常守の初任務でもあり薙鵺眞 勇魅の指導官としての初任務から一日経ったある日のこと。
勇魅は昨日の任務で宜野座に言われた始末書を提出するために誰よりも早く公安局へと出勤していた。
勇「......以上のことを踏まえて、私は新人の指導を怠り、このような結果を生み出してしまったことをここに謝罪します。っと、こんなもんでいいかな。」
ひたすらに始末書にペンを走らせていた勇魅の右手が、止まったと同時に始末書の完成を物語っていた。
勇「さて、次の予定は....。」
着ているスーツの右胸のポケットに入れてあるスケジュール帳を取り出して今日の予定を確認する。
勇「8時から被害者女性のカウンセリングに付き添い。それ以外の予定は無し....か。」
勇魅は部屋に備え付けてあった時計を見て、現在の時間を確認する。
勇「今は7:30......うん。間に合うな。」
勇魅は座っていた机の上に書き置きを残して、完成した始末書を宜野座の机の上に置き、そのまま被害者女性が入院している病院へと向かうのであった。
────────
勇魅が病院へと向かってから数時間後。常守は公安局での当直があった為、公安局へと来ていた。
そして今は常守に撃たれた狡噛の容態を聞くために総合分析室No.2と書かれている部屋の前まで来ていた。
常「よし!」
常守が扉を開けて入ろうとした時、中から六合塚が出てきた。しかも何故かやけに艶々としていた。
常守はよくは考えていなかったようだがこの時、勇魅がこの場にいたならば"ああ。(察)"といった表情になっていたであろう。
六合塚は目の前に常守がいることに気づきじっと見ているだけだった。
常守は愛想よくしようと六合塚に笑いかけるが、六合塚は暫く常守を見るとその場から立ち去るのであった。
常「すみません。分析官の
その時、ソファーに座っていた金髪の女性が煙草を吹かしながら答えた。
唐「はいはい。どちら様?」
振り返り、此方を見てくる。常守はビシッ、と右手で敬礼をつくり、
常「昨日付けで刑事課に配属しました。常守 朱です。」
唐之杜は思い出したかのように話し始める。
唐「あー。慎也君を撃った新任監視官って貴方ね。エヘヘ
思ってたよりもずっと可愛い娘。顔に似合わず思いきったことするもんね。」
唐之杜は楽しそうに常守に語りかける。
唐「何したの? 慎也君にお尻触られた?」
常「いえ、その....狡噛さんの容態。ここに来れば分かるって聞いて。」
唐「ああ。それね。」
唐之杜はがっかりしたような感じでパソコンを打ちながら答える。
唐「いくら医師免許持ってるからって分析室に健康管理まで任せるお役所ってどう思う?....そりゃああたしも潜在犯ですけどぉ。...だからって何でも便利にこき使っていい法なんて無いでしょ。」
常「は、はぁ。」
唐之杜は愚痴を交えながら常守に話しかける。というか殆ど愚痴なのだが、
唐「えーっと あなた朱ちゃん?....だっけ?監視官なら公安局に出世コースでしょう。さっさと偉くなっちゃって組織改革して頂戴よ。先ずは刑事課備え付けのプールとバーラウンジを拵える所から...お願い。」
常「あ、あの...それは私の上司の薙鵺眞監視官に言えば良いのでは?」
唐「あーうん。もう言った。そしたら彼、なんて言ったと思う?」
常「いえ。」
