久方振りのまぐわいから一夜明けて、私は定時に目を覚ましてぼんやりと天井を眺めていた。休日二日目なのでまだ起きる必要はあるまいが、リズムを崩さないためにももうそろそろベッドから這い出ておこうか。
結局、昨日は初っ端の激しいセックスから少し休憩してお風呂に入りながら一射、お昼はゆっくりと五時間かけてスローセックスで二射、その後にまたお風呂で一射と、ほぼ一日をかけて寧々との性行為に及んだ。というのも、大きな代償は最初のアレで引いたのだが、一週間中途半端に代償を処理していたせいか、薄くまとわりつくように微弱な代償が慢性的に発生していたと寧々が言っていたからだ。
最終的にそれから寧々が解放されたのは二度目の入浴での
「うぐぐ……おや?」
濃厚な一日だったなと思い返しながら、一人では広すぎるベッドから身を起こして伸びをしていると、私の耳がスマホの着信音を捉える。まだ時間は六時過ぎだが、何方か急ぎの連絡だろうかとそれを手に取って確かめると、液晶には「綾地寧々」の名前と、部活の時に撮ったにへらと笑う寧々の写真が映し出されていた。
「はい、もしもし」
『あ、あままみゃっ、天都君っ! 』
「どうどう、落ち着いて落ち着いて」
何事だろうかと通話ボタンをタップしてから応答すると、電話越しに酷く慌てた様子の寧々の声が聞こえてくる。何かあったようだが、今の状態ではまともに話が出来なさそうなので、私は呂律が大事故を起こしている寧々を言葉で宥めた。
『あ、あのあのあの、耳が、耳が』
「耳? 耳がどうしたの?」
しかし、奮闘虚しく寧々は落ち着きを取り戻してくれず、私に必死に耳について何かを伝えようとしてくる。どうしよう、直接寧々の家に確かめに行った方がいいのだろうか。
『耳、猫耳が生えてきちゃったんですっ!!』
そして、そんな不思議な文言が私の耳朶を打って脳で処理された。
…………よし、寧々の家に行こう。即決である。
『とりあえず、私もすぐそちらに行くから、それまで家から出ないようにね?』
「は、はい、分かりました……はぁ……」
天都君に続いて七緒にも電話をかけてから、私は深いため息を吐きます。そうして、横目で見るベッドの横の姿見に映るのは、私の髪色と同じ色の毛色をした猫耳が、私の頭頂部から生えている光景です。私の気分を反映してか、心做しか垂れているような気がします。
「本物ですし……どうなっているのでしょうか……?」
実際に触れてみても、それは毛並みの良い猫のそれと同じ感触で、それが益々私の頭を混乱させていきました。
「あっ……天都君……」
気落ちしながら姿見の自分とにらめっこしていると、インターホンの音が聞こえてきて、私の垂れていた猫耳がピンと真っ直ぐに立ちます。三十分程前に天都君に電話をかけましたが、もう来てくれたのでしょうか。
ふふ、こんな状況ですが、私のために天都君が急いで来てくれた事が少しだけ嬉しいです。
「天都君っ」
「寧々、来たよ」
パタパタと早足でモニターと向かい、無い尻尾──いえ、今はあるんでした──を振りながら私はすぐに応答すると、そこにはやはりエントランスまで来ている天都君の姿を確認出来ました。すぐさま遠隔操作で入口を開けると、私は玄関へと歩いていきます。
「えへへ、おはようございます」
「ん、おはよう。…………本当に猫耳だね」
待つこと一分程で、今度はドアをノックする音が聞こえてきて、私は待ちきれずにドアを開け放ちました。そこに立つ朝一番の天都君の姿に思わず笑顔を浮かべて、私たちは挨拶を交わし合います。
「何か、生えてきた心当たりとかはあるの?」
「いえ……で、でも、七緒は何か気付いている様な感じでした。この後七緒も来てくれるそうなんですが……」
一先ず天都君を家の中に招き入れて、私はソファで彼にくっつきながら、今回の騒動について話し始めました。
原因については全く分かってないのですが、七緒に電話したのは猫ということならば何かしら彼女が関わっていると判断しての行動です。結果としては、その判断が大正解だったようですが。
「まあ、猫だしねぇ……」
そして、私の返答を聞いた天都君は納得した様な表情をしながら私の猫耳と猫尻尾を交互に見遣ります。
