※この作品はR-18です。

神戯姦濫   作:水晶水

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 早いもので、サノバウィッチも3周年ですね(既に三週間経過した顔)。


B.夢魔襲来

「椎葉さんが魔女……」

 

 Schwarze・Katzeへと二人で向かう道すがら、私が椎葉さんから感じた濃い魔女の気配のことを話すと、寧々は神妙な面持ちを浮かべながら私の言葉を反芻する。それは何処か思い当たる節がある様な色を宿していた。

 

「実は案内の途中に椎葉さんにオカ研の活動内容を話した時、とても興味を示してきたんです」

「なるほど、仮入部の件はそれで」

「はい、一先ずお互いに部活での様子を見てみるということで意見が落ち着きまして」

 

 ポツリと零すような寧々の言葉に私は納得の意を示す。やはり見知らぬ街での心の欠片集めは難航してしまうわけだ。

 そう考えると、未だ仮入部とはいえ、オカルト研究部での活動に積極性を示す彼女の姿勢は予想の範囲内ではある。

 

「どうしましょうか……」

「そのことなんだけど、寧々さえよければ欠片の方は椎葉さんに譲ってしまわないかい?」

 

 俯き気味に今後の動向の如何を口にする寧々に私がそう口にすると、寧々はキョトンとした顔をこちらに向けた。

 

「欠片集め自体は天都君から貰う魔力がありますし、私はそれでも構いませんが……」

 

 言いたいことは分かるが、微妙に真意を理解できていないといった風に寧々は言葉を紡ぐ。私も今さっきの言葉だけで全てが伝わるとも思っていないので、促されるままに私は更に口を開いた。

 

「ほら、学校で魔女化するのは寧々も嫌がってたし、私たちももう少しゆっくりこっちでやり残したことをやらないといけないから」

 

 魔女の部分の指摘を受けて、寧々はボフッと頬を真っ赤に染める。

 散々本人も口にしていたことではあるが、やはり神聖なる学び舎であのような破廉恥な格好にならないといけないのは恥ずかしいようだ。……まあ、今日の放課後の頭にあれだけ淫らなことをしておいて何を言っているのかと言えなくもないが。

 

「それに修学旅行……は流石に無理そうだけど、それでも思い出は戻る前にまだたくさん作っておきたいだろう?」

「はい、次に繋げるために、次はもっと楽しく生きるために……でしたね」

 

 寧々が失ってきた分をしっかりと取り戻すために、本来ここまで生きてきて学んでくるはずだったものをちゃんと学んでから私たちは過去に戻らねばならない。時間が有限故に総てをというわけにはいかないが、できるだけ多くのことはこの時空にいる内にやっておきたいところである。

 

「そういうわけで、欠片の方は椎葉さんが回収してくれるだろうし、私たちはのんびりしようかなって」

「……椎葉さんに協力するというのはダメなのでしょうか?」

 

 諸々を総括して私はそう結論付けると、少し間を置いた後に寧々はそう口にした。その瞳には何処か懇願に近い色が見える。

 

「寧々はそうしたい?」

「はい、その……椎葉さんも魔女に関して独りで苦労していることもあるでしょうから、それを経験してる身としては見て見ぬふりというのもできなくて……」

 

 私の問い掛けに、寧々は自身も経験してきたが故に理解できる椎葉さんの心情を慮り、それに対して素知らぬふりはできないと語った。そして、その選択肢を取るということは、私と出会う前は人との関わりを避けてきた寧々が、自分の意思で椎葉さんと積極的に関わっていくと決めたということで、私はそこに彼女の確かな成長を感じることができて思わず口角が上がっていくのを意識の端で感知する。

 

「魔女の活動は本来孤独なものですが、私は天都君と秘密を共有して協力してもらって、とても気持ちが楽になりました。だから、椎葉さんにも同じ魔女としてそういう風に……」

 

 自信なさげに、だんだんと寧々の声が尻すぼみになっていくが、私はそんな寧々の頭を優しく撫でた。それを受けて、寧々は俯かせていた顔をゆっくりと上げて私の瞳を覗き込んでくる。

 

「優しいんだね、寧々は」

「そんな……あっ……」

 

 私の言葉に謙遜してこようとする寧々であったが、私の執拗な頭部への愛撫を受けて、寧々は小さく甘い声を零した。可愛い。

 

