昼は憲兵、夜は……。 作:鷹山
エロシーンだけ見れればそれで良いって方は、8,000文字くらいすっ飛ばしてください。
「ふん!一から読んでやるわよ。べ、別にアンタのためじゃないんだからねっ!カン違いしないでよねっ」……という方は、ごゆっくりどうぞ。
大海原を鏡で写しとったかのような蒼穹の中を、冬鳥が小さな翼を懸命に羽ばたかせている。青と淡い藍で澄みきった蒼天を、自由この上なしとばかりに楽しそうに泳ぎ回る姿は、まるで自然と一つになったようにも見えてくる。がんじがらめの規律や無用な暗黙の了解で縛られた世の人々の羨望を集めてやむことはない。
そんな心地良くも少し凍てつく冬日和の下には、波飛沫と光る汗を珠のような肌で弾きながら砲雷撃戦に臨む艦娘たち。
明日にはきっと……いや、今日の内に一人前になってみせるぞと意気込みつつ海を駆ける艦娘に対し、その意を汲み、心に鬼と悪魔を宿して無間地獄のような演習を課す重巡洋艦・那智の激が飛ぶ。
「どうした朝潮!貴様の力はその程度か!?」
「まだです!もう一度お願いしますっ!」
或るものは必ず不屈の闘志で立ちあがる。
「戦場に退路は無い!あるのは活路だけだ!怯むな潮っ!」
「は、はい!」
或るものは弱い自分にだけは絶対負けたくない。
「自分の身を守れぬ者が敵を助けられると思うな!夢を実現するか戯言で終わらせるか、電……貴様次第だということを忘れるな!」
「電の本気はこれからなのです!」
或るものは守りたい、助けたい、救いたい相手がいる。
冬鳥のさえずり空気を澄ませ。寄せては返す大波小波は海を雪ぐ。叱咤激励に応える艦娘の覇気が潮風にのって四方へ渡り、大気を震わせて雄大に轟く。
斯くのごとき喧噪が叙情的に聞こえてくるほどの場所に、空母艦ご用達の弓道修練場は存在していた。
鑑賞と日除けに適した樹木に覆われ、ものの哀れすら感じられる弓道修練場には翠色の龍と橙色の龍の姿があった。弓術を至上にまで高めながらも慢心せずにいる二人は、鋭利な爪牙を研ぐ伏龍そのものと評してよい。
彼女たちこそ鎮守府の両翼を担う二航戦。名を、蒼龍と飛龍。
悟り得られそうな寂静の中。衣擦れの音とともに立ち上がったのは、眼に優しい翠色の和装着物をまといし艦娘、蒼龍。
丈の短い暗緑色の袴から覗く健康的な太ももを惜しげなく晒し、肩幅ほどに脚を開いて立ち上がると、背丈が他の正規空母と比べて頭一つ分低いのがよく分かる。されど背筋伸ばした立ち姿は毅然としており、腕の動きに追随する振袖は天を舞う龍の翼膜と見違える威風すら放っていた。
胸当てなど甘えだと言わんばかりの圧倒的な胸部装甲をふるりと揺らし、射法八節の礎たる胴造りの姿勢を作り上げる。
青みがかった髪を細紐でキュッと束ねたツインテールが潮風に撫でられてもなお、穏やかな海色の双眸は射るべき的を睨んで逸らさない。
大樹が根をはったようなしっかりした胴造りから始まりし動作は流麗極まり、粛々と事を為すように弓を掲げる。と、ここで蒼龍すぅっと息を吸い込み、気息をヘソのやや下にある丹田に集積させてさらに圧縮。燃え上がる魂にも似た気焔へと昇華させてから弓を引く。
張りつめた弦を引き弓がしなり、三日月を描く。いわゆる【会】と呼ばれるその姿は一見静止しているが、その実、大弓の反発力とそれに持ちこたえる膂力が薄氷を行くが如きバランスの上に成り立っている。耳をそば立てれば、蒼龍の身体から反骨心溢れる怒号が聞こえてきそうだ。
過不足の無い筋力と多大な精神力が求められる無理難題ではあるが、これが出来ねば弓を扱う資格は無い。
唾液を飲み込む音すら許されぬ緊迫感漂う中、蒼龍はついに好機を見出し、極限にまで練り上げた気焔を一気に爆ぜるように矢を放つ。
矢は風を追い越し、旋風となって風を切り裂き、疾風となって音を置き去り、至純一途な想いを体現するように一直線。これぞ正射必中の理。この一矢、まさに雑念の暗雲に差し込む一筋の光明となれり。
語るまでもなく図星へ的中。一拍遅れて、タァンッという腹に響く良き快音一閃。直後、翼を休めていた冬鳥たちが驚いた様子で一斉に飛び去っていく。残されたのは、周囲にこだまする矢音のみ。
庭園に設えたししおどしにも似たこの余韻……、野点の茶会に相応しいほどの侘び寂びすらある。それはつまり、彼女の弓術が文化教養にならぶ芸術の域にまで達した何よりの証拠に他ならない。
万人の度肝を抜く会心の一矢であった。されど蒼龍は喜びに浸ることはない。誰しもが持つ心の弱さの一つである慢心を、明鏡止水に及ぶ残心にて戒める。と同時に、勇姿溢れるその小さな背中は飛龍に向かって雄弁に語っていた。
(どう飛龍、私についてこれる?)