唐「組織改革はしますけど...プールとかはレジャー施設じゃないですか。...ここは警察ですよ。警察署内にプールとかを作るなんて執行官はともかくとして監視官の士気が下がると思うので無理です。って言われたのよ。」
常「は、はぁ。」
溜め込んだものを吐き出すかのように常守にそう話した。
最も、薙鵺眞監視官の言っていることの方が正しい気がするが黙っていよう。常守はそう考えるのだった。
常「それよりも、狡噛さんの治療って?」
唐「あっ、そうね。」
冷めた様子で狡噛の寝ている様子を頭上のモニターに写し出す。
唐「まぁ、脊髄にいい感じに直撃かもしてくれたからねー。暫く本調子って訳にはいかないわ。立ったり、喋ったりはちょっとね。」
常「そうですか。」
常守は責任を感じてか項垂れてしまった。
唐「あっ、勿論ベッドのお供も無理....」
下品な下ネタを一発かますも、常守は狡噛しか見ていなかったために敢えなく不発となった。
唐「顔だけでも見て行きたいっていうなら面会位は大丈夫だけど、どうする?」
常「い、いえ。それなら別に。」
唐「今日一日安静にしてれば後遺症も抜けるわよ。また明日の朝にでもいらっしゃい。」
常「....はい。」
常守は下を向いてそう答えることしか出来なかった。
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常守は現在。事務室で昨日の事件についての報告書を纏めていた。
その時にふと狡噛の机を見てから、今日は居ない自分の上司であり指導官の勇魅の机を見回した。そして他に事務室に居たかがりと六合塚を見てみる。かがりは携帯ゲーム機で遊んでおり、六合塚はインカムの様な物で音楽を聴きながら楽譜とヴァイオリンが乗っている雑誌を見ていた。
常守は少しだけ二人を見てから報告書の作成へと戻る。
暫くしてタブレットが反応しなくなり、文字が打てなくなってしまった。
常「あの...すみません。タブレットって他に有ります?」
秀「備品の予備は狡噛執行官が使用中でーす。」
かがりは邪魔されたくないのかそう常守に言うだけだった。
常「でも、その...狡噛さんは。」
秀「パラライザーで撃たれて治療中でーす。」
そう言ってからかっていただけだったが、
秀「でっ!....痛ってー。」
六合塚に楽譜ケースで頭を叩かれてしまった。
六「...これ、使って。」
六合塚は常守に自分のタブレットを渡した。
常「は、はい。」
征「悪りー悪りー、遅くなって。ってあれ?今日の宿直ってお嬢ちゃん?」
そこにタイミング良く征陸が出勤してきた。
常「あっ、はい。」
征「昨日の今日で大変だねー。...まぁ。平和な一日になるように祈って、」
すると突然署内でサイレンが鳴り出した。
『エリアストレス上昇警報。足立区、以降グライスビル内部にて規定値超過サイコパスを確認。当直監視官は執行官を連れて直ちに現場へと直行してください。』
征「言ってる側からそれかよ。はぁ。」
秀「ま、俺らはシフト明けっすから頑張ってー。」
六「狡噛の穴...私が埋めます?」
征「いや、なにそれには及ばんさ。さ、出動だぜ監視官どの。」
常「えっ!?」
周りを見渡すも自分以外の監視官は居らずそれどころか今日の宿直の監視官は自分しか居ないと早々に常守は諦めるのだった。
─────────
一方、勇魅はというと....
