※この作品はR-18です。

神戯姦濫   作:水晶水

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 天都君がこちらの想定以上に良識人ムーヴをかますせいで、初期に考えてた√からどんどん離れていく。IF√で色々やるべきかしら?


C.教えて天都君!

 寧々との絆がより一層深まったあの日から、時は流れて月曜日の放課後。先週末の約束の通り、今は因幡さんの依頼を達成するために三人で再び部室に集まったところである。

 あれからメールも返ってきて、一応二人で考え付いた案以外のものも入手できたのでこれで解決できればいいのだが、はてさてどうなることやら。

 

「そ、それで、何か良い方法はありますか……?」

 

 飲み物を準備して私(・)が席に着いたタイミングで、因幡さんが早速私たちに切り出してくる。その目は何処か期待に満ち溢れていて、私たちに対する信頼の程を窺えた。

 

「天都君」

「はいよーっと」

 

 その期待に応えるべく、私は寧々の声掛けに従うような形で懐から要点をメモしておいた手帳を取り出す。

 

「さて、じゃあ因幡さん、A案とB案があるんだけど、どっちから聞きたい」

「え? じゃ、じゃあA案からお願いします」

「了解……っと」

 

 今度は因幡さんの声に従ってA案のことをメモしてあるページをパラパラと捲っていく間に、私は少しばかり今回助力を要請した友人たちのことを思い返していた。

 私がメールを送ったのは五人の友人に対してあったが、悲しい哉、異国に住まうコミュ力が極めて高い私の友人たちのほとんどは、私の送った問いに対して、「友達なんて自然にできるものだろう?」といったニュアンスの有難いお言葉を寄越してくれたのだ。これだからコミュ力モンスター共は……。

 よって、私のメール作戦はほぼ空振りに終わり、例の一件で借りのあるベラ姐さんだけが自身の周りの人たちに聞いて回ったりしてくれたようで、私が入手できた情報はそれ一つのみであった。……まあ、その一つであるA案に関しても、彼女の友人が悪ノリしたような形跡が多々見られるのであるが。

 

「A案はベラ姐さんの考えたやつなんだけど……」

「はい。…………はい!!?」

「なんだけど、正直な所これが役に立つのかどうかは微妙な所なんだよね」

 

 発案者の部分で驚かれるのは分かり切っていたことなので、目を見開く因幡さんを無視して私は自身の所感を述べていく。そう、よくよく考えてみると、これはどちらかというと友人作りではなく男作りの方法なのだ。確かに親しい相手は増えるかもしれないが、これを学院内でやろうものなら、速攻で他の女子からの反感を買うことになるだろう。女子同士の繋がりが重要であるJKにとってそれは流石に致命的だ。

 しかし、アイデアをもらった以上、それをお蔵入りにするというのも忍びない話である。それは悪ノリが含まれていても、ベラ姐さんが貴重な時間を使って思いついた方法でもあるから。

 

「そ、その、実用性がどうこうというよりも、大スターの意見が気になるので、聞いてみたいかな~なんて……」

 

 まあ、案として一応採用したのは、因幡さんが興味を示すことが分かっていたからというのもあるが。実際、目の前の彼女はあまり乗り気でない私にアピールをして聞き出そうとしている。

 

「じゃあとりあえず聞いてみて、それからそれを実行するかどうかを判断してもらおうかな」

「は、はい! お願いします!」

 

 私の言葉を聞いて、因幡さんの表情がぱぁっと明るいものに分かりやすく変化した。何だか人に馴れた小動物みたいだ。

 

「そうだな……寧々と二人で実践してみるから、因幡さんはそれを見ておいてくれる?」

「分かりました」

「わ、私ですか?」

 

 私の突然の指名に寧々は驚いて、私の方へと身体を向けてくる。そういえば何をするかはまだ言っていなかったか。

 

「あの、因幡さんがする可能性があるのでしたら、因幡さんにやってもらった方が良いのでは……」

「ふむ、寧々がそれでいいならいいけど……」

 

