昼は憲兵、夜は……。 作:鷹山
媚薬を使った激しいアレだったから?
単純に鹿島が人気者だから?
よく分かりませんが、ありがとうございます。
周囲に植栽された花々たちが大輪の笑みを浮かべながら寄り添うのは、日本の象徴たる桜木。春一番に伴って散華する姿は儚く可憐で潔く、国花に任ぜられるのも頷ける。彼らはその大任に臆することなく爛漫と咲き誇り、観る者に風情とは如何なるものかを教えてくれる。
満開の桜木が左右の路肩に控え、等間隔に佇む並木道。その道筋は舗装され、案内人が居なくても鎮守府各所にたどり着くことが可能な程に丁寧であり、造り上げた者たちの配慮と心遣いが容易に見てとれるほどに整然としていた。
なかでも驚くべきは、造園を得意とする妖精の職人技だろう。美観を損なわぬ舗装に加え、季節の草花を名脇役として色めき立たせる驚異の技量。遠き背景には艦娘たちが命を賭して護る紺碧の大海と大空。その境には太陽と月が生まれ出づる果てなき水平線。これぞ、人智を隔てた自然のオーケストラと評するに相応しい。
観る者の心を揺さぶる一枚絵としても美事に完成しており、鑑賞に際し、疲労で擦り切れた精神や汚穢にまみれた心を浄化する効能すら持っているかのようだ。
散った花弁が辺りに撒かれ、桜色の絨毯を敷いたような花道を馴れ親しみながら歩く、二つの小さな影があった。影の主は、暁型二番艦・響と三番艦・雷。二人は資材運搬の途中であるらしく、響は修復と書かれたバケツを両手に提げ、雷は上半身よりも大きなドラム缶を我が子のように抱え、目的地を目指す。
未熟な身体つきでセーラー服を纏うせいで、入学したての中学生に見える。資材の代わりに学生鞄を持たせたならば、誰もが勘違いをしてしまうだろう。
「時々様子を見に行ってるんだけど、新堂さんったら家事がとっても苦手なの。私が部屋のお掃除をしてあげないと物で溢れかえっちゃうんだから。それにお料理もしないものだから、すぐインスタント食品とか出来合いのお惣菜に頼っちゃうの。栄養が偏っちゃうわって言ってもついつい食べちゃって、なかなか改めてくれないんだもの、なんとかしてあげなくちゃいけないわ。それと、お酒とお煙草は少しずつ減らしてもらわなきゃダメよね。何よりも健康が一番じゃない?」
雷はハキハキと嬉しそうに、一方的な近況報告をする。牙になりそこねた八重歯を見え隠れさせて喋る姿がとても愛らしい。
喋り疲れた様子はないものの勢いは徐々におさまり、一息ついて落ち着いた……と、見せかけてから口癖らしき一言を付け足す。
「新堂さんにはやっぱり私が必要ねっ」
不思議なもので、自身の主観を口に出すと願望がさも事実であるような実感を得られる。まるでそれが生き甲斐のように、自己暗示のように、雷は今日もその一言を欠かさない。
「雷は通い妻みたいだね」
顔色一つ変えずに答えたのは響。一気にまくしたてられようとも一言一句聞き漏らさず、話に水を差さず、的確に相槌を打つ彼女は聞き上手の典型と言えるだろう。
シベリアの真珠とも評されるバイカル湖の如き白銀色の長い髪を春風とともに踊らせ、雷と並んで歩く。
妻という単語に浸ってどんな妄想を働かせているのやら、ドラム缶に頰ずりと接吻を交互に繰り返す雷を眺めつつ、響は続けて私見を述べる。
「新堂はとても仕事熱心だ。でも、身の回りのことは不精みたいだね。何事もそつなくこなせるとばかり思っていたが、意外な弱点をもっている。新堂は遠慮せずにもっと私たち駆逐艦に信頼を預け、助け合うべきだ」
新堂の話題において同意することが多い彼女は、雷にとってこの上なく相談し易い。
「響の言う通りね。そう、そうなのよ。だから──」
何か思い出したらしく、一拍おいてから響を見る。
