魔女同士の邂逅から数日が過ぎた。
あの日の翌日、椎葉さんは予定通り私たちのクラスへと編入し、これまた予想通りその特異な格好からクラスメイトたちからは奇異の視線を向けられることとなる。ただ、彼女の人当たりの良さから、既にある程度はオカ研メンバー以外でも話し相手がいるようで、そこのところは少しばかり安心しているところであった。
そんな風に、クラスにいつもと違った風が吹く日常を過ごしながら、私は今の生活に満足感を覚えているようだ。学院で日常を送ることもそうであるが、何よりも寧々たちと部室で話に華を咲かせたり、四苦八苦しながらお悩み相談を熟していくことが楽しくて仕方がない。楽器職人として忙しくしていた頃も当然楽しかったわけではあるが、恋人と思い出を共有しながら過ごす日々は、私の中で何にも代えられない宝石の様なものとなっていた。
寧々とお互いに愛し合えている以上、後はこのままの調子で寧々との思い出を積み重ねていきながら欠片を集めていくだけだ。魔法を書き換えてからここまで順調に事を運べているのであるし、何事もなく平和な日常が続いていくのを祈っていよう。
「むぅ、天都君?」
少しばかりそんな思考に耽っていると不機嫌そうな寧々の声が隣から聞こえてきたので、私は慌てて意識を浮上させて視線をそちらの方へ向けると、頬を膨らませた寧々がジト目で見てきている様子が目に入った。
うむ、通学路で考えることではなかったな。今は愛しの恋人に意識を集中させよう。
「ごめんごめん、ちょっと考え事をね」
「んっ……許します……」
私はすぐさま謝罪の言葉を口にして寧々の頭を撫でると、彼女は甘い言葉を漏らしてから一瞬で顔を蕩けた表情へと変化させる。可愛いなぁ寧々は。
「も、もうちょっとお願いします……」
「朝から欲しがりだね」
「ダメですか……?」
「ううん、いいよ」
そして、頃合いを見て撫でるのを止めようとすると、寧々は物欲しそうな顔をしてまだ続きをと懇願してきた。それに対して私が少しイジワルをすると彼女は上目遣いでこちらを見てきて、是が非にでもこの甘い時間の延長を望んでくるが、私としては始めから断るつもりもないので、それを受け入れる形で今しがた離そうとした手をもう一度寧々の頭に乗せて、再びゆっくりと彼女の髪の感触を楽しむようにしながら動かし始める。
……朝早い時間で人が少ないとはいえ、ここが通学路の往来で生徒たちの視線が少なからず存在しているのだが、寧々がそれを気にしている様子も見せないので私も気にしないこととする。通りすがる学生服の諸君らが砂糖の塊をいきなり口の中にぶち込まれたような表情になっていることも同様にだ。
「さ、じゃあ授業を始めていくぞー」
先日食べたショートケーキのように甘いひと時から時は流れ、今はお昼前の授業である。もう季節は秋に染まって夏の暑さとはおさらばし始めた頃だが、陽光に照らされる窓側の席の人たちはその陽気に当てられて少々眠そうにしている者が多いこと以外は特に変わったこともない、いつもと同じような授業風景だ。
「それじゃあこの文を……綾地、読んでくれるかな?」
「は、はい」
そんな中、久島先生の指名を受けた寧々が立ち上がり、指定された文章を朗読する音色が静かな教室内に響き渡る。彼女の耳触りの良い声に、幾分か眠気に支配されていたクラスメイト達の意識が現実に引き戻されていくのを知覚しつつ、私は逆に今朗読されている、教科書のとっくに読み終えていた部分から視線を外してから、眠ってしまわない程度に意識をぼんやりとさせ始めた。寧々の声を聴くのは良いのだが、改めて頭に入れておくような文章でもない。
「────んっ……んんんっ、ふぅぅ……んふぅぅぅ……♡」
