※この作品はR-18です。

ジャングルの王者ターちゃん~新ファミリー物語~   作:剣聖龍

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第7話 強敵現る、オープントーナメントの巻

「う~ん……」

 

「あっ、父さん! 目を覚ましたよ!」

 

 

 会場も医務室、ベッドに寝かされているターちゃんが意識を取り戻すとこうが、ヂェーン、エテ吉が真っ先にやってきた。

 

 

「大丈夫、父さん? 僕の事分かる?」

 

「あぁ、こうが……平気なのだ」

 

「良かったわ。ターちゃんが無事で」

 

「ターちゃん、貴方は通路でアークツルスに締めおとされたんだ。覚えているか?」

 

 

 医務室には他にドクターとマハラー・ポポ、警護の人間がいる。マハラー・ポポの言うとおり、試合を終えた戻る途中にバイオ戦士の一人、アークツルスに首を絞められた。

 

 

『死に損ないめ。よくもカノーブスとプロキオンをやりやがったな。俺がぶっ倒してやるから逃げるんじゃねーぞ』

 

『やめろアークツルス!』

 

 

 マハラー・ポポが止めに入ったが、そのまま気を失ってしまいここに運ばれた。でも今、目を覚ましたから一安心。

 

 ヂェーンはホテルから持ってきた荷物を担ぐ。

 

 

「さ、バイオ戦士もやっつけたし帰りましょ。ペドロちゃんはトーナメントが終わったら帰ってくるそうだわ」

 

「………………」

 

 

 これ以上、ギリギリな体のターちゃんが傷つく理由はない。そそくさとジャングルへ帰ろうというヂェーン。だけども、ターちゃんの方は浮かない表情をしていて、その理由を知っているかもしれない相手へ尋ねる。

 

 

「国王様、ライオンからとったホルモンってなんなのだ」

 

「っ……!」

 

「ライオン? なんでライオンが出てくるの?」

 

「私を絞めたアークツルスに言ってたのだ」

 

「聞き間違いじゃないの」

 

「……いや、ターちゃんの言う通りだ」

 

 

 肯定するマハラー・ポポ。

 

 何故いきなりライオンが話に出てくるのか。彼はバイオ戦士とライオンについて語り始める。

 

 まず取り出したのは一枚の写真、ちょび髭の男が映っている。

 

 

「こいつは国防大臣のマハラジャ。奴がバイオ戦士のプロジェクトを立ち上げ、トーナメントに出場している四人のバイオ戦士の生みの親だ」

 

 

 ターちゃんが戦ったカノーブス、プロキオン。首を絞めたアークツルス、そして最後の一人カシオ。

 

 

「アナボリックステロイドは分かるか?」

 

「何それ」「分かんない」

 

 

 説明を始めた矢先にこれ。おバカ二人が首を傾げるのに、ヂェーンが頭をかきながら説明する。

 

 

「筋肉を増強させる薬よ。ドーピングね」

 

「そう。飲んだ人間の筋肉を増強させる、筋肉増強剤だ」

 

 

 マハラー・ポポが改めて語り始める。

 

 マハラジャは国防大臣であると同時、生物学に優れた科学者。長年、アナボリックステロイドを研究していたマハラジャは、それを上回る筋肉増強剤を作り出した。

 

 それがライオンの睾丸より抽出されるホルモンを使った、新しいアナボリックステロイド。バイオ戦士にはその新型アナボリックステロイドを投与されていて、常人の6倍という強大な身体能力を秘めている、のだと。

 

 マハラー・ポポは一枚の写真を見せる。映っているのはほぼ骨と皮だけの、ガリガリの痩男。

 

 

「これが3年前のアークツルスだ。ステロイドの効果がどれだけか分かるだろう」

 

「確かに……」

 

「でも、これならうちの母さんだってそうじゃないか」

 

「そうなのだ。これ、3年前のヂェーン」

 

「アメリカでモデルをやっていた、ボンッキュッボンッ! だよ!!」

 

「「「こっ……こっちの方がすげぇ……!」」」

 

「どうしてあんな上から押し潰した風になるんだ……」

 