飛龍は心底震えた。それは恐れからでも怖気からでもない。歓喜に充ちた武者震いのせいだ。
(さすが蒼龍、そうこなくっちゃ面白くない!)
最高の相棒。最愛の親友。最大の強敵。
生涯を賭けても得られるか分からぬ唯一無二の存在を前にして、飛龍は一寸も臆すことなく弓を引き、無心にて矢を放つ。
明度の高い茶髪が、剛胆にして涼やかなる一矢の衝撃でふわりと舞って、さらりと整う。
蒼龍が先を行っては飛龍が追い越し、追い越された蒼龍がさらに巻き返し、負けるものかと飛龍は奮起する。
死力を尽くしたじゃれ合いを飽きずに繰り返す翠色と橙色の双龍は、いつしか昇竜の如く神域の頂を目指す“最強の挑戦者”と呼ばれるようになるのだが……それはまた別の話である。
「あ、新堂だ。おーい、やっほー!」
「新堂くん。来てたなら声かけてくれればよかったのに」
「二人の邪魔したら悪いと思ってな」
澱みなく流れる清流のような射法八節を数回繰り返したところで、二人はようやく新堂の存在に気が付いた。
蒼龍と飛龍はどちらも背が低い。その為か、小走りで駆け寄る姿は兄を出迎える妹にも見える。先ほどまでの武人然とした力強さはどこへいったのか……まるで別人。
蒼龍ははにかみ笑顔、飛龍は落ち着きある微笑み。二航戦それぞれの性格を示す表情をもって、珍客である新堂を手厚くもてなす。
「邪魔だなんて思わないよ。水臭いなぁ」
「そうそう、新堂くんはちょっと気を遣い過ぎ」
だれに対しても気さくで距離感を微塵も感じさせないからだろう、普段緊張感をもって行動する新堂も余計な力を入れずに接することができた。
堅苦しい緊張や重苦しい空気。その凝りをほぐすことのできる存在は貴重である。特に新堂のような肩肘張りやすい男には尚更だ。
「で、私たちの弓どうだった?」
「せっかく見てたんだし、遠慮なく感想きかせてくれる?」
制空権と敵編成を見通す千里眼を持ち合わせる瞳を輝かせながら、挨拶もそこそこに新堂へ問う。その眼差しは何かを期待している。
「そうだな、弓に関して門外漢だからなんと言ったらいいか分からないが、眼を惹きつけて離せない……それでいて近寄り難い雰囲気。そういうのを感じたかな。とにかく凄く良かった」
曖昧な表現ではあるが、好評価を伝えようとしているのがよく分かる。褒められたことが単純に嬉しかったらしく、二人はご満悦な様子でうなずく。
しかし、蒼龍と飛龍が真に聞きたいのはそんなことではない。
「ふんふん、それで?」
「つまり蒼龍と私、どっちが良かった?」
「当然私だよね!」
「どう考えても私でしょう!」
そう言いながら、彼女たちは互いを押し退け合って答えを迫る。二人の勢いに少し困惑するも予見していたのか、事前に用意しておいたであろう模範解答を手際良く返す。
「二人とも見事で、私では甲乙つけられな──」
「どっちも良いとか優柔不断な返事したら腹パンするからね」
「じゃあ私タイキック」
さすがは偵察機や哨戒機を自在に操る空母。素早い状況判断から相手の行動を察知しつつ、巧みに威力封殺するのもお手の物といったところか。
言論の自由をあっさり奪われ、理不尽な苦渋の選択肢を前に、新堂はできるだけ飛龍のほうを見ないようにして答える。
「蒼龍のほうが、良かった……かな」
「いえーい!さっすが新堂わかってるぅ!」
飛龍より良かった。それがなにより嬉しい蒼龍は兎のようにぴょんぴょん飛び跳ねて喜びを全身で表現しつつ、豊かな乳を上下に弾ませながら新堂に抱きつく。
それとは対照的に、飛龍からは負のオーラが沸き上がる。前髪で陰の付いたジト目で二人を睨みながら、恨み辛みのこもった一言を呪詛のようにして判定者に物申す。
「……やっぱり多聞丸以外の男はゴミクズね」
尊敬する男性像と比較した上、わざと聞こえるように言うあたりただの八つ当たりでしかない。とはいえ、標的となった新堂は恐怖に慄く。
尋常ならざる嫉妬の黒炎で身を焦がすその様はどこか深海棲艦に近い。矛先が明確である分ずっと生命に関わるだろう。幾つか修羅場をくぐった猛者であっても、冷や汗をかかずにはいられない。
味方であれば頼りになる可愛い姉御肌の彼女たちだが、一旦敵に回せば逃げ場の無い殲滅戦を仕掛ける情け容赦無き艦娘。それがニ航戦である。
「そ、そういえば二人とも今晩暇か?実はゆっくりと話がしたくなってな。久しぶりに酒、付き合わないか?」
新堂は人差し指と親指を器に見立てた仕草で二人を誘う。
蒼龍に難ありの報を確かめるため彼女と差し向かいで呑むつもりだったが、飛龍のフォローも必要と判断したようだ。この男、案外機転が利く。