そ、そんなにまじまじと見られると恥ずかしいですよぅ。
「それなら、相馬さんが来るまでどうしようか」
「えっと……それなら一つお願いがあるのですが……」
一先ず空き時間ができてしまったので、その間何をしようかということになりまして、そういうことであれば、天都君を見てからずっと心の奥底で沸々としている欲望をぶつけるために私は言葉を紡ぎます。
「それはいいけど……どうしたいの?」
「あ、あの、その、撫でて欲しい、です……」
要件を聞く前に承諾してくれたことを嬉しく思いつつ、私は少し恥ずかしがりながらそう口にしました。何だかそれが子供の要求みたいだなと、つい自分の小さい頃を思い出してしまいます。
でもこれは別にそういった理由での要求ではありません。恐らく猫になった影響なのでしょうが、無性に
「撫で……あぁ、猫だから……? もしかして、思考とかも少し猫みたいになってる?」
「た、多分……」
相変わらずの理解力と言いますか、天都君は話が早いですね。流石です。
それはそれとして、そろそろ待ちきれないのですが……。
「それじゃあ失礼して……」
「みゃっ……!」
んんっ、な、何ですかこれ……! 軽く撫でられただけなのに、電流みたいに気持ちいいのが全身に……っ!
「あ、あみゃとくんんっ……♡」
「気持ちいい?」
「はひぃ……っ♡」
あっという間に力が抜けて、私は天都君の胸に頭を預けるようにしてしなだれかかります。
本当に何ですかこれっ、こんなの気持ちよすぎるじゃないですかっ……!
「ここもやった方がいい?」
「みゃあぁぁぁっ♡♡ にゃっ、らめですっ♡ よく分からないぐらい、気持ちよくてぇっ……♡」
頭を天都君に擦り付ける様にしていると、天都君は猫耳周辺だけでなく私の顎の辺りも撫で始めました。それによって、性感とは違う極上の快楽が私の思考を支配していって、だんだん何も考えられなくなっていきます。
「……おや、誰か来たみたいだ。相馬さんかな?」
「あっ……んんっ! ちょ、ちょっと見てきますねっ」
そうして、それなりの時間を撫でられて過ごしていると本日二度目のインターホンの音が鳴って、天都君はそれに気を取られて私から意識を外しました。同時に私の頭から彼の手が離れていって、私は反射的に名残惜しい声を出してしまいますが、すぐに気を取り直してモニターの方へと赤い顔のまま駆けて行きます。
……まだ撫でられていたかったです。
「────というわけで、多分寧々がそうなったのは魔力の逆流が原因だろう」
「逆流……ですか」
鸚鵡返しの様な私の言葉に、相馬さんは静かに頷いて肯定の意を示す。
寧々を文字通り猫可愛がりしている時に来訪したのは予想通り相馬さんだったようで、彼女を招き入れた後に私たちは卓を囲む様にしながら話し合いの場をセッティングした。そうして事の真相を理解しているであろう彼女の口から語られたのは、相馬さんと寧々とを繋ぐ
少しだけ魔女のことについて補足説明をしておこう。以前もしたような気もしていないような気もするが、新規の
前置きはこの辺りで終いにしておいて、その魔力が逆流してきたということは相馬さんが一度に処理し切れない程の魔力が発生していたということであって、つまり、それが意味することは────
「その、何だ、番いの営みにあんまりとやかく言うつもりはないけど……せめてもう少し、ね?」
「はい……」
そういうことである。早い話、蓄積された代償を昨日の大性交祭りで一気に解消したのが原因であったということだ。
普段クールな相馬さんが顔を真っ赤にしながらそう遠回しに指摘してきたのもあって、何と言うか、気まずいことこの上なかった。身内にそういう話題で注意されるのは流石の私も恥ずかしい。
ふと思ったのだが、寧々の代償から発生する感情を読み取ってヒトの感情を学んでいるということは、相馬さんは……いや、これ以上は何かイけないものを呼び出してしまいそうなので止めておこう。藪を突いて蛇どころかアナコンダが出てきそうだ。
「ごほんっ……とにかく、流れていった魔力から考えると、多分一日もすればそれも収まるだろう」
「そうですか、良かった……」
