※この作品はR-18です。

ジャングルの王者ターちゃん~新ファミリー物語~   作:剣聖龍

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第6話 波乱、オープントーナメントの巻

 一撃。

 

 現すとしたら、この言葉。

 

 遂に始まった、ジャングルの王者ターちゃんの試合。

 

 相手選手、カノーブスは右目に魚眼レンズを移植されたユンケル帝国の戦士。視野の広さは通常の2倍、まごうことなく強敵。

 

 にも、関わらず。

 

 

「おぉおっ! ――何っ、何処だ!?」

 

「ターちゃんパァンチ!!」

 

「ぐぼぉっ……!」

 

 

 魚眼レンズにより相手を捕捉出来る筈のカノーブスは、右ストレートを放った瞬間、ターちゃんを見失った。そのターちゃんはカノーブスの後ろ、ターちゃんパンチを放ち、カノーブスの魚眼レンズがある顔右部分に命中。一撃で、カノーブスを倒してしまった。

 

 

「「「……………………」」」

 

「あ、あれ」

 

 

 余りにも早すぎる決着。会場の誰もが静まり返り、言葉を失っていた。

 

 ターちゃんの、圧倒的な強さを目の当たりにし

 

 

「これが、ターちゃんよ」

 

「……すごい」

 

「…………う、魚の目なのだ」

 

「そ、それまでぇ! 勝者ジャングルの王者ターちゃん!!」

 

 外れた魚眼レンズを足の裏に乗っけて一発ギャグをかました所で時は動き出す。審判が審判の仕事をして、歓声が爆発のように上がった。

 

 

「なっ、ななななな……なんだアイツは!!」

 

 

 この試合を観て穏やかではないものがいる、マハラジャだ。野望実現の為のバイオ戦士、ムエタイチャンピオンも倒し上々だったのを、カノーブスを倒したあの男が、ターちゃんがぶち壊してしまったのだから。

 

 

「直ぐにあのターちゃんとやらの情報を集めい!! 急げ~!!」

 

「はっ!」

 

 

 慌てて部下に命じるマハラジャ。試合会場のターちゃんを睨み殺さんばかりに睨み付けるその後ろで、マハラー・ポポが静かに胸を撫で下ろしていた。

 

 

「やってくれたな……ターちゃん」

 

 

 バイオ戦士が一人倒された後も予選は続けられる。

 

 アフリカからはターちゃん、ペドロ、ゼブラちゃんちゃんこりんマン。

 

 バイオ戦士からはアークツルス、プロキオン、そして最後の一人が予選を戦い抜き、彼らを含めた16名が本選へと駒を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 …………だが。

 

 

 

 

 

 

 

「何言ってんのよ、あんたは!!!!」

 

 

 

 部屋中に響き渡り、ビリビリと震える程の大声。ターちゃん一行の宿泊する部屋で発したのは、ヂェーンであった。

 

 

「か、母さん……」

 

「キィー(落ち着けこうが)」

 

 

 部屋の隅っこ、エテ吉をぎゅっと抱き締めてこうがは、ヂェーンと向かい合うターちゃんを不安げに見ている。

 

 事の発端はターちゃん。

 

 彼が、トーナメントを降りる、と言い出した事だった。

 

 

 

「もう嫌なのだヂェーン。何の恨みもない相手と戦うのは気が滅入るし辛いのだ」

 

「これからじゃあないのトーナメントは!!」

 

「私の力はジャングルの平和や動物達を守る事だけに使いたい。……もう嫌なんだよ、ヂェーン」

 

「あのね~! トーナメントに優勝すれば1000万ドルよ、町で一生遊んで暮らす事もできんのよ!! 分かる!?」

 

「……ヂェーンは変わってしまったのだ。ユンケル帝国に来てから、贅沢とか、お金の事ばっかり。ジャングルじゃあ歯ブラシ一つも大切にしてたのに」

 

 

 くるりとヂェーンへ背を向けるターちゃん。既に荷物の風呂敷を背負っていて、完全に帰り支度をしている。

 

 本気で、ジャングルに帰るつもりでいるのだ。

 

 

「……あたしの言う事、聞けないってのね」

 

