白華拳対黒龍拳の決勝戦。
拳士達が磨き抜いた技をぶつけ合い、傷つき、倒れて両陣営ともに残るは三人。
勝負は互角。
そして遂に今……
「遂に私の出番なのだ」
白華より最強の拳士が……
「梁師範と趙君の分は、利息つけてきっちり返させてもらう」
闘技場で……
――どて
つまづいた。
「ちゃんと足元見て歩けよ!!!!」
◇◇◇
「なぁ、どう思うよこの試合」
「こりゃー白華はダメだな。師範の梁と趙がやられちまったんだから」
「だよなぁ。残りの助っ人選手って奴も、何処の馬の骨か分からねえ奴らだし」
観客達は既にこの試合、黒龍が勝つものだと思っている。
確かに師範はもう白華にはいない、が、戦える選手は……いる。
「コラー!!!! 南の客席上から17番目の二人組! 私は馬の骨なんかじゃないぞー!!」
(ふざけたやろーだぜ)
前に化勁へターちゃんを侮るなと言った李功だが、いざ目の前で見るおちゃらけぶりに思わず侮る。
(しかしこれは俺を油断させる作戦かもしれん。侮れんな)
気を引き締め直すと体内の気を循環させる。勁の力により、百歩神拳に焼かれた左半身が治っていく。
「おお、すごい!」
「みるみる火傷が治っていくぞ!」
「む」
それを見たターちゃん、自分で自分の頭をポカリと殴り付けた。
たんこぶが出来る。
謎の行動、妻ヂェーンと息子こうがだけはなんなのか分かっていて、「あぁ~……」と呆れた。
「あんのおバカ……」
「どうしたんでしょう先生。自分で自分の頭を殴って」
「李功の回復能力に対抗心燃やしちゃったんですよ……」
傷の治りが人一倍早いターちゅん。その超回復により、直ぐにたんこぶは小さくなっていき、ぱちん、と消えたしまった。
……し~~~ん。
「なんで皆『おい見ろよ、たんこぶがみるみる治っていくぞ!』って感心してくれないわけ!?」
「あほかい!!!!」
こうは言っているが、おちゃらけもここまでだ。
折り返しとなる中堅戦が今、始まろうとしていた。
構えるターちゃんと李功。
「――始め!」
開始の合図が下されると同時に。
ターちゃんの姿が消えて、姿を見失う李功。
「バカな、奴の姿が消えた!?」
慌てて周りを確認するが、ターちゃんの姿はない。
「そんな、俺程の奴が見失うなんて……! ハッ!?」
李功がターちゃんの位置を捉える、しかし一瞬遅かった。
ターちゃんが現れたのは、左右や上でもない、下。
李功の真下、足の間だ!
「まず、左大腿骨!」
ターちゃん最初の一撃が、右足の骨を砕く。直ぐ様反対にもう一撃。
「すかさず、右大腿骨!」
「ああ!!!?」
両足を砕かれて崩れ落ちる李功の体へ二撃食らわせる。
「左右肋骨!」
「ぐはぁ!?」
「右とう骨!」
腕の骨も折り、胸骨、左鎖骨、右鎖骨と続く。
息もつかせぬ連続攻撃、拳の嵐が李功へ降り注ぐ。
「す、すげぇや父さん。これなら、李功がいくら回復しようと追い付かないよ」
「コラ」
思わずそう口から漏らしたこうが。そこにヂェーンが拳骨を落とした。
「こうがちゃん、感心しちゃダメ。いつものターちゃんならあそこまでしないわ」
「じゃあ、今はなんで?」
「……梁ちゃんと趙ちゃんが受けた分をきっちりお返しするつもりだからよ」
そう言う間に、ターちゃんは李功の右上腕骨をへし折る。
「ぐ、あ、がっ」
ダメージが限界を越えて、糸が切れた人形のように李功は崩れ落ちた。
ターちゃんは最後に左腕を掴み上げ、指をぐきり。
「利息分として突き指じゃい」
「細かいなオイ」
「そ、それまで……」
あっという間に決着が付いてしまった中堅戦。大歓声が巻き起こる。