「お、いいねぇ。久しぶりに楽しもっか!ねっ、飛龍もいいでしょ?」
「うーん、しょうがない。今日は偽多聞丸で我慢してあげる」
偽多聞丸とはいったいどういった類いの隠語なのか。それは飛龍にしか分からないが、それはともかくとして機嫌は上向いたらしい。酒と聞いて飛龍の口角が緩む。
「それじゃあ、定時になったらまた来るから」
「バイバーイ!おつまみ期待してるよー!」
「待ってるからねー」
再会を心待ちにしながら互いに手を振り続ける。やがて新堂の背中が見えなくなり、声も聞こえないだろうと判断したところで、蒼龍と飛龍は緩んでいた口元を真一文字に固く引き締める。すると、場の雰囲気がガラリと変わった。
ややあって、またも修練場に快音が響く。それは先ほどよりも爆発力に富み、尚且つ鋭い。その炸裂音を聞いた一航戦の赤城と加賀は後々こう語る。
ーまるで龍の咆哮のようであった、と。
□■
鎮守府の名を冠し、赤褐色のレンガで囲われたこの建物は決して小さくはない。深海棲艦から発せられる脅威を一手に引き受けても動じない姿は堅固な砦であり、巨大な一枚岩のようだ。
しかし、百人以上存在する艦娘全ての衣食住を賄いつつ収容可能かと問われれば、答えは否。それゆえ駆逐艦や一部の艦娘以外の、精神的に成熟していると判断された艦娘は寮に住むことになっている。
これは能動的に自己管理の重要性を自覚してもらう試練でありステータスでもある。つまり淑女に程遠い【れでぃ】ではMVPや戦果、実績や練度を積み重ねたとしても不可。いくらワガママを言ってもダメなものはダメなのだ。
寮は鎮守府から離れているが、徒歩で数分の距離でしかないので出勤に差し支えはほとんど無い。むしろ寮の居住性は良好且つプライベートも充実しているので割と好待遇と言える。
もちろん中には「みんなと一緒のほうが寂しくなくって良いのです。毎日楽しいのです」といった意見もあるので、鎮守府と寮のどちらが良いかを決定付ける必要は無い。良し悪しは艦娘の数だけ存在するものだから。
「かっんぱーい!」
「かんぱぁい!」
「乾杯っ!」
とっぷりと日が暮れ、一部の軽巡が闇と同化する静かな真夜中。空母寮の或る一室で五度目となる乾杯の音頭が行われた。防音設備が優秀なのをいいことに、三人は日頃の鬱憤を晴らすように喧しく羽目を外す。
酒宴が始まってから既に四時間。ニ航戦と達筆な字で書かれた札が提げられた部屋の中は……目も当てられぬほどに混沌としていた。
「じゃあ何か?蒼龍はいまのところ悩みがないとでも?私に隠し事は通じないぞ?本当だぞ?嘘ついてたらアレだぞ?あの……とにかくアレだぞ?」
「なやみぃ?なにそれおいしーの?何味?間宮さんのアイスとどっちがうまい?」
「はいはーい私知ってる。蒼龍の悩みは悩みが無いことでーっす。多聞丸が二、三回言ってたよ。大事なことなんだろーね」
「なに?悩みが無いのが悩みってことは……悩みがあるってことじゃぁないか!どういう事だ?さては私を騙したのか!?」
「ムム゛ッ!ちがいましゅ!」
「くふふっ……ちょ、蒼龍やめて。いきなり阿武隈ちゃんの真似するのやめて。それ私ツボだから」
「江草隊のみなさーん、蒼龍の指示に従ってくださーい!……うぇーんしたがってくだしゃーいー!」
「うはははははっ!やばいやばい、お腹やばい!ホントもう阿武隈ちゃんの真似やめてっ!」
「そうか、阿武隈さんが言うことを聞かないんだな!?阿武隈さんは今度あったらアレだ……前髪をアレしてやる!」
後先考えないちゃんぽんをかました三人の呑兵衛は、すでに酒に呑まれていた。
大量の空き缶空き瓶を辺りに放り出して強烈なアルコール臭を蔓延させているこの部屋は、和の栄える総畳みから発せられる藺草の良き香りを踏みにじるように台無しにさせ、世紀末的無法地帯と化していた。
─これは酷い。
良識ある者がこの惨状を見たら、必ずやそうつぶやくだろう。実際酷い。
「そういえば新堂が鎮守府に来て結構経つけどさー。どう?好きな娘とか出来た?気になる娘いるん?」
「それ私も気になってた。どうなの?」
「…………ん?いやいや、いないなぁ」
新堂の元気の源でもある、儚いほどに慎ましい彼女への想いは出来るだけ誰にも知られず密やかに育みたい。そう思うと反射的に素に戻り、彼は嘘をついた。
ごまかせたかどうかは不明だが、女子の好物であり酒の肴にもなる恋話は早々に終わりはしない。
「えー?私たちみたいなピッチピチの美女や美少女と散々関わっといて、いないってことないでしょー」
