※この作品はR-18です。

昼は憲兵、夜は……。   作:鷹山

1 / 6
この小説はフィクションです。
登場する艦娘は皆様の嫁艦とは一切関係はありません。



発端

 月明かりも遠慮する薄暗い部屋の中央。そこには分娩台に似た装置に拘束された少女……艦娘の姿があった。かつては袴と呼ばれていたであろう衣服は乱暴に破かれ、既にその役割を果たしてはいない。

 鎖骨、腋、乳房、腹、恥部、肛門。自身にすら克明でないすべての部位が、惜しげもなく晒されている。強制的に。

 

 防音効果によって静まり帰った室内には、幾度も絶頂を迎えた少女の虫の息。そして身体を痙攣させた際に響く鎖の金属音だけ。それらもいずれは薄闇の中へと消えていく。何度もあげた悲鳴と同じ場所へ。

 

「お、お願いです……ゆるして……許してください……もう、イ、イキたくない」

 

 甘美な淫蕩地獄に片足を突っ込んだ様子で、少女は薄闇の奥にいる男に理性の一片があることを信じ、嘆願。その嘆願こそが男の愉悦であるとも知らずに、尚も助けを乞う。

 

「では、質問に答えて下さい。貴女は提督と私……どちらが好きですか?」

「……あ、アナタです」

「私は嘘が嫌いです」

 

 彼女の返答はお気に召さなかったのか、男は手の平に収まるリモコンを軽く操作。すると、先ほどまで彼女を責めあげていたマシンバイブがまたも唸りをあげ始め、秘所に狙いを定める。

 

「あ、イヤ、イヤです……それ、やめて……やめてください」

「イヤだ? あれだけイッていながらよくもまたそんな嘘が吐けますね。まったく、修正が必要だ」

 

 容赦も躊躇いも無く、さらにリモコンを操作。その瞬間。

 

「あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ! ダメダメダメダメェ!!」

 

 無数のイボの付いたマシンバイブが少女を徹底的に責める。愛や恋とは対極に位置する性欲の極みを無理矢理押し付けるように、機械的な挿入を繰り返す。何度も。異常な速さで。何度も何度も。

 

「やだぁぁ!  とっ、止めてぇぇ!! イク! またイクゥゥ!!」

 

 平均男性のそれよりも太く大きく模された男根は、少女の愛液を潤滑油代わりにして易々と膣内を暴れ回りつつ、やや鋭いイボが削岩機のように膣壁をゴリゴリ削りながら子宮口を強引に叩きつける。その快感はいかほどのものか、筆舌にし難い。

 分かるのは、普段慎みを旨に行動していた少女が悲鳴に似た嬌声をあげ、流れ星の軌跡のような銀髪を振り乱し、口端からは涎を垂らし、脳を灼く快感に打ち震え、スラリと美しい肢体をはしたなく痙攣させていることだ。平素の彼女からは想像もつかないほどに淫猥である。

 

「私のこと、好きですか?」

「は、はぃぃ! 好きぃ! 大しゅきぃぃ!」

「愛してますか?」

「愛してますっ! んあぁぁ愛してますぅぅ!!」

「この提督から貰った指輪……どうします?」

「捨ててえぇぇ! そんなのいらないっいらないから! だからお願いします! これ止めてくださぁぁい!!」

「よく言えましたね。では、ご褒美を」

 

 男はそう言いながら、無情にもリモコンの【強】に指を合わせる。

 

「ウアアアァァァ!!? あああいしてますぅぅ! 本当の本当にあいしてますからぁぁあ! おかしくなるぅぅ! どうしてぇ……どうしてぇこんなあぁぁ!!」

「ああ、翔鶴さんもそう思いますか? 本当に、どうしてこんな事になったんでしょうね」

 

 もはや会話の成り立たないほどに壊れた頭を使い、男は少し過去を思い返す。愛しき女性の淫らな嬌声をBGMとして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「憲兵府より参りました。第一憲兵隊所属、新堂一郎です!」

 

 執務のみならず、応接も兼ねた執務室に威勢の良い大音声が反響する。緊張気味のようであるが、声が裏返ることがなく張りがあり、堂々としていて若々しい。

 春一番を思わせる挨拶をまともに受けたのは白を基調とした軍服を着た、中年の提督であった。

 深い若草色の軍服に身を包んだ、新風のような若者を過去の自分自身に重ねているのか、数多の経験と共に刻んだ顔の皺を懐かしげに緩ませて歓迎する。

 