勇「はい。もう大丈夫です。それでは。」
やっと今被害者女性のカウンセリングを終えて、今病院から出てきたところだった。
勇「さて、後は.....」
次はどうしようかと考えていると道路に警察の車両がサイレンを鳴らしながら通っていくのが見えた。
勇「....今日は非番なんだけど....行くか。」
勇魅は急いで警察車両が向かった場所へと向かうのだった。
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ビル内部にて、
征「モール内の出口は警報直後からドローンが監視している。そっちに引っ掛かった獲物は無し。つまり、ここのエリアストレスを高めている張本人はまだモールの中に居る。」
常守は征陸の報告を聞き、そして聞いた。
常「ドミネーターを使うんですか?」
今、常守と征陸の後ろにはドミネーターを積んだミニコンテナが置いてあった。
征「用心のために運ばせはするが、抜くまでのことにはなるまいよ。」
征陸は安心させるかのように常守に言い聞かせる。
征「そんじゃま、行こうかね。」
二人はホロスーツを使い。警察のマスコットの格好をして、モール内を回ることにした。因みにドミネーターを運ぶミニコンテナも隠して。
二人はマスコットになりきってモール内を探索する。
常守は慣れていない性か疲れている様な足取りで付いていくだけだった。
征「落ち着かないか?お嬢ちゃん位の歳ならホロスーツで遊ぶことなんて慣れっこだろう。」
常「ハァ....ハァ....全身アバターになるのは....ちょっと、」
二人がイチャつくカップルの前を通り過ぎようとしたところで征陸が何かに気づいた。
征「あーあれだ。右、手前の柱の影。」
征陸が示した場所には黒いコートを着た怪しい男が居た。
常「そんな。.....スキャナーも使わずにどうして?」
征「けだものはけだものを嗅ぎ当てる。」
征陸はそう言うだけで後は何も言わなかった。
黒いコートの男がカップルを妬ましく見ていると、背後からマスコット(征陸)が話しかける。
『失礼しまーす。サイコパス測定にご協力をお願い出来ますか?。』
男は戸惑いながら俯いた。
マスコット(常守)が近づいて取り押さえようとした時、
男がマスコット(常守)を突き飛ばして逃げ出した。が、
直ぐにマスコット(征陸)が、男の左腕を掴み押さえる。
直ぐ様男は抵抗するも、マスコット(征陸)が男の右腕を掴み、そのままモールの奥の方へと連れていった。
征「『あららー濁ってますねー。緊急セラピーを要求するものと判断します。ご同行願えますね?』」
男は渋々といった感じで連れて行かれるのであった。
ビルの外にて、
捕らえた男に緊急セラピーを施すため、用意した護送車に乗せる。
常「凄い。本当に潜在犯の見分けがつくんですね。」
征「良からぬことを考えている奴は一目見ただけでピンとくるものさ。」
征陸は長年刑事としてやって来たことでこういった事が出来るようになっている。言うなれば刑事の勘というやつだろう。
征「罪を犯すか取り締まるか、どっちにしても犯罪に関わる才能であることに違いはない。だから俺の犯罪係数もどえらい数値になっちまうのさ。」
常守はただ、俯いて征陸の話を聞くしか出来なかった。
征「それで、今は汚れ仕事を請け賜る猟犬の扱いだ。」
常「私、何の役にも立ってなかった。」
征「いやぁ、大助かりだぜ。監視官同伴じゃなければ執行官は外を出歩けないんだから」
得意気に征陸は言う。
常「でもそれって、」
征「だからな、んー」
征陸は少し考えてから常守に話す。
征「執行官を現場に連れてきて、後はサボったり、逃げ出したり、世間様にご迷惑にならないようにしっかり見張る。お嬢ちゃんの仕事はそれだけで充分だ。」
征陸は男を乗せた護送車に乗り込み、常守にそう言った。
常「それってつまり、何も手出しをするなってことですよね。」
護送車の扉が閉まり、常守のその問いに征陸は答えることはなかった。
常「.....」
勇「あれ?もう終わったの。思ってたよりも早いな。」
常守は驚いてバッと声がした後ろへと振り替える。