しかし、日常に浸っていた思考は突如として変化した寧々の艶やかな声で現実へと引き戻されることとなる。慌てて視線を横へと向けると、そこには予想通り代償を発動してしまっている寧々の姿があった。
参ったな……授業中に発症するパターンというのは初めてだ。これでは直接私が寧々を鎮めることもできないし、今も視線が集中している彼女自身がそれを行うのもまた同様である。
「お、おい、綾地?」
やがて、クラスメイト達からだけでなく、異変を感じ取った久島先生からも怪訝そうな声色が寧々に向けられ始めた。
本当はどうにかして教室から連れ出してやりたい所であるが、そうするのに特に良い考えが思いつかなかったので、仕方ないが今は応急処置だけでも済ませてしまおう。そう思って私が寧々の代償に干渉するべく楽器態の力を解放して神言語を使おうとした時、それは起こった。
「い゛────ッッ!!」
突如、バチリと電撃に似た衝撃が私の両目に走り、灼熱が溢れ出したのだ。それと同時に、ぶつりと電源を切られたようにして私の視界から光が失われる。
「ひっ……!?」
口から漏れ出たのは小さな声であったが、異音がすればそちらへ意識が向くというもの。まだ大半は寧々の方へと意識が向いているようであったが、彼女とは反対の私の左隣の生徒は不幸にも私の異変に気がついたようで、私の両目から鮮血が流れ出ているのを目にして引き攣るような悲鳴を上げた。
「先生」
「ん……? どうした空閑……って、血が出てるじゃないか!」
痛みは酷いがあくまで冷静に努めて、私は静かに片手で顔を抑えながら手を上げて久島先生に呼びかけると、私の異変に気がついた先生は驚くような声を上げる。それに釣られてクラスの視線も私へと移るが、とりあえずそれはいい。ズッ友メンバーや椎葉さんの驚くような心配するような表情も
頭は割れるように痛いし、いきなりこうなった原因も分からない。色々と考えなければならないことが多いが、殊、この状況においては私の未知の負傷は逆にありがたい。怪我の功名という訳では無いが、寧々を教室から連れ出すために利用させてもらおう。
「出血が酷いので保健室に行ってもよろしいでしょうか? 後、目が見えないので案内を綾地さんにお願いしたいのですが」
「あ、あぁ、分かった。綾地もお願いしていいか?」
「へ……?」
焦らず、端的に要望を述べて、私は二人で授業を抜け出すために口を動かしていくと、久島先生は動揺しつつもあっさりとその要望を受け入れてくれた。まあ、彼女は生徒想いの良い教師であるので、この状況で断られるとはそもそも微塵も考えてはいなかったが。
ともかく、正式に許可を得たのであれば後は行動だ。本当は反響する音を拾って周囲の状況を把握できる故に案内など必要ないので、純粋に心配してくれている先生に対して嘘を吐くことに若干罪悪感を感じないでもないが、必要経費だと割り切っていこう。私の罪悪感よりも、今は発情によって意識も微妙にハッキリしていない寧々を連れ出す方が先決である。
「寧々、行こう」
「ひゃん……♡ は、はひ……」
そうして、私は寧々の腕を取ってから迷いのない足取りで教室を後にして行く。あまりに突然の珍事に教室中の視線が尾を引くが、もう既に性感帯でも何でもない所を触れられただけで嬌声が漏れてしまうほどに代償が進行しているので、多少疑問を抱かれようがそれも已む無しである。
「んぅっ……♡」
「大丈夫?」
「大丈夫、じゃないです、けど……天都君も、血が……」