「でも、どうしよっか。いきなり『魔女です、協力しましょう』って言ってもアレだろうし」

「う……それは確かに……」

 

 そんなことをいきなり言われたところで、何か裏があると思われるのは間違いないだろう。それを分かっているのか、寧々も小さく呻いて難しそうな表情を作る。

 

「まあ、とりあえずそれは甘い物でも食べながら考えようか」

 

 そうこう話している内に、私たちは目的地であるSchwarze・Katzeに辿り着いた。方針は決まったことだし、相馬さんも交えてこのことは話を煮詰めていくことにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあそうだね。関わる如何は君たちに任せるとは言ったが、いきなりそういう風に近づいて来られては、向こうとしても警戒せざるを得ないだろう」

「ですよね……」

 

 お客さんがいない店内で一先ずの方針を相馬さんに伝えると、当たり前だろうといった風な調子で放たれる彼女の指摘に、寧々は気落ちしながらカウンターに置かれたショートケーキに目線を落とす。

 

「基本的に魔女が同じテリトリーに鉢合わせた場合は、欠片の奪い合いになるか、それがエスカレートしてテリトリーそのものの奪い合いになるかだからね」

「どうにかならないものでしょうか……」

「一定の信頼関係を築いてから話を切り出すのが一番穏便に事が運ぶんじゃないかな? 今はやっぱり待ちに徹するしかないと思うよ」

 

 どうにかして椎葉さんに協力して上げたい寧々は俯きながらも食い下がるが、相手方の心情を考えると今突撃するのは得策ではないだろう。

 知り合いのいない状況下で更に代償を抱えた孤独な魔女活動。事情を痛いほど分かる者として手を伸ばしたい気持ちは理解できるが、だからこそ良き理解者となるためにはまだ行動に出るには時期尚早である。相馬さんと話して改めて思ったが、魔女姿の椎葉さんと出くわす様な事故でもない限り、協力体制を敷くつもりなら今はまだ動くべきではない。

 

「ま、焦ってもしょうがないし、あんまり思いつめないようにね。はい、あーん」

「あむ……」

 

 拗ねる寧々を宥めるような口調で話しかけながら、理屈は分かるが心情では納得いってないような表情の寧々に、私は自分のケーキをフォークで一口分カットして寧々の口元に運ぶと、彼女は素早くそれに食いついて即座にぽやっとした笑顔に表情を変じさせた。

 それを見た私と相馬さんは顔を見合わせて深く頷き合う。寧々ちゃん可愛い同盟が今静かに結成されるのであった。いったい何をやっているのか。

 そんな風に三人で過ごしていると、その静寂を破る鈴の音──つまり、来店を知らせる音が店内に響き、相馬さんの顔が一瞬で引き締められた。公私はしっかりと分けているようだ。

 

「いらっしゃ──っ!」

 

 そして、仕事モードになった相馬さんが今しがた訪れたお客さんに顔を向けた瞬間、彼女の顔が強張るのを私の目は捉える。何事かと入口の方へ視線を送ると私はその理由を理解した。

 

「夢魔(アルプ)……!」

「ほう? お前は夢魔(アルプ)ではないようじゃが……」

 

 入口に立つライムブルーの髪の幼子から相馬さんと同一の気配を感じ取った私は驚愕の言葉を口から零し、それを聞いた夢魔(アルプ)はその見た目にそぐわない尊大な態度でそれに応じる。そのまま一目で自身の正体を看破した私を品定めするようにスッと目を細めて、幼子と私が睨み合う様な状態で場の空気が停滞し始めた。

 

「何をしに来た?」

 

 その空気を打ち破るように、相馬さんが強い口調で夢魔(アルプ)へと問いを投げると、彼女の視線は私から外れて相馬さんへと移っていく。二人は知り合いなのだろうか。

 

「ただの挨拶じゃよ。実は諸所の事情によって暫くこの地区で世話になることになったのでな。別に喧嘩をしに来たわけではないんじゃ」

「……そう」

「以前のこともあるし、後で揉めるのはあっちの望むところでもない。故に予め挨拶に来たというわけじゃ」

 