 寧々の尤もらしい指摘に、それを予想していた私は言葉を返しながら、A案が記された部分を寧々へと近づけて読ませてみると、初めは怪訝な顔をしていた寧々も納得がいったのか、私の方を見て一度深く頷いた。

 何が書かれているか端的に言うと、とてもではないが会って間もない異性とやるようなことではないのだ。そういう意味でもこれが実用的な案とは言えない。

 

「私がやりましょう」

「な、何が書かれてるか凄い気になる……」

 

 寧々のいっそ清々しいほどの手の平返しに、因幡さんはボソリとそんな言葉を零した。まあ、見てればすぐに分かるよ。

 

「じゃあ読み上げていくからお願いね」

「はい、天都君」

 

 そう言って、お互いに姿勢を正して向かい合う。ぼちぼち始めていきましょうか。

 

「えっと、まずは……柔らかい笑顔を浮かべて、話しかけてもらいやすい雰囲気を作る」

「い、いきなり難しすぎませんか?」

「…………♪」

「って、凄い! 綾地先輩できてる!?」

 

 合いの手のように因幡さんの小気味良いツッコミが飛び交う中、可愛らしい笑みをうっすらと浮かべた寧々が柔らかい雰囲気を放ち始めた。雰囲気的にはいつも話しやすい彼女であるが、今はいつもに増して構いたくなるような感じであると言えば分かりやすいだろうか。何となく庇護欲もそそられてくる気がしてきた。

 

「おぉ……確かにこれは話しかけやすい雰囲気というか、ついつい構っちゃいたくなりますね」

 

 それを見て心底感心したような顔を因幡さんは見せる。それに関しては同意見だ。

 

「う、上手くできてましたか?」

「うん、良かったよ。思わず見惚れてた」

「えへへ」

 

 不安そうに尋ねてくる寧々に返した私の言葉に、彼女は嬉しそうに笑う。くっ、いちいち破壊力が高いなこの娘は。知ってたけども。

 

「じゃあ、さっきの雰囲気のまま続けていこうか」

「分かりました~」

 

 ぽや~んとした雰囲気の寧々が、聞くだけで絆されそうな声で返事をする。

 

「よし、じゃあ会話の例を実践していこう。えっと……何かの際に『大丈夫?』と心配されたら、『平気だよ~』と返して軽く甘える」

「平気ですよ~ぅ」

「相手の話にはどんなにくだらなくても笑う」

「やだも~ぉ、何言ってるんですかぁ、天都君は面白い人ですね~ぇ」

 

 ヤバ……ヤバいなこれ。何がヤバいかって、可愛すぎるから脳が蕩けて語彙力が消滅していっているのがヤバい。うっかり鼻から愛が溢れそうになった。

 因幡さんも因幡さんで、ぽやぽや寧々ちゃんを見て何だか女の子がしちゃいけない表情になってきている。寧々には小悪魔の才があるようだ。

 

「次は仕草かな。……さりげなくボディタッチを増やし、身体のバランスを崩した振りをして接触面を増やしたり、手や足……ふとももの内側に触れたりするのがオススメだそうだ。……オススメって何だ」

 

 何とか気を持ち直しつつ、自分で書き出したメモにツッコミを入れながら話を進めていく。今更ながら、やはり相談相手を間違えたのではないのだろうかという気がしてきた。

 

「それと、目を潤ませながら上目遣いで相手の顔を覗き込むとポイントが高いとか」

「あっ、ごめんなさい……ちょっと眩暈が……」

 

 そう言いながら、寧々は完全に身体を寄せてしなだれかかってくる。キチっと上目遣いとボディタッチも忘れないあたり、完璧の演技力だ。

 えっちな寧々も良いが、こういうあざとい寧々もまた違った味わいがあって良い。そんな風に思いながらふと視線を上げると、因幡さんと目が合い、お互いに深く頷き合った。何かよく分からない絆が今産まれた気がした。

 

「うぅ……やっぱりちょっと恥ずかしいです……」

「でも上手だったよ?」

「そ、そうですか? 上手く出来てましたか?」

 

 流石に仕草があからさますぎるせいか、寧々は仄かに頬を朱に染めるが、私がフォローを入れると嬉しそうにしながら私の言葉を噛み締めるように問いを投げ掛けてくる。可愛い。