そうして、赤らめた顔のままの相馬さんは咳払いをしてからそう締めくくる。とりあえず、大事ではないようなので私も胸を撫で下ろすことができた。
「…………ところで、寧々はさっきから何を?」
「あぁ、これは……」
話し合いも区切りが付いたということで、相馬さんは今の今まで意図的に触れないようにしていた寧々の様子について尋ねてくる。……完全に話を聞いておらず、話し合いの間ずっとにこにこと満面の笑みを浮かべながら私の肩に頭を擦りつけている寧々について。
「どうも猫化の影響が思考の方にも出ているようでして」
「あぁ……そう言われると、確かにその奔放さは……」
私の端的な説明に、相馬さんは話の矛先が自分に向けられても未だに甘え続けている寧々を、何とも言えない表情で見つめ始めた。
そういえば、相馬さんの所作的な意味での猫らしいところは今まで見たことが無いような気がする。一度、能力の紹介の時に黒猫になってもらったことがあったが、その時も姿が猫というだけで猫っぽさを目の当たりにしたことは無いな。
……まあ、変化の影響で下着を含めた衣服がその場に見える形で脱ぎ散らかされたのと、人間態に戻った時に一糸纏わぬ姿であったが故に、即座に寧々が私の両目を塞いできたのでその時も
「元は寧々の魔力とはいえ、一旦私の魔力が混じった影響もあるのかな?」
「まあ、私としては可愛いので何でもいいですけどね」
「~~♪」
恐らく魔女史上でも初めて起こる珍事であるので、相馬さんはその事象を興味深く観察しているが、先程口にした通り、私は寧々が可愛いならそれで良しとする。特に悪影響も無いし、一日で収まるというのであれば尚更だ。
「みゃっ♡ んにゃぅっ♡♡」
話し合いも終わったということで、最中も構ってアピールをしてきていた寧々の頭を撫でてやると、寧々は文字通りの猫撫で声を漏らしながら、更に強く頭をこちらに擦り付けてくる。とても可愛い。
……とても可愛いのだが、さっきよりも猫化が進行してはいないだろうか? 完全に所作が人慣れした猫のそれだ。まあ、可愛いからいいか。……さっきから可愛いしか言ってないな。
「ほら、ここが気持ち良いのかい?」
「にゃんっ♡♡」
腰砕けになる寧々を更に撫でていると、寧々は頭を動かして私の手を自身が気持ち良い場所に誘導し始めた。それに従って撫でてやると寧々は嬌声にも近い声を上げる。……相馬さんの目の前であるにもかかわらず。
「……空閑君は猫の扱いが随分と上手いようだね」
「そう……でしょうか?」
当然目の前で繰り広げられる光景を相馬さんも目撃しているわけで、彼女はそれを見ながら全身からそわぁ……っとした雰囲気を醸し出しながら私にそう指摘してきた。何かデジャヴを感じるなこれ。
しかし、そう言われると、確かに今世では触れ合った動物に懐かれることが多かったような気がする。恐らくだが、これも以前語った権能の拡大解釈の一つなのだろう。つまり、動物も
「空閑君、もしも、もしもの話だが、私が君に撫でて欲しいと言ったらどうする?」
「えぇ……? ど、どういう仮定なんですかそれは……?」
そんな突拍子もない相馬さんの問いに、私は思わず彼女に気の抜けた声を返す。いや、意図せんとすることは分かるのだが、実年齢は双方共に不詳なので置いておくとして、見た目二十代良いとこのお姉さんを見た目高校生の私が撫でる光景は色々とどうなのだろうか。本来止める立場の寧々がこれなので非常に状況はアレであるのだが。
「こう見えて私も猫の端くれなんだ。こんなものを見せられて大人しくしていろというのは少々酷とは思わないかい?」
「全然思わないですけど……」
「いいから撫でるんだ。先っぽ、先っぽだけでいいから」
「何をさせるおつもりで!?」
完全に私の袖にする言葉を袖にしながら、問答の皮を被った強要と共に相馬さんがにじりにじりとこちらに四つん這いで近づいてくる。若干目つきと鼻息がヤバい様な気もするが、誰だ相馬さんを
というかこれ、どうにか回避しようと頑張ってはいるが、寧々は私の片脚を拘束する様にして跨っているので逃げるに逃げられないし、そもそも寧々が相馬さんと私をここに呼んだ時点で詰みだったのでは?