「忙しい中よく来てくれた。そう固くならなくていい、まあ掛けてくれ」

「はっ! 失礼します!」

「うむ、元気があって良いな。やはり若いというのは素晴らしい。こちらまで仕事のやる気が湧いてくるというものだ」

「そんな、恐れ入ります」

 

 呵呵と笑いながら提督が勧めたのは、応接の為に用意されているであろう触り心地よい革張りのソファ。遠慮がちに座ると迎えるように沈み、気の休まる絶妙な位置で止まる。さすがは提督執務室御用達の高級品。まるで意志でもあるかのようだ。

 

 しかし、不相応な高級品だと感じたのか、新堂はむしろ落ち着かない。いや、落ち着かないのはソファのせいではなく、目の前の男……提督の威に圧倒されているからだろう。

 柔和な表情のままに、百戦錬磨を謳われた男が優れた観察眼をもって……。

 

(一憲兵の私を評価している?)

 

 提督の視線をそう捉えたのか、新堂の背中を若干の汗が這う。寒気を伴うイヤな汗だ。

 余計な失態を演じる前に手早く用件を済ませるが吉とみたのか、彼は我先に口を開き先を促す。

 

「私に御用があるとの事ですが、いったいどのような?」

「……っとスマンスマン、歳をとるとどうも余計な話をしてしまうものでな。まずはこれを見てほしい」

 

 自嘲気味に笑いながら手渡したのは、iPadに似た薄型の液晶であった。

 映し出されているのは、この鎮守府に所属している艦娘たちの現況を表したデータリスト。ベニヤ板並みに薄く、A4サイズの液晶画面の中から、艦娘たちが凛々しく新堂を見据える。

 

 皆一様に思い思いのポーズをとった全身写真が貼り出されており、その隣りには身長体重に始まってスリーサイズ。趣味や特技に自己アピール、現在の目標や今後の課題。昨月の反省点と着手している任務などなど、事細かな情報が記載されていた。機密とは言えないまでも、知ったら最後、明日の朝日を拝めない機雷のような内容まである。

 

 とはいえ、若輩の憲兵および世の殿方には過ぎた内容であるようで、大部分の情報は黒線で厳重に保護されていた。

 特にスリーサイズと体重は念入りに塗り潰してあるのが印象に残る。他者の目を気にするほど怠惰な身体をしている艦娘はいないようなのだが……乙女心というものは、誰もが思う以上に繊細であるらしい。

 

 乙女心はともかく、現在彼は個人情報を盗み見ているのと同等であり、気分は後ろめたい。とりあえず眼を細め、視界を狭めることで彼なりに良心を保とうと試みる。もしこの件が艦娘全体に知られたならば……きっと、死すらも生温い悲惨な未来が待っているであろう。

 画面の中の艦娘から千枚通しで刺すような視線を感じたのか、新堂は指が摩擦熱を帯びるほど素早く画面をスライドし続ける。

 

 どんなことにも一所懸命な吹雪。

 夜戦の良さを熱弁する川内。

 誰に対しても壁や溝を作らない鈴谷。

 楚々と密やかな扶桑。

 国境を越えて集った海外艦たち。

 そして、翔鶴。

 

 例を挙げれば枚挙に暇が無いほど、画面に沢山の艦娘が表示されては瞬時に流れていく。一瞬ではあるが、花盛りの年頃である彼女たちはやはり可愛いくもあり、綺麗でもある。

 職業病によるものか、生真面目で朴訥な新堂ですらクラりときそうな容姿であるが、そんな下心を振り払うように彼は気になる点を挙げる。

 

「ただの勘違いかと思いますが、一部の艦娘方の表情に違和感を覚えます。伏し目がちで落ち込んでいるような、心ここに在らずというような……気のせいでしょうか」

「ほう、憲兵長に聞いていたとおり。なかなかに慧眼だ」

「こ、光栄です」

 

 慧眼はさすがに褒め過ぎだと、新堂は思う。なぜなら、目に付いた一部の艦娘はあまりにも日常と落差が激しいのだ。例えば金剛の表情は常日頃と比べると、違いは顕著に表れている。

 

 金剛型の長女としても古参の艦娘としても、各艦娘間の仲介役をしっかり果たしつつリーダーシップをとり、確かな戦況判断力をもって戦果を挙げながらも驕らず「皆さんのおかげデース!」と、愛嬌たっぷりな片言を言い放ち、誰彼構わずハグをしては周囲を和ます。それが金剛のイメージ像とみて差し支えないだろう。

