「よぉし、久しぶりの学校だ」
「ふふ、元気ですね天都君」
寧々の猫化騒動もあれから無事に収束して翌日、私たちは一週間ぶりに共に登校するために私の家に集まっていた。学院には私の家の方が近いので、彼女の通学路に位置していることも加味して、寧々にはいつも私の家に寄ってもらっているのだ。
今は工房の入り口付近で私が元気良く両の腕を天に向けて掲げたところを見て、寧々が楽しそうにくすくすと笑っているところである。うむ、今日も寧々は可愛いな!
「そういえばそろそろアレの時期か」
「アレ……ですか?」
それからすぐに家を出て二人で学院へと向かう途中、私はしばらく見ていない学院のことに思いを馳せていると、ふとある事を思い出して、それを何とも無しに口にした。それに寧々はキョトンとした顔をこちらに向けて反応を示して、綺麗な
「ほら、アレだよアレ、ハロウィンパーティ」
「あぁ……そういえばそんなものもありましたね」
黙っている理由も嘘を吐く理由もないので、私は頭に思い浮かんでいたイベントの事を寧々に伝えると、寧々は数瞬思い出す様な間を置いてから三度程神妙に頷いた。
「去年は参加しませんでしたけど……今年はどうしましょうか?」
口元に人差し指を遣りながら、寧々はそんな言葉を零す。
私たちが話の種にしているハロウィンパーティというのは、学院に認可された学生会主催のイベントの事で、基本的にもうじき行われる中間考査の打ち上げの様な形で行われるようになっている。
そのパーティは自由参加という形式なのもあって、人付き合いを敬遠していた寧々はもちろんのこと、仕事で西奔東走していた私も去年は参加していない。しかし、今年はそういった柵も無くなっているので、寧々は今回の参加を悩んでいるようであった。
「そうだねぇ……例年通りなら、確か参加者はドレスでおめかししたり、ハロウィンらしいコスプレをしたりして参加していたらしいよ?」
「おめかし……」
そんな寧々に、多少の情報を持っている私は意思決定の助けをするべく、少々内容について説明してあげると、寧々は年頃の女の子らしくドレスアップの部分に反応を示したようだ。
こういうイベントで思い出を作るのも良さそうだし、もう一押ししてみようか。
「私はデートの時とはまた違った風に着飾った寧々も見てみたいかなぁなんて」
「参加しましょう!」
おねだりする様な形で私が自分の意見を述べてみると、寧々は案の定食いついてくれて、パーティの参加を踏み切ってくれた。その瞳はキラキラと輝いていて、今の時点で既に楽しそうだ。可愛い。
「えへへ、楽しみですねぇ」
「楽しみだねぇ」
そう言って、にこにこと表情を崩しながら寧々は輝かしい笑顔を私へと向けてくる。それに私も笑顔を返しながら、内心でこっそりとまだ参加が確定したわけではないんだけどなと独り言ちるのであった。中間考査で赤点を取ると、そもそもの参加権を得られないのである。
まあ、その辺りは成績優秀者たる寧々は心配せずとも良いだろうが。
ともあれ、そんな風に楽しく話に華を咲かせながら、私たちは二人きりの世界を展開しつつ道を歩いていく。先日は本当にどうなることかと思ったが、ずっとこんな風に過ごせていけたら良いなぁ。
次で最終章ですね。