「すげぇ! あのターちゃんって奴、なんて速さだ」
「梁や趙を倒した李功を、直ぐに地面へ這わしちまった……人間の攻撃じゃあない」
これは、ひょっとすると。
観客の中で決まりかけていた勝敗が分からなくなってきてざわめき出す。
「勝負はまだ分からないぞ。師範がいなくなった白華が不利かと思ったが、助っ人のターちゃんがなかなかに強い」
「あぁ。だから俺は白華の奴らを応援するぜ。黒龍が実権を握れば、力による支配が始まるだろうしな」
「確かに……。なんでも外国のシンジゲートと手を組んで金儲けをするらしいが、どうせロクなもんじゃあるまい」
ただ力でねじ伏せてきた黒龍より、真っ向から戦った白華の方が良く見られている。
少しずつ、少しずつ。どちらが勝つかといいか予想は白華側へ移っていく。
「そうだな……。白華拳の統率してきた西派32門派は貧しくもあったが、拳法に生き甲斐を持てる暮らしだった」
「あぁ、そうだった」
「白華、頑張れ!」
「ターちゃん頑張れ!」
会場のムードは一変。観客は皆、白華の応援に回りだした。
「「「白華! 白華! 白華!」」」
「アナベベも頑張れよ!」
「ペドロもだ!」
「ターちゃん先生、ファイトー!!」
「「「ファイトー!」」」
「すげぇ。一気に周りは俺達を応援し出したぜ」
「流石は先生です」
周りと弟子達の応援に、思わず舞い上がるアナベベやペドロ。
気持ちは分からないでもない、応援されれば、気持ちが高ぶるのは自然なことだ。
……ただ。
当人であるターちゃんは、応援されているのに、浮かない表情でいる。
見ているのはボコボコにやっつけた李功だ。骨を折られまくった彼は這いずって、黒龍陣営へ戻っている。
その姿に、ちくり、と心が痛んだ。
(嫌な気分なのだ。気で回復するだろうが……)
「……父さん?」
場所は代わり黒龍陣営。
やっとのことで李功が自分の陣地へ辿り着いていた。顔は痛みと悔しさで流した涙や鼻水でグシャグシャだ。
体もグシャグシャの李功を、そっと抱き上げてやるのは黒龍拳副将にして義兄の劉宝。
彼の目からも涙が流れていた。
「おおおぉぉ……! 私の大事な弟を、よくも、よくもこんな目に……!」
大切な弟を傷つけられた怒りで慟哭する劉宝。
その姿に、ターちゃんは罪悪感を感じ、劉宝は視線で殺さんとばかりにターちゃんを睨み付け、闘技場へ上がってきた。
「さあ、やろうか」
(こいつ……強い)
ターちゃんは相手の身に纏う空気から、直ぐに実力を理解する。
いつも以上に気を引き締め構え、劉宝も続く。
「――始め!」
開始のタイミングで駆け出すターちゃん、当然ながら凄まじいスピード。
李功ですら見失う速度、しかしそれに、劉宝は続いてきた。
「父さんと同じスピード! あの巨体で!?」
身長187㎝のターちゃんより大柄な劉宝は難なく追い付いてきた。
ぴったりターちゃんに張り付き、顔面を狙う右拳。
「ぬん! ふっ! はっ!」
体を反らして避けたターちゃん、同じ顔面狙いの左拳、右手刀と続く攻撃もかわす。
その次。
「……がっ!?」
「父さん!!」
「ターちゃん!」
四撃目、左のボディブローが腹を捉えていて、膝をつく。
トーナメントが始まって、ターちゃんが初めて攻撃を受けてしまったのだ。
「ぐ、う……」
どうなる、副将戦!!
こうが
「次回予告!
副将、劉宝と父さんは凄まじい戦いを繰り広げる!
どちらも負けてない、殴って殴って殴りまくる!
そして、戦いの果てに……!?
次回、ジャングルの王者ターちゃん~新ファミリー物語~
第24話 決戦、黒龍拳!!後編1の巻
そんな……父さーーーんっ!!」