 

「その、天都君、次はどうすればいいのでしょうか? い、因幡さんにも見られていますし、ずっとこのままでいるのは……」

 

 チラチラと因幡さんの方へと視線を送りつつ、寧々は暗に早く進めようと促してくるが、進めば進むほどより恥ずかしいことになっていくので、捉えようによっては言動不一致にも見えてくると私は思う。まあ、進まないと依頼の方も進まないので、それ以外の選択肢も無いのではあるが。

 

「えっと、じゃあ次は……そのまま普通の会話をしながら、相手の身体をフェザータッチで撫でる」

「フェザータッチって何です?」

 

 そう言って小首をかしげる寧々の姿を見て、そういえばまだ実践したことがなかったことを思い出した。次に行為に及ぶときはフェザータッチで焦らしプレイ何かもヤってみようか。

 

「そうだね……いつもみたいに普通に触るのとは違って、こういう風に触れるか触れないかぐらいの感じで焦らすように……」

「ん、んんっ、ぅ……!」

 

 フェザータッチを口で説明しながら、私は寧々の横腹に手を遣り、その手で揉むのではなく、指先で擽るようにして撫で回していく。そしてその手を徐々に下半身の方へと運んでいき……。

 

「な、なな、ななな何やってるんですか二人とも!!?」

「おっと、失礼」

 

 いけないいけない、ついスイッチが入っていたようだ。危うく因幡さんの目の前でおっ始めるところだった。

 

「あ……」

 

 流石に続けるわけにはいかずに手を離すと、寧々がそれに対して名残惜しそうな声を上げた。申し訳ないが、今は触ることで満足しておくれ。

 

「今のがフェザータッチね」

「わ、分かりました。……こう、ですか?」

 

 柔らかい手つきで寧々の細い指が私の太ももの内側を優しく撫でる。いきなりそこから来るとは……。

 

「……つかぬ事を聞きますけど、その、やっぱり先輩方は付き合ってるんですか?」

「うん、そうだよ」

 

 黙って受けを享受していると、困惑したような表情の因幡さんがそんなことを口にする。別に隠していることでもないので、私はそれに正直に答えると、因幡さんはほんのりと顔を赤らめたまま、納得がいったような表情をした。

 

「学院一の美男美女カップル……」

「ふふ、ありがとう」

 

 ボソリと零れた因幡さんの言葉を拾い、私は素直にお礼の言葉を口にする。聞かれていると思っていなかったのか、因幡さんは再び慌て始めたが、褒め言葉は素直に受け取っておくものである。

 

「はぁ……はぁぁ……ん……」

 

 そんな風に因幡さんと話していると、何やら寧々の怪し気な吐息の音を耳が拾った。何事かと視線を斜め下に戻して見ると、顔を桜色に上気させて私の太ももを一心不乱に撫で続ける寧々の姿があった。

 

「はぁ、はぁ……ふぅぅ……っ」

 

 悩まし気に内股を擦り合わせて、ちらちらとこちらの顔を窺いながら、フェザータッチではなく愛撫へと変化した手つきで寧々は私の太ももからだんだん上へ上へと手を這い上がらせていく。

 演技にしては妙に力が入りすぎているがもしや……?

 

「寧々……?」

 

「あ、まとくん……っ!」

 

 瞳に涙を滲ませて、ふるふると首を横に振りながら、寧々は何かを懇願するような声色で私の名を呼ぶ。もしかしなくても代償が発動しているようだ。よりにもよってこのタイミングで。

 

「あ、あの、綾地先輩どうかしたんですか? 何か妙に、その、エ……艶かしい気がするんですけど……」

 

 流石にこの距離なので、因幡さんもこの異変に気付いたようで、少しそわそわした様子で疑問を投げかけてくる。さて、どう誤魔化したものか……。

 

「寧々、我慢はできそう?」

 

「んんっ……! 無理です……鎮めて、もらわないと、もう無理です……!」

 