 翻って液晶内の金剛はと言うと、無理矢理な愛想笑いだけを浮かべており、口癖のバーニングラブどころか風前の灯火といった様相を呈していてひどく弱々しい。彼女のことを多少なりとも知る新堂としては、『ただの立ち絵なので本人とは関係無い』という返事を期待したかったのだが。

 

「この液晶は夕張が開発したものでな、艤装と妖精を通じて艦娘の心情を投影してくれる心情探信儀、略して【心探】だ。と言っても夕張の思い付きによる開発品だから、どこまで信用してよいか分からんがな」

「夕張さんが、ですか? ……なるほど」

 

 提督の返答は、根本へ直接向かわない遠回しなものであった。

 

「ああ、夕張と言えばその節はすまなかった。彼女には厳しく言っておいたが、俺からも改めて謝罪させてもらうよ。どうか許してほしい」

「そんな、とんでもない。私も軽率でしたし、それに過ぎた話ですから」

「そう言ってもらえると助かるよ」

 

 夕張の名を聞いてやや眉をひそめた新堂の表情を、提督は見逃す事はなく、またしても話が横道へ逸れる。

 

 夕張は艦娘としての任務をこなす傍ら、装備の開発にも余念がない万能な艦娘である。ただ、通常の兵装は問題ないが、新開発となると話は別だ。

 以前夕張が開発したのが、普通の人も艦娘の如く戦えることが出来る艤装。通称【艤人戦装】である。その栄えある人体実験第1号に選ばれたのは他でもなく、若いながらも誠実実直に任務にあたる新堂一郎である。

 

 その結果を細かに説明をする必要も無いだろう。試しに演習用海域にて主砲を試射したら爆発した、ただそれだけ。夕張が開発したのは【艤人戦装】という名前の自爆装置だったのだろう。あるいは対象の性格を利用した大胆な殺人トリックだ。無論、推理するまでもなく犯人を察することが出来るのだが。

 

 不幸中の幸いとしては、零距離爆発の影響で埃や煤まみれになったものの、彼自身に傷一つ火傷一つ無かった事だ。もうワケが分からない。パーティー用のドッキリグッズだと言われたほうが、まだ納得できる。

 そんな妙な経験をした以上、夕張が関係する物事に躊躇いと疑心が湧くのも仕方ない。だが新堂は既に、夕張に対して理解がある。

 

(夕張さんが相変わらずで良かった)

 

 心の中で安心したように笑う。

 この新堂一郎と言う男、稀に見る大器の持ち主かそれとも救えぬ凡愚であろうか……未だ答えは出せそうもない。

 

「話を戻しますが、金剛さんを始めとしたこちらの艦娘の方々は、どういった心情を表しているのですか? まさか複雑な悩みを抱えていると?」

 

 決して新堂は場違い且つ無礼な質問をしたわけではないのだが、先ほどの和やかな雰囲気はどこへ行ったのか、急転直下を経て一変。一秒が一分に感じるほどに沈黙が重苦しい。

 口をはさむことはばかられる厳粛な空気を読んだのか、新堂は黙して提督の随意に場を任せる。

 

「う、うむ。実に、言い辛いのだがな……」

 

 やはり事態は良くないのか、提督の口は錆びついた錠のように動きが鈍い。

 そんな中、決死の覚悟を秘めているであろう提督の告白に際し、新堂は改めて居ずまいと姿勢を正す。

 

「私でよろしければ、なんなりと申し付けて下さい。必ずや力になります!」

 

 艦娘たちは立場は違えど護国安寧を志す仲間だと、彼はそう信じている。どんな些細なことでも助力出来るならば是非も無い、むしろ光栄だ。そんな口恥ずかしい初志を曲げず、現在に至る。

 そんな彼に目を合わせず、提督は大きな溜め息と一緒に、事の次第を打ち明ける。

 

「この艦娘たちは欲求不満なのだ」

「……今、何と? 聞き違いかと思いますが、欲求不満と聞こえたのですが」

「いや、間違ってない。彼女たちは欲求不満なのだ」

「…………そうですか」

「そうだ」

「……私は警備巡回に戻ります。失礼しました」

 

 少し逡巡したのち、新堂は足早に立ち去る……が。

 