常「な、薙鵺眞監視官。」
勇「やぁ、常守さん。もう終わったの?」
勇魅は惚けたような感じで常守に話し掛けた。
常「ええ。ところで、薙鵺眞監視官はどうして此処に?」
本来此処には居ない筈の勇魅が居るので常守は少しだけ驚いていた。
勇「いや。昨日の事件の、被害者女性のカウンセリングに行ってたんだけどその帰り道で偶々パトカーが通っていくのが見えたから俺も行った方がいいかなーと思って来たんだけど、駄目だった?」
常「いえ、駄目...という訳ではないですけど。」
その時、常守は先程征陸に言われたことを思い出していた。
常「薙鵺眞監視官。質問があります。」
勇「ん? 何だ?俺に答えられる事なら何でも..」
常「私達監視官は居る意味は有るんですか?」
勇魅は予想外の質問に少し面食らってしまった。
勇「....どうしてそう思う?」
勇魅も先程の惚けた雰囲気から一変し、表情も険しいものに変わっていた。
常「先程、私何の役にも立ってなかったので。」
常守はそれだけ言うと、俯いたまま何も言わなくなってしまう。
勇「....取り敢えず、何処か話せる場所に行こう。今から大丈夫か?」
常「ええ。もう終わったので大丈夫だと思います。」
勇「分かった。」
──────────
とある喫茶店、
勇「さて、話の続きといこうか。...それで、監視官は必要か?か。」
常「ええ。」
常守は勇魅からどんな答えが帰ってくるか少し期待しながら返事を待った。
勇「まぁ、そうだな。基本的に執行官だけでも出来る事なら俺達監視官はただそいつらを監視してるだけだからな。ぶっちゃけ、監視官の役割なんて征陸さんの言うとおりだしな。」
常「そうですか。」
やっぱり薙鵺眞監視官も同じ答えなのか。とがっかりしていると、
勇「だがな、監視官が必要な時だってある。」
常「え?」
勇「例えば昨日の事件。あれは執行官と俺達監視官が協力しなければ奴を仕留める事は出来なかった。」
常「それは、」
勇「結果論か?...まぁそうだな。でも俺はそれだけじゃないと思う。」
常「え?」
勇「監視官の役割は執行官達の監視だけじゃなく、あいつらと市民を守ること、そしてあいつら執行官を守ることじゃないか?」
常「それは、どうしてそう思うんですか?」
常守は勇魅に詰め寄るようにして話を聞く。
勇「俺達刑事《デカ》の仕事は本来市民を守り、犯罪者を捕らえ、法で裁く。....そういったものだったんだけどな。今じゃシビュラの影響で潜在犯となった奴らをそのドミネーターで撃って捕らえるか、撃ってそのまま殺すかのどちらかだからな。....全く嫌な世の中になったもんだ。」
勇魅は常守を見ながら、自分が今まで思っていたことを打ち明ける。
勇「でもな、俺は監視官になった今でも決めている事がある。」
常「それは....何ですか?」
勇魅は一息置き、常守を見据え、話し始める。
勇「あいつら執行官を守ることだ。」
常「え?...でもそれは」
勇「監視官としての職務を放棄している。か?」
常守は少しだけ俯いて頷く。
勇「まあ信元を見てたら俺の考えは可笑しいだろうな。」
勇魅は天井を仰ぎ見ながらそう答えた。
勇「でも俺は少なくとも執行官達は好きで潜在犯になった訳じゃないって分かってるからさ、誰もあいつらを守らないなら俺があいつらを守ってやる。俺はそう思っている。」
常「.......」
勇魅の話に対し、常守はただ聞いているだけであった。
勇「例えば秀星だけどな。あいつ前にゲームセンター行きたいって言ってたからこの前連れていったんだよ。」
常「え?....今何て?」
勇魅の衝撃発言に常守は敬語を忘れてつい言ってしまった。
勇「いやだからゲームセンター行ったんだよ。秀星と、そしたらあいつ.....クレーンゲームずっとやり続けて...それでも景品全然取れないから悔しがってたな。」
勇魅はその事を思い出してか優しそうな表情になり、話す口調も何処か優しげになっている。
勇「六合塚さんも、この前楽器類の店に連れていったら嬉しそうだったからな。あのクールな六合塚さんが年頃の女の子の顔になってたから凄い新鮮だった。あれ?これってデートか?....まぁいいや。」