 息を荒らげて早くも限界が近いことを耳元で告げられて、今回の波は相当大きいことを理解する。早くどうにかしなければ、後輩の目の前で無残なことになりかねないようだ。しょうがない、少し手荒だが……。

 

「ちょっと失礼するね。……あむっ」

「んむぅっ!?」

「なっ────!?」

 

 私は断りを入れながら今にも劣情が爆発しそうな寧々の頬に手を添えて、そのまま強引に寧々の唇を奪い去る。二人の驚愕の声が耳を打つが、ここは敢えてそれを無視した。

 

「んっ……ぁ、くちゅっ、ちゅるるっ……♡」

「あわわわわわわわわ……!」

 

 因幡さんの視線をカットするように角度を付けて、私は寧々の発情を鎮めるために、寧々の桜唇に舌をねじ込んで彼女の口内を蹂躙していく。部室内には慌てる因幡さんの声と、唾液が混ざり合う水音が響いている。

 一応二人に配慮したつもりであったが、見ようによってはこちらの方が余計にいやらしいかもしれない。

 

「んふっ♡ あむっ、ちゅぷっ……♡ れるっ、じゅるるるるっ……♡」

 

 因幡さんの目の前での行為だが、寧々はそれを忘れているかのように鼻息を荒くして、私の攻めに対して貪るように舌を動かして、執拗に私の舌と絡めようとしてきた。口同士の隙間が開けば、それを埋めるように乱暴に吸い付き、私の唾液を啜り、舐め取ってくる。

 

「ぷはぁっ……はぁーっ、はぁっ……ふぅっ……」

「今の内にこっそり鎮めておいで」

「っ、は、はいっ」

 

 ある程度まで寧々の発情を鎮めたところで、私は寧々をディープキスから解放して、因幡さんに聞き取られないように、寧々の耳元で残った分も治めてくるように指示を出すと、一人でも動ける程度には快復した彼女は、小さく頷いた後に足早に部室を後にした。

 

「ごめんね、突然あんなもの見せて」

「へあぁっ!? い、いい、いえ! ご馳走様でした!?」

 

 そして、この場に残された、茹で蛸も斯くやと言わんばかりに顔を真っ赤に染めた因幡さんに声を掛けると、彼女はフリーズ状態から解放されて慌ただしく言葉を返してくる。ああいったことには耐性が無い子だったか。

 

「あ、あの、えっと、綾地先輩は何処へ……?」

「ん? あぁ、寧々はちょっと風に当たってくるってさ。多分十分もすれば戻ってくるよ」

 

 出ていったことに気づいていなかったのか、それとも場の空気を変えるためか、因幡さんは寧々の所在を尋ねてきた。私はそれに対してそれっぽい文言を並べて誤魔化しておく。多分そのぐらいあれば寧々も戻ってくるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、一通り見てもらったけど、どうだった?」

「な、何と言いますか、アメリカンな感じでした……」

 

 あれから、情欲を発散させたことで冷静になった寧々が、酷く陰鬱な表情を浮かべて戻ってくるまで、微妙に気まずい空気で過ごすこととなった。そして、今は戻ってきた寧々を含めた三人で再び話し合いに興じているところだ。

 

「空閑先輩はアメリカに行ったことがあるんですよね?」

「うん、あるよ」

「やっぱり、あんな感じでボ、ボディタッチとかって多いんですかね?」

「っ!」

 

 因幡さんの問いに対して、私が何か答える前に寧々が凄まじい勢いで私の方を見てくる。何だ、びっくりしたじゃないか。

 

「確かに日本人と比べると多いけど、流石に今みたいに過激なのは稀だよ」

「ほっ……」

 

 私の説明を聞いて、寧々は露骨に安堵したような溜息を吐いた。あぁ、そういうことだったか。寧々は可愛いなぁ。……あっちでは何故かその稀に出くわすことが多かったことは黙っておいた方が良さそうだ。

 

「まあ、こっちじゃ目立つからってのもあるけど、男子高校生なんて皆ケダモノだから、あんまり過激なことしてるとさっきの寧々みたいなことになるから、やっぱりこれはやらない方がいいと思うな」