「……す、少しだけですよ?」
「空閑君が賢明な子で良かったよ」
「はぁ……」
この危機的状況に私は撫でない方が良からぬことになると予見して、大人しく相馬さんも撫でることに決めた。それを聞いて彼女は今まで見たことも無いような満面の笑みを浮かべるが、できればこのような状況で拝みたくはなかったと、大きくため息を零してしまうのも仕方のないことだと思いたい。
「その前に……」
「こちらの姿だと髪の色と毛色は一緒なんですね」
撫で始める前に相馬さんが自身の頭から髪色と同じ薄桃色の猫耳を生やして、獣人態とも言える状態へと移行してから、私の手の届く範囲へとずいっと侵入してくる。色のせいか黒猫の時とは違って随分と可愛らしい印象を受けるが……いや、これ以上は何も言うまい。
「それでは……」
「んんっ……なる、ほど、これは確かに……っ」
意を決して、寧々を撫でる手を止めずに相馬さんの頭に手を伸ばすと、相馬さんは一瞬ビクリと身体を跳ねさせてから、その身に駆け巡る何かを堪能する様にして感嘆の言葉を漏らす。何だろう、凄くイけないことをしているような気がしてきた。
今更ながら、これは浮気に入るのではなかろうか。撫でる行為自体は問題ないだろうが、相手のリアクションがリアクションだけに判定が危うい気がする。
「あっ……んんっ……」
しかし、かと言って撫でるのを止めるわけにもいかないのだ。寧々が上に乗っかっていて逃げれない以上、直前の相馬さんの様子を考えると下手なことはできない。先程の彼女の目は手段を選ばない目をしていたので。
そうしながら、猫が肉食動物たる虎や獅子と仲間であるということを何故か私はしみじみと思い出すのであった。後で寧々には事情の説明と共に誠心誠意謝っておこう。
「~~~~♡♡」
「んぅっ……にゃっ……♡」
現実逃避もそこそこにしておいて改めて目の前の状況を見てみると、私に頭を撫でられて表情を蕩けさせる美女が二人いるわけだが……うん、傍から見たら完全にヤバい光景だろう。寧々に至っては、身体を密着させつつ撫でやすいポジションに頭を置いている始末である。完全に虜になっているようだ。
何だか相馬さんの様子も艶めかしい感じになってきているし、そろそろこちらは止めておかないと本当に取り返しのつかないことになりそうな気がしてきた。
「はい、お終いです」
「あっ……んんっ! ふぅ、空閑君はとんだ猫たらしのようだ」
あかんことになる前に相馬さんの頭から手を離すと、相馬さんが来た時の寧々の様に名残惜しそうな声を上げるが、すぐに気を取り直して、紅潮したまま私に責任転嫁する言葉を紡いでくる。何だ猫たらしって。
「それにしても、空閑君はテクニシャンだね。寧々が君に虜になる理由も何となく分かったよ」
「止めてください、その状態でその発言は誤解しか生みませんから」
ちらちらと赤い顔で未だに撫でられる寧々を見ながら、相馬さんはそんなことを口走った。
彼女は最中に身を捩っていたせいで若干衣服が乱れていて、その上息遣いも荒いし表情もちょっぴりヤらしいので、ここだけ切り取れば事後と捉えられても何らおかしくない状況だ。実際は事前ですらないのだが。
「…………たまにでいいから、また撫でてくれないかい?」
そして綴られる相馬さんの小さく消え入りそうな声での催促に、私は否定の意思で以てスッと彼女から目を逸らす。
「考えてもみておくれよ空閑君。私は寧々の代償の魔力を回収する度に君と寧々との熱烈な交尾の光景を見せられてるんだ。独り身の私にも何か褒美の様なものがあって然るべきじゃないかな?」
「いや、必死過ぎませんか!!?」
しかし、それでは諦めてはくれないようで、相馬さんは動けない私の耳元で未練がましくそう囁いてきた。普段の彼女と比べてあまりにもあんまりな姿に思わず全力でツッコんでしまった私は悪くないと思う。
というか、私の撫でって動物的な観点からするとそんなに良いものなのだろうか。あの相馬さんをこんなできれば見たくなかった醜態を晒させるレベルで惑わせるなら相当なものなのだろうが……。いや、冷静に考えると、権能の拡大解釈ということはこれも正しく神の御業ということになるので、そうなるのも無理からぬことなのか……?
