集中させ龍を“受け流す”!

 

 

「梁師範がかわしたっ!!」

 

「ぐ……くそぉっ!!」

 

 

 かわされはした龍炎拳だが、その威力は凄まじく、石で出来た闘技場が見事に真っ二つ。

 

 それを最小の気による防御で、無傷に済ませた梁も同じく凄まじい。

 

 

「凄まじい技だ。ここまで達するには尋常な修行でなかったろう。しかし心の修練が足りなかった、惜しかったな」

 

 

 するとここで、真っ二つにされた闘技場へ近づくターちゃん。

 

 

「こりゃひどい。…………うりゃ」

 

 

 ズンッ!!

 

 

 なんと怪力で無理矢理闘技場をくっつけてしまった!!

 

 

「やめろよ!!!! もりあがってんだから!!!!」

 

「いやぁ几帳面なもんで~」

 

「あ、あいつら舐めやがって……」

 

 

 呑気な白華陣営に虚仮にされたと感じ歯ぎしりする龍炎。だが奥の手で気を使いきった、もう試合に勝つのは無理だ。

 

 

「万策つきたな。後は倒れるだけだ。李功、準備しておけ」

 

「分かったよ兄貴」

 

 

 黒龍陣営も負けるのを分かって作戦を進めている、もうできることはないと龍炎が諦めた……時だった。

 

 

「待て李功」

 

 

 大将の王きが立とうとしていた李功を制し、龍炎へ最後の役割を伝える。

 

 

「龍炎。勝つのが無理ならば、せめて役割を果たしてもらう」

 

「役割とは、一体……?」

 

「逃げろ! 逃げて逃げて逃げまくれ、梁の体力を少しでも多く削れ!!」

 

「は、はいぃ!」

 

「逃すか!!」 

 

「ひぃ!?」

 

 

 梁の手より放たれる気の塊。顔面を狙ったそれは、龍炎が首を傾けたことで右耳だけ粉砕した。

 

 血を流しながら指示通り逃げる龍炎。梁から距離をとって、攻撃をかわし、受け、いなす、逃げの態勢。とにかく攻撃から逃げまくり、梁の体力を削る作戦だ。

 

 

「打透勁!!」

 

「ぐっ!?」 

 

 

 脇腹に気を食らいながらも反動で大きく離れる。当たりはしたが完全に逃げの態勢なので大きなダメージにならなかった。

 

 

「てめえやる気があるのか! こいつはトーナメントだぞ!!」

 

「ふふふ。それでよい。梁の気を使い散らせ」

 

「……不味いな。これは」

 

 

 いくら攻撃をしようと、相手が逃げの態勢でなかなか決定打を打ち込むことができない。それにカチンときてしまった梁は攻撃を更に激しくしていく。

 

 対して、かわし、逃げる龍炎。

 

 それが梁の怒りへ更に油を入れることとなり、もっと気を強くしてしまう梁。当然、気を強くたくさん使えばその分体力を使ってしまう。

 

 つまり、黒龍の思う壷である。

 

 

「いけない。梁師範が敵のペースに乗せられています!」

 

「どういうこと、趙さん」

 

「確かに梁師範は最高師範としてとてつもない強さを誇ります。そんな梁師範にも弱点が、短気という短所があるのです」

 

「怒りっぽいのか。梁師範は」

 

 

 白華側は、このままではいけない、なんとかして梁師範を落ち着かせなければ。そこで作戦を考え、ターちゃんの弟子達にも協力してもらう。

 

 今ここに発動する“梁師範を落ち着かせよう作戦”! 

 

 

「「「梁師範!!」」」

 

「なんだ、今忙しい!!」 

 

 

 「気」の文字が書かれた応援幕を左右からぎゅ~っと引っ張る。

 

 

「短気は損気。気を長~~~く持とうね」

 

「こんな風に、長~~く」

 

「「「そうそう。長~~く」」」

 

「試合中になにいっとんじゃいおめーら!!!!」

 

 

 ダメでした。

 

 残念ながらターちゃん達の落ち着かせ作戦、失敗。

 

 

「どらっ! ――擺脚!!」

 

 

 左手の拳を叩き込み、飛び上がると小指側の側面、足刀での右横蹴り!

 

 

「ぎゃはっ!?」

 

「おお! 決まった!!」

 

「……いえ! 相手が逃げの態勢、あれでは浅い!!」

 

「いてえ、いてえよぉ!!」

 

「てめえ……それでも拳士かぁっ!!」

 

 

 いつまでも逃げている龍炎に、梁の怒りが大爆発。

 

 全力を込めた拳で、殴る、殴る、殴る!

 

 

「何を焦っているの梁! そんな相手に強い気を打ってはだめ!」 

 

 

 蓮苞も不味いと叫ぶが、頭に血が上ってしまっている梁には届かない。

 

 気を滾らせて印を組む。

 

 右手は右人差し指を立て、左手は右手の下に添える、見たことのない形だ。

 

 

「ほー。あの印はもしや」

 

「梁師範落ち着いて! そんな相手に百歩神拳など!!」

 

 

 青掛の胡文が真っ先に気づいて、趙が技の発動を止めめようと叫ぶが、梁は止まらない。

 

 それほどお目にかかれない大技なのだ、梁が放とうとしているのは。

 

 

【三花聚頂……天花乱墜……】

 

「――百歩神拳!!!!」

 

 

 カッ!!!!!!