「で、ですよね……何と言いますか、人気者になる方法というよりはビッチ育成法みたいでしたし……」

 

 先程の熱烈なキスを思い出したのか、顔を真っ赤にして因幡さんはそう言うが、なるほど、ビッチ育成法とは言い得て妙である。それに、こんな媚び媚びな人を人気者と呼んでいいのかも疑問なところだ。

 

「じゃあA案は廃案ということで、B案の方にいってみようか。あ、こっちはまともだから安心してね」

「は、はい、よろしくお願いします」

 

 扱いが極めて雑であるが、ベラ姐さんの案は即刻棄却である。実演してみて再認識したが、あれではとてもじゃないが役には立たないだろう。下手を打てば因幡さんのトラウマになり兼ねない。

 

「因幡さんはクラスメイトと話自体はするんだったっけ?」

「はい、休み時間に軽く雑談する程度ですけど……」

 

 私の問いに、因幡さんは自信なさげに答えるが、B案を実行する場合においては、寧ろ彼女の状況はうってつけである。

 

「これは私たちの実体験なんだけどね」

「? はい」

 

 私の言葉に話が始まる気配を感じて、因幡さんは居住まいを正して私へと向き合う。

 

「さっきの見て信じられないと思うけど、私と寧々は入学してから一年ぐらいは友人と呼べるような関係ではなかったんだ」

「へ? え、えっと、そうなんですか?」

「はい、入学当初からお話しするような間柄ではありましたが、友達になったのは今年の頭頃からですよ」

 

 私たちが紡ぐ言葉に、因幡さんは信じられないといった様子で私と寧々へと交互に視線を行き来させた。まあ、前置きしたように、あれだけ仲(・)睦(・)ま(・)じ(・)い(・)様子を見せられれば無理もない。

 

「で、何でそんな微妙なタイミングで友人になったのかと言うと、その頃に私と寧々が共通の趣味を持っていることを知ったからでね」

「趣味……ですか?」

「そう。だから因幡さんも何か趣味があれば、それを取っ掛りにしてまずは趣味仲間から探すのがいいかなって」

「なるほど……。あっ、そういうことでしたら……」

 

 話を進めていくうちに納得がいったようで、因幡さんは私のアドバイスを聞いてから、何かを思い出したように自身の鞄の中を漁り始めた。

 それを黙して待っていると、彼女は一台の携帯ゲーム機を取り出して私たちに見せてくる。ゲームはやらないので正確には覚えていないが、記憶が確かであれば現行最新機種の物で、更にそれは女の子らしくデコレーションされた、因幡さん仕様の一品であった。

 

「こういうのならクラスのコミュニケーションツールとして買って、そのままハマっちゃったんですけど……」

「おぉ、良いじゃない。ソフトは何を?」

「えっと、今はモン猟(かり)4THを」

「……確かマルチプレイが売りのゲームだっけ?」

「はい、合ってます」

 

 会話を交わしながら記憶の端の方にあるデータを掘り返して、因幡さんへと問いを飛ばすと、なかなかに好ましい答えが返ってくる。

 

「ふむ、因幡さんは結構上手かったりする?」

「まあ、はい、そうですね。伊達にやり込んでいないとだけは」

 

 続く私の問いに、因幡さんはそう言いながら、自慢気に、しかし控え目に胸を張った。控え目な(・)ではない。

 ……冗談はさておき、私は彼女の言葉を聞いて、思考を加速させる。皆が楽しくゲームをやっている中、颯爽と現れる天才美少女ゲーマー。協力プレイが売りのゲームで、誰よりも美しく立ち回る因幡さんを見て、クラスの同好の者たちはこぞって因幡さんに話しかけるようになるのであった。

 いや、流石にそれは上手くいきすぎだし、話を盛っている節があるが、流れそのものはそう不自然なものではないはずだ。

 

「よし、じゃあその方向で話を詰めていこうか」

「へ? あ、は、はい!」

「それじゃあそうだね。まずは────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「綾地先輩、空閑先輩、ありがとうございました!」

「報告は明日の放課後にでもよろしくお願いしようかな」

「はい! それではお疲れ様です!」

「気をつけて帰ってくださいね」

 

