「次の回収で願いが叶う、ですか?」
「あぁ……んっ♡ そ、そうなんだ……っ♡」
ハロウィンパーティの次の日のことだ。今朝、相馬さんから呼び出しを受けた私たちは、突然のことに顔を見合わせて首を傾げてから、朝早い時間にSchwarze・Katzeを訪れていた。
そこで語られるのは、もう次の魔力の回収で寧々の願いが叶い、私たちがこの時空を去るという事実。つまり、相馬さん別れの時は近いということである。
「ふーっ♡ くっ……寧々は、何か、やり残したことは、あぁっ♡ な、無い、かい……?」
「え、えっと……そうですね……天都君とも思い出を作れましたし、これと言って思い当たることは無いかと……」
「そう、かい、ぃぃっ♡ な、なら、私も、心……あんっ♡ おきなく、はぁぁっ♡ 送り、出せるというものだ……っ♡」
そういうわけで、相馬さんは寧々へとそんな問いを投げかける。二度と戻れないこの時空への未練を残して欲しくないがために。
寧々もそんな相馬さんの想いを理解しているのか、自分はもう心配無いと口にする。
「……ところで、その、先程から七緒は天都君に何を……?」
「んんっ♡ こ、これはね、撫でてもらっているんだ……っ♡」
「い、いえ、それは見れば分かりますが……」
そして、話を始めてから五分程が経過した頃、ようやく寧々が蕩けた顔で私の膝に頭を転がす相馬さんに、その行動の真意を問い質した。明らかに困惑の色に染まった声に、相馬さんは甘い声を混じえて答えを返していくが、寧々の理解はイマイチ及んでいないようだ。
そういえば、あの時は寧々もふにゃふにゃ猫ちゃんモードで記憶がちょっと安定していなかったか。
「最後に、なりそうだからねぇっ♡♡ 今のうちに、にゃっ♡ たっぷり、堪能してるん、だ……あぁっ♡」
「…………そうですか」
結局、気持ちよさそうにする相馬さんを眺めているうちにツッこむ気力が消え失せたのか、寧々は短くそれだけ口にするに留めた。キャラが行方不明な相馬さんを見て、瞳のハイライトも心做しか薄くなっているような気がする。
「寧々も撫でられるかい?」
「………………お願いします」
複雑な心境で恩師のふにゃふにゃな姿を眺める寧々に声をかけると、数瞬の迷いはあったものの、寧々は素直に私に頭を預けてくる。負けじと撫でろと無言でオネダリしてくる様はやはり可愛い。
この後滅茶苦茶なでなでした。
「そうだ寧々、最後にデートしようか」
「デートですか?」
「そう、デート」
あれから二時間ほど雑談しながら撫でさせられた後、私たちは帰路に着いていた。
私の突然の提案に、寧々は手を繋ぎながら聞き返してきて、私はそれを肯定する。
「それはその、構いませんというか、寧ろやりたいですけど……」
「ほら、最後の最後は二人だけの思い出で締めくくりたいからさ」
「なるほど」
提案自体は賛成だが、急な提案の意図が読めないという風な寧々に、その理由をキチンと説明してあげると、寧々は合点がいったという風に何度か首を縦に振った。
「それで、寧々のやりたいこと、全部やってから過去に帰ろう」
「私のやりたいこと……」
「ほら、今度は焼肉食べ放題に行きたいとか、カラオケに行きたいとか言ってたじゃない?」
「はいっ、焼肉、スイパラ、カラオケにゲーセン! えっと、それからそれから……」
例の初デートからそれほど時が経ってはいないが、それでも私と寧々は思い出作りのために何度かデートを繰り返してきている。友達もおらず、あまり出かけるという行為をしてこなかった寧々は、デートの度に数年分夢見てきたやりたいことを私に伝えてきて、私はそんな瞳を期待に輝かせる彼女をエスコートしながらデートをするというのが常であった。
今も、いつものように楽しいデートを夢想しながら、寧々は実に楽しそうに自身のやりたいことをつらつらと口にしていって、その身から振りまく幸せオーラが手を繋いでいる私にも伝わってきている。可愛い。
「前は凄いラーメン食べてたけど、流石にスイパラと焼き肉は同じ日には厳しいんじゃない?」
「あ、あぅ……で、では、お昼にスイパラに行って、動き回ってお腹を空かせてから夜に焼き肉食べ放題に行きましょう!」
「ふふ、じゃあそうしよっか」
この前のデートの激ヤバ大盛りラーメン事件(私命名)のことを引き合いに出して、一人でヒートアップしていく寧々を諫めると、寧々も流石にアレで反省していたのか一瞬どちらかを諦めようとするが、すぐに首を横に振ってから、やはりどちらもやりたいと口の端から涎を垂らしながら再度提案してきた。相変わらず食いしん坊だなぁと、私は寧々の涎をハンカチで拭いながらそれを笑って受け入れる。
普通のデートと比べると、食い気に遊び気と色気に欠けるかもしれないが、これでいいのだ。私たちにとってはこれが一番で、最高のデートなのだ。
「えっと、それともう一つお願いがあってですね……」
「良いよ、言ってごらん?」
「はい、あの、今度のデートは私がプランを組んでみたいなぁ、なんて……」
そんな風に思いを馳せていると、トリップから戻ってきた寧々が先程とは打って変わってしおらしくオネダリをしてくる。寧々のオネダリを断るはずがない私はそれを聞く前に快諾すると、寧々はにぎにぎと私の手を圧迫しながら、いつもは私が考えているデートのプランニングを彼女がやると言い出した。
「それなら楽しみにしてるね」
「はいっ」
真意はともかく、寧々がやりたいと言うのであれば、改めてそれを否定することはあり得ないので、私は寧々のデートプランに期待を込めた言葉を口にすると、寧々は満面の笑みを携えて元気に返事をする。積極性を持ってくれてお兄さんは嬉しいぞぅ。
それから、私たちは寧々のやりたいことについて話し合いながら、太陽輝く昼下がりの街を歩いていく。その雲一つない青空が、私たちを祝福してくれているような気がした。
ちなみに七緒さんはなでなででおまんこびしょびしょになってしまったので、あの後更衣室まで引っ込んでオナニーしてます。