「じゃあさじゃあさ、私と蒼龍だったらどっちと付き合う?」
「おやおや、自分から負け戦を仕掛けるなんて飛龍も堕ちたね。彼我の実力差がわからないの?」
「合法童顔巨乳は黙っててくれない?」
「ひ、人が気にしてることをよくも言ったな!多聞丸の写真に落書きしてやる!」
「やめてっ!多聞丸を狙うのは卑怯よ!」
「二人ともくだらない事で喧嘩するなって」
「くだらなくなんかないっ!お酒買うたびに年齢確認される私の気持ちなんて新堂にはわからないでしょ!?いいからとっとと答えてよ!」
「そうだそうだ!この似非多聞丸ー!」
新堂は後頭部を搔きながら悩む。こういった場面において、全て穏便に済ませる解答は存在するのだろうか。というか似非多聞丸は悪口として成立するのだろうか。少し既視感のようなものを感じながらも、はっきりと答える。
「蒼龍と付き合う」
「やったあ!新堂だいすき!」
「そんな、私が負けた……蒼龍に負けた。もう立ち直れない…………寝る」
自ら仕掛けた女の闘いに見事特攻玉砕した飛龍は、コタツに足を突っ込んだまま後ろへどっと倒れる。
「コタツで寝ると風邪ひいちゃうよ?」
「ほら、これ使え」
そう言ってから新堂は着ていた憲兵服を飛龍へかける。毛布の代わりとするにはいささか物足りないが、体温を内包した衣服は意外と暖かい。
「うるさい、この女殺し多聞丸!飛龍さんが寝るって言ったら寝るの!おやすみなさいっ!」
頬をぷっくり膨らませ、憲兵服で自身を包む。
飛龍は何が気に入らないのか、しばらくの間新堂へ蹴りを入れ小突き回していたが、やがて睡魔に負けたらしい。蒼龍に劣らぬ胸部装甲を上下させ、小さな寝息を紡ぎ始める。その寝顔は超が付くほどの美少女ぶりであり、誰もが思わず接吻を試みたくなるだろう。今の彼女はそれほど無防備。
寝返りを打つたびにふんわりと柑橘系の香りが漂ってくるが、浴びるほど摂取したアルコールの匂いはいったいどこへ消えたのだろうか……。女性という生き物は、まったくもって不思議極まりない。
「飛龍寝ちゃったね。どうする?まだ呑む?」
「酒も残ってるから、もう少しだけな」
「そっか」
そして訪れたのは、先ほどまでのお祭り騒ぎが嘘のような無言。一人潰れただけでこうも変わるものなのか、静かな夜を今になって二人は実感する。雰囲気は……悪くない。
(呑み終わったら帰っちゃうのか……)
少し感傷的な様子で、残った酒をちびちびしていた蒼龍であったが、最後の一缶のプルタブに指を掛ける新堂を見て意を決する。
「ちょっと聞いていい?」
「ああ、どうぞ」
簡単な了承を得た蒼龍は景気付けに酒を一気に飲み干し、粗雑な勢いそのままに口を開く。
「なんでさぁ、男の人って命を粗末にするの?」
場にそぐわない半ば哲学のような質問を投げかけられ少し面食らう。
蒼龍の顔つきを見るに、冗談でも謎掛けでもないが真剣というほどでもない。なれど、男を語る以上は全力で相対すべしとばかりに新堂は姿勢を正す。
「大事なもののため……だろうな。あと、意地とかな」
「そんなものの為に火の中に飛び込めちゃうもんなの?」
火の中に飛び込むという聞こえの悪い非人道的なフレーズ聞き、話が見えてきた。
(柳本艦長の事を言っているのか)
─柳本艦長。大日本帝国が生んだ傑物。
乗組員の必死の説得にも頑として首を縦に振らず、大破炎上しながら沈没しつつある艦に残り、「蒼龍、万歳!」と連呼。最期は業火に包まれる艦橋にて蒼龍と運命を共にした漢の中の漢である。
「動けなくなった艦なんかとっとと雷撃処分して、次で再起すればいいのに……意味わかんない」
「男ってのはそこまで合理的には生きられないんだ。戦火を共にくぐってれば親近感も湧くし愛着も湧く。たとえ生きながらえても戦果を挙げても、蒼龍と一緒じゃないと価値が見出せない。そう思ったんじゃないか?」
男を代表し、いまや存在しない柳本艦長の名誉を守るために切々と語る。そんな新堂を見ても、やはり蒼龍は男の美学や浪漫なんて少しも、まったく、全然、ちっとも、これっぽっちも理解が出来ないという様子で眉をひそめる。
「なにそれ変なの。男の人ってほんとバカだね」
「不器用と言ってほしいな」
「…………新堂はさ、私たち艦娘が沈んだとして……後追いとかしないよね?」
潔い死など理解出来ないからこそ、二度と無駄死になどはさせたくない。とはいえ、バカなことを聞いたなと、彼女は少し後悔しながら新堂の様子を伺うように返答を待つ。
「どうだろう。深海棲艦に対抗できるのは艦娘だけだから、ジリ貧の生き恥を晒すよりは蒼龍たちと……とか思うかもしれないな」
