「さ、着いたよ寧々────んぐっ!?」
風のように走り抜けて寧々の住まうマンションまで往き、彼女の部屋の玄関を潜った瞬間、つまり、人目を気にしなくても良くなった瞬間に、呼びかける私の声に応えることも忘れて、溢れ出てくる快楽の波を耐え忍んでいた寧々が乱暴に私の唇を奪ってきた。
余りのがっつき具合に驚いてしまって、明かりもついていない真っ暗な玄関でバランスを崩して倒れ込んでしまったが、寧々に怪我を負わせるようなヘマはしない。私が下敷きになるように身体を寧々と床の間に滑り込ませて、私は敢えて背中から強かに打ち付けられに行った。その際、歯と歯がかち合わないように唇を離させたのは、ギリギリだったがどうにか間に合ったようだ。
「ちゅっ、じゅるっ……♡ ごめん、なひゃい………れも、ちゅるるっ♡ もう
視覚に頼っていたせいで、暗闇の中で倒れ込んだことで一瞬前後不覚に陥る私に寧々は馬乗りの体勢に移行して、本能で私の唇を探り当ててから謝りながら舌を絡ませるキスをしてきた。私が倒れているのが硬いフローリングの上であることはお構いなしのようで、余程今の寧々は余裕が無いように思える。
「天都君とのキス、ちゅっ♡ あまくて、じゅるるるっ……♡ あたまも、とろけひょうで、じゅぷぷっ♡♡ しあわへれひゅ、ちゅっ、ちゅるるっ、ちゅぅぅぅぅぅっ♡♡♡」
頭に浮かんだ言葉をそのまま紡ぐようにしながら、寧々は突き出したお尻を振るようにして艶めかしく快楽で腰を捩らせて、私の肩と頬にそれぞれの手を添え、執拗に舌と舌とを絡ませる甘いキスを続けていく。私は反響し続ける頭に焼け付くような水音を超聴力で拾うことでその姿を捉えているが、今日一日分のドキドキが一気に爆発したような寧々の私を一心に求める様は、酷く美しく、そして妖艶であった。
「れろっ、れるるるるっ……♡ もう、キスだけで、ちゅっ、ちゅぷっ♡ イっちゃいそう、れすっ……♡♡」
移動はもうできなさそうなので、それは諦めて私も寧々の愛に応えるべく、舌を動かしてお互いに口腔内の唾液を舐め取るようにして口付けを交わし続ける。桜唇から下半身に伝播した快楽が寧々の下腹部を早くもビクビクと痙攣させているようで、一度目の絶頂はもうすぐそこかもしれない。
「んむっ!? らめっ、ちゅるるっ……♡
早く官能的に乱れる寧々の姿を
また、空いた左手は寧々の腰まで届く流れる様な美しい銀髪をサイドで結うことで露になっていた、今まで穢れを知ることのなかった彼女のうなじに優しく添えて、微弱な性感を引き起こす様にフェザータッチで触れていった。理由は今更言うまでもないだろうが、左右の手と指をバラバラに動かすのは得意なのだ。
そして、口腔内、うなじ、臀部と、同時に三箇所攻められることになった寧々は、腰を跳ねさせるようにしてその身を加速度的に快楽の波に堕としていく。
「んんん────ッ♡♡♡」
やがて、寧々は愛撫とディープキスによって一度目の絶頂を迎えた。私は衝撃で反射的に仰け反っていく寧々の身体を、うなじを押さえつけることによって阻止して、漏れ出てくる寧々の嬌声と唾液を余すことなく自身の口で受け止める。
「はぁ……はぁぁっ……んぅっ♡」
「はぁぁ、寧々、少しは落ち着いた?」
「全然……寧ろ、昂ってきてて……あんっ♡ お腹の奥の方も、天都君が欲しくて、どろどろとしてて、どうしようもないぐらい熱くて……」
口付けを中断して、熱を孕んだ吐息がかかるほどの至近距離で見つめ合いながら、私は寧々の張りのあるお尻を撫で回しながらそう尋ねると、寧々は合間に嬌声を挟みながらより深い交わりを求めてきた。絶頂の余韻で弛緩したことで押し付けられる寧々の身体が、彼女が喘ぐ度に小さく跳ねて私の身体に擦り付けられる。
「ここで続ける?」
「ご、ごめんなさい、でも、一秒でも我慢したら、もうおかしくなっちゃいそうで……!」
そう言いながらも、寧々は求愛するように衣服越しに自身の股座を私のいきり勃ったブツに何度も何度も腰を上下させて擦り付け続けていた。暗闇に慣れてきた私の瞳は寧々の悦楽に染まった表情を映していて、それはまさに発情期に入った獣の様相と相違ないものであると言っても過言ではない。
「早く……早く、あっ♡ 天都君の、おちんちんで、はぁぁっ♡ 助けてくらひゃいぃぃっ……♡♡ んっ、んんんんんんんんっっ♡♡♡」