「だから新堂さんには、あんなえっちな本なんて必要無いはずなの。私がいるんだから私でヌけば良いじゃない? なんでも受け入れるつもりでいるのにどうして求めてこないのかしら……響、どう思う?」
相談し易い……ゆえに、私生活の暴露が起こり得る。
「まず聞いておきたいのは本の詳細かな。どんな内容だった? 雷のことだ、じっくり吟味したんだろう?」
「当然よっ」
「詳しく頼む」
新堂にとって幸運なのは、雷が相談相手として選択したのが響だったという点だろう。彼女は雷と同様、成人男性向けの性欲発散用姫級めちゃシコ雑誌(甲)を愛読している程度で他者を嫌うことはない。
「同人誌って呼ばれてるえっちな本で、翔か……じゃなくて、銀髪で、小柄で、物静かな艦娘がヒロインだったわ」
創作物とはいえ、身体を好き放題されていたという風評を避けたかったのか、あえて翔鶴だとは言わなかった。幼い見た目に反し、雷は気遣いの出来る良き艦娘である。もっと頼れと大見得を切るのも伊達ではない。
しかし時として、その曖昧な伝達が余計な勘違いを生む。
(銀髪? 小柄? 物静かな艦娘? それって私のことじゃ……いや、そんなまさか)
自惚れているつもりはない。けれども、挙げられた特徴は響と合致する点が多い。その為、悶々とした妄想が積乱雲のように湧いて浮かんで、浮かんで拡がり、正しい思考を妨げる。
「その艦娘が──」
(私が……)
「憲兵さんと──」
(新堂と……)
「幸せそうなチューをして──」
(新堂とでは背丈に差があるから、屈んでもらわないと)
妄想が捗る。
「互いに癒しを求めて──」
(癒しが必要なら、私の膝でも貸そう)
「時間と場所を弁えず──」
(昼夜を問わず、局地戦を? 誰かに見られるかもしれないのに何を考えているんだ新堂は……ちょっと恥ずかしいな)
妄想が加速する。
「大人のオモチャとか使ったり──」
(そんなモノに頼るとはね、見損なったよ新堂)
「毎日激しく──」
(毎日か……遠征や出撃に影響が出ないといいけど)
「そして二人はケッコンして、ずーっとラブラブで幸せな家庭を築くの……なんだか妬けちゃうわね」
(ケッコン、ラブラブ、幸せな家庭、とても暖かい響きだ。ハラショー)
いつの間にか響は立ち止まり、空を仰いでいた。
今まで持ち合わせていた好意とはまた別の、深い心の奥で細やかに芽吹いた微かな想い。これを恋愛感情と名付けてよいかどうかを、自問自答するように目を閉じてから自身と向き合う。そして……。
(新堂は私たちのことを、女として見ているのかな?)
ふと、そんなことを考える。
「本の内容はそんな感じね……って響、顔赤いわよ? 砲撃し過ぎて焼きついた砲身みたいに熱そうだけど、大丈夫?」
ここで響、一つ深呼吸してからキリッと刮目。
「大丈夫。不死鳥だから」
「不死鳥ってすごいのね」
不死鳥。それは響の通り名である。いくつもの死線をかいくぐり、遂には沈む事無く終戦を迎えた彼女におあつらえ向きと言えよう。
彼女の実績と自信によるものなのか、妙な説得力がある。
「それよりも雷、早く任務を終わらせて新堂を探すとしよう。次の目標は、女児および私たちの身体に興味があるかを新堂に直接問いただす、だ。悩んでいても始まらないだろう?」
「そうね、ウジウジ悩んでてもダメよね。よーし! それじゃあ雷、新堂さんを問い詰めちゃうわっ!」
やや短絡的な思考であり、駆け引きを知らぬ蛮勇である。ただ、破竹のように真っ直ぐな想いは、後悔も迷いも無いからこそ他者を惹きつけるのかもしれない。
「その意気だよ、やっぱり雷はそうじゃないと」
「響のおかげね、ありがとっ。それにしても新堂さんどこかしら? この時間帯なら巡回中のはずだけど」