何か言いたげな蒼龍を右手で制してから、さらに続ける。
「だから蒼龍、沈んだりするなよ?こうして酒を酌み交わす相手がいなくなるのは淋しいんだ。独り酒も悪くないが、こうして三人集まって騒ぐのがなにより楽しいんだから」
生死の話題をことも無げに一蹴する砕けたものの言い方をされ、蒼龍はどこか吹っ切れた様子で台所へ向かい、すぐ戻る。その手には酒瓶と縁取り広く底の深い猪口が一つ。
彼女はなにも言わずに新堂の相向かいに座ると、【深海酒姫】と銘打たれた酒瓶を傾ける。こっこっこっこっ、というリズミカルな注ぎ音がなんとも小気味良い。
酒が溢れてきそうなほどに注がれた猪口を両手で握り、蒼龍は縁に唇をつけてからそろりと呑む。さすが不謹慎な銘柄だけあってアルコール度数がやたら高い、恐ろしく強い酒だ。血液を沸騰させ臓腑を灼くようにして身体へ沁み込んでいく。
味わい深いコクとまろやかな口当たりが推しだが、妙なクセのある珍酒である。呑み手を選ぶが、深海の名が付いたものを呑むと言うのはそれだけで縁起が良い。
高熱で滾った呼吸器からぷはっと溜息。そして一息おいてから、彼女は決意したらしき顔をあげる。
「新堂、私もっと強くなる。深海棲艦にも一航戦にも五航戦にも海外空母艦にも、当然飛龍にだって負けないくらい強くなる。絶対誰も沈ませないから、だからさ……」
蒼龍はそれだけ言ってから、酒が半分残った猪口を新堂へ渡す。このやりとりは、家族の絆よりも硬い誓約を交わす儀式に似ていた。
並々ならぬ覚悟が無ければ成り立たない、勢い任せの乱雑かつ酒臭い秘儀を前に、新堂は蒼龍をじっと見つめ返す。
「だからそのぉ……私が帰投したらさ、一番に出迎えに来てくれないかなって、あはは」
途中で恥ずかしくなったのか、彼女は笑って誤魔化し眼を逸らす。
酒の力を借りてみたは良いものの、黒歴史確定の恥ずかしい台詞は酒のちゃんぽんと同様あとから効いてくるようだ。青葉あたりに知られたら鎮守府にはいられないだろうなと、蒼龍は思う。
それに気づかないふりをするように、新堂は男らしい喉仏をゴクリと動かして酒を一気にあおり、一言。
「必ず帰って来い。待ってるから」
普段厳しいほど表情に乏しい彼には珍しく、ニコリと相好を崩す。
(ああ、なるほどね。飛龍が気にするわけだ)
聞きたかったことが聞けた蒼龍は、亀のようなのろのろとした動きでコタツに頭を突っ込む。
「どうした?」
「寝る」
コタツの中からくぐもった声がする。寝るにしてもコタツに頭から入り込むのは奇行だ。まあ酔いのせいだろうとタカをくくっていた新堂の足に、手が掛かる。そしてそのまま、胡座をかいていた股の辺りからモソモソと這い出てきたのは予想通り、蒼龍。
一つ予想外だったのは、彼女がビニール製の、二、三センチ四方の何かを口に咥えて現れたことだろう。物欲しげな薄目で新堂を見つめながら、身体を這い上がっていく。
互いに同じ目線になったところで、新堂は蒼龍が咥えていた薄い正方形のビニールを手に取る。ビニールには商品名と特徴を謳って【うすうす】と表記され、中は輪ゴムの形状がくっきりと盛り上がっている。明らかに避妊具。そして蒼龍の胸中も明らかとなった。
「寝るんじゃなかったのか?」
「新堂と寝るの。ね、いいでしょ?」
「それは構わんが……」
問題が有るとするなら、近くに飛龍がいるということだろう。ぐっすり寝ているようだが、知られでもしたらいったいどんな目に逢うやら……嫌な予感は尽きない。
飛龍を気にしてばかりの新堂が気に入らないのか、蒼龍は彼の両頬に手を添え、無理矢理自分の方へ向かせてからガッチリとホールドし、新堂の是非を問わずに唇を押し付ける。「私を見ろ」と言うように。
蒼龍の唇は肉厚で至極柔らか、口づけをしたら生涯忘れられぬ最高の感触と言ってよい。吐息を交換する際に匂うアルコール臭が残りわずかの理性を揺るがし、くちゅくちゅと粘る唾液の音が貞操の何たるかを根幹から否定していく。
ここで蒼龍、それっ!という無邪気な掛け声と共に、新堂が座っている座椅子のレバーを操作。固定器具が外れ、支えであった背もたれと後ろへ倒れる。
仰向けとなった彼の腹の上にて女の子座りをし、マウントポジションの優位性を得る。が、少し不満げに頬を膨らませて新堂を見下ろす。
「こんな美女を目の前にして他の娘を気にするとか、新堂ちょっと生意気。飛龍のことなんか見れないようにしちゃうから……覚悟、し、て、ねっ!」