今度は何時かの時と同じように、寧々が私の身体で自慰行為をすることで彼女は早くも二度目の絶頂を迎えた。潤んだ瞳に振り乱れる銀髪、だらしなく開いた口から滴り落ちてくる涎と、はしたない恰好であることを構うことなくいやらしく擦り付けられる下半身、その私を一心不乱に求め続けている寧々の総てが愛おしい。何だか彼女の放つ魔性に中てられて、デート中は抑えていた熱い情欲が私の腹の底から際限なく湧き出してくる気がした。
「えへへ……天都君のも、硬くなってきてますし……あんっ♡ 挿れちゃっても、いいですよね……♡」
ぐるぐると熱に浮かされた思考に囚われていると、馬乗りになっていた寧々の身体に力が入るようになってきたのか、彼女は半身を起こしながら私のズボンからカチャカチャとベルトを外して脱がそうとしているようだった。
抵抗する意思も特にないのであっという間に脱がされてしまい、衣服の抑圧から解放された私のイチモツは勢い良く跳ねてその先端を寧々の方へと向ける。それを見て、寧々の口角は嬉しそうに弧を描いていった。
「映画館の時から、ずっと燻ぶってたんです……んっ……。デートが終わるまでは、何とか我慢できてたんですけど……はぁぁ……もう見られるのも終わりだって気を抜いたら、我慢してた分が一気に来てしまって……っ!」
待てと言われた犬のように、寧々は私のペニスに視線を釘付けにしながらそんな風に独白し続ける。寧々はもじもじと秘部を私のふとももに擦り付けながら、今か今かと挿入の許可が出るのを律義に待っているようだ。
「いいよ、いっぱい気持ち良くなって乱れる寧々を見たい」
「あう……す、少し、恥ずかしいですけど、天都君が悦ぶなら、ふぅぅ……何でも見せちゃいますね……♡」
そう言って、恥ずかしそうに眼を伏せながらではあったが、寧々はゆっくりと腰を浮かせてから指で自身の下着をずらして私の陰茎と彼女の秘裂を接触させて、一度深呼吸をしてから勢いよく腰を下ろした。
「う、あぁぁぁぁ……ッッ!!」
「あぁっ、はぁぁぁぁぁっっっ♡♡♡ らめっ、これらめぇっっ♡♡」
瞬間的に駆け巡っていく快楽の波動に私は思わず呻くような喘ぎ声を漏らし、寧々は一気に最奥まで情欲の槍が貫いて行ったことで激しく身体を仰け反らせて快感を享受する。スカートがあるせいで見えない結合部から溢れ出てくる愛液の量も非常に多いようで、もしかすると今ので三度目の絶頂を迎えていたのかもしれない。
「あっ、あんっ♡ らめっ、腰っ、全然っ、止まってっ、くれないっ……!!」
「あっ、はぁっ、いいよっ、寧々のっ、好きに動いてっ……!」
一瞬の停滞の後、寧々は騎乗位のまま私に覆い被さる様な体勢で腰のストロークを再開させて、ハイペースでリズミカルに快楽の波を発生させ続ける。二人ともその強い波に翻弄されて、私の肉棒が寧々の子宮を突き上げる度に言葉を途切れさせて、それでも愛の言葉を交わし続けた。
あまりない、寧々の主導による性交であるが、たまにはこういう風なのも悪くはないと、快楽でスパークし続ける思考の端の方でぼんやりと思い浮かべて、私は寧々の扇情的な姿に視線を釘付けにされる。
「トんじゃいっ、まひゅっ♡ 気持ちっ、よひゅぎてぇっ♡♡」
ぐちゅぐちゅと激しく掻き乱すような水音を鳴らして、寧々は恍惚の表情のまま激しく腰を打ち付け続けた。そこには理性なんか欠片も残っておらず、ただただ本能のままに快楽を求める雌の姿があるのみで、普段の理知的な寧々を想い起こせるような要素は何一つとして残ってはいない。
しかし、そこにどうしようもなく興奮を覚えてしまっている私がここにはいて、寧々の獣性が引き起こす捨て身で苛烈な攻めは、私の下腹部にどうしようもないほどの浮遊感を発生させていた。射精の時はもうすぐそこだ。
「寧々っ、あっ、そろそろっ、
「はいっ、全部っ、余さずっ、注ぎ込んでっ、くださいっっ♡♡」
普段は忘れることのない避妊具のこともお互いの頭からすっかり抜け落ちてしまっていて、暴れ狂う純白の獣を解放するために、理性がトんだ寧々は攻勢を更に加速させる。そして、同じく理性もトびかけで抗う気持ちが微塵もない私の、辛うじて抑えられていた欲望がとうとう堰を切って爆発した。
「うっ、あぁぁ──ッッ!!」