「心配いらない、すぐ見つけてみせるよ」
「何かあてがあるの?」
「もちろんだよ、不死鳥だからね」
「不死鳥ってすごいのねっ」
資材の重みでよたつきながらも二人は駆ける。その目的はただ一つ。
──新堂は女児も範囲内かどうかの確認。
それを知りたいがためだけに、二人は駆ける。
この行動は恋ゆえか、それとも別の何かなのか……。自身にすら判然としない心意に突き動かされ、二人は単横陣で桜並木を駆け抜けていった。
純朴に心ときめかす駆逐艦二人が資材運搬に従事する中。重巡寮のある一室は淫蕩な湿気でむせ返り、鼻腔にまとわりつくほどに甘い芳香で満たされていた。
「──あっ、や、ああ! はぁ、ンッ! ぅう、ひぅぅ」
自身の存在が駆逐艦の心に波紋を与えているとはつゆ知らず、新堂は陰茎をいきり立たせる。そして、鈴谷の膣口を押し拡げて進み、肉の洞の最奥に、これでもかと抉りこむ。
「あっ、やぁ……奥ぅ、奥までキテる……あたっ……てるぅ」
新堂と鈴谷。二人の性器は鍵と鍵穴の関係の如く相性が良いようだ。互いに専用の肉棒、肉穴として用意したかのようにぴたりと収まる具合の良さは、もしや運命の人なのではと錯覚をおぼえるほどだ。
「ああぁぁヤバいこれ、新堂さんの……熱くて、硬すぎなんですけどぉ。鈴谷、火傷しちゃうぅ」
四つん這いになった鈴谷の背後から、新堂は卑猥に猛る男根の挿入抜出を幾度も繰り返し、彼女の膣内を掻き混ぜる。
「あっあっあん! す、凄いよぉ! 鈴谷、く……クセに、なっちゃいそう、き、気持ちイイ! あぁっ、こすれるよぉ」
艦娘衣装の上からでも良く分かる、ラムネ瓶の如くくびれた鈴谷の身体。その中でも特に魅力的な桃尻を新堂はガシッと掴み、一定のリズムで腰を振る。深い挿入と打突を思わせるピストン運動のたびに、ベッドがギシギシと二人をはやし立てる。
「あぅぅ! ヤバ、ヤバいヤバい! 鈴谷おかしくなるぅ! マジ、ヤバいってばぁ! そんなにしたら、鈴谷の格納庫……こ、壊れちゃうじゃんっ」
一突きされるごとに思考する力を喪わせる抽送に、鈴谷はシーツを掴んで必死に耐える。離したら最後、意識も一緒に手離してしまう……そんな気がして力任せに掴む。
「ね、ねぇ新堂……さん、あン! 鈴谷の……鈴谷のイイ? 変じゃない? 鈴谷ね……んぅっ! と、とっても……キモチ良いよ」
「私もです。鈴谷さんの中、とても気持ち良い」
「ほ、ホント? えへへ、嬉……しぃ」
「鈴谷さん、そろそろ……」
「? ──っあひぃ!」
新堂がさらなる追いこみをかけると、鈴谷は反射的に膣圧を強めて肉棒を搾る。性を解き放つ愉悦を共に分かち合う……これぞSEXの極意と言わんばかりに二人はせめぎ合う。
「ヤバ、ヤバい……鈴谷もう無理、イキそう! あぁぁマジ無理ぃ! そ、んな……は、激しく……あっ、鈴谷のおまんこ、おかしくなるぅ! うあぁぁぁ! マジでイクゥ!!」
見た目通りの10代半ばらしくもなく乱れに乱れ、平時では口に出来ないふしだらな台詞を連発しながら、新緑色の髪を振り乱す。汗でベタついた顔に髪が張り付くのも気に留めず、喘ぎとよがりを弾ませ、さらに狂う。
「す、鈴谷さん……私も、もう我慢が──」
「イイよ! 新堂さんならどこでも……膣内でもイイからぁ! す、鈴谷新堂さんの欲しいぃ!」
膣内と膣外、どちらへ射精をするか。そんな下卑た二択を返答として選んでいる……その時であった。
「ごめんくださーい! 鈴谷さん、雷よ。新堂さんのことで聞きたいことがあるのっ」
「休んでいるところすまない、響だよ。新堂について聞きたいことがあるんだ」
予想外な艦娘からの呼びかけに、新堂は夢から覚めたように我に返る。
(ば、バカな!? 雷さんと響さんが何故ここに!?)