 あれから夕刻まで話を煮詰めて、因幡さんの友達作り大作戦の完成まで何とか漕ぎ着けることができた。ここまでいけば事の成否は明日の因幡さん次第だ。

 暗闇の中で一筋の光明を見い出せたからか、頭を下げて元気に部室から去っていく因幡さんは、とても晴れやかな笑顔を浮かべていた。あの様子なら恐らく大丈夫だろう。

 

「ごめんなさい。最後の方はお二人に任せきりになってしまって……」

 

 ゲーム……というか、そういった世間の娯楽に対してやはり寧々は疎い──尤も、私も知識の上にあるだけで、詳しく知っている訳では無いのだが──ようで、ゲームに関する話をしている時は、私と因幡さんに困った顔で交互に視線を送るという行為を繰り返していた。寧々はそれに対して謝罪の言葉を口にするが、ぶっちゃけるとその仕草が可愛かったので全く気にしていない。寧ろ癒された。

 

「得手不得手は誰にでもあるよ。そう気にすることじゃない」

「ん……」

 

 落ち込む寧々の頭をそっと撫でると、気持ちよさそうな声を漏らしてそっと甘えてくる。何度も繰り返しているうちに甘えるのが癖になってしまったようだ。可愛いので良しとしますわよ。

 

「丁度いい機会だし寧々も何か始めてみる?」

「えっと、ゲームを……ですか?」

 

 私の提案に、寧々は頭を撫でられながらこてんと小首を傾げる。可愛いの波状攻撃かな?

 

「天都君も一緒に始めてくれるなら……」

「いいよ、一緒に遊ぼうか。それに、因幡さんや秀明たちも誘ってみてもいいかもしれないね」

「はいっ。……ふふっ、何だか夢みたいです。こんな風に楽しく遊ぶことを考えられるなんて」

「考えるだけじゃなくて、実際に遊ぶのさ。お友達もたくさん作ろう」

 

 本当に、本当に心の底から楽しそうにして、寧々は満面の笑みを浮かべて明るい未来予想図を描いていく。少し前までは彼女が決して考えられなかった光景だ。

 何だかそれが堪らなく愛おしく感じて、私は思わず寧々を抱きしめた。寧々も少し声を上げて驚いたものの、すぐに私の背に腕を回して抱擁を交わす。

 

「あの、やっぱりさっきのだけでは物足りなくて……」

 

 そんな甘い空気が場を支配する中、寧々は頬を桜色に染めながら、恥ずかしそうにおねだりしてきた。発情している様子は見られないのでこれは素の反応だろう。

 

「寧々はえっちだなぁ」

「あ、天都君がかっこよすぎるのがいけないんです……」

「えっちなことは否定しないんだね」

 

 私の意地の悪い指摘に、寧々はぷいっと顔を逸らしてしまう。もう総ての動作が可愛い。

 

「えっちで可愛い寧々はどんなことをしたい?」

「え、えっと……その、それなら……今日はいっぱい甘えさせて欲しい、です……」

 

 正直に心の内を晒すのは恥ずかしかったのか、言っているうちにだんだんと声が小さくなっていく寧々であったが、おねだり自体はキチンと成し遂げることが出来たので、私はその要望を飲むことにした。

 しかし、もっと過激なものが来ると身構えていたが、届けられた願いは思っていたよりも普通のことであった。それぐらいなら幾らでも叶えてあげよう。

 

「部室でしてもいいけど、時間も微妙だし家でしようか。寧々、帰るよ」

「は、はいっ」

 

 夕暮れに染まる部室の中で二人きり、声を抑えて乱れるというのも乙なものであるが、下校時刻間際は先生が直接見回りに来るので、流石にそれを実行するわけにもいかず、ここは大人しく帰って事に及ぶことにした。事前のムードに長い時間浸り続けるのも、まあ悪くは無い。

 そういうわけで、一仕事終えた私たちは、その疲れを労うように身体を重ねるべく、愛の巣へと帰っていくのであった。




 前作の所に追い付いたので、前作の方は消しておきました。
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