 

 

「ぐぁぁぁっ!!!!!?」

 

 

 両手へ集中した気を、一気に解放。レーザービームよろしく迸った一撃が、龍炎を小石の様に観客席まで吹き飛ばした。

 

 気を食らった箇所は焼け焦げていて、意識は完全にない。

 

 

「それまで! 勝者、白華拳先鋒!」

 

「手間かけんじゃねーよ」

 

 

 二人目撃破。残るは三人。

 

 

「ハァ……ハァ……」

 

「梁……」

 

 

 今の技こそ『百歩神拳』。西派拳法の最終兵器とまで言われる勁の奥義。見た通り強大な威力を誇る、当然その分気の消費量もばかにならない必殺技。梁でさえ肩で息をしているのがその証拠だ。

 

 

「要するにかめはめ波だよねドラゴンボールの」

 

「こうが君それは言わないで下さい……」

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「黒龍拳、中堅! 前へ!」

 

「くっ……ハァ、ハァ……」

 

「かなり気を消費したな、梁の奴」

 

 

 黒龍拳から三人目の拳士、李功が登場。

 

 息が上がっている梁に笑みを浮かべる。 

 

 

「出てきたぞ。黒龍一の勁の使い手、李功だ」

 

「気の強さは、白華の趙さえも上回るというが」 

 

 

 闘技場の少年拳士へ観客も注目。果たしてどんな試合を繰り広げるのか。

 

 

「今の奴なら、勝てるかもしれない」

 

 

 上の胴着を脱ぎ捨てる李功。その内側には札が何枚も貼られており、体には不思議なものがある。

 

 

「な、なんだ奴の体!?」

 

 

 黒い紋章の様なもの肩に一つずつ、背中に七つ。李功が気合いを入れると、体から気の力が迸り衝撃波が起こり選手達の肌を撫でた。物凄い気の力だ。

 

 

「生まれついて気の力が強い特異体質の拳士です。普段は服の下に気を吸収する封印を貼って、気を弱めていたのです。……手強いですよ」

 

 

 趙の言葉通り、李功は全身に強い気を纏い準備完了。

 

 梁も気を手に纏う。

 

 

「――はじめ!!」

 

「阿ッッッ!!!!」

 

 

 開始と同時、李功の攻撃が襲いかかる。

 

 貫く様な連続拳、左手刀、顔を狙う右蹴り上げ。

 

 激しい攻撃を梁は落ち着いてかわし、受けて、後方へ退いた。

 

 

「流石は梁。相当の気を消耗しても、李功の攻撃をさばききるとは」

 

「ば、ぶぁっ、ぶぁかやろう!! そ、そんなに攻撃してくんじゃねーよ! あーびっくりしたぁ!!」

 

 

 顔を真っ赤にして抗議する梁、その呼吸はハァハァと完全に上がってしまっている。

 

 百歩神拳の代償である、必死に隠そうとはしているが。

 

 

「言わないこっちゃない。かなりの気を消耗しています、梁師範は」

 

「でも最初の攻撃は防ぎましたよ! 今だって、あんなに喋って元気じゃないですか」

 

「違います。あれは……」

 

「い、いいか李功。本当の拳士はだな……」

 

 

 

 

 

 

 

「攻撃の時相手との呼吸をはからなきゃいけない君はまだ若いからしゃにむに攻撃するしか知らないそれでは私には一生勝てないのだよ君の将来の為に教えてあげようか。いいかな相手の呼吸にあわせてゆっくりと落ちついてあせらないで人生長いんだから広い中国そんなにいそいでどこいくのってね」

 

「体力回復の時間稼ぎです」

 

「あらぁ!?」

 

 

 流石は白華一の拳士。小技も白華一であった。

 

 

「ふん。烈!!!!」

 

「わっ!?」 

 

 

 だがここまで来てそんな小細工は通じない、李功は高速で拳を繰り出してくる!

 

 

「やられる!!」

 

 

 ――バキィッッッ!!!!

 

 

「……あぁっ!!」

 

「ちっ……」

 

「ほう……」

 

 

 白華は驚き。

 

 黒龍は舌を打ち。

 

 観客席の胡文は意外と目を丸くした。

 

 

「ぐっ……!」

 

「だから、呼吸っていったろーが」

 

 

 拳を紙一重でかわし、梁がカウンターを顔面に叩き込んだのだ。

 

 まだ負けてなどいない。

 

 例え気を殆ど使いきっても、白華の最高師範だと証明するかの如く。

 

 

「まだまだぁ!!」

 

 

 だがまだ一撃が入っただけ、試合が再開する。

 

 むしろ李功の恐ろしさはこれからだ。彼の体は特異体質により、大ダメージを受けても大量の気が直ぐに循環し回復してしまう。

 

 梁もよく理解しており、李功の烈火の様な攻撃を凌ぎ、反撃する。

 

 

「阿ッ!!!!」

 

「ぐ、おらっ!!」

 

 

 防いで、腹に拳をいれ、脇腹を殴り、顔面を蹴り上げる。

 

 攻撃して、攻撃して、攻撃しまくる。

 

 が、李功の回復能力の方が強く、倒れる気配がない。

 

 

(クソッ、体力がもたねえ……! このガキ、何発打ち込めばダウンしやがる……!)