二人は自分の何を尋ねようとしているのか。この絶望的な状況をどう対処すべきか。思考と判断は迷いに迷い、もはや性行為どころではない。
「ふぁーい、いまイっ……出れない、からさぁ……このままでイイ?」
そんな新堂を文字通り尻目に、鈴谷は腑抜けた調子で答える。
居留守を使う気のない鈴谷の意を汲んだのか、新堂は結合を絶とうと腰を引くが……。
「す、鈴谷さん?」
「勝手に、抜かないでよぉ。ヤめていいなんて……鈴谷言ってないじゃん」
いつの間にか憲兵服を掴んで離さない彼女の表情は、いつしかの鹿島と同様、表情筋に締まりがなく蕩けていた。
室内で何が起きているかを知らぬ駆逐艦二人は、言われた通り部屋の前で立ち往生となった。力無く返事をした鈴谷の心配をしつつも、ドアの向こう側にいる鈴谷に届くよう声を張る。
「鈴谷と新堂が腕を組んで歩いてたって噂を聞いて来てみたんだ。新堂はそこに居るのかい?」
「新堂さんと、その……付き合ってたりするの?」
どうやら噂の足跡と出どころを巡り、ここまで辿り着いたらしい。幼いながらも、二人の執念が成し得たことだろう。ここまでは見事だ。
だが、二人の健闘虚しく、恋敵となりうる小生意気な航空巡洋艦は一歩も二歩も先を行っている。
「うぅん、居ないよ。くぅ……鈴谷、からかってただけで、新堂さんなんかなんとも思ってないしぃ……んぅ」
微弱に尻を前後左右にグラインドを続けながら、やんわり嘘をつく。
「鈴谷さん大丈夫? 声が震えてるみたいだけど、調子が悪いなら雷が看病するわ」
「だ、大丈夫大丈夫。す、鈴谷、ぜっ……絶好調、だし」
「でも──」
流石は雷。相変わらずの気遣いだと感心できる。
しかし、現在の状況ではただのお邪魔虫。このまま会話が長引き、焦らされ続けるのは鈴谷にとっていただけない。彼女の身体はもう、欲しくて欲しくてたまらないのだから。
「そ、そういえば新堂さん……雷ちゃんのこと、かなり気に入ってるみたいだったよ? 母性が半端なくて、できればもっと……あ、甘えたいんだって」
それを聞いた雷に湧き上がったのは、MVPを獲得した時とは比較にならぬ歓喜であった。雷はなにも言わずに、感無量とばかりに両手を天に突き上げる。
「そうそう、ひびきんのことも、イッてたよ。な、なんかねぇ……なでなで、すりすり、くんくん、抱き抱き、ぺろぺろとかしたいってさ、ロリコンこじらせ過ぎだよねー。マジ性犯罪者予備軍じゃん?」
「そ、そうか。新堂は私たち駆逐艦のような女児に性的興奮を覚える、そういう男だったのか。本当に響を想って……ヌいているんだ」
響は帽子を深くかぶり直して顔を覆い隠し、それっきり黙りこんでしまった。普段の彼女らしくなく、耳たぶまで真っ赤である。
止めようにも為す術の無い新堂は、世間体と人的評価を大いに揺るがす突発的なガールズトークに呆気をとられ、事態の行く末を放心しながら静聴する他なかった。
「それじゃあ鈴谷さん、お休みのところゴメンなさい」
「非番なのに邪魔してすまなかったね」
束の間も無く、扉越しのガールズトークは終わりをむかえ、解散となったようだ。
重巡寮に響く、スキップに似た快活そうな二つの足音は既に消え、ようやくヤりたいことがヤれるようになった、そんな折り。
「新堂さんって意外とモテるよね」
「鈴谷さん、貴女という方は……」
「あ、もしかして……怒ってる系?」
「えぇ、少しだけ」
「ちょ……ゴメン、ゴメンって。ちょっとした冗談じゃん。鈴谷、謝るから──」
鈴谷の謝罪を最後まで聞かず、新堂は四つん這いになっている彼女の両手首を掴むと、乱暴にピストン運動を再開する。より深い結合による快楽が、彼女に容赦無く襲いかかる。勢いは津波のようで、悦楽に酔う暇もない。