「だよねーやっぱギャグ漫画だから?」

 

「やかましいわい!!!!」

 

 

 ……とにかく。その新型アナボリックステロイド研究の為、ライオンが犠牲になったのは、紛れもない事実。

 

 もしバイオ戦士が優勝してプロジェクトが更に進められれば、新型アナボリックステロイド開発の為、ライオンが狩り尽くされてしまう。

 

 

「大変じゃないか! ライオンのタ○キンがピンチだよ!!」

 

「タマタ○ですみゃいいわよ。下手したら、ライオンが絶滅しかねないわ」

 

「……だから、私はターちゃんを呼んだ。ターちゃんならばバイオ戦士にも勝てると思い、それで」

 

「ふざけんじゃないわよ!!!!」

 

 

 マハラー・ポポへ、真っ先に噛みついたのはヂェーンだ。

 

 

「そんなことがあってターちゃんを呼んだの!? 現実はどーなのよ、こんな怪我してちゃ戦えないじゃない!!!!」

 

 

 大声で思いっきり叫んで歯をギリギリさせ、マハラー・ポポを睨み付けるヂェーン。警護の人間がいなければ、今にも飛びかかりそうだ。

 

 それに「すまない」と頭を下げるマハラー・ポポ。雰囲気を察してターちゃんは彼とヂェーンをチラチラ見て様子を伺っていて、エテ吉は「キィ……」と鳴いて見ているだけ。

 

 気まずい空気が医務室に漂う。

 

 

「あ、うぅ」

 

 

 その中でこうがはオロオロしながらも、どうにかしなければと思い頭を抱える。

 

 喧嘩になりそうなこの雰囲気をどうにかしなければ。もし、ペドロやゴリさんがいれば上手く収めてくれるかもしれないのに。

 

 ……ペドロ?

 

 

「そ、そうだ! そろそろペドロさんの試合が始まる頃だー! 

この部屋テレビとかないんですかね?」

 

「あるぞ。ほれそこ」

 

 

 わざとらしく、手を叩いて大声で言うこうが。ドクターが指差したテレビをつける。

 

 

『アフリカ、ターちゃん流空手ペドロ・カズマイヤー! 対するはユンケル帝国国防軍戦士カシオ!』

 

 

 ラッキーな事に、丁度ペドロの試合が始まったところであった。開始早々、相手である細身の男カシオに中段蹴り、と見せかけ二段蹴りをかますペドロ。

 

 

「お、やるなペドロ」

 

「さっすがターちゃんの一番弟子ね!」

 

(よかった。喧嘩にならなかった)

 

 

 ターちゃんやヂェーンは試合を観戦しだして、こうがの作戦はひとまず成功。ほっと胸を撫で下ろして、ペドロの応援に加わる。

 

 試合の方は、カシオの攻撃をかわし、防いでペドロがペースを握っていく。大降りの攻撃をかわすと、後ろ蹴りをカシオの顎へかまし、大きく吹っ飛ばした。

 

 

「その調子じゃあ~っ!!!!」

 

 ゲシィ!!

 

「ちょぶべら!?」「とーさーーん!!」

 

 

 思わぬ二次被害はさておき。

 

 

「カシオか……手強いぞ」

 

 

 一人険しい表情でテレビを観るマハラー・ポポ。

 

 試合はターちゃんの一番弟子ペドロが押している。……が、どうしても不安を消す事はできない。

 

 何故か?

 

 

「相手が立ち上がったよ!」

 

「スゴい。相手ながらナイスファイトなのだ」

 

 

 ふらつきながらも、立ち上がるペドロの相手カシオ。

 

 何故なら、この男こそが四人目のバイオ戦士。

 

 最後にして、最強の戦士だからだ。

 

 

『ぬぅううっ……フンッ!!』

 

 

 カシオが気合いを入れるように息を吸い込み、勢いよく吐き出した、その次の瞬間。

 

 ボンッ! ボンッ!! と、両腕、胴体が膨らんだ。両手に巻いていた腕輪が割れる。胸が大きく広がる。

 

 謎の現象により、カシオは一回り大きいボディへと変化したのである!!