そう言って彼女は、翠色の着物をはだけるように少しだけ脱ぐ。露わとなったのは、弓道で鍛えられながらも女性的な肉付きをした鎖骨と肩。さらにダメ押しとばかりに胸部を締め上げていたサラシを器用に解く。そうして飛び出してきたのは、他が平伏に値する豊満且つきめ細かな柔肌の美しい乳房。
サラシと言う名の封印を解かれた美巨乳はわずかな振動でもプリンのように揺れ、飲酒による高い体温のせいで汗ばんだその様は、禁欲の精神すら狂わせる催淫作用がある。
邪淫に導く悪魔的でありながらも全てを包む母性の象徴を、蒼龍は惜しげなく新堂へ与える。乳房を下から持ち上げ、口元へ近づける仕草はどう見ても授乳。
成人となって充分な年月を経た新堂にとって、授乳を施されるのはさすがに気恥ずかしい。
しかし、類い稀な美しい曲線美の輪郭をもつ乳房。その頂点には桜色の蕾。不思議と匂う甘露な香り。安らぎもたらす人肌。などといった強烈な誘惑に屈し、もはや恥も外聞も飛龍の存在すらも忘れて、蒼龍の乳房を舌で味わう。
「ん、っく……ふぅ」
口からと言うよりは、鼻から色っぽい呼吸をする。
乳房を下から舐め上げてから、乳輪を描いてゆっくりと舌が這う様は、何やら濃桃色のナメクジが蠢いているようにも見える。多量の唾液でぬめぬめと光り、むず痒い気持ち良さをもたらしながら蒼龍をねぶる。
「あ、やぁ……んぁ、は……う、く……や、やだ……新堂の、な、舐め方、ん……やらしい」
幾度も乳輪を周回した末、快感が高まってきたことを蒼龍は乳首を固くすることで知らせてきた。正直に教えてくれた褒美とばかりに、愛らしい乳首を重点的に責め始める。
尖らせた舌で乳首を何度も弾いたあと、上唇と下唇で挟み、すり潰すように責める。徐々に徐々に圧力を加増しながら責め続ける。優しく嬲る。
「う、くぅ……ふうぅぅ、やっ、あっ……まって、それ、や、やだ……あん、やだぁ」
蒼龍は反射的に仰け反り、緩やかに迫る掻痒とした快感から逃れようとする。
しかし、まだまだこれからと言うように彼女の背中に手を回し、逃げられぬよう抱き寄せてさらに追撃。次の狙いはもう片方の乳房。
すでに授乳してやろうという余裕の無くなった蒼龍は新堂の顔の横に手をつき、中途半端な腕立て状態にある。重力に従う重みある乳房は砲弾型であり、固く凝った乳首を筆頭に垂れ下がるその様は、まるで搾乳を願っているようだ。
散々責められた乳房と比べ、未だ刺激を被っていない胸は無垢であるように色素が薄い。それをこれから快感一色で染めると思うと、どうしようもない興奮で打ち震える。その興奮が冷めやらぬまま、彼は慎ましく主張する乳首を無遠慮にむしゃぶりつき、吸引。
「うあっ!くぅ、ひぅぅ……吸い、すぎぃ……ちょ、強すぎ、るぅ……や、やだぁ!……ああぁうぅ」
赤子ならばともかく相手は成人。そのうえ、一般的な成人男性よりも鍛えられ、幾つかの修羅場を体験してきた憲兵である。その逞ましい肺活量から繰り出される吸引力はいかばかりであろうか。それは、乳房を責められただけで我を忘れ、ツインテールを振り乱している蒼龍をみれば明らかだろう。
「うあぁ!も、もう吸っちゃやぁ!おっぱい出ないのにそんな吸っちゃやだあ!おっぱいで、出ないからぁ!」
蒼龍の懇願も聞こえないふりを続け、生気と精気、正気すら搾り尽くすように吸引をさらに強める。時折、甘噛みをして刺激の形を変えながら責めに責める。弄ぶように。痛ぶるように。
やがて蒼龍に我慢の限界がきたのか、立てていた腕は産まれたての仔鹿のように震わせ心許なく折れ曲がり、下がってきた豊満な乳房が新堂の呼吸を圧迫し始める。
彼女の意識が雲の上を行くようにふわついていたためか、顔から乳房を離したのは新堂が落ちるまで後一歩のところであった。
「ち、窒息させる気か?」
「うぅ……だってぇ新堂が吸いすぎなんだもん。ほら、見てよ。私のもう、こんなだよ」
ねっとりとした口調で言いながら、下腹部までしか隠せてない袴の裾をつまんで広げる。そこにはふんどしに似た薄衣の下着。その下着は、決壊したように溢れる愛液を防ぎきれなかったらしく大いに濡れていた。いつの間にか、新堂の腹部にもシミができている。
「ぜんぶ新堂のせいだからね。責任とって」
強気なおねだりののち下着を横にずらすと、水源と言えるほどに濡れそぼった秘所があった。自身の愛液で陰唇や薄く整った性毛をテカテカと光らせる様はまさしく淫美。
蒼龍の悩ましい姿を見たゆえか、興奮が頂点へ達したらしき新堂は手際良くズボンを下ろし、少し窮屈そうに避妊具をつける。はち切れそうな避妊具を見て、今度Lサイズ買ってこようと、蒼龍は思った。
「挿れていい?」
「ああ」
