※この作品はR-18です。

神戯姦濫   作:水晶水

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 とうとう最終話です。いやはや、半年でここまで来るとは思わなんだ。


エピローグ -過去で待ち合わせして-

「着きました、ここです天都君」

「学院? ここに寄っておきたかったのかい?」

「はい」

 

 風も吹き始めて無視できない寒さが辺りを包み始めた頃、私たちは我らが姫松学院の校門前に辿り着いていた。流石にもう門も閉まりきっていて、いつも見ている学院とは違った印象を私たちに与えてくるが……。

 念の為、私のジャケットを羽織る寧々に尋ねてみると、やはり目的地はここらしい。一度振り返って返事をする寧々は校門の方へと向かって行く。

 

「あ、待って寧々。警備システムに引っかかるから姿を消してからにしよう」

「あはは……そうでした……」

 

 が、その前に、うちの学校は有名な警備会社の防犯システムを導入していた──過去に夜中の学院で肝試しをしようとして侵入した生徒が速攻でバレてしこたま怒られたらしい──ことを思い出して寧々を止めると、寧々はつんのめる様にして立ち止まって、苦笑いの表情をこちらへと向けた。何だか締まらないなぁ。

 

「…………よし、これで大丈夫」

「ありがとうございます」

 

 場を仕切り直して、私の魔法で二人を透明化させる。如何に現代でトップシェアを誇る企業とはいえ、流石に魔法には対応していないだろう。

 

「じゃあ行こうか」

「ひゃっ……! は、はい、お願いします」

 

 それから、それなりの高さがある門を跳び越えるために寧々を姫抱きで抱えると、寧々は可愛らしい悲鳴を上げてからしっかりと私の首の後ろに腕を回してくる。姿勢が安定したことを確認した私は、超常たる身体能力で以て、一足跳びで門を大きく跳び越えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここで二人きり……というのも、何だか遠い昔の事みたいです」

「確かに、賑やかになってからそんなに経ってないはずなのにね」

 

 門を越えてから逸る気持ちで向かった先は、オカルト研究部の部室。ここは私たちの運命が始まった場所で、沢山の大切な思い出が詰まった大事な場所。

 

「総てを変えるきっかけが産まれたこの場所で、過去に帰ってしまう前に、また二人で、二人だけで過ごしたくて……」

 

 始まりは心細くて、嫌になってしまうこともありましたが、いつの日か天都君が遊びに来てくれるようになって、ジリジリと焦燥感に焼かれながらも安らぎと楽しさを享受できるようになりました。

 

「楽しかったことも嬉しかったことも、辛かったことや悲しかったことも、全部ここに詰まっていて……」

 

 本格的に二人で部活を始める様になってから、柵も楔も何もかも天都君は吹き飛ばしてくれて、私は人と関わる喜びを知り、友達と語らう楽しみや恋人と逢瀬を重ねる嬉しさも分かって、他にも数えきれないぐらい、天都君は私に色々な形のないものを与えてくれました。

 

「だから、終わらせる……いえ、また新しく始めるなら、この場所からが良いなって思ったんです」

 

 そんな、私にとって大切なものでいっぱい溢れたこの場所で、私は、私たちはまた歩き出したい。ここから始めるなら、しばらく天都君と会えなくなっても勇気がもらえるような気がしたから。

 

「……天都君、そろそろ往きましょうか」

「もう、いいのかい?」

 

 それから、隣り合って座る天都君の胸に頭を預けながら静謐な部室で過ごして、私はそう切り出します。腰を抱いてくれていた天都君が本当にいいのかと聞き返してきますが、私は一つ、しっかりと頷くことで返事としました。

 

「決心が鈍ってしまう前に、どうか」

 

 月明かりが照らすこの場所にいると、本当に色々な事を思い出してしまいます。絆を紡いできた人たちとの思い出が自然と頭を過ぎっていって、胸の奥から込み上げてくるものを我慢できません。

 

「寧々」

「天都、君……」

 

 そうして、目から溢れてきた想いの結晶を、天都君は優しく拭いながら私を真っすぐに見つめて私の名前を呼んできます。それに応えるように見つめ返していると、彼の綺麗な黒曜石(オブシディアン)が私の心を落ち着けてくれるような気がしました。

 

「寧々なら、もう大丈夫だよ」

 

 そして、天都君は短く、しかし、その言霊にあらゆる思いを込めて、それだけ口にします。その言葉が後ろ髪引かれる私の心から不安を拭ってくれて、過去(明日)への勇気を私に分け与えてくれました。

 

「……私、頑張ります」

 

 少しだけ震えが残る口から小さく零れる言葉に、天都君は私を抱きしめてくれて────

 

「天都君に会えない数年間、天都君(あなた)の恋人だと胸を張って言えるように頑張りますから」

 

 その綺麗な翼が生えた背中に私も腕を回して抱き着いて────

 

「楽しみにしていてくださいね」

 

 胸から溢れ出す輝きと、天都君の温もりを感じながら────

 

「うん、楽しみにしてるよ」

 

 吹き荒れる魔力の奔流に呑み込まれて、私と天都君はこの世界から旅立ちました。

 

「いつも、天都君(あなた)のことを想っています」

「私も、いつまでも寧々(君)のことを愛してるよ」

 

 魔力の残滓とお互いへの愛の言葉を部室に残して────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「往った、か……」

 

 嵐が吹き荒れた後の如き様相の部室に足を踏み入れ、女は寂寥を言葉に込めて短く零す。

 

「寧々、どうか幸せにね……」

 

 契約者の未来を案じ、一筋の涙を頬に走らせる夢魔(アルプ)の足元には《世界》のカードが落ちていた。

 

 

 

 

 

Main Chapter -神覧舞台- THE END




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