 

 

「なっ、なんだあれ!?」

 

「これが最強のバイオ戦士カシオの力だ。体の大きさを自由自在にコントロールできる」

 

「え、私ももっこりできるのだ。ほれ」

 

「あほかい!!!!」

 

 

 

 

 

「たああっ!! ――何!?」

 

「この腹筋には通じんな」

 

 

 カシオの筋力増強に驚くも、右ストレートを十字受けで防いでから攻撃を叩き込むペドロ。鳩尾に強烈な右ボディブロー。しかし、普通ならうずくまるそれをカシオは増強した腹筋で挟み込み、ペドロを離れられないようにしてしまう。

 

 

「お返しだ」

 

「がっっっっ!!!?」

 

 

 始まるのは、カシオの反撃。ペドロの顔面への左ストレートを皮切りに、試合開始からやられたのを返さんとばかりに猛烈な攻撃が叩き込まれる。

 

 鳩尾にボディブローを食らわせ、左ストレートで鼻と口から血を流すペドロの顔面に右フック。続いて左フック。右、左、右と続いていき、サンドバック同然で滅多打ちだ。

 

 

「ぐあああぁぁぁっ……!!」

 

「そ、それまで、それまで! 勝者カシオ!!」

 

 

 流石にこれ以上は死ぬ、そう判断した審判が止めに入り試合終了。だが歓声などなく静まり変えている。ペドロをボコボコに痛め付けたカシオも、勝ったがその表情は「消化不良」といった感じで佇んでいる。

 

 足元には顔面血だらけのペドロが倒れている。カシオは口を歪め笑う。

 

 

「中途半端に強いからだ。だからこうなる」

 

「がふっ……………!!」

 

 

 そう吐き捨て、ペドロを踏み潰した。

 

 

 

 

「あ、あんにゃろぉ~っ!! よくもペドロちゃんを!! ぶっ飛ばしてやらぁ!!!!」

 

「キィイー!!(気持ちはわかるけどおさえてー!!)」

 

「母さんダメだってー!!」

 

 

 医務室では怒り心頭のヂェーンが暴れていて、エテ吉とこうがが必死におさえていた。本当にぶっ飛ばしたら問題になってしまう、でもあんな試合を見せられ、家族思いのヂェーンが黙っていられる筈がない。こうがも同じだった。

 

 

「僕だって悔しいけど、でも……」

 

 

 家族同然の兄弟子。当然心配だ。

 

 どうにか怒りをおさえて暴れるのを止めたヂェーンから離れて俯いていると、後ろからぎしりと音がした。

 

 振り向くとターちゃんが立ち上がっていた。左腕に巻かれている包帯をするすると外している。傷が治りきっていないので当然

出てくる血。ヂェーンが慌てて止める。

 

 

「な、何やってんのターちゃん!?」

 

「まさか、戦うの父さん!?」

 

「ダメよ! そんなんで戦ったら、本当にバイオ戦士に殺されるわよ!!」

 

「分かってるのだ」

 

 

 じゃあなんで、とヂェーンとこうがは言おうとしたが、言えず息を呑んだ。

 

 ターちゃんの全身から、噴き出している何かを感じる。それはいわば闘気。ターちゃんの中で燃え盛る怒りが、闘気となって放出されているのだ。

 

 そう……ペドロという大事な家族の惨状にこのターちゃんが。ジャングルの王者が怒りを感じていない筈がなかった。

 

 

「生まれて始めてなのだ……生身の人間に、本気で戦うのは」

 

 

 静かに、かつ怒りを燃やし、ターちゃんは拳を握りしめた。




こうが
「さあさあ次回予告。

決意を胸にする父さん、その相手はアークツルス。

片手片足が使えない父さんは苦戦を強いられる。

でも戦いの中、父さんに異変が。

なんだ、あの姿!?

次回、ジャングルの王者ターちゃん~新ファミリー物語~

第8話 怒り覚醒、オープントーナメントの巻

これが、「彼ら」の怒りなのか!?」
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