もう待てないのか、体位を変えることなく騎乗位のままで愉しむことになった。阿吽の呼吸に似た簡単な会話をし、蒼龍は腰を下ろすようにして新堂のモノを咥え込む。
(私って、こんなにえっちだったかなぁ)
大した前戯も無く、乳を責められただけで充分受け入れる準備が整ってしまった自分の身体が少し心配になる。だが最終的に「新堂がスケベだから悪い」で、彼女の中で決着をつけることにした。感度が高い自分など、事実だとしてもあまり肯定したくない。
「あ、きた……新堂の、入ってきちゃった」
酒の効果もあって彼女の膣内はとても温かく、無闇に締め付けること無く包み込むゆとりと優しさがある。それに比して、新堂の男根は凶暴気味に膣壁を削り上げながら天井を目指す。
「くぅ、おっき……や、やだこれぇ……お、奥……いっいちばん奥、当たっちゃって、る……うぅ」
新堂の全てを受け入れたと同時に、蒼龍は安堵と多幸感にまみれた溜息をつく。一寸動いただけで意識がトばされそうになるのを必死にこらえながら、急に思い出したように頭を軽く下げる。
「ねえねえ、髪……おろして。新堂がおろして、はやくぅ」
甘え声でのおねだりに、考えるより先に手が彼女の髪へ吸い寄せられるのに身を委ね、ツインテールを形つくる細紐を解く。
そうして現れたのは……大弓よりも書物片手に紅茶を飲む姿が似合いそうな純朴な美女。潤沢優れた蒼みのある髪は絹のようで、肩まで届くほどの髪を手櫛で梳くと、束ねた跡はもう消えていた。
彼女の髪をおろした姿を知るものはさして多くない。さらに言うと、髪をおろすようせがんだのは全艦娘や提督を含めても、新堂が初めてである。信頼と好意の深さが伺える。
「新堂」
「蒼龍」
やがて、どちらからともなく手を握る。言うなれば貝のように固く握り合う。手も身体も、離す気は微塵も無い。
憂いと儚さを秘めた海色の瞳を少し潤ませて、やや恥じらうようにして新堂の眼を真っ直ぐに見つめる。印象が変わったのみならず、人が変わったように大人っぽい。
「じゃあ……動く、ね」
頬を赤く染めながら蒼龍は腰を動かす。ほど良い肉付きをしながらも、くびれた腰と張りのある太ももを巧みに使い前後する姿はことのほか艶やかであり、感極まるものがある。
挿入時もさることながら、ももとももが擦れ合うたびに充実した一体感を共有できる。
「あっ、あっはぁ……ふぁ!あっあっあん!やだぁ、あ、きもちいっあぁ!すごい、気持ちイイ……新堂のすごくイイよぉ」
腰を前後するたび、下半身の至るところの筋繊維がビクリと跳ねる。特に尻肉……臀部が激しく躍動しているのがよくわかる。時折、肛門をヒクつかせているのも、その煽りをうけてのことだ。
「ふ、うぅ……んぅ、あ、はあぁ……だ、だめ……き、気持ち、よくって……う、うごけない」
蒼龍の腰の動きが緩慢になってきた。どうやら絶頂が近いのだろう。どの部位を動かすのも億劫な様子で余裕が無く、息は荒い。
それを知った新堂は次はこちらの番だとばかりに、初手から一気に突き上げる。
「ひぃぁぁっ!──っ!!……あ、あ……あ、かは、あ……」
刺激が強すぎたのか悲痛な嬌声。その後、えずくような弱々しい呼吸をする蒼龍の姿に、新堂の中から嗜虐心がかまくびもたげて這い出てくる。黒々とした悍ましい性欲に身を委ね、猛る獣性を解き放つようにまたも突き上げる。
「うあっあっあっ!や、やだぁ!……やだやだやだぁ!」
強く。激しく。深く。一定と不規則のリズムを組み合わせ、蒼龍の腰を砕こうとするかの如く乱暴に突き上げる。
肉と肉が打ち合う乾いた破裂音と、多方向へ揺れて弾む乳房が突き上げの激しさを。陰茎が出入りするたびに発する粘度の高い水音が彼女の乱れぶりをそれぞれ物語る。
「イ、イク!も……もうやだぁ!だめ、イっ……!!──っぅ!」
新堂の手を握り潰してしまいそうな握力を発揮しながら、蒼龍は絶頂へ至る。快感が蛇のようにのたうち回っているのか、蒼龍は身体を強張らせて耐えるも抗えず、びくんびくんと正直に反応し、快楽の恐ろしさ思い知る。
蒼龍は絶頂へ至った。が、膣内はまだ飢えているのかヒダ肉を触手のように陰茎にまとわりつきながら最奥へと案内する。まるで、ぜん動運動のように奥へ奥へと引きずり込む。これは彼女にとって無意識のことだが、そうとは気づかない新堂はさらなる淫欲を追求しようと準備に入る。
準備といっても難しいことではない。伸ばしていた膝を立てただけ。たったこれだけのことで、話は違ってくる。
腰を上下する力に足裏で地を蹴り上げる力が加わり、突き上げる威力は段違いで想像を絶する。まさに、大空を舞う龍を撃ち果たす弩砲のよう……と言ったら誇張が過ぎるかもしれない。