「待ちたまえ、話はまだ終わっていないぞ。それとも、先ほど宣った台詞は嘘だったのかね? 新堂君にならばと思ったのだがなぁ」

「う……では、話だけでしたら」

 

 自分に嘘を吐けない性分とは美徳である。が、時に足枷となる。

 新堂が軽はずみだったのか、それとも提督が巧く仕組んだのか、見事に言質を取られたようだ。新堂は足取り重く元の位置へ戻り、観念したように話に耳を傾ける。イヤな予感しかしない話を聞く為に。

 聞きたくない事を聞かねばならないのは気が重い物だが、今回の事を機に……、

 

(勢いに任せて発言するのを自重しなければ)

 

 新堂は固く反省し、また一つ成長を遂げる。

 

 

 

 さて、話といってもさして難しいことではなかった。要約すると『【心探】によって露わとなっている艦娘の欲求不満を解消して欲しい』である。

 不満や鬱憤というものは意外とバカに出来ないのは、誰にとっても知られているだろう。無論、艦娘にも当てはまる。

 それが原因で遠征失敗・赤疲労・過食偏食・艦娘同士の不仲……等々に繋がるケースも少なくない。故に、多少下世話であろうと不平不満を解消することは最重要と言えるが、新堂の答えは決まっていた。

 

「残念ながら、今回は力になれないようです」

 

 彼は男である前に憲兵である。自身の為すべき役割に誇りもあるのだ。越えてはならない境界線を守るのが憲兵の責務だと、彼は頑なに遵守している。

 

 しかし、拒否されることも提督にとっては案の内。

 特別給与で釣らず出世欲を煽ろうとはせず、あえて艦娘の為。ひいては国家の為。そして国民の笑顔の為だと、巧みな話術をもって切々と語り、さらにダメ押しとして……。

 

「新堂君の力が必要なんだ。頼む、このとおりだ」

 

 誠意をもって頼まれると断れないのを、提督は事前に調べていたのだろう。流石、幾度の戦いを切り抜けてきただけあって、相手の泣きどころを突くのが巧い。

 自身よりも下の立場にある者に頭を垂れる。これが決定的だったようだ。

 

「……分かりました。そこまで言われるのであれば」

「そうか! 新堂君ならば引き受けてくれると信じていたぞ」

 

 遂に新堂、折れる。

 しかし解せない事が一つ。

 

「激務なのは存じてますが、提督ご自身でこなしては?」

 

 艦娘へ対し無遠慮に手を出す。これは御法度であるが、今回の事を想定した暗黙の了解は存在する。もちろん、明るみには出せないのだが。

 憲兵らしからぬ物言いといえど、もっともな質問である。

 

「以前はな、だが今は……」

「……そうでしたね。失礼しました」

「察しが良くて助かる」

 

 提督の左手薬指には指輪がはめられていた。陽光の反射も無いのに優しく煌めく様は、まるで光を内包しているかのようだ。

 ケッコンカッコカリといえど、提督は相手のことを……大和のことを心から愛しているのだろう。他の艦娘が目に入らぬほどに。そう思うと新堂はもはや何も言わず、覚悟を決める。

 

「新堂君、そんなに肩肘張らなくても大丈夫だ。欲求不満といっても、大抵は長い愚痴を聞かされて終わりだ。君は相談に乗って、俺に報告してくれれば良い」

「そうでしたか、それを聞いて安心しました」

「では新堂君、今後は形式上俺の警護役として鎮守府に常勤してもらう。憲兵長には俺から伝えておくから心配無用だ。細かな変更は追々話すとして……とりあえず此度のことは他言無用で頼む。外部に洩らすなどはもってのほかだ。いいな?」

「もちろんです」

「うむ、良い返事だ。やはり君を選んで正解だったな。最近【心探】に引っ掛かる艦娘が急に増えだして困っていたんだよ。君には多いに期待しているぞ」

「最近増えだしたとは、いつ頃です? 原因は何でしょうか?」

「増えだしたのは確か、大和と結婚式カッコカリを挙げた頃だったかな。原因に関してはさっぱり分からん。分かったら報告してくれ」

 

 

 原因は明らかになった。しかし、解決は出来そうもない。そう確信した新堂は、奥歯の隙間に異物感を覚えたようななんとも言えない表情を押さえ込みながら、

 

「……善処します」

 

 とだけ残して執務室をあとにした。

 




オッパイ( ´Д`)オッパイ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。