「あぁ゛! まって、待ってよぉ! 謝るからっ──んあぁ! しゅ、鈴谷あやまるからぁ! あっあっあっあぁぁぁすごいぃぃ!」
背後からなだれ込む恥骨への強烈な衝撃に対し、シーツを握り締めて耐えること出来ず。枕に顔を埋め、だらしない表情と半開きの口元を誤魔化すことも出来ず。下腹部が尻を叩く派手な音が響くそのたびに、彼女は泣くような喘ぎ声をあげる。
「あ゛あぁぁヤバいイクゥ! 鈴谷もうイッちゃう! あ゛っあやまる、からぁ!」
「……では、謝意をみせてください」
「ご、ゴメンなさっ、い゛! 鈴谷がっ、悪かったですっ!」
「謝罪内容が曖昧で、反省の色が見えません」
「んう゛ぅぅ! ごめんなさいごめんなさいっ! しゅずや、反省してますぅ! いじわるしてゴメンなさ、あ゛っ、イッ──ク!!」
「ならばきちんと、私を貶めて悪かった、と」
「しぃ、しんどうさんを、あ゛っう、くぅ……おとしめて! ごめんなさいぃ! しゅずやぁ、わるいこと、してっ──あぁぁもうダメェ! マジおかしくなっちゃうよぉ!」
「もうしませんね?」
「しない! もう悪いことしないから止まってよぉ! さっきからイキまくっ……てぇ……しゅずやぁ、ホント……し、死んじゃうぅ」
可愛さ余って憎さ百倍と申せばよいだろうか、小生意気な雌猫に打擲を加えるかのような打突に、大腿を痙攣させてよがる。
隣室に居る他の艦娘の気配を知ってか知らずか、鈴谷は壮絶で卑猥な声をあげて許しを乞う。
正直、彼はさほど怒ってはいない。だが、津波のような快楽が神経、脊髄、細胞、血流を伝い頭のてっぺんから足先まで波及してくるこの異様な昂りに囚われてしまったのか、鈴谷の腕を離さない。
「ウソ……でしょ? しんどう……さん、まだ……ヤる気? すずや、マジ変になっちゃうよぉ」
息も絶え絶えの抗議は、聞き入られることはなかった。
たわわな双乳が波打つ四つん這いになった鈴谷の腕を、手綱みたいに掴み、馬に鞭を入れるような挿入抜出の無限ループ。相も変わらぬ二人の姿は、野生動物の交尾と言った方がしっくりとくる。
人と獣の境界をあやふやにさせるこの体位は、性欲のみならず征服欲までも満たしてくれる。
理性という名の仮面を剥ぎ取り、無防備な背後から責め犯すこの愉悦。不遜な感覚であるが……それがまた、脳内麻薬と呼ばれる興奮物質の分泌を大いに促す。
「あ、あっ、あぁ、あン! んぅ! や、ヤバい! イク! 鈴谷イクッ! また──っ! ……っくぅ、あぁぁ壊れちゃう、鈴谷のおまんこ……しんどうさんに、こ、壊されるぅ! あっあぁぁヤバい、絶対ヤバいぃ! セックスマジヤバいよぉ! だ……ダメェもうムリぃ! んあぁぁぁ!」
鈴谷は背中を弓なりに反らせて絶叫し、鉄塔のような肉棒から無理矢理伝達された電気信号で、びくん、びくんっ、と全身を跳ねさせる。そして、のけ反ったまましばし硬直したあと、糸の切れた傀儡人形のように脱力。
鈴谷は瞼の重さに耐え切れず目を瞑る。瞼の裏側と頭の中に新堂の姿を焼き付けたまま、すとん……と、意識がどこかへ滑り落ちて行く感覚に身を任せ、鈴谷は失神した。
□■
陽も落ちかけてきた時刻。
長いようで短い夢をみていた鈴谷であったが、寝返りをうった拍子に目を覚ました。やたらと気怠い身体を起こしてから眼をこすり、事態の把握につとめる。
「おおう、鈴谷失神したの初めて。しかもイキまくって失神《お》ちるとか……マジ恥ずい」
完膚なきまでに打ちのめされた挙句、完全敗北と銘うたれたような気分になり、鈴谷は両手を顔に当て覆い隠す。きっと寝顔も見られたと思うと、さらに恥ずかしい。
(でも、悪いのは加減をしなかった新堂さんじゃん。鈴谷女の子だもん、悪くなくない?)
