会場が三人の演奏の余韻に浸る中、私は寧々たちと別れて一人ステージ横の待機スペースで思いを馳せる。
仮屋たちのステージデビューは上手くいったと言って問題ないだろう。それは今も尚上がり続ける会場のボルテージと、先程退場の間際に話した三人の満足気な表情を見れば、考えずとも分かることだ。
なれば、次は私の番だ。歌唱者としての神髄を御見せしんぜよう。そう思考してから、私は自身の姿を変質させた。
「凄かったですね、先輩方」
「うんうん、保科君も一週間前まで素人だったとは思えなかったね」
仮屋さんたち三人のバンドの演奏が終わって、会場中が目の前の因幡さんと椎葉さんの様に、彼女たちの話題で盛り上がる中、私は金色の巨大なハープをステージに設置した天都君が戻って行ったステージ脇にちらりと視線を送ります。
入部したての頃は浮かない表情をしていることが多かった保科君が、あれ程楽しそうな顔をしていることに依頼請負人として思うことが無いわけでは無かったのですが、申し訳ないことに私の頭は今天都君と私のステージがどうなるかという一点に染まっていました。
「次は空閑君だね。綾地さんが作詞したんだっけ?」
「はい、たくさん助言をもらいながらではありましたけど……」
誰もいないステージに熱心な視線を送っていると、そんな私の様子に気が付いた椎葉さんが私に声をかけてきます。私はその問いに対して控え目に返答しました。私一人ではどうあっても一週間では完成させることはできなかったでしょうから。
「寧々先輩の詩、楽しみです」
「あ、あまり期待されると……」
それから、キラキラと擬音が付きそうなほど輝いた瞳を私に向けて、因幡さんがそんなことを口にします。あくまで素人の私が主体となって作った曲ですから、あまり期待されると少し私には荷が重いです。
「お待たせしました~!」
そんな風にして、ドキドキと高鳴る鼓動を誤魔化すように三人でお話しながら待っていると、ステージの袖に引っ込んでいった天都君が戻ってきたようで、会場中の視線が一点へと集中し始めました。しかし、私は視線を皆さんに追従するようにしている最中、一つ違和を感じることとなります。
「あれ、天都君の声ってこんなに高────」
そう、どんなに緊張していてもあれだけ聴き慣れた天都君の声を私が間違えるはずがありません。なので、今しがた会場に響いた声の主を確かめるべく、独り言を零しながら改めてステージに目を向けた時、私はそのまま動きを止めてしまいました。
「……あらら? Surpriseは失敗だったかしら?」
ステージに上がった見麗しい
え、えっと、以前お聞きした、姿を自由に変える能力を使ったということでしょうか……? 少し冷静になった状態で声を聴いてみると、心做しか私の声に似ている様な気もしますし、そういう意図なのでしょうか……?
「あ、アレは……美少女YouPiper
「し、知ってるの? めぐるちゃん」
そんな中、一早く復活した因幡さんが変身した天都君の姿に心当たりがあるのか、あの女性のものと思われる名前を勢い良く口にします。
YouPiperはYouPipeで動画を配信する人の中でも、顔出しで配信して自分そのものをコンテンツとしている人のことを指す言葉だったと記憶していますが……。
「えぇ、『七色の声』と称される変幻自在の美声と日本人離れした美貌で音楽系の動画をアップすることで有名な、トップYouPiperの一人です。まさかこんな所でお目にかかれるとは私も思いませんでしたが……」
「いやぁ、流石に本人じゃないよ? コスプレさ、コスプレ」
続く因幡さんの解説を聞いていると、ステージ上に立つ天都君……天音ちゃん? えっと、天都君が会場によく通る声で因幡さんの間違いを指摘します。その空之天音という方をモデルにしていることは否定していないようですが。
そして、その遣り取りを見ていた他の人たちも復活したようで、パーティー会場がざわざわと色めき立ち始めました。それを見届けてから、天都君はにこっと微笑みを零して、優雅な脚取りでハープの元へと移動して行きます。
先程はああ言ってましたけど、あの慣れた所作から察するに、やはり因幡さんの言う通り本人なのでは……? あ、後で天都君から聞くことにしましょう。今はとにかく演奏の方です。
「これより紡ぐは乙女が綴りし幸せの旋律。暫し、ご清聴あれ」
喧騒が止まぬ中、天都君はハープの側に腰掛けると、それだけ言い残してからハープの長い弦に淀みない動作で細く綺麗な指をあてがいました。恐らく、私だけがその言葉をはっきりと耳にして、天都君と私のステージが今幕を開けます。
「────ッ!!」
息を呑んだのは誰だったか。もしかするとこの演奏を聴いている人全員だったかもしれません。
動いたのは距離にして数センチメートル。曲の出だしのたった一音が天都君の爪弾く指で奏でられた瞬間、先程まで会場中に響いていた生徒たちの声が嘘のように静まり返って、ステージ上に君臨する女神に心が惹き寄せられました。
こうなってはもはや天都君の独壇場です。演奏を穢す野次など飛ぶはずもなく、その場に居合わせた人たちはただただ
惹き込まれていく内にイントロもあっという間に終わってしまい、私が綴った
歌唱者としての力を存分に使って歌われる私の詩に描かれているのは、私の
それを歌っている
涙で滲む視界ではハッキリと分かりませんが、ステージの上で天上の音楽を奏でる
始まる前のざわつきが幻の様に思える静寂の中、寧々の想いを歌い終えた私は
ともあれ、これで私たちのステージは終了である。ネット通の因幡さんには一発で見抜かれてしまったが、私の研鑽に使っている
天音ちゃんのネットでの評価
イケ声も出せるし可愛い声も出せる
可愛い
巨乳
もっと女の子っぽい服を着て欲しい
歌が上手すぎる
楽器も上手い
おっぱいがでかい
脱いで欲しい
ギターが邪魔
おっぱいがでかすぎる
髪の毛触りたい
付き合って欲しい
ぱいおつ
でかすぎるおっぱいにはでかすぎる責任が伴う
催眠音声収録して欲しい
耳が孕んでしまう