と、とりあえず、これはあまり多用しないようにしよう。
「……」
「分かりました! 分かりましたからそんな悲しそうな顔をしないでください」
そして、とうとう拗ねる様にして俯いてしまった相馬さんに根負けして、私は相馬さんの要求を受け入れてしまった。
意志が弱いと存分に罵るがいいさ。しかし、私としては寧々の恩人たる彼女にああいった態度を取られると居た堪れない気持ちが爆発してしまうのだ。
「ほ、本当か? 今更嘘とは言わないだろうね?」
「そこまで腐ってはないですよ。……ただ、本当にたまにですからそこは留意しておいてくださいね」
それを聞いて、パっと表情を笑顔に転じさせた相馬さんが私に食い気味に確認してくるが、今更それを覆すつもりはない。その割に意志がブレッブレなのはできればツッコまないで頂きたいところである。昔からそうだった
しかし、何と言うか、ここ数分の間で私の相馬さんに対するイメージがガラッと変わってしまったなぁ。まぁ、それで特にどうにかなるわけでもないのだが。
「……さて、やるべきことも終わったし、私は店もあるから今日は失礼するよ」
そう言いながら、相馬さんは満足そうな表情を携えてその場で立ち上がった。……やるべきことの中にさっきの遣り取りも含まれていたのかは気になるところであるが、聞いたところで何も無いので黙っておこう。
「空閑君、楽しみにしてるからね」
「だからその文言を止めてくださいと言うに」
そして、去り際にとても良い顔で私の言葉も受け流して、寧々によろしく伝えておいてくれと言い残して相馬さんは帰って行くのであった。
しばらくしてガチャリと玄関が施錠される音が聞こえてきたが、あれは恐らく動けない私の代わりに魔法でちょちょいとやってくれたのだろう。どうせ気を回してくれるのであればもう少し違うところでして欲しかったのが本音であるが。
アレなのだろうか。
「何だか疲れてしまっ……痛っ」
「あみゃとくん……あむっ」
ドッと疲れを感じて溜め息を吐く直前に、未だに猫っぽいムーヴをする寧々に噛まれて意識をそちらへと向けさせられると、そこにはジト目でこちらを見上げながらガジガジと私の手を噛んでいる寧々がいた。少しだけいつもより鋭くなった犬歯の感触が先程の私を責めているような気もする。
ともかく、
「うみゃっ……んんっ♡」
腕を噛まれたまま残ったもう片腕だけで寧々を抱きかかえてソファに移動してから、私は寧々を膝の上に乗せて彼女の身体を愛撫し始めた。まだ始めたばかりだというのに、それだけで寧々は嬌声を口の端から零す。
やはり先程の予想は当たっていたということだろうか。相馬さんが非常に強く撫でられるのを望んだのと同じ様に、寧々も猫化の影響で私の撫でへの耐性が低くなっていると見受けられる。
……撫でただけでイきやしないだろうな?
「あみゃとくん……っ♡ すき、なでられるのすきっ♡」
主に上半身を撫で回されながら、寧々は幾分か舌足らずになった口調で甘える様な言葉を零していく。それが快楽に溺れているからなのか猫化のせいなのかは分からないが、どちらにせよ寧々が気持ち良さそうなので良しとしよう。
まだ今日という日は始まったばかりだ。一先ずはお互いに未知を存分に楽しんでいこう。
何でこんなことになったのか私自身が多分一番よく分かってないです。にゃんてこったいは私の台詞だよこの野郎。