 ギチギチに張りつめた糸のような空気の中、夢魔(アルプ)同士で話し合いが進んでいく。その様子から察するに、予想通り二人は知り合いのようである。ただし、築かれている関係は友好的なものではないようだが。

 それに、諸所の都合と言ったか。十中八九椎葉さんの引っ越しに着いて来たといったところだろうが、はてさて……。

 

「夢魔(アルプ)……ということは、あの方が椎葉さんの……?」

「タイミング的には間違いないと思うけど……」

「何じゃ、紬のことを既に知っておったか」

 

 二人の間に広がる緊張した空気に中てられて、寧々が私に寄り添うようにしながら小さな声でそう尋ねてきて、私がそれに同じぐらいの声量で自身の推測を口にすると、それを耳聡く聞いていた夢魔(アルプ)は目を丸くしながら再び私たちの方へと視線を向ける。

 それに対して、聞かれていると思っていなかった寧々はビクリと身体を跳ねさせて、少女から逃れるように私の影に姿を隠した。幼子に怯える女子高生……絵面が何か面白い気がしなくもない。

 

「ふむ、此度は挨拶だけのつもりじゃったが……そういうことであれば、紬もこの場に呼び寄せるとするかの」

 

 そんな私たちの様子を見て、幼子は顎に手を添えて考える様な素振りをし、それから数瞬後にそう口にする。そして、それは椎葉さんとどう接触しようかと悩んでいた私たちにとっても渡りに船であった。

 

「魔女にとってテリトリーは重要な問題じゃろう? バレておるなら紬のことを隠しておく必要もないじゃろうて。当事者同士で存分に話し合うといい」

 

 沈黙を肯定と受け取ったのか、小さな夢魔(アルプ)はとんとん拍子で話を進めていく。あわあわしている寧々はさておいて、ちらりと相馬さんの方に視線を送ると、彼女もそれを止める気はないようだった。つまり、この機会を利用するのが最善手というわけか。

 

「今念話で紬を呼んだ。下校途中のようじゃったし、そう時間はかからずにここへ来るじゃろう」

 

 そして、あっという間に魔女同士の話し合いの場が形成された。行動力があるというか何というか……しかし、今はその行動力が事態を吉方へと持って行っているので、良しとしよう。

 ……そういえば、椎葉さんは引っ越してばかりだが、この少し通りから外れた喫茶店の場所が分かるのだろうか。実は念話にGPSの機能でも備わっているとか?

 

「あの、椎葉さんはこの場所を御存じで?」

「…………すまんが、迎えに行ってくれるか」

 

 何となく不安になったので、控え目に手を挙げながら夢魔(アルプ)に先程過ぎっていった疑問を簡潔に尋ねると、彼女は暫し固まった後に気まずそうにそう口にした。寧々を見て薄々勘付いてはいたが、魔女の感知能力は精度が高くないことが判明した瞬間である。

 

「では、駅の方で待ってもらえるよう再度念話をお願いできますか? あそこなら目立つでしょうし、土地勘が無くとも分かりましょう」

「あぁ、あの人が多く集まる場所じゃな」

 

 思い出す様な口調の夢魔(アルプ)の言葉に、私は無言で頷いて肯定の意を示す。椎葉さんの家がどのあたりかはさっぱりであるが、ここに徒歩で向かえるのであれば、駅までもそう無理な距離ではないだろう。

 

「何かあったら寧々のケータイに連絡するから、寧々はここで相馬さんたちと待ってて」

「は、はい、夜道ですから気を付けてくださいね」

 

 予防として、椎葉さんの連絡先を私は知らないので、有事の際に椎葉さんの夢魔(アルプ)を通して椎葉さんとコンタクトを取れるように寧々にお留守番を頼むと、少し戸惑いながらも寧々はこれを引き受けてくれた。それに私はにこりと笑ってから寧々の頭を一撫でして、椅子に掛けていた学ランを雑に着直して喫茶店を出ていくのであった。

 そうして、夜の街に溶け込むように、私は椎葉さんを迎えに行くべく走っていく。この話し合いが平穏な生活を齎すことを願いながら。




新コーナー「なぜなに天都君」

Q.ゆずソのキャラって陰毛生えてないけど、天都君はそのあたりどうなの?

A.至高の身体にムダ毛が生えるわけないだろう。
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