「あはっ、あぁぁっ、あぁぁああぁぁぁぁぁぁっ♡♡♡♡」
ドクドクと脈打つように、私のそそり勃つ欲望の象徴から、寧々の膣内に大量の精液が飲み込まれていく。射精の瞬間に発生した特大の快楽で私は腰を跳ね上げるように浮かし、それによって膣内射精とともに子宮を突き上げられた寧々は、天を仰ぐように背中を仰け反らせて四度目の絶頂を迎えた。
貯まりに貯まっていた私の白濁液は、五秒間ほど寧々のうねる膣壁に搾り取られるようにして注ぎ込まれていき、それが終わった瞬間、寧々は力尽きるようにして私の上に倒れ込んでくる。それによって、媚毒を孕んだ熱い吐息が、お互いの顔に纏わりつく様にかかり、それが微弱に性感を刺激し続けているような気がした。
「ふふふ、また……天都君の、特濃の愛を……頂いちゃいましたね……♡」
「………………あっ!」
「きゃっ♡」
蛇のように絡みつくハグをしながら、寧々は私の耳元でそう蠱惑的に囁いてきて、そこで今更ながら衝動のままに行為に及んで避妊をすっかり忘れていたことを私は思い出す。ガバッと半身を起こして思わず頭を抱えてしまったのは無理からぬことだろう。普段からあれだけ気をつけていたというのに、刹那的な灼熱の欲望でその思考が完全にすっ飛んでしまうようでは、何のために気を配っているのか分かったものではない。
「気にしなくてもいいのに……」
「いやいやいやいや、やっぱり学生の内は駄目だよ。子供はしっかり社会的立場を得て────んむっ!?」
寧々は口を尖らせて拗ねるようにしてそう言うが、射精後の賢者タイムと自己嫌悪に同時に襲われて生まれた冷静な思考は、やはりそれを良しとはしない。日本はとかく余計な他所の目線や口が厳しいのだ。その悪意に寧々を晒してしまうのを避けたいと思うのは、恋人として正常な思考だと思って言葉を紡ごうとするが、理屈を述べようとする私に寧々は口付けでそれを封殺してきた。
「じゅるるるっ♡ おいひっ……ちゅっ、れろっ♡♡ あむっ、ちゅるるるるっ……♡」
上顎の天井を這い回るようにして寧々は舌を動かし、それを受けた私は背中にゾクゾクとした性感が駆け巡っていく。思考が飛びそうになるのをどうにか耐えるが、寧々はそれを嘲笑うようにして舌で器用に攻め続けた。初めの頃と比べると随分上手くなったものだと、ジリジリ灼けていく意識の端で何処か呑気に考えてしまう。
「ぷはっ……それなら、私がピルを服用すれば中に出してくれますか?」
「あんまり女性事情には詳しくないんだけど、それは大丈夫なの?」
「寧ろ、避妊具を使うより効果があるみたいですよ」
「そうなの?」
キスを中断して行われた寧々の提案に対して、最低限の保健体育の知識しかない私が疑問を呈すると、寧々はにこにこと笑顔を浮かべながら答えを返してきた。
うーむ、そういうならそれの方がいいのだろうか……? 恐らく、私が今ほど日本の性教育に不満を持った瞬間もそうないだろう。
「じゃあ、今度一緒に産婦人科に行こうか。確かそこで処方してもらえるんだよね?」
「はいっ。……ふふっ、何だか私たち、益々夫婦みたいですね」
知識が無いのであれば、有る者に従っておくのがとりあえず賢いやり方だろう。そう思って、後で自分でも調べはするものの、私は一先ず寧々の意見に従っておくことにして、彼女の提案を素直に受け入れた。
それを受けて、寧々はにこにこと嬉しそうに笑ってそんなことを口にする。可愛いなぁ。
「過去に戻ったら寧々のご両親に挨拶して、高校卒業する頃に籍を入れようか」
「えへへ、それは……とっても素敵な未来ですね……♪」
寧々の描く未来予想図はどんなものなのだろうか。未来を憂慮する必要が無くなった寧々は、私との幸せな未来を夢想することに一切の躊躇をすることが無くなったように見える。絶望で雁字搦めにされていた時と比べると前向きで、非常に良い方向に進めているようだ。
「寧々」
「はい……んむっ、ちゅっ、ちゅるっ……れろっ……♡」
幸せそうに笑みを浮かべ続ける寧々が愛おしくなって、私は寧々の名前を呼んでからゆっくりとキスを交わす。
二人揃って何だか大切なことを忘れているような気がするが、思い出せないことなら大したことではないだろうと思い直して、二人きりの熱い夜は更けていくのであった。
ルビ使ってそれをそう読ませるの、多分後にも先にも君だけやと思うで。