自身の名誉を守るため、矛先を新堂に向ける。そこでようやく、彼が部屋に居ないことに気がついた。
残っていたのは、新堂らしい力強い筆跡で文を書かれた一枚の紙のみ。
──気持ち良く寝ている様子だったので、勝手ですが帰らせていただきます。もう二度と、脅迫などしないようお願いします。
内容は飾り気のない単調なものであり、そのうえ説教まで交えるなど、面白みに欠けていた。
しかし、周囲を見てみると、新堂の善き人間性が見えてくる。
半脱ぎだったはずの衣服が寝てる間に直され、なおかつ毛布を掛けてあった。風邪をひかぬようにとの配慮だろう。さらに、手近なところに常温のミネラルウォーター。
失神の原因は新堂にあるものの、なかなかの気配りに鈴谷も悪い気はしない。片付けようにも触れることが出来なかったであろう紫色の下着に関しては、鈴谷は見逃してあげることにした。
「まぁ、鈴谷のセフレくらいにはしてあげてもいいかな。向こうから付き合ってくれって言ってきたら、考えてあげよっと」
彼女らしく調子のいいことを考えながら、部屋の掃除に取り掛かったその時、小気味良いノック音が三回響く。
「ほーい、今でるよー」
熊野が戻るにはまだ早い。もしや、新堂が様子を見に戻ってきたのかもしれない。そう思った鈴谷の足取りは、なぜか軽い。
勢い良くドアを開けてみると、そこには……。
「お……おぉう、ぬいぬいじゃん」
「ぬいぬいではありません、不知火です。何故不服そうな表情を? 不知火に落ち度でも?」
駆逐艦とは思えぬほどの落ち着き払った態度。艦娘の愛らしさのみ棄てた低い声。そして、他者を射抜く冷徹な眼力。彼女の名は不知火。陽炎型二番艦・不知火である。
「別にぬいぬいに落ち度はないから気にしないでいいよ。で、どしたの?」
「ぬいぬいはやめて下さい。……では本題ですが、新堂憲兵と腕を組み白昼堂々鎮守府内を闊歩していたとのことですが、相違ありませんか?」
「あー、うん。それは本当」
「お二人は男女の関係……つまり交際をされていると?」
「ううん、それはないよ。鈴谷がからかってただけだし」
「そうでしたか、それだけ分かれば充分です。では、不知火はこれで失礼します」
不知火の表情に一片も変化はない。残念そうでもなければ、嬉々ともしない。ならば何故、噂の真偽を問いただしにきたのだろうか。
少し興味が湧いてきた鈴谷は、懲りもせずに同じ過ちを繰り返す。
「あーそういえば、新堂さんぬいぬいのこと気にしてたよ」
足早に立ち去る途中、不知火は直立で立ち止まり、機械のように回れ右をしてから鈴谷に詰め寄ると……。
「ぬいぬいはやめて下さい。で、新堂憲兵は不知火のことをなんと?」
「うん、実はね──」
新堂の女難は、未だ始まったばかりのようだ。
不知火みたいなクールな艦娘が乱れるところ、見てみたくないですか? 私は見たいです。だから次回書きます。