「道を聞いて帰るのだ。エテ吉、こうが、行くよ」

 

「キィ(あいよ)」

 

「……父さん」

 

 

 こんな寂しそうな、虚しそうな姿をターちゃん見ては、こうがもトーナメントどころじゃない。

 

 振り返る。ヂェーンはそっぽを向いて座り込んでいる。こっちを見ようともしない。

 

 よくぶっ飛ばされたりしているが、ターちゃんとヂェーンのこんな言い合いは初めて。目の当たりにしたこうがは不安でたまらない。……きっと、ペドロの応援をして帰ってくる筈。

 

 そう思い、荷物を手にターちゃん、エテ吉と一緒に部屋を出る。

 

 

「でもターちゃん。そのテレビは置いてきなさい、ホテルのよそいつ」

 

「……歯ブラシはよくてもこれはダメなのね」

 

「うぉい」

 

 

 

 

 

 

 

 ホテルを出て、ジャングルへ帰ろうとするターちゃん、こうが、エテ吉。

 

 そんな彼らを狙う影があった……建物の上、スコープ越しにターちゃんを狙うそいつ。

 

 

 どん。

 

 

「前向いて歩けよおっさん!!!!」

 

「父さんそれカー○ル人形」

 

 

 

 某鶏肉の○ーネルとぶつかりツッコミを入れたターちゃん。

 

 彼を狙って――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 銃声が二発、響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それまで! 勝者、アフリカのゼブラちゃんちゃんこりんマン!」

 

 

 本選トーナメントでは謎のマスクマンゼブラちゃんちゃんこりんマンが勝ち星を上げていた。

 

 

「続きまして第3試合、ユンケル帝国、国防軍戦士プロキオン! 対するはアフリカ、ジャングルの王者ターちゃんです!」

 

「出てきたか。ナパさんを大した小男が。でも先生なら大丈夫……」

 

「だといいんだけどね」

 

 

 観戦しているペドロ、ヂェーン、こうが。それにエテ吉。だがヂェーンにして珍しく歯切れ悪く言う。喧嘩をしたのもあるが、もっと別の理由がある。

 

 会場では東側よりナパキャットを締め倒したプロキオン、西側よりターちゃんが出てくる。

 

 ……左腕と右腕にギプスをつけ、松葉杖をついて。

 

 

「どうしたんですか先生は! 怪我をしているじゃないですか!?」

 

「昨日、ホテルから出た後に撃たれたそうよ」

 

「腕の方は近くにいた僕を庇って……」

 

 

 ジャングルであれば、スナイパーの存在にも気づけただろう。だがここは町の中、汚れた空気や臭いが、ターちゃんの優れた五感を麻痺させていたのだ。

 

 だがそれが逆に、ターちゃんをトーナメントへ引き留める理由にもなった。何か良からぬ事を感じた、放っておけない、と。

 

 

「ひどい……あれではまともに戦えないじゃないか!」

 

「でしょうねぇ」

 

 

 ターちゃんの痛ましい姿を目の当たりにして、マハラー・ポポも思わず立ち上がって叫んだ。隣のマハラジャがネチネチした感じで言うのに、まさか、とちょび髭のそいつを見る。

 

 

「大臣……お前の差し金か」

 

「それはお互い様でしょう、国王。調べたらあのターちゃんとやら……昔ジャングルでお世話になっていたとか。バイオ戦士プロジェクトを潰すために呼んだのでしょなぁ」

 

 

 悪びれもなく言うマハラジャ。カノーブスがやられた事でプロジェクトにケチがついた。マハラジャは野望の障害となるターちゃんを狙い定め、潰しにかかりにきたのである。

 

 

「ターちゃん選手、松葉杖は預からせて頂きます」

 

「あ、はい。……おとと」

 

「立っているのがやっとじゃないですか! あんな状態じゃ、先生でも……」

 

「いや、なんか作戦があるって言ってたわ。そいつを信じましょう」

 

「父さん……無理はしないで……!」

 

「キィィ……(死ぬなよターちゃん)」

 

 

 各々が祈る中、バイオ戦士二人目、プロキオンとの戦い。

 

 ここに、開戦。

 

 

「サバ折にしてやらぁーーー!」

 

 

 プロキオンが開始早々、両腕を広げダッシュ。得意のホールドに持ち込む気だ。

 

 

 一方、怪我で上手く動けないターちゃん、ガッチリとホールドされてしまう。

 

 そのままナパキャットのように、背骨を折られる――!