教室を出た瞬間に膝から崩れ落ちた寧々を抱きとめつつ彼女を心配する声をかけると、寧々は自身の手が汚れることも厭わずに指先で私の双眸から零れ落ちる血涙を拭ってくれた。お互いに尋常ならざる状況ではあるが、こういう風に想い合えるというのは嬉しいものである。
「こっちは大丈夫。出血自体はもう治まってるから」
嬉しいものではあるが、かと言ってそれに浸っていられるほどのんびりしていい状況でもない。気休めではあるが、私は寧々を安堵させるために言葉を紡ぎながら、魔法で手元に呼び寄せたタオルで顔を拭っていく。
これは自身の所持品限定ではあるが、自分の身の回りに物を瞬間移動させる
しかし、今魔法を使った瞬間にまた頭痛を感じたが、もしや先程の出血と頭痛は神言語を使おうとしたのが原因なのだろうか。そう仮定すると、何やら以前にもこういったことがあったような気がするが、痛みで思考が逸れる頭では上手く思い返すことができなかった。
「それより、人気の無い所に行こうか。歩ける?」
「ごめん、なさい……上手く、力が入らなくて……」
一先ず湧いてきた疑問を頭の隅にやりつつそう問いかけると、寧々は蕩けた瞳をこちらに向けながら首を力なく横に振る。この様子では最早一刻の猶予もなさそうだ。
「じゃあ背負って移動するよ。掴まれる?」
「は、はい、それなら何とか……」
そう言いながら私は寧々に背を向けると、彼女は後ろから首元に抱き着く様に腕を回してきて全身をこちらに預けてくる。そして、腰の抜けた寧々をしっかりと支えるようにして、私は一息で彼女を背負いながら立ち上がった。
「んっ、ひぃっ♡」
──が、その時に発生した揺れで、寧々の口の端から堪え切れない嬌声が漏れ出てくる。耳元を擽る様なそれに思わずその気になってしまうが、教室の前でこれを発散するわけにはいかないので私は腹に力を入れて耐え抜いた。
「あ、まとくんが、動く度に、擦れてぇ……はぁ、はぁぁんんっ……♡」
しかし、それを寧々が気にかける余裕はないようで、特上の甘さを混ぜ合わせた寧々の声が私の耳朶を震わせる。その自身の状況を説明する言葉で寧々が既に限界寸前まで我慢をしていたことを理解して、私はまだ教室のドアの目の前から一歩も移動できていないことに若干の焦りを覚えた。
一先ず授業中なら目指すところは特別棟か。あそこは放課後以外はほとんど人が出入りしなかったはずだ。万が一出入りがあったとしても、部室まで逃げ込めば人影の心配をする必要は一切ないだろう。
それを頭の中で一瞬の内に考えてから、私は目的地へと向かうべくゆっくりと脚を動かし始めた。とにかく寧々に振動を与えないようにしながら、かつ、その範囲で最大限急いで、だ。
「あ、あんっ♡ ひぅっ♡ あ、天都、君っ♡ も、もう、我慢できなひぐぅっ♡♡」
「あと少し、寧々、あと少しだから頑張ろう!」
最大限の配慮はしたものの、やはり無振動での移動は不可能で、一歩を踏みしめる度に耳を擽る寧々の喘ぎ声に悩まされつつ、私たちはようやく部室がある特別棟の最上階まで辿り着いていた。この時にもう寧々は限界を超えているようで、それは寧々が私に背負われながら強く皺ができるほどに私のYシャツを握りしめていることから容易に想像がつく。序でに言うと、既に下着で受け止めきれないほどの愛液が分泌されている音が寧々の秘部から聞こえてきていることからも判断できるだろう。
「よし、着いたよ」
「え? あ、はぁぁ、はぁぁっ……♡ や、やったぁ、やりました、私、我慢でき……んっ、ふぅぅ……ふぅぅぅっ……♡」
そして、ようやく部室の目の前まで辿り着き、それを寧々に知らせると、彼女は発情を誤魔化すための深呼吸を織り交ぜた声で喜びを露にした。その表情は快楽と入り混ざって非常に複雑な音を奏でているようであったが。
「じゃあ開けるね」