しかし、色狂いの如く乱れる蒼龍を見るに、それ以外の表現が見当たらないのも事実だ。
「あ゛あっ!や、だぁ!イク……新堂にっ、またイかされる!……ぐぅっう゛ぅぅ!──ひぃ!も゛ぅ、やだ!やだやだやだ!」
「我慢するな。もっとイきたいだろ?」
「これ……これ以上イ……ったら、くんれん……あ゛っ……明日の、はぁ……発着艦……訓練にぃ!ししょぅっ!……支障が!あ、イク!またイっ──!」
「発着艦訓練は午後からだ。安心してイっていいぞ」
「…………ほ、ほんとダメ……明日、し、し、支障がっ……あぁん!やだやだ、もう太いのやだぁ!」
「ああ、蒼龍のナカは最高だ。根元から先まで吸い付いてくる」
「で、でちゃう、し、新堂の……んぁ!新堂のせいで、支障……出ちゃう……すごいのキちゃう!」
「く……私も、蒼龍、そろそろ出していいか?いいよな?」
「だ、射精し……てぇ!新堂一緒ぃ……ぁん!一緒にイきたっ……い、いっしょにぃ!!」
蒼龍の淫猥な嘆願と具合の良い肉壷は男の情欲を掻き乱すほど堪らないものがあり、破裂しそうなほどの血と快感が陰茎に集う。
射精寸前の男根は赤黒く膨張し、危険な凶器に近い。不気味に走る太い血管まで淫具の一つとたとえ、蒼龍の大事な部位で暴虐の限りを尽くし、ことごとく蹂躙。
「──っ!!く……ぅっく、や……ぁ、イイっ!!──っあ!すごいぃぃ!」
今こそ限界まで高まった快感を爆発させようと、さらに力を込める。
そんな時、蒼龍の右舷後方から敵意と殺気に満ちた視線を感じる。とても冷たい視線を。
「へぇー、新堂くんのそんなに気持ち良いんだぁ。ふぅーん」
おそるおそるといった様子で視線の先を辿っていく。
不満と怒りがない混ぜになった針で刺すような口調の持ち主は確認するまでもない。そう、飛龍だ。
何ということか、二人は眠れる伏龍を起こしてしまった。しかも最悪の方法で。
「……んぅ…く、あ……あはは、ひりゅ……起こしちゃった?」
「あんだけ大声で親友が喘いでたらさ、そりゃあ起きるでしょう?まったく、こっちが恥ずかしいったら」
説教じみた口調でゆらりと立ち上がり、騎乗位のまま動けずにいる二人を見下ろして凍てついた視線を浴びせる。失望しているのかそれとも軽蔑しているのか、あるいは何か企図しているのか……その表情からはまったく読み取れない。
「ひ、飛龍。これは全部私が悪いんだ。私が──」
問答無用。飛龍は言い訳がましい口を塞ぐように新堂の顔にすとんと座る。これは男を黙らせるのに最適な方法かもしれない。少なくとも、全ての罪を被ろうとした新堂に言い訳を続ける気力はもうなかった。何せ飛龍は下穿きを着けていなかったのだから。
丈の短い袴で作られた暗闇の中、淫欲持て余す女臭を嗅がされて新堂はただ混乱する。そんな二人の姿を見て蒼龍も混乱……というより、淫蕩の果てを垣間見た彼女は未だ事態を飲み込めていないのかもしれない。光を喪った瞳の目線は、あてもなく中空を彷徨う。
まともな思考と常識を持ち合わせる者はもうどこにもいない。居るのは酒と性欲で脳がふやけた者たちのみ。
「新堂くん。カワ・カワ・カワ」
突如、静かに怒る飛龍から指示が下る。【カワ・カワ・カワ】それはつまり。
─第二次攻撃ノ要ヲ認ム、だ。
攻撃目標は言わずもがな、蒼龍。
意識を朦朧とさせ、満身創痍な彼女をさらに快感のるつぼに突き落としてやろうと、飛龍は意地悪な画策をする。
指示に従い、その案に参画しようと、新堂はまたも足裏で地を蹴り腰を突き上げる。それだけにとどまらず、目の前で蜜のような愛液をこぼす飛龍の秘裂をじゅるりと吸う。このまま窒息死しても本望とばかりに、渾身の力を込めて吸い尽くす。
「ひぃあ!あっだめ……ふ、二人がかりなんて、ずるいっよぉ!ま、またイ゛……っクゥ!しんどぉと、ひりゅ……うっ、にぃ!イかされ……っ!!──っや、やだやだぁ、あ゛ぅ……やらよぉ!!」
「ちょ、待って!新堂く、んぁ……まってってば、そうりゅ……ぅ!狙い、蒼龍だからぁ」
新堂の顔と股の上で、二航戦両名は抱き合い慰め合い支え合う。肉で出来た歪な三角形を描く三人は、どこか曼荼羅を体現しているようでもある。
こここそが酒と欲望入り混じる桃源郷と定め、すでに憲兵と二航戦は足枷にしかならぬ人間的思考を棄てたようだ。いまや本能赴くままに、互いの身体の細胞一つ一つを愛でるこの姿も、ある種の悟りと言ってよいのかもしれない。
下劣な酒池肉林は、未だ始まったばかり。
蒼龍と飛龍たべりゅぅぅぅぅ!!!