常(何それ凄い見たい。)
あの普段は皆と距離を置き、まるで一匹狼の様な六合塚さんが....笑ったり、喜んだりしていた?そう考えただけで常守はつい、笑いだしそうになった。
勇「後日、六合塚さんから恋愛相談を受けてな。その時は少しだけ照れてたな。」
常「へぇー。」
勇「信元だってプライベートでは犬飼ってるから犬の散歩に付き合ったこともあるし、征陸さんには旨いラーメンの店教えて貰って一緒に食べに行ったことだってあるし、」
勇魅は楽しそうに執行官の面々と今までしてきたことを話した。
勇「志恩さんにはテレビで特集してた高級スイーツ持っていったら凄い嬉しそうだったなぁ。」
勇魅はもう何時もの真面目な表情ではなく誰が見ても明らかに破顔していた。
勇「まぁそんな訳で。あいつら執行官だってただの人間なんだからさ、そこまであいつらと距離は取らないでやってくれよ。あいつら悪い奴らじゃないからさ。」
頼む。といった仕草をして、常守に話しを続ける。
勇「という訳で、俺の話はここまで。常守さんいや、常守。お前はどうしたい?」
勇魅は真面目な表情に戻った途端、常守に詰め寄る。
常「わ、私は....」
常守は挙げていた顔をまた下に向けて考えてしまう。
勇「まぁ、そんなに難しく考える事じゃない。なんなら執行官の皆に俺のどう思ってるか聞いてみたらどうだ?」
常「薙鵺眞監視官を、ですか?」
勇「ああ。以外なあいつらの一面を見られるかもよ。」
そう言って勇魅は席を立ち、財布から紙幣を出してテーブルの端に置いた。
勇「じゃあ。俺帰るから、ここの代金は払っておくからちゃんと時間までには署に戻れよ。」
勇魅は右手を後ろ手で挙げてその場を立ち去った。
常「私は....どうしたいんだろう。」
常守は暫く考えていた。
────────
署内の食堂にて、
常守が一人で夕食を食べていると、
秀「ご一緒していいっすか?監視官殿?」
少しだけ笑いながらかがりが前の席に座った。
常「どうぞ。」
暫くして常守がかがりに話しかける。
常「今日はもう非番なんじゃ?」
常守がそう言うとかがりが笑いだした。
秀「俺ら執行官は捕らわれの身なんだぜ。」
かがりはそう言ってコーヒーを飲む。
秀「オフだって刑事課宿舎の他には行き場所なんかねーの。ああ昼間は御免ねー俺もついついはしゃいじゃってさぁ....なんせ此処に居る女ときたらおっかない奴ばっかだし。朱ちゃんみたいな可愛い娘が来てくれてスッゲー嬉しいっつーかー。あ、朱ちゃんって呼んでいい?」
常「別にいいよ。」
少し間を置き、かがりが話しかける。
秀「しっかしまぁ公安局監視官なんてまたとんでもない就職したもんだねぇ。何でまた?」
常守は箸を休め、かがりに話す。
常「向いてない....かな?」
かがりは少し笑い、
秀「昨日のあれを見た限りじゃねぇ 誰だってそう思うんじゃない?」
常守は話を続けた。
常「シビュラ判定の職能適正公安局の採用基準にパス出来たから。」
かがりは納得がいかないのか常守に問いかける。
秀「そこんところ不思議なんだけどさぁ公安局の基準を通ったならもっと他の適正判定も良いもの貰えてたんでしょ 別の仕事だって選べたんじゃね?」
常守は膝の上に置いていた拳を強く握った。
常「うん。私ね十三省庁六公示全部A判定出たんだ。」
秀「え!?、マジ?」
常「うん。でもね他の仕事はどれも同じ判定を貰った子が私以外にも一人か二人居たの。公安局のA判定が出たのは私だけだった。500人以上居た学生の中で私だけ。」
話を続けた。
常「だから公安局にはね。私にしか出来ない仕事が有るって思ってた。此所に来れば私の生まれてきた意味が見つかるそう思ってた。」
かがりは急に怪訝な顔になった。
常「私の考え、間違ってるかな?」
秀「分っかんねーよ。俺なんかに分かる訳ねぇーじゃん。あんたは何にでも慣れた、どんな人生だって選ぶ事が出来た、それで悩みさえしたんだろ?すげぇよな、まるでシビュラが出来る前のジジババみてぇだ。」
かがりは常守の話の性か不機嫌になってしまっていた。