「あ……か、鍵がない、ですけど……」
「大丈夫、魔法でちょちょいだから」
いよいよ入室するために私が部室のドアノブに手をかけたタイミングで、今の今まで完全に失念していたのか、寧々が部室の鍵を教室に置いてきていることを顔色を悪くしながら伝えてきたが、私はそれに何の心配もないと言葉を返す。その言葉通り、それから間も無くして部室の鍵がガチャリと解錠される音が静かな廊下に響き渡り、そのまま私たちは流れるようにして部室の中に逃げ込んだ。
今口にした通り、私が鍵も無く施錠された扉を開けることができたのは魔法のおかげである。これは
色々と倫理的に際どい使用方法だが、今回は大目に見て欲しい。そして、魔法の発動に伴って発生する頭痛も今は無視だ無視。
「はぁぁ、あぁぁぁ、んんっ♡♡ 天都君っ♡ もう、らめぇっ♡ もう、色々限界で……早く、はやくはやくっ……♡」
完全に人の目を気にする必要が無くなった寧々はズルズルと私の背中から剥がれ落ちながら、縋る様なオネダリの言葉を矢継ぎ早に口にする。
「我慢、しすぎて、頭がおかひく、なっちゃう……っ!」
なりふり構っている余裕もないようで、寧々は抑圧している快楽の波が溢れ出しそうなのか、歯の奥をガチガチと鳴らしながら、震える手をこちらへと伸ばしてきた。私はその手を絡め取るようにして握って、そのまま代償を押し返す勢いで深い深い性愛のキスを交わす。
「んむっ、ちゅっ♡ あふっ、あむっ……じゅるるっ、ぢゅるるるるるっ♡♡」
口を合わせた瞬間に寧々は激しく貪るように私の唇に吸い付いてきて、情欲の勢いに任せた乱暴なキスを敢行してきた。決して逃がさぬようにガッシリと腕を私に抱き着く様に回して、後頭部と肩甲骨の辺りを手の平でホールドしてくる様はさながら捕食者と言ったところか。
しかし、こちらもそれにされるがままというわけではない。まだ授業時間は始まってすぐだが、悠長にしている時間は一秒たりともないのだ。故に、私もその寧々の獣の如き勢いに負けないように、荒れ狂う彼女の舌に絡み合わせるようにして舌を動かし続ける。
「んっ、んむっ♡ れろっ、んぅぅぅっ♡♡ ちゅっ、ちゅるるるっ♡ あっ、あぁぁんっ♡」
静寂が淫猥な水音に犯されていく中、私は寧々と桜唇を交わし合いながらゆっくりと彼女を部室の床へと押し倒し、汗ばんだ寧々の剥き出しの太ももを愛撫し始めると、水音に交じって寧々の歓喜の嬌声が口の端から漏れ始めた。そして、二点攻めを受ける寧々はビクビクと身体を痙攣させて、その攻勢に隙を見せ始める。
「ひゃうぅぅぅっ♡♡ あぁぁっ、天都君っっ♡ わ、わらひ、もうっ……♡」
当然、私がその隙を逃すはずもなく、床を背にして逃げ場のない寧々を一気に攻め立てると、彼女は全身を捩らせながら、涙目で絶頂の時が近いと告げてきた。私はその期待に濡れた瞳に応えるべく、寧々の太ももを撫でていた右手を寧々の一番弱い陰核へとするりと運ぶと────
「んんっ♡ んぅぅぅううぅぅぅぅッッッ♡♡♡」
一瞬の停滞の後、大きな嬌声と共に寧々の腰が弾かれるように仰け反って、蜜壺の奥から大量の愛液が溢れ出てきた。それは本来堰となるべき寧々の可愛らしい薄桃色の下着をびしょびしょにして、それでもなお止まることはない。
一度目の区切りを迎えて寧々の方を
そんな風な冷静な思考で、此度の情事はいつもより激しいものになることを私は予感するのであった。
なぜなに天都君-第二回-
Q.寧々ちゃんの好きなところは?
A.全部と言えば全部なんだけど、強いて一つ挙げるなら私を見つけるとすぐに笑顔になるところかな。好いてくれてるんだなって思えて自然と笑顔になっちゃうよね。