 

 

「おええぇぇぇ~~~」

 

 

 ことはなかった。

 

 プロキオンがホールドした時、ターちゃんは毛皮のパンツを上げた。密着したプロキオンは、そのまま突っ込んでいってしまったのだ。

 

 …………ターちゃんの股間に。

 

 

「作戦ってそれぇ!?」

 

「んなアホな~!!」

 

「ほっ……流石ターちゃん」

 

 

 だがおバカな見た目と内容に反し効果は絶大。身体能力を強化されているバイオ戦士は五感も同じく強化されている。そんな状態で股間とキッスだ、その激臭は計り知れない……!

 

 マハラジャがずっこけマハラー・ポポがホッと息をつく。

 

 ターちゃんのおバカ作戦、ここに大成功!!

 

 

「ふ、ふざけやがって。スナイパーに撃たれて手負いの癖に!」

 

「やっぱりそういう事か」

 

 

 どうにか離れたプロキオンが溢した言葉。ターちゃんの予想は当たっていた、何者かが、このトーナメントで良からぬ企てをしている。

 

 悪への怒り。ターちゃんの中でそれは静かに燃え上がり、パワーとなってターちゃんを動かす。

 

 無事な右腕を振り上げ、プロキオン目掛け――落とす!!

 

 

「ふんっっっ!!」

 

「ごっ……!」

 

 

 強烈な肘鉄が、首に命中。

 

 一撃でプロキオンの意識を刈り取り、勝負を決めた。

 

 

「それまで! 勝者、ジャングルの王者ターちゃん!」

 

「や、やった! 勝っちゃったよ父さん!」

 

「流石先生!」

 

「おバカ。全然よかないわよ」

 

 

 手負いでもやはりターちゃんは、父さんは強い! 気分も、体も物理的に浮き上がるこうがにペドロだが、水を指すようにヂェーンが言う。その表情は浮かないもので、「さて」と席を立つ。

 

 

「これでターちゃんも気が済んだでしょうし、ターちゃんとジャングルに帰るわよ」

 

「え、でもトーナメントは? 賞金だって」

 

「どあほ! そんなもんターちゃんの命に変えられない。あんな体じゃもう戦えないわ。あのターちゃんが肘を使ったのよ、肘を」

 

 

 言われてみれば。ターちゃんがハンターや組手でも肘を使うなんて、見たことがなかった、とこうがとペドロ。そのターちゃんが肘を使った。肘を使わなければいけない程、ギリギリなのだ今のターちゃんは。

 

 

「あぁ、ここにいましたかヂェーンさん!」

 

 

 そこに、息を切らして走ってくる一人の男性。アブドラだ。

 

 

「どしたのアブドラさん」

 

「急いで来てください、ターちゃんさんが何者かに襲われ、意識不明の状態なんです!!」

 

「ぬわぁんですってぇ!?」

 

「父さんが!?」

 

「ターちゃんさんは医務室です、こちらへ」

 

 

 急ぎアブドラのあとをついていくヂェーンにこうが、エテ吉。

 

 

「すみません、俺も行きたいのは山々なんですがもうすぐ試合が……!」

 

「いいわよ! ターちゃんは任せて、全力でやりなさい!」

 

「気をつけて、ペドロさん!」

 

「キィィィ!(負けんなよ!)」

 

「押忍!!」




こうが
「さあ次回予告。

父さんの元に急ぐ僕達。国王様から語られる、バイオ戦士の秘密。

思わぬ事からアフリカの危機を知り、父さんは闘志を燃やす。

一方、ペドロさんの相手は……最後のバイオ戦士!

次回、ジャングルの王者ターちゃん~新ファミリー物語~

第7話 強敵現る、オープントーナメントの巻

ぺ、ペドロさんが! なんなんだアイツは!?」
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