秀「今じゃシビュラシステムがそいつの才能を読み取って一番幸せになれる生き方を教えてくれるってのに...本当の人生?生まれてきた意味?そんなもんで悩む奴が居るなんて考えもしなかったよ。」
かがりは明らかに常守に対して怒りをぶつけている。
秀「俺なんて5歳でサイコパス検診に弾かれて以来ずーっと潜在犯だぜ。治療公正の見込みゼロ。だから今俺は此所に居る。一生隔離施設に居るより公安局の猟犬になって殺しや家業を受ける方がマシだから。俺にはそれしかなかったからさ。」
シビュラを憎んでいるのだろう、当然だ。もしこの世界にシビュラが生まれなければ彼は潜在犯として生きることは無く、他の人のように学校に通ったり、友達と下らない話で盛り上がったりすることが出来た筈だからだ。
かがりは立ち上がって話を続けた。
秀「俺、別にあんたに意地悪するつもりはなかったんだけどさ、」
ドン、と机に手を押し付け、
秀「気が変わったわ。だから改めて聞いてやる。」
常守は驚いて何も言わなくなってしまう。
秀「あんた。何で監視官なんてやってるんだ?」
狡噛の病室にて、
狡噛が目を醒まし、右手側を見ると、常守が俯いたまま立ち尽くしていた。
常「すみませんでした。」
狡「...執行官に謝る監視官は珍しい。」
暫く間を置いて、
常「....やっぱり怒ってますか?」
狡「....あれがあんたの判断だった。俺が文句を言える筋合いじゃない。」
また暫く間が空き、常守が話しかける。
常「私、間違ってたんでしょうか? チームの足を引っ張って、皆を危険に晒しただけだったんでしょうか?」
また更に間が空いた。暫くして今度は狡噛が話す。
狡「.....もう長いこと執行官をやっている。迷うことなく、疑うことなく命じられたままに獲物を仕留める猟犬の習性が俺の手には染み付いちまってる。」
狡噛は自分の右手を見ながらそう話す。
狡「あの銃の言いなりになって何人もの潜在犯を撃ってきた。」
右手を握りしめ、そう常守に話す。
狡「それがこの社会のためになると小綺麗な理屈を鵜呑みにして、いつの間にか考える事さえも無くなっていた。自分がやっていることが何なのか顧みる事さえも忘れていた。馬鹿な話だ。刑事ってのは誰かを狩り取る仕事じゃなくて誰かを守る仕事だった筈なのにな。」
そう言って狡噛は笑った。まるで今までの自分を嘲るように、
常「狡噛さん.....」
狡噛は常守の方に顔を向けた。
狡「あんたは何が正しいかを自分で判断した。役目より正義を優先出来た。そういう上司の元でなら俺はただの犬ではなく刑事として働けるかもしれん。」
狡噛は常守にあんたのやり方は間違っていない。そう言って常守を肯定した。
常「有難う御座います。」
狡「執行官に礼を言う監視官も珍しい。」
常「....落ち着いていたら狡噛さんだって彼女を撃とうとはしなかったですよね?」
狡「どうだかな。あの時俺は迷わなかった。迷えば死ぬと思っていた。こんなところで終わりたくない。絶対に死ぬわけにはいかない。それだけで頭がいっぱいだった。」
狡噛はベッドから起き上がろうとして、
狡「どうあっても始末をつけなきゃならない役目が、グッ」
常「狡噛さん。」
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後日、事務室にて、
回復した狡噛が自分の席につき、その場には勇魅も居た。宜野座は常守が提出した報告書を読んでいた。
宜「...つまり、あの場における判断は間違いはなかったと、それが君の結論か?常守監視官。」
常「はい。彼女の犯罪係数上昇は一過性のものでした。事実、保護された後のセラピーも経過は良好でサイコパスも回復に向かっています。」
宜野座は狡噛と勇魅を一瞥し、
宜「狡噛。何か言いたいことは?」
狡「...無い。常守監視官は義務を果たした。それだけだ。」
宜「勇魅。お前はどうだ?」
勇「...特には。狡噛と同意見だ。」
宜「...そうか。」
こうして、今日も一日は過ぎていった。
突然ですが皆さん第一期のエンディングは何話目が好きですか?私は8話目です。良かったら感想下さい。それではまた。