 

(――梁よ)

 

(!?)

 

 

 激戦の最中。突如、梁の脳内に男の声が響く。

 

 直ぐに誰なのかは分かり、梁は横目でそいつを見た。

 

 過去に一度対戦し辛勝した“アイツ”のものだ。

 

 

(王翬か!)

 

(何故そこまで優勝にこだわる。それほど白華に実権を持たせたいのか)

 

(うるせぇ……! 今は試合中だぞ!)

 

(白華が実権を握れば、お前と蓮苞の結婚は一生叶わぬのだぞ)

 

 

 場所は代わり、大導師の席。

 

 

「……何? この邪悪な気は!?」

 

(よく考えてみろ。我々黒龍に実権を譲るのだ。そうすればお前が惚れた蓮苞は他の奴にとられることもない……結婚できるのだぞ)

 

(うるせぇ黙れ!!)

 

「どりゃあぁぁぁぁあっ!!」

 

「まさかこの気は……王翬!?」

 

 

 妨害と誘惑の言葉に惑わされないよう、目の前の戦いだけに集中しようとする梁。

 

 しかし勁の力、気とは精神力。

 

 怒りに惑わされれば気は乱れる。乱された気では戦いに勝つことは出来ない。

 

 

「いけない……! 梁の気が乱れているわ!」

 

「どうしたんだ梁師範。戦いに集中出来てないみたいけど」 

 

 

 そして王翬は、更にいやらしく妨害と誘惑の言葉をかけていく。

 

 

(……のう、梁。蓮苞は大層に美しい女だなぁ)

 

(っ!!!? テメエ!)

 

(あれだけの美貌。さぞ‘女’としてもいい味をしているのだろうなぁ。そんな蓮苞が他の男に抱かれてもいいというのだな、お前は)

 

「~~~~~~っ!!!!」

 

 

 

 

 

「黙れっていっているだろうが王翬ッ!!!!」

 

「梁師範!?」

 

「ふっ。今だ李功」

 

(奴の防御の勁が消えた!)

 

 

 怒りが限界に達した梁が王翬へ吠えた。それによって集中が切れ、纏っていた気が飛び散ってしまい、李功がそれを逃す訳がなかった。

 

 体を屈め飛び上がる。

 

 繰り出すは右手刀、落下の勢いを乗せ、気を纏って振り下ろす一撃――!!

 

 

「しまっ――」

 

 

 

 ズシャァァァァッ!!!!

 

 

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?」

 

「梁っ!!」「梁師範っ!!」

 

「ククク。形勢逆転だなぁ」

 

 

 右手刀は梁の右腕、二の腕に直撃した。当たった部分を押さえ梁はふらふらと後退。

 

 勁のない状況で食らった一撃。そのダメージは外より、気によって中にあった。

 

 

「梁、今の一撃でお前の腕に流れる気の流れを絶ち切った。直にお前の腕は腐り始めていくぞ」

 

「が、ガキが。一撃くらいでいい気になりやがって。てめえなんざ片腕で十分だ……」

 

「そんな強がりがいつまで通じるかな? そうら見てみろ、もう腐り始めているぞ」

 

 

 李功の言う通り、ぐじゅり、ぐじゅりと食らった部分が黒くなっていく。いずれこのままでは腐食が腕に、やがて体全体にまで広がり、命を脅かす。

 

 早く治療しなければ危険だ。

 

 

「止めて梁! 早く棄権して治療しないと危険だわ!」

 

 

「早く治療しなければ手遅れになってしまいます!」

 

「梁ちゃん止めろ、棄権するんだ!!」

 

「バカ! そんなこと、出来るわけねえだろうが!!」

 

 

 絶対に退けない。

 

 白華師範として、西派拳士として、何より男として。

 

 例え命に代えても、梁は戦うと決めていた。

 

 

「ここで……ここで退いたら! 白華は負けちまうだろうが!!!!」

 

 

 

 

 

 

「――バカたれえええぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!!!!」

 

 

 




こうが
「次回予告!

 怪我を負ってでもまだ戦おうとする梁師範。

 止めて! これ以上やったら本当に死んじゃう!

 梁師範の思いを引き継いで、二人目の白華選手が闘技場へ立つ。

 放つは全ての力を込めた奥義だ!

 次回、ジャングルの王者ターちゃん~新ファミリー物語~

 第22話 決戦、黒龍拳!!中編2の巻

 梁師範の